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ポトチャリポラパ/コミック/2003年
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2003年/12月
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2003年/12月/29日
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「漫画セクハラ専門学校」ナカタニD.(小学館)

・「コミックIKKI」で連載してました。
・セクハラについて勉強するマンガですね。
・んー、おれが連載中に読んでいたときに、けっこう「?」マークが浮かんでいたんです。

・内容は数々のセクハラのケースを取り上げてるわけです。作者はなぜそんなことをしたんだろう?って。

・もちろん、ナカタニ氏は女性絵も達者ですし、エッチい絵と、社会の「しくみ」的なことを書くのが上手なのは、名著「東京都立不安病院」で知ってるんですけど、「なぜ、セクハラ?」と思ったんですよ。

・その答えはおれが「IKKI」を購読するのを止めた後の最終回にあったんですね。

・なるほど。ちょっと感動してしまいました。思い切り合点がいきました。

・と、そう思うと、それまでのもちょっとエッチい絵があるセクハラテーマのギャグショートとみえた本文も味が出てくるのです。
・つまり、最終回から逆算して作られた本なんですね。1冊で1つの作品となるように。
・ここいらのデキのよさに感動したわけなんですよ。もちろん、作者のメッセージもすばらしいと思います。同感です。

・そんなこんなをふまえて具体的な内容紹介。

「ことばのセクハラ」。「がんばれよ」って女性に声をかけるのはセクハラなんですって。なぜなら、一段上からいってることになるから。正解は「がんばってるね」だそうです。

「セクハラアート」。「芸術」だからといって裸体画をあちこちに飾ったりするのはセクハラだそうですよ。でも、みんな「芸術」の2文字に惑わされるから。

・女性をレコードにたとえるキャラ。A面1曲目は顔で、B面5曲目を足首として、女性を評価する。
「A面1曲目はまあまあですけど、A面5曲(足)が短くて、全体の構成を壊してる」とか。

・オヤジの臭いの。まあ、男へのセクハラですね。おれもたまに受けます。

・家族のセクハラ。「早く子供産みなさい」攻撃な。

・ということで、男女ともセクハラはあるんですよね。

・そして、最終回にあとがき。この2つは勉強になりますね。
・そういうことに興味を持ったり、持ってたりする人はおもしろいですよ。

オススメ
(16:39:39)

「賭博破戒録カイジ」11巻 福本伸行(講談社)

・うわー、パチンコ台攻略。もう最後の攻略なのに1巻使ったよ。しかも、ちゃんと成立してる。
・これ、多分、連載誌で読んでると、じれったかったろうなあ。コミックである程度の量を読めるからこそ、おれはハラハラできたような気がする。

・1発入れば7億円という難攻不落のパチンコ台に挑んでるんですよ。

・そして、この大前提こそが最大のシカケになっているんですよね。普通、パチンコに勝つためにそれだけのことはしない。なぜなら、リスクが大きすぎるから。ナンバーズを全部の数買えば、必ず当たるけど、そんなことするやつはいませんよね。なぜなら、損だから。それと同じコトをカイジはやってるワケです。最後の最後の攻略なんてまさにそれ。だれもこんなことをしません。でも、7億円だったらやるんですよ。そいでもって、このネタ、けっこう最初に思いついたんじゃないかな。というか、このネタから逆算していったのかもしれない。そんな感じすらする。だって、このネタを知って、振り返ってみると、けっこう一直線だもん。すべて、よどみなくツジツマがあう。そう思うと、恐ろしいくらい精密な話なんですよね。それとは真逆の方向に位置する作画で一見そうとは思えないところまで計算にいれてるかのようですよ。
・で、ギャンブルマンガだけのようでいて、かなりいろいろなことを描かれてますよ。濡れ場やラブシーンってのはどうだっけか忘れましたけど。

・恐ろしい人ですよね。
(17:02:37)

「弾 AMMO」3巻 山本貴嗣(蒼竜社)

・今、いったいどこでどういうペースで連載されているのか知りませんが、3巻目です。
・3巻は1巻丸ごと、1本の話でわかりやすかったです。

・凄腕女刑事アモウが連続女流挌闘家拉致暴行に挑むわけです。犯人は挌闘オタク集団。催淫剤を打った女流挌闘家を捕まえて、森とかで逃がし、「倒した」やつが暴行できるというゲームを楽しんでいるのです。それに挑むアモウさんですが、柔道家といっしょに捕まって催淫剤を打たれながらも闘うというネタで1巻。

・これが、適度にエロ(アモウさんも何度か犯されますし。←ただし犯したやつは半殺しにあってるけど)だし、どことなくコミカル。それでいてハードなアクションと、読み応え満点のエンターテインメント作に仕上がっております。
・多少は話のつながりがありますけど、これまでの流れを知らない方も3巻だけでも楽しめるようになってますよ。正直、おれも前の話とか忘れてますし。

・しかし、考えようによっちゃあ、アモウさんがひどい目に遭うマンガということもいえますよね。
(17:20:51)

「20世紀少年」15巻 浦沢直樹(小学館)

「漫画史上、最大の衝撃。」
・なんて、オビにあるけど、おれ的の衝撃は、「まだまだ続きそう」ってことかもしれません。
・なるほど、よくわかった。もう、浦沢直樹いいや。「20世紀少年」は最後までつきあいますが、今後は浦沢直樹は買いません。だって、金魚のフンみたいに切れ目なくだらだらだらだらと続いてるんだもん。そこらかしこのネタのつなげかたやストーリーの緩急などはさすがと思いますが、もういいや。
・ぶっちゃけると、おれにとっては読まなくても困らないものです。つかの間の楽しみということで500円くらいの価値は十分にありますが、おれはその「つかの間」をほかのおもしろいマンガを探すことに費やしたいと思います。
・だから、もうここで「さよなら」宣言しておきます。がんばれよ、浦沢。これからも金魚のフンみたいな「大作」を描いてたくさんお金を稼ぎなさい。

・えーと、人類が滅亡して、ケンジみたいなのがバイクに乗ってるシーンで、新章になって終った15巻です。
・とてもおもしろかったです。
(17:30:01)

「げんしけん」3巻 木尾士目(講談社)

・3巻目になり、安定ムードになりましたね。
・1巻目はどうしたんだ?木尾士目。ってことで興味深くて、2巻目はそうだったのかってことで興味深くて、3巻目は2巻のつづき。そして、それは多分、なんらかの理由がない限りつづいていくでしょう。そういうことがわかった3巻でした。

・おたく大学生の終わりなきダラダラおたくライフ。

・アレですね、こうみると、オタクの集まりにカップルがいるってのは、かなりおもしろ化学反応が起こるんですね。そういうことがよくわかります。それが本作の特徴ですよ。オタク同士のマターリ空間に侵入する異物。そして化学反応。それを笑いに変換。そういう感じですか。
・そのカップルの男、高坂。彼のすごさを改めて思い知りました。彼は、おたくを嫌う普通の彼女がいるにも関わらず、さわやかに屈託なく「僕がエロゲーやめるなんてありえないから」と断言してる。これは考えてみるとものすごいことですよ。妻帯者、もしくは彼女持ちのみなさんで、趣味が合わない方、同じコトがいえますか?別にエロゲーじゃなくても。

・そして、その彼女のほうの視点からも共存の答えが出てますよ。
「理解を示す」

・これ、伊集院光氏のラジオ的表現にすると、「病気だと思ってほっといてくれる」ってことですよね。たぶん、オタク気質のある方(ココ読んでる方は多かれ少なかれあるでしょ?)で、趣味と彼女を両立してる方は思い当たるでしょうし、思い当たらない方は、ヤバイよ。相手はけっこうストレスたまってるよ。

・そうか、エロゲーでオナニーか。それもまたヨシだよなああ(そういうシーンがあるんです)。正直、それはやったことないんですよ。まあ、エロマンガはあるので十分可能と思いますです。だから、誰かエロゲーください。
(18:10:29)

「マリアナ伝説」1巻 ゆうきまさみ&田丸浩史(角川書店)

・これは、原作というより、原案レベルじゃないかなあってくらい、田丸色が強い作品になってますね。

・エレガントにシュートすることに生きがいを感じてる男・寺澤。それだけを追求するあまり、別にゴールが自殺点でもかまわないのが弱点。今日も試合で3点も自殺点をたたき出し先輩にボコ殴りにされ、むしゃくしゃするので後輩(男)と遊園地で遊ぶ。そして、池で謎の老人と水泳勝負をすることになる。そして、「エレガントに泳ぐ」ということを知る。で、なんか知らんけど、シンクロをやることになるわけですよ。

・えーと、だから、カンタンにいうと、田丸版「ウォーターボーイズ」ということ。

・本当、みごとなほど、田丸色に染まっているので「ラブやん」なんかを求めている人にはばっちり。しかし、「鉄腕バーディー」や「パトレイバー」を求めてる人にはちょっとアレということになっているのですよ。

・ということで、話は進んでないんですけど、田丸味は十分にタンノウできるシカケになってますよ。紅一点の天野さん(当然のようにメガネっ子)のスクール水着を覆面にした「水っ球さん(すいっきゅうさん)」など、サイコーですよ。
(18:28:47)

「元祖!浦安鉄筋家族」5巻 浜岡賢次(秋田書店)

・前作の「浦安鉄筋家族」からだと、通算36巻目ということで、これだけも長くやってると、なんつーか、ベースはいっしょでも、そのときの流行とかで、今、コレが好きってのがやっぱり出てくる感じですよね。これは、ヘッポコサイトを毎日更新してて気がついたことなんですけどさ。

・今回は割合とキャラ配分は散ってましたけど、なかでも金子が異彩を放ってましたね。というか、金子って男だったんですね。おれはじめて知りました。

・あとオーソドックスなオチでしたね。オチらしいオチというか。「え?ここで終わり」みたいなブツ切れのとかありますからね。

・そんなこんなで、まだまだつづくのですが、これは買うのに苦ではないです。また、飽きる可能性はありますけどね。
(18:40:48)

「ワイド版 風雲児たち」20巻 みなもと太郎(リイド社)

・ああ、どういうラストなんだろうと思ってたら、思い切り尻切れトンボなんですね。やっとのことで、本来の目的である、幕末の志士たちが登場したと思ったら、おしまいって感じ。
・まあ、このあと、「雲竜奔馬」で坂本龍馬の青春を描き、「風雲児たち 幕末編」でその2つの続きを書いてますけどね。

・20巻は、佐久間象山の大砲訓練からはじまり、ラストシーン、18歳になった龍馬が江戸の千葉道場へと旅立つところまでです。そして、白眉は高野長英の最期ですね。彼の死は次の時代へのはじまりだったのかしらね。西郷隆盛が、勝海舟が、ジョン万次郎が、サマザマな思惑によって、歴史の表舞台に登場しつつある、「胎動」といったニュアンスですよ。

・というか、つまり、「風雲児たち」はいわばグランドプロローグということなんですかね。本来、幕末の志士を描くために関が原の戦いからはじめて、江戸時代を描ききったところが「風雲児たち」だったりするのですよ。それで「幕末編」につながるんですよね。シーボルトの娘・イネが日本最初の女医として奮闘するのです。これが幕末編最初のエピソードですね。

・だから、2年かけて復習していたんですね、ぼかぁ。

・でも、しあわせでした。ありがとうありがとう。これからは、「風雲児たち」読者の先輩がたといっしょに「幕末編」を待つことにします。
(18:50:24)

「いい電子」4巻 みずしな孝之(エンターブレイン)

・1年1作ペースで4巻ってことは4年目ってことですね。代表作「幕張サボテンキャンパス」亡き後、おれにとっては唯一のみずしな氏との接点ってことになりますね。

・みずしな氏本人とまわりのユカイな仲間が織り成す爆笑ゲーム人生って感じですか。連載は日本一のゲーム雑誌「ファミ通」と、お約束を面倒くさがらずに書く。

・4巻でいいたいのは、えらい女性キャラがかわいいなということで、まあ、主に、担当編集のゴチさとこ氏と美人有能アシのマツムラ氏の2名なんですが、この2人のかわいさがテコ入れされた感じあり。もう、ほとんど萌えるほどさ。おれは、こういう女性キャラのほうが萌えるんだ。ムラタレンジの絵みたいのより。

・そいでもって、案外と盛りだくさんな内容。ゲーム制作、ゲームショー出展、ゲームそのものにも登場、韓国に旅行に行くわ、伊集院光氏のラジオにも出演するわですよ。そうか、構成の渡辺氏ってあんな顔してるのか。

・で、顔見せNGかと思ってたマツムラ氏の写真もあったなあ。まあ、顔は見えないんですけど。

・ということで、なんとか、この両名の顔をみたいなと思ったり。

・いや、おもしろかったです。というか、もうゲーム関係ナシでもいいんじゃないかなあ。「こういうマンガ」が載ることになった元凶の「しあわせのカタチ/桜玉吉」も後半はゲームまったくカンケイなくなってきたしなあ。

・ま、それはそれと。でも、こうなると、案外とジャマなのは、みずしな氏本人だったり。でも、それをいっちゃあオシマイよだったり。
(19:23:54)

「鬼虫」1巻 柏木ハルコ(小学館)

「よいこの星」「花園メリーゴーランド」の柏木センセの新作ってことで、内容あまり検分せずに手に取ったのですが、失敗しました。

・平安時代、絶海の孤島が舞台。四方が崖、海はいつも大荒れ、だから、出ることも戻ることもかなわない、真の意味での孤島。でも、人は住んでいる。そこに1人の少女が流れ着く。

・で、いろいろあるんですけど、なんだか、かったるいです。設定が設定だから、この先、ものすげえおもしろいことが起こることも期待できません。
・あと、これは説明しづらい現象なんですが、どこかで、本作を拒否してるんですよ。なんだろう?柏木センセの持ち味である、エロもあるし、話もよどみなく進行してるし、けっこう資料あたったと思われる、それっぽい風景や風土や風俗もいい感じです。でも、なにかが、「これはダメだぞ」と拒否してるんです。1冊イッキに読めなかったし。

・実は、柏木センセのデビュー作であるところの「いぬ INU」も同様の理由で1巻だけ買った後、読めなかった。それと同じ感じのイヤさ。なんだろうこれ。理由がないんですよね。生理的にイヤって感じで。

・だから、もうしわけないけど、2巻はどうするかわかりません。
(19:48:35)

2003年/12月/26日
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「ブリッツ・ロワイアル」1巻 富沢ひとし(秋田書店)

・映画「バトルロワイアル2」の封切りに併せて、原作の世界を借りてのオリジナルな展開のバトロワ。・一応、「2」と設定はいくつかかぶってますが、まったく別個と、あとがきで原案の高見広春センセが書いておられます。彼はもしかしてバトロワだけで食っていくつもりなんでしょうか。

・さて、バトルロワイアルといえば、プログラムと称して中学生同士で殺し合うアレですが、「2」では、映画も富沢版も、1段階進む感じです。今のところ、富沢版の目的はよく見えませんが、中学生を兵隊として推し進める感じですね。それは共通してます。
・富沢版の一応提示されてる目的は、修学旅行でラチされて、学校に入れられます。そこで1週間すごし、最後に試験で優秀な成績を残せば卒業ということになってます。でも、授業は、銃を持たされて演習とかそういった感じになってます。
・はてさてどうなる今後というノリで終りました。

・さて、富沢ひとし氏といえば「エイリアン9」以降の、少女と、モンスターが出てくる、殺し合い漫画家ってニュアンスが強い作家とおれは捕らえてます。そいういうものを描きたいという強い意志を感じるので、おれは好きな作家だけど、「どうせ、これも、少女と怪物の殺し合い漫画だろうなあ」って手に取らなくても安心な作家だったりします。

・ただ、そう思っていたからこそ、本作は、今のところ人間しか登場してないのが、非常に新鮮でおもしろいです。少なくとも映画版の「2」よりは絶対おもしろいです。

・おれは原作は読んでないんですが、田口雅之氏の漫画版「1」、映画版「1」&「2」は読んでます。たぶん、このシリーズのキモは、「わけもわからず殺し合う」ってことじゃないかと思うんですよね。だから、謎や、わけのわからないことは多いほどいいんですよ。で、わけのわからない殺し合いにより、わけのわからない死体がそこにあるってのが恐怖(というか、不気味さ)を換気すると思うんですね。

・そういった意味じゃ、富沢版はそういう点をえらいバッチリ押さえてるような気がする。いや、上記のも仮定ですしねえ。田口版はトゥーマッチすぎだし、深作版の映画1は要らん要素(先生に焦点を当てたりしたじゃん?)を入れたためちょっとワヤになった。映画2はもうその比較もできないって感じだし。

・ただ、弱点として、少女とモンスター漫画家には、ボーダイな数の、人間の描き分けが必要とされるところがツライところかもしれませんね。それがまたいい味につながってるって点もありますがね。

・これ、でも、いいですね。いろいろな人に「バトルロワイアル」を描いてほしいなあと思いましたよ。
・原作を絶賛して、マンガ版と映画版(1)を、原作者との対談で、けちょんけちょんにけなしてた山本直樹氏とか。
(23:11:38)

2003年/12月/24日
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「カワイコちゃんを2度見る」福満しげゆき(青林工藝舎)

・前作「まだ旅立ってもいないのに」から、けっこう短いスパンで発売された第2作品集。
・これがまた完成形ですよ。

・おれはもう断言するけど、福満しげゆきマンガの男性キャラはみんな女性を恐れてる。多くのことにビクビクオドオドしてるのだけど、それらはすべて女性につながる。これが基本だ。

・そして、それは非常にわかる。女性は怖い。いくつになっても女性は怖い。ほとんど落語の「饅頭こわい」の世界かもしれないが怖いものは怖い。ここであえていってみるけど、たいていの男は女を怖がってると思う。何で怖いのかというと、それは女性だから怖いんですよね。そして、怖いからこそ知りたがるし魅力を感じたりするわけです。福満氏はそれをよくわかってて、表現することに長けてる。天才です。

・本作は「別冊ヤングマガジン」や「マガジン・ウォ〜」というところで掲載されたものが多く収録されており、前作より、その図式がきちんと現れてる。ほら、ちょいエロ風味が必要とされるから。
・女性が怖いの「怖い」を分解すると、その女性に対して劣情を抱く気持ち、それを拒絶される恐怖なんかもない交ぜなんですよね。

・それがよく出てるのは、おれが最初に触れた福満作品であるところの「肉体労働にまつわる夢の話」で、この彼はなんと女性と同棲してるんだけど、彼女に手を出さないんですね。横で寝ている彼女にこっそり近づき、ケータイのアンテナで胸をつつきながらマスターベーションしてたりするんですよ。そして、そんな生活を「夢見てた」とモノローグがかぶるのです。

・さ、そういうの書くと、そういう話なんだとテキトーなイメージを作られて敬遠されるでしょうが、さにあらずで、非常に内容はバラエティに富んでます。これまでのはあくまで「設定」ですから。

・宅急便屋が手や足を送りつけてくる「ステキな彼女」
・合コンで全魚人(要するに魚ですね)と知り合ってつきあうことになる「初体験物語」
・ネコ型老人と暮らすことになるダメ少年を描いた連作「飼ってはいけない居候」シリーズ。
・クビだけ少女の鉢植えと少年との交流を描いた「鉢植えの恋」

・で、表紙にもオビにも大フィーチャーされてる、福満版ゾンビマンガである「日本のアルバイト」。描き下ろしで2編加わってます。
・ゾンビが日常でありふれた存在になってる世界で、動かなくなったゾンビを回収する仕事をしている青年の話。ゾンビは頭がパーで、ただ徘徊してるだけの、うっとおしい存在だったりするんですね。まあ、噛まれたりしたらゾンビ化したりするし、ゾンビ狩りって少年たちがゾンビをアレしたりとか、そういう世界の話です。そのアンチSFな感じがいいですね。

・ということで、現役の人も、かつて女性を怖がっていた人も、そして、たぶん、男を怖い女性にも、なにか訴えかけたり、思い出したりすることの多いすばらしい作品であると思います。ちょっとしたトホホなギャグマンガとして捉えるのもそれはそれでいいんじゃないかな。

オススメ
(13:05:41)

「なつめヴルダラーク!」西川魯介(角川書店)

・すばらしい帯コメント。

「モヤモヤ男子中学生を襲う 巨乳xメガネx狼耳娘たち!!」

もう、本作を余すところなくおさえてます。

・相変わらず書きにくい登場人物の漢字なので、わかりやすく説明しますが、巨乳+メガネの委員長と、ボーイッシュでチャイルディッシュなコがレズってましたのを男子中学生が目撃します。うそーん、と思ってましたが、実はチャイルディッシュなコは人狼だったのです。思春期のときの身体の変化で血を飲まずにいられない体質になったそうです。タイトルの「ヴルダラーク」というのは、人狼であり、吸血鬼でもあるということです。

・で、メガネと男子中学生は、人狼に血を吸われる生活になるわけです。人狼のほうは単純に食料の安定供給と思ってますが、メガネと男子中学生のほうは、吸われるときの快楽もあいまっておかしな方向にいくわけですよ。

・あと、物の怪のタグイも出てきます。

・これがなにに連載されていたのか知りませんが、寸止めエロになってます。そして、それがいい感じだったりします。

・相変わらず、「わかる人だけがわかれ」って細かいネタをあちこちに仕込みつつ、趣味に、エッチに、いいふうに展開していきます。

・しかし、血を吸われると、吸われたほうは快感って設定を考えた人は偉大であることですねえ。本作も血を吸うシーンがエロティックなので、全然実用OKというすばらしいことになってます。

・おもしろかったです。
(13:59:33)

「生きるススメ」戸田誠二(宙出版)

・買ってわかったんですが、ネットマンガです。ネットマンガからコミック化ってのは、今後一般化しそうですね。だから、戸田氏の「コンプレックス・プール」にていくつか読むことができます。全部ではないと思いますが。おれも確かめてませんし。
・これ、やっぱり、ディスプレイでマンガを読むのと、紙で印刷された本を読むのではオモムキがちがいますね。

・本作はショートコミックです。トリを飾る「ラストムービー」以外は1〜10pほどのもので構成されております。

・これが、ちょっとした、コンセプトチックになってますね。「ラストムービー」はタイトルどおり、死ぬ時にみる走馬灯をみるというもので、初っ端の「Making World」は、ひきこもりの少女の話ですが、これは「誕生」だと思うのですよ。

・さまざまな形のショートコミックがあります。ギャグめかしたものから、死別みたいな話まで。それらを読んで共通するのは、他者とのカンケイについてです。誤解を恐れずにいうならば、すべての作品は他者と自分(主人公)との関係を描いてると思います。

・たとえば、ぼやかして書いてますが、エイズについて、知り合った3人について語った「小さな死」。
・自殺未遂をしたかつての友人の病院にかけつける話「幸せ」

・別居中の父親に月に1度会いに行くのだが、財布と家の鍵を忘れたので7駅むこうの父親の家まで会いに行く少女の話「黒の歩み」

・と、まあ、こういった具合に、サマザマな人が登場する、ちょっと重いショートコミックとなっております。

・ちょっと不思議なのは、登場人物に女性が多いことですね。これはなんらかの意図があるのだろうかと思ったりもします。だって、女性が男性でも成立する話も多いし。単に「にぎやかし」なのかしら?とも思うし、深い意図が見えるような気もしますが、よくわかりません。

・ということで、おもしろかったです。

・おれがこの本を手にとったのは、表紙をみてです。装丁は南伸坊氏です。南氏の装丁はわかりやすくて上品で、なおかつ親しみやすくてよろしいですね。本作は南氏の装丁じゃないと手にとらなかったでしょう。ちなみに、白の背景に女性の全裸の立ち姿です。

・あと、作者名でなにかひっかかると思っていたら、戸田誠司ってミュージシャンがいるんですよね。

「青くても臭くてもけっこう。おれはこれを描きたい」という強い意志が感じられます。

オススメ(ま、上記リンク先を読んでから決めてもいいですが)
(14:26:39)

「Dr.リアンが診てあげる THE MOVIE」竹内元紀(角川書店)

・前巻が、「純情派」で今度は「THE MOVIE」と。実質で4巻目ってことですね。

・って、中身が変わってるワケではないんですね。カバーの裏みかえしに、「下ネタを考え続けて約3年!」という作者の自画像があることからもおわかりのとおり、いまや95%が下ネタでできております。だから、表紙の70%が下ネタというのは、ウソです。

・今までは岡崎さんが主にツッコミでしたが、「THE MOVIE」においては、主人公のリアンもツッコミにまわった感ありですね。それまでは傍観してたほうが多かったので、それはそれで作者の苦肉の策なんでしょうかね。って、岡崎さんが相変わらずメインですけどね。
・そいでもって、全編、あるテーマを決めます。「ひな祭り」「めざせマンガ家」「身体測定」など。それにあらん限りの下ネタをぶち込みます。これまでも、ギャグの密度は非常に高かったのですが、それがよりエロ寄りになりましたね。

・そこで、本作のちがった面がより鮮やかに浮かび上がるのですよ。それは、田丸浩史氏の作風にも通じる、マターリ感。そう、下ネタにボケてツッコんで、ほのぼのほのぼのとやっておられますよ。

・そいで興味深いのは、これだけ下ネタ満載でビーチクNGとはいえ、きわどいポーズが頻繁にでている本作がエロ度0なんですね。その理由が、本作収録の「マンガを描こう!」でちょっと伺えます。「資料」のためと堂々とエロ本を買う身分になりたいという理由で男の主人公がマンガ家を目指す話なんですけど、わりにこの回は毒が強いんですよね。なるほど、作者のスタンスがちょっとみえたような気がします。

・まあ、がんばってください。今のパターンなら長持ちしそうですね。ネタ出しが大変でしょうが。中途半端に変えようとしないで、そのまま突き進んだほうが吉でしょうね。
(18:51:43)

「アイドル地獄変」尾玉なみえ(集英社)

・あーなるほどねえ。「少年エスパーねじめ」の作者なのです。これはタイトルだけは覚えてまして。
・で、本作は某サイトでホメてあったのと、「ねじめの作者か」と、思ったので手にとってみました。

・そして、冒頭の「あーなるほどねえ」とつながるのです。カンタンに感想をいいますと、おれらの世代のやつで、「つる姫じゃー!/土田よしこ」や岡田あーみん作品が好きな人が好きになりそうな感じだなあと思いました。微妙な言い回しですね。
・まあ、はっきりいうと、前記のも、本作もおれ好みではありません。

・トップアイドルを目指す娘がハチャメチャやる話です。途中から路線変更みたいになっていきまして、芸能界ギャグから、なんだかよくわからない風になっていきます。

・やっぱ、打ち切りなんでしょうかね。よくわからんですが。集英社はこれから、2万部以上の売上が見込めない作品は単行本化しないとかいってましたからどうなるんでしょうか。

・で、ギャグの質としては、主人公のボケに、明確なツッコミがないパターンなんです。んー、80年代だなあと思いました。ボケにツッコむ。これがイニシエからの基本ですが、それが徐々になくなり、ボケっぱなしで放置になったあと、それは「不条理マンガ」というものに変質するんですね。これが8〜90年代の不正確な偏見たっぷりの私家版のギャグ史です。
・これが、また、ボケに対してのツッコミというカタチを提示したおかげでギャグは復活したんですよね。そんな気がします。

・で、また、ボケっぱなしで放置みたいなノリなんだなあと思いました。「2050年頃のヒット作のスタンダード」とオビにありましたけど、たしかに、そのボケ→ツッコミという流れからまた変化の兆しが感じられるものであると思います。

・あと、もうひとつ、ベタな理由として、おれ、単純に女性が主人公のマンガってあまり笑えないんですよね。
・ダウンタウン松本氏が「女は笑いに向かない。全身タイツなんか着ると、やはり胸のふくらみに目がいってしまう」とおっしゃってたのと同じ意見なんですよ。

・ただ、楽しかったです。なんだろう?この楽しいってのは、ギャグとはまたちがった点で。なんか、みょうなほのぼの感がでてますよ。

・個人的には、ドッキリカメラの回が好きでした。
(20:04:21)

2003年/12月/21日
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「Go West!」2巻 矢上裕(メディアワークス)

・すちゃらか西部劇第2巻。
・意外と、リアルを基調とした西部劇でのギャグマンガってありそうでないですよね。
・こう、SFまじりのは多いですけどね。馬の代わりにバイクとか。「北斗の拳」ってのもベースは西部劇ですしねえ。

・親に会うためにひたすら西を目指す黄色人種の少女ナオミ。まっすぐ西にしか行かない馬、お兄ちゃんと言い張る黒人アフロ、お父さんといいはる白人。
・で、あと、ドタバタでハチャメチャと。

・史実と合ってるとか、小道具や背景がリアルかどうかはわかりませんが、少なくとも、アカラサマにそういうのを無視した感じはありません。まあ、黒人アフロがこんなにのさばってるのはリアルじゃないのかもしれないけど。

・基本ギャグはどつき漫才形式になるのでしょうか。ドンパチやったり派手なアクションが多いですが、人死にや残虐を売りにしてるわけではない。かといってギャグがこってるわけでもない。

・ま、キャラが立ってるので楽しく読めますよ。舞台やネタはコってますし。プレーリードッグの牧場とか本当にありそうだもんね。
(16:12:50)

「GANTZ」11巻 奥浩哉(集英社)

・うわ、すごいわ。

・2つの意味ですごい。

・1つめ。GANTZの世界に行くために、リアル新宿で大虐殺大会。ありとあらゆる銃火器を持って、ひたすら殺してまわる。その描写。

・2つめ。10巻で張った伏線を惜しげもなく使う。というか、11巻、12巻以降に使うためってのがミエミエでアカラサマの伏線が10巻だったんだなあと思う。ものすげえわかりやすい。というか、わかりやすすぎ。
・10巻でバンカラと、超能力者が登場しました。そして、11巻では死にました。たぶん、12巻以降は「GANTZ]の世界で活躍するんでしょう。
・なるほど、これまでの展開とはちょっとちがいますね。これまでのは、死んだと思った人がなぜか、GANTZという世界で、なぞのモンスター狩りをさせられるという感じでした。主人公はいました。幼馴染とか名前のあるキャラもいました。いましたが、10巻までで、主人公以外全滅しました。リセットかかったわけですよ。だから、11巻でネタを再仕込みしましたと。そういうわかりやすい展開になってるのです。

・それはそれとして潔しではありますよね。もうちょっとひねったり、展開をいろいろ持たせるってこともできるんですけど、作者はせっかちなのか、なにか意図があるのか、編集の意向か知りませんが、蒸気のようにわかりやすいことになってるわけです。仕込んだ瞬間に調理ってのも鮮度を保つためにある手法ではありますよ。でも、生煮えだったりすることもあるわけです。そういった意味じゃ、10巻で煮込んだ大根は11巻ではちょっと芯が残ってる感じではありました。たぶん、もっとうまくやれる人はいっぱいいたんじゃないかな。

・ということで、作者は1つめにかなり注力していた感じがありますね。迫力ありましたよ。実際あると、いつまでも人がウロウロしてそうな気もしますけどね。

・いや、そいで、文句らしいことぐだぐだと書きましたが、素直におもしろかったです。12巻以降のGANTZはどんな展開になるんでしょう。楽しみです。
(16:35:26)

「ONE PEACE」31巻 尾田栄一郎(集英社)

・回想の巻ですね。回想でた、本線、それから続いていく〜みたいな。「GANTZ」といい、これといい、伏線を張った瞬間にそれを使用するってのは流行りなのか?2003年の集英社のトレンドなのか?

・まあ、本作の場合、ここに張らないとしょうがなかったのかしらね。でも、なんだか、いびつなものを感じるよなあ。

・してみると、尾田栄一郎センセは絵も話もどんどん達者になられてますが、構成がもうひとつこなれませんよねえ。

・伏線も生きてはいるんですけどね。1本とは限りませんし。たとえば、ルフィさんがなんで鉄の玉をつけたままなのか?ってのもわかりますよね。あれくらいなら、ゾロが切れそうな気もせんでもないんだけどねえ。

・しかし、頭にクリ饅頭乗せたようなユカイな人が真剣にドラマをやってるのって、考えてみるとギャグではありますよねえ。泣けるんですけどねえ。いつものパターンちゃあパターンなんですけど泣ける。

・んま、個人的には空島編はそろそろ終って欲しいかなと。で、新シリーズに期待と。
(17:15:47)

「焼きたて!!ジャぱん」10巻 橋口たかし(小学館)

・表紙がエッチでいいぞ。あと、カバー見返しの月乃の体操服姿もすばらしくいい。

・あと、なんか書くことあったっけ?

・というくらい、なんだかよくわからない話に突入してます。もはや、パンを題材としたマンガとか、そういうレベルじゃないですね。前巻に引き続き、また、ワケわからん度に加速がつきましたね。ひょっとして、パンのネタがなくなってきたんじゃないかい?

・あと、オマケは「(ユ)ビワ物語」なんてのをやってましたよ。これもわけわからんなあ。

・と、美味いパンを作るマンガとか思わなければおもしろいのかな。でも、それだと、激ヌルのギャグになってないギャグマンガでしかないもんなあ。まあ、女の子がカワイイって武器はあるけどね。
(17:26:47)

2003年/12月/19日
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「あの月の光のように」内田雄駿(河出書房新社)

・あの「ミルク」の作者による初の長編作品ですよ。
・どこまで話を紹介していいのかよくわかりませんが、軽く書くと、主人公は悩んでいるんですよ。なんで悩んでいるのかっていうと、ひきこもりの兄を母親が殺してしまったため死体が押入れに入ってるから。

・で、どうなるどうなると。

・これ、前作のときには思わなかったこと。
・本作、バストショットやアップはいいんですけど、全身が入ったり、ロングにひいたりすると、馬脚が現れまくりです。かなりひどいです。とくに背景と人物の対比がもう失笑ものです。
・いや、そういう狙いがあるならいいんですよ。でも、本作の場合は明らかに逆効果だろう。

・これが背景だけの場合はまだいいんですよ。でも、その背景に人物を立たせると、うそ〜んって感じになるんです。いや、当初はあんまりすぎるのでなんとか解釈をしようと思ってましたけど、これはただ単にひどいだけですね。
・これ、デッサンって問題でもないんですよね。単純に背景とキャラが自然に存在してるのか?ってことであって、そういうことを考えると、あきらかに、紙の上に定規で描かれた背景の上に、描いてあるキャラなんですよ。
・まあ、おれが他人より背景というものにこだわるから余計に目につくのかと思います。でも、背景の上に浮いてるような人物ってのはダメでしょうよ。

・絵の上手下手ってのはそういうことなんですよねえ。別に本作よりも単純な線のマンガなんて山のようにありますよ。でも、それはちゃんと、そのマンガ内に人が立って生活してるってのが読み取れればOKなんですよ。作者の描写力はそこのレベルまで到達してない。

・これで-150点というところからはじめてみましょう。

・ストーリーとしては、よくできてるんですよ。自殺未遂のひきこもりの兄が母親に殺してくれと乞いるから母親が殺す。その母親を殺人犯にして、さらに家族をバラバラにしたくないから、主人公は苦悩して、ある決断を下すんだし。まあ、オビに書いてあるからネタバレもなにもないですね。バラバラにしてアルコール漬けにするんですよ。で、とりあえず、腐ってきつつある死体を長期保存できるようにして、どうやって処理するか考えるわけです。

・よって、各キャラの心理描写ってのは非常に難しいってのはわかります。と、フォローしておいて、はっきりいうとかなりギクシャクした動きですね。

・それでも、ひきこもりの兄の珍奇な行動や、端々のセリフなんかは、「お!」と思うところが少なくなかったです。

「漫画界が震撼する怒涛の過激描写と切ないラストシーン!」

・ただ、このオビのコピーは、JAROに訴えれば余裕で勝てるとは思いました。

・やっぱ絵がなあ。それこそ、真似してるSABE氏に作画してもらえばよかったんじゃないかなあ。エロ描写もショボーンって感じだったし。

・まあ、絵は描いてるうちに上手になると思いますので、がんばって描いて下さい。
・時間に追われて描いたのが敗因なんでしょうかね?
(17:55:40)

「まる秘 女捜査官 凍子」5巻 天沢彰&阿宮美亜(芳文社)

・おー、5巻はおもしろかったよ。最高傑作じゃないかい。
・中国の殺し屋白猿が再び登場。そいでもって、主人公の美人凄腕アナーキー刑事・凍子と愛がありながら別れてなおかつ上司の男が死を遂げる。怒りに狂い殺人マシーンになった凍子と、白猿が、「人間牧場」で大暴れって「人間牧場」編。

・それで謹慎してるようでいて、実は影で大活躍の、ちょっとした謎解きの趣向になってる「監査室の女」編。

・両方絵も原作も、いい意味でゆるくて、なおかつ、職人仕事に徹しておりいいですね。

・実は阿宮美亜氏の絵もロングだと、ちょっと怪しい描写が多数ありますが、彼女の場合、別にいいかって感じになるんですねえ。それはその題材だったり、ゆるさがサイワイしているんですよ。どうでもいいシーンだから、ぞんざいでもいいだろうって割り切りを感じたりね。そのコマだけじっとみると「あれ?」となるんですけど、マンガってのは、そういうのは「捨てコマ」という感じに流されていきますからねえ。

・いや、おもしろかった。
(18:20:18)

2003年/12月/18日
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「軽井沢シンドローム SPROUT」3巻 たがみよしひさ(秋田書店)

・軽シンの続編ですね。3巻目になりましたよ。
・主人公が東京の大学に受かってしまい、東京長野の2元中継状態になってきました。で、相変わらず、耕平ちゃんの子らしく、あちこちでパッパカパッパカやりたおしてますね。
・親友が死んでたそがれてるけど、慕ってくれる後輩がいるから、ラブホでセックスとかね。

・3巻頭で親友が死に、その親友のそっくりなやつ(性格は真逆)が登場して、わりに青い感じで青春してますねえ。ここいらの視点のちがいはやはりたがみ氏自身の変化によるものでしょうねえ。

・で、あとがきによると、たがみ氏もこの間にココロの病になって3ヶ月ほどフリーズしていたみたいですね。
・それがどのように作用してるのかはわかりません。そこいらはプロですからねえ。キャリアも長いですしねえ。

・ただ、3巻まで読んだ限り、前作ほど楽しめてないなあとは思いますね。それはおれの変化なのかもしれませんが。
(18:16:03)

「犬夜叉」33巻 高橋留美子(小学館)

・あー、クライマックスかと思ってたところ。二度と生きては帰って来れない生と死の間のところにいった面々がほぼ全員生きて帰ってくるという茶番をはさみ、のうのうとまだ物語は続いていきますよ。

・もう、しょうがないので、これは終るまでつきあいますが、もう、店に並べることにして(おれの部屋の本棚も限りがあるし)、あと、次の少年サンデーの連載はよほどのことがない限り買わないということで、高橋留美子氏とは距離を置くことにします。つきあいきれんわ。

・しかし、高橋氏が楽しんで描いているって感じなくなったのはいつからだろうなあ? ぶっちゃけ、「らんま1/2」も後半そんな感じがあった。というか、「らんま1/2」のラストってどうかも覚えてないシマツな。去り際に印象がないマンガってのは「商品」としては優秀かもしれないけど、「作品」としてはダメですよね。
(18:24:44)

2003年/12月/15日
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「ミヨリの森」小田ひで次(秋田書店)

・なぜに秋田書店?と思ったけど、星新一のショートショートのコミカライズに参加してた流れなんだろうねえ。

・端的に。「千と千尋の神隠し」の千尋が「となりのトトロ」の森に来た話ですね。森は「もののけ姫」チックでもあります。

・さて、宮崎アニメ嫌いな非国民にも説明をしておきましょう。
・母親が娘と父親を捨てて男に走ります。父親はひとりじゃ育てきれないので少女ミヨリを祖母の田舎に預けます。
・ミヨリは東京の学校ではいじめられてました。だから、空想癖があります。そして、イナカ特有のなれなれしさに辟易して逃げ出した森で、不思議なことが起こります。

・と、まあ、こんな感じですかねえ。
・サマザマな精霊。まあ、つきものですが、森の開発。そして、娘を捨てたはずの母親が登場する。
・こんないいかたアレですが、絵はもう出世作「拡散」のときから、鬼の完成度だったんですが、それに話がやっと追いついた感じ。誤解されると思いますが、「拡散」も次の「クーの世界」もすばらしい作品です。でも、本作がもっとも混ざってます。話のための絵、絵のための話。この融合度が最高です。
・いい話に、いい絵を用意すれば名作になると思われがちですが、大友克洋の絵に、あずまんが大王の話じゃしょうがないじゃないですか。鉄雄が「へーちょ」ですか? 逆もしかりですよ。ちよちゃんが「おおおお」ってカプセル飲んで、レーザー砲を振り回すですか?
・そういった意味での完成度はさらに高まったのですよ。

・鼻の下の溝を描いてるのに美少女。これがまた強まりましたよ。カワイイですよ。結婚記者会見をしてる広末なんかはさんで捨てろです。いや、今Nステでやってるんです。

・ちなみに、おれが普通の辛口だったら、40倍カレーの奥さんも太鼓判でした。しかも、きいてもいないのに自己申告で「なかなかよかったよ」というシマツですよ。
・これは本当、ないですよ。ちなみに前作「クーの世界」だと、「よくわからん」でしたからね。

・すなわちオススメ
(23:06:02)

「冗談新撰組」みなもと太郎(イースト・プレス)

・「風雲児たち」のみなもと太郎氏による歴史マンガ。
・初の連載歴史マンガである、表題作と、「仁義なき忠臣蔵」の2本立て。なんと新撰組が1972年で、忠臣蔵が1999年ですよ。こんなカップリングねえぞ。
・でも、芯がぶれてないんですよね。考えてみれば、「風雲児たち」にしても20年以上連載してるのに1本の作品として違和感なく読めるもんね。
・とか書いた後にちゃぶ台ひっくり返ししますが、絵はすげえ変化してますよね。「歌は世につれ〜」じゃないけど、みなもと氏は非常に時代に沿ってる。それは、風雲児たちなんかみても一目瞭然。なんたって、美少女マンガ誌の表紙を依頼されるくらいですよ。

「冗談新撰組」
・古今の名作を70ページ弱にギューッと圧縮し、なおかつギャグマンガにするという企画の1つだそうで、一応薄くはあるけど、「新撰組血風録/司馬遼太郎」を下敷きにしてるそうです。タイトルどおり血生臭いマンガだからして、逆に無血の新撰組を描こうと。

・ドタバタ度、ハチャハチャ度は非常に高いです。ちなみに、「風雲児たち」サーガには、まだ登場してないんですよね、新撰組。

・それで、恒例のギャグ註(ってもワイド版風雲児たちからのことなんだろうけど)があり、来年のNHK大河ドラマ「新撰組」(まあ、これに合わせたんだろうね)の脚本をやることになっている、三谷幸喜氏との対談がある。

「仁義なき忠臣蔵」
・これがおもしろかったんだわ。「論文形式牽強付会マンガ」と銘打って、論文とマンガの割合が、どれくらいなんだろ?けっこう文字が多いマンガです。

・忠臣蔵ありますよね。なぜ、赤穂浪士は、幕府にたてついてまで、吉良のクビを狙い、そして、それを果たすことができたのか?ということに、「牽強」してるわけです。

・いや、これはすばらしくスジが通ってますね。最初は文字多くてめんどくせーと思ってましたが、そこはそれ、文章の本も出されてるみなもと氏。文章もまたすばらしくおもしろいんですよね。
・そして、「史実」に則った、「画期的」な忠臣蔵が繰り広げられてます。たぶん、前代未聞だと思いますよ。みなもと氏もそういってますし。

・ということで、歴史っておもしろいなあってことをみなもと氏に教わったわたしは、かしこまって、オススメ
(23:58:36)

2003年/12月/13日
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「花田少年史」5巻 一色まこと(講談社)

・5巻の下に番外編とあるように、同タイトルの総集編に収録していた感じですね。

・2編収録しており、読みきり仕様。

・設定だけ覚えてください。そうすれば、5巻だけ買っても読むことができますし。

・舞台は、昭和30年代のイナカ。花田少年は、どこかから落ちて、幽霊がみえるようになる。そして、困ってる幽霊の頼みごとをイヤイヤ聞く。って話ですね。

・アニメにもなりましたし、文庫なんかでも出てますね。

・そして、これ、個人的には一色まこと氏の最高傑作だと思います。涙腺を雑巾がごとくギュウと絞り、涙を出し切る。

・この2編も実はバリエーションとしては、小動物と、父親と、まあ、前にも同系統の話なんだよなあ。なのに、なぜ、こんなに泣けるのか。もう、滝のような汗ならぬ、涙ですよ。

・こんな、泣ける泣けるみたいに書かれると、引くでしょ? でも、奥さんに、ものすごいしつこく「泣ける」といいながら、読ませたら、泣いてましたよ。それくらい強力だからOKなんですよ。

・スルリと入り込み、ぐぐっとつかみ、そして感動。まあ、良作の見本ですよ。反則ですね。

・萌え要素がないんで、猫耳じゃないと感動しない人にはムリですけど。おれも、メイド服じゃないと感動できないタチなんだけど、本作は感動できたね。
オススメ
(15:59:21)

「C(シー)」2巻 長田裕幸(少年画報社)

・完結。そうだろうなあと思ってしまった自分が悲しい。

・元東京のスラム街。麻薬を使って世界を牛耳ろうとする都知事。
・それを討つために、都庁に向かう、ガキんちょ3人。

・そういう話です。

・2巻は、都庁に行ってからのノンストップアクションってことで、本来4巻くらいに薄められそうな話をぎゅうぎゅうに圧縮して大団円。

・いや、まあ、正直ぎゅうぎゅう過ぎてちょっと息苦しさすら覚えるくらいでしたね。

・おれ、本当、買ってる人なんですよ。デビュー時の鳥山明氏くらいの絵の動きと広がりを感じさせるんですけどねえ。アクがあると思う人がいるんでしょうか。
・これ、あれなんですかね、原作付きを1回やるとか? 前も書いたかな。

・で、おもしろかったですよ。きっちり「完成」させてるもんね。
(16:32:20)

「サムライダー」2巻 すぎむらしんいち(講談社)

・うーむ、復刻版の「ヤングマガジン」で連載していた「サムライダー」も買わないとなあ。
・と、その続編の2巻。

・4つの悪グループと、謎のサムライダーとが血で血を洗う、バカアクションマンガですか。
・タランティーノが次に映画化するのはこれじゃないかい?ってなノリですね。ベタで書こうかどうしようか迷いましたが。

・なんだろ?2巻で気がつきましたが、1周して、絵のアクが抜けてきたような。力みが抜けたといってもいいかな。相変わらずエグイし、すごい表現が多いんだけど、アッサリしたところも感じたなあ。これは是とするか、非とするかは、まだわかりませんが、変化ですよね。
(16:55:54)

「ウチの場合は」2巻 森下裕美(毎日新聞社)

・毎日新聞の夕刊に連載してる4コマ。

・森下裕美氏にある「ほのぼの」を煮詰めたかのような世界。しかし、ただ、ほのぼので終っていないところに才能を感じる。業も感じるが。

・食いしん坊の父親、しっかりものの母親と姉、かわいい弟に、ブサイクな飼い犬。この一家がおりなるほのぼの4コマという体裁をとっているが、ところどころにほころびがある。これは、実は、今、一線で活躍してる4コマ作家がたいてい持ってるものだと思う。はっきり書くとそれほどでもないが、「狂気」を根底にしのばせていて、意図的にでも無意識にでも、変な匂いが漂わせることができる作家じゃないと生き残れないのではないか。

・たとえば、本作において、母親の親友にいるモモコさん、主人公らの住んでるマンションの大家夫婦、隣の部屋の生まれたばかりの赤ちゃん、姉の親友の親など。普通に存在するし、いい人であるのだが、ところどころに狂気がにじんでるのを見て取れる。それは単純にみかけの「変」さもあるけど、それだけじゃない「異物」感があるんですよ。ほのぼのマンガの枠に入れると、勝手にはみ出していってくれるような感じ。

・弟の担任がとくにいい味を出していた。童顔で、どうみても小学6年生にしかみえない男。弟がカゼをひいて寝込んでるとき、見舞いと称して、ずっとマンガを読んで笑っているような。行動にも微妙にガキが入ってる。それでいて、絶妙なツラ構え。

・ま、正直ヌル目で、手にとるのにちょっとためらったので、購入時期がずれましたが、買ってよかったです。
(17:59:43)

2003年/12月/8日
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「女神の赤い舌」1巻 ウヒョ助(小学館)

・大道芸人の主人公。半年いっしょに暮らした彼女がヒトコト書置きを残し行方不明。茫然自失の男が写真週刊誌で彼女を発見する。それはタイの奥深くでカルト教団の教祖として祭壇に鎮座ましてる姿だった。そして、彼は彼女に逢いにタイに出かける。
・ところが。

・ってのが1巻ですか。ウヒョ助氏は、「闘う交通違反シリーズ(原作:今井亮一氏)」でおれにはおなじみの人で、これは、1人によるもの。

・彼の大道芸をたくみに駆使してピンチを逃れたり、タイで知り合った泥棒一味の少年とのコンビ、道中で出会う、味方や敵、それぞれ練りこまれてて、こんないい方はアレですが、普通にグングン読んでいける。

・彼女がいる教団もなんだか、ホラーな匂いをぷんぷんさせてますし、2巻以降もヒートアップしていきそうではあります。

・期待してます。物語の展開が早いのも好印象。
(18:10:00)

「鉄腕バーディー」3巻 ゆうきまさみ(小学館)

・おー、オンディーヌってショートカットのクールな美少女登場で、女闘美モノっぽくなりましたねえ。で、目的のボス。それを守る四天王みたいのも登場と、ヒーローものをうまくトレースしている。

・そいでもって、いろいろな話が同時進行で展開しておるってのもいつものパターンでありますね。ここいらの構成のうまさは相変わらずです。こんなにキャラや話を見失いがちなおれがばっちり話しについていってますからね。実際、こういう人がいるから、おれはキャラ見失うのはダメ、話がわからないのはダメと堂々といえるんだ。だって、これより単純な話だけど、キャラを見失ったり、話についていけないマンガはいっぱいあるじゃないか。それらは、つまり「ヘタクソ」ってことじゃん?

・で、どうも、前作「KUNIE」ではまだ隠し味程度でしたけど、本作では積極的に「お色気」を導入していってますね。まあね、ピッタリなスーツの女性が主人公なワケですし、そういった方向を打ち出すのはごく自然な流れですよ。相変わらず、エロくはねえんですけどね。これはもうプチアップルパイ(って、単行本のアンソロジー)のころからそうですよねえ。あのころは、モロのからみシーンとかありましたし、おれは血気盛んな年頃でしたかが、今と反応はいっしょです。
・だから、ゆうき氏の弱点は「萌え」かもしれません。
・個人的に1番萌えたのは、「究極超人あ〜る」だったかもしれない。でも、これは絵の力というより、リアルなシチュエーションだからこそかも。合宿でザコ寝とかの。

・とにかく読もう。最近、あちこちに顔を出すようになってきた、小松左京氏もオビで絶賛さ! うつ病からの復帰ですか。「おしゃれカンケイ」でいってましたよ。
(18:41:09)

「あずみ」31巻 小山ゆう(小学館)

・案外とクライマックスなんでしょうか? かなり大掛かりな戦いがはじまってます。あずみ側のところに宿敵柳生宗炬が襲い掛かるってな図式ですか。

・相変わらず定価にふさわしい仕事をなさってると思います。でも、読んでて思うことはほとんどありませんの。前に職人芸みたいなことを書きましたが、弊害はまさにそれなんですよね。
・安定してるけどおもしろみがないってね。ありがちー。

・あの、頭に仏様の顔つけたやつは、ものすごいアッサリ死にましたね。橋の上から鉄砲隊で襲われても、まったく無傷のあずみさんはすでにこの物語において、無敵を通り越して神の領域になりつつありますしねえ。敵は殺されるために向かっていくという感じ。

・そのかわり、まわりの人はどんどん死んでいく。あずみから関わりを絶とうとしない限り、待ち受けてるのは死ですよ。それは敵味方カンケイなく。彫刻家も忍者も手下みたいな従者も(あずみの親分である)天海もみんな死ぬと思いますよ。

・そういうマンガですよね、もはや。
(20:09:34)

2003年/12月/7日
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「ピューと吹く!ジャガー」6巻 うすた京介(集英社)

・おー、次で「セクシーコマンド外伝 すごいよ!マサルさん」と並ぶねえ。
・でも、安定度はダンチですよ。すべてに渡って、どうだ!っていうくらいの完成度。
・完成度高いってのは、おれ内ではあまりホメ言葉ではないんだけど、この場合はホメ言葉と思っていただきたいのです。

・前巻からのガリプロギタリストトーナメントではじまって、後はガッツリ手堅く、高水準で駆け抜けてましたね。

・新キャラ・ビューティー田村がすばらしい。絵の冴え、ここに極まれりとでもいえそうな、これまでのうすた作品ではありえないキャラだ。こういう普通の背格好で、容姿も普通だけど、変というキャラは相当の才能と技術が必要だと思う。そういうの現実では腐るほどいるんだけど、それをちゃんと表現できてるのがすばらしい。知ってる人はビューティー田村を思い浮かべてみよう。意外と思い浮かばないでしょう?マンガ的なシンボルがないキャラだからね。
・その逆に、あの珍奇な髪型と服なら、ジャガーだってんで、ギタリストトーナメントのジャガーは毎回顔がちがっていた。この力技もすごいですよね。

・で、今回、オマケとして毎回コメントってのにしてました(手抜きっぽいけど、今までで1番いいんじゃないかな)が、その中で1番気に入ってるって、「ハマーvsミント」ネタは、王道のうすたギャグといったオモムキでしたね。

・その真逆なのは、むかし話ネタとJリーガーネタか。これも、手堅かった。

・いいマンガ家になったなあと、保護者みたいな気分になりますよ。
(17:09:15)

「MOONLIGHT MILE」7巻 太田垣康男(小学館)

・宇宙の「プロジェクトX」みたいな話かと思ったら、ずいぶんとSF要素が混ざってきたなあ。月のクレーターの奥にアメリカの秘密基地があったり、意識がシンクロする戦闘ロボットがあったり、もうすごいことになってますよ。

・今回はそれらとカンケイないインターミッション的な話がよかったかな。アラブ系、中国系、そして、娼婦の息子の白人との差別されている素人3人がロケットをあげる話。

・で、いよいよ、資料をみながら描けない領域に入ってきましたね。これまでも想像によるところが大きいでしょうが、上記のようなものは、とりあえず、ねえだろ、まだ。
・その広げた風呂敷をどうするのかってのが、今後の見ものですね。まさか、正義の使者・ゴローがアメリカの月秘密基地(親玉はロストマンってか)を破壊するってことになることもねえだろうしなあ。
(18:55:08)

「警死庁24時」5巻 大和田秀樹(角川書店)

・あー、なるほどねえ。本作は「キン肉マン」なんだなあ。おまえら困った人間を助けるための超人じゃねえのか?年がら年中プロレスごっこに興じやがって。
・ってのが、まんまの警察ギャグマンガですよ。延々、警察官同士で闘ってらあ。
・そいでもって、「キン肉マン」といっしょで「おもしろいからいいじゃん」ということなんですよね。

・ということで、まんま試合(ポリス杯、通称ポ杯)をやってる巻です。今回特長として、エロいシーンがあることですかね。これは案外とこれまでの大和田作品ではなかったなあ。そういわれてみれば、5巻の表紙もハッスル3の杉本さんのセクシーポーズですしね。

・ただ、まんま試合ですよね。おれ、スポーツマンガや格闘マンガをあまり読まないワケってここなのかもしれないなあ。たしかに、試合シーンはおもしろいし燃えるよ。でも、それだからこそ、多用すると、同じような絵柄が延々つづくってことになるんですよね。おれは、基本的に何回も読めるマンガを好むんですよ。よって、「バキ」より「あたしンち」と。そういうチョイスになるんですよね。
・もちろん、その試合試合にいろいろなバリエーションがあるってことはよくわかってるつもりですよ。でも、それは2回も3回も読みたいとはあまり思わない。それこそ、「死」などのインパクトがあるものは別ですけどね。だから、格闘やスポーツはアレですが、アクションは好きなんですね。

・しかし、本作品もどこに向かうのかよくわからないという点では、「MOONLIGHT MILE」に似てますね。
(19:34:05)

2003年/12月/6日
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「ラブ・クラシック」比古地朔弥(太田出版)

・オビのよしながふみって人は有名なんですか?ボブサップより強いんですか?いや、いいんです。聞きたくないです。

・「神様ゆるして」で知りましたよ。近親相姦(兄妹)マンガでした。
・実直な絵と話で正面突破の重い暗い作品でした。

・さて、本作。明治〜昭和初期を舞台とした、「エロティックF」というサブカルオシャレエロマンガに連載されていた短編読み切りですね。当然エロのある風景ですが、比古地氏のこれまでの系統(全部は知りませんが)からすれば、ヌル目です。

・なんだか、世間的に流行ってますね。昭和ノスタルジックみたいの。でも、そういう層に安易に妥協したってのではないような感触。

・汽車(電車ではない)の待ち合わせのベンチでいつも詩集を朗読している少女の反対側に座り耳をそばだてる男子学生。「背中合わせのリルケ」

・押入れの中で、同居している叔父との密会に燃える若妻。「かくれんぼ」

・コンドームの出始めって、魚の腸だったんですね。「薬屋小噺」。おれはこれがベストかな。

・あ、それともこっちかな。病弱な坊ちゃんの下の処理もする「お手伝いさん」(メイドじゃねえぞクソッタレども)の話。「ゆく春の」。

・こんな感じの話ですよ。フェチという言葉すら生まれる前のモヤモヤっとしたことや、そのものズバリを「秘め事」で片付けた時代なんだなあ。

・それでいて、実は、江戸末期〜明治〜昭和初期ってのは、日本人のセックス観が劇的に変化してるんですよね。わりかし開放的だった江戸時代から、西洋の貞操観念みたいのが輸入されてきて、その反動がまた、昭和が過ぎるたびに進んでいったりするんですよね。そういう過程も伺えますねえ。だから、いろいろなセックスの形もあります。これがまたおもしろいなあ。

・もちろん、昭和ノスタルジックみたいなのを懐かしむファッキンにもバッチリですよ。
(16:53:53)

「ダブルフェイス」3巻 細野不二彦(小学館)

・マギー司郎が絶賛ですよ。オビのコメントですが。

こんな人いそうだよね。
それがいるのよね。
ハードでほんわかだよね。

・すばらしい。

・それはともかく。

・マジックで、悪人をこらしめる、仕事人マンガですね。

・ここに出てくる悪人のリアルタイム度と、マジックのネタが、みどころですね。
・悪人は、エステ詐欺(無料体験やってから入会させて大金をぶん取る)、インチキ宗教教祖、ノルマのキツイ消費者金融の支店長がひったくり、ネットオークション詐欺、ロリコン教師とな。
・ここいら、非常に勉強してるなあと、もう、ニュースサイトのオーソリティである当サイト管理人としては思うわけですよ。毎日ZAKZAK読んでるなって。

・マジックのタネのほうは読んでのお楽しみってことにしますが、この悪人のリアル描写ってのはみどころであるんだよ。リアルでねえ。その狡猾な手口とかナリとかも含めて。
・そのパターンじゃ、ロリコン教師ネタがよかったですねえ。のうのうと何年も教師を続けてるんだわな。こういうやつは他言しないようなやつをみつけるのが上手いんだろうなあ。しかも、なんとでも言い逃れできるような手段なんだよなあ。
・で、いそうだよなあああって。ま、本当のところはどうか知らないけどさ。
・ちなみに、これの解決法も鮮やかだった。警察につき出すじゃなく、うまく解決したんだよ。なぜかっていうと、オオヤケにすると、少女をかえって傷つけるからねえ。

・ということで、ロリコンは読みましょう。参考にするもよし、「こえ〜」と思ったり。
(17:31:41)

「瀬戸の花嫁」3巻 木村太彦(スクウエアエニックス)

・任侠人魚コメディも3巻目ですよ。どこまで真剣に設定を練ったのだろうか? 今書いて任侠と人魚がシャレになっていることに気がついたぼくです。

・瀬戸の海の底でヤクザやってる人魚一家の一人娘と結婚することになったってラブコメっすよ。

・今回、アイドル人魚が登場して、埼玉の主人公の家(ベリー一般家庭)に居候することになり、ますますシチュエーションはよくなってきました。
・白眉はアイドル人魚と任侠人魚の歌対決ですね。ドタバタ学園コメディここに極まれるってな感じでしたね。

・開始当初は、オタクネタを控えてたために、ギクシャクしていたのも、ずいぶんとこなれてきて、かなり楽しめましたよ。

・これからのギャグ系のマンガ家はオタクネタとどうつきあうかが、案外とチェックポイントかもしれませんよね。木村氏は「余の名はズシオ」というオタクギャグからはじまって、今回で、脱却を図ってる感じがありますが、3巻くらいで、9割がた抜けた感じがします。で、バランス的には、今が一番いいんじゃないかと思ったりします。
・サジ加減はこの感じで、もっと磨いていく方針がいいですねえ。あと、ムヤミにキャラを増やすのは控えようぜ!2巻で増えたキャラもまわしきれてないし。
(18:05:00)

「なななな」2巻 原田将太郎(メディアワークス)

・1巻はけっこうけなした記憶があるなあ。とにかく、セリフが説明口調で死ぬほどシラけた記憶があったんですよ。
・美女警官ロボットコメディというところです。2巻ではコメディにかなりウエイトを置いたために普通にエロコメとして楽しめるクオリティになってました。

・そうみると、さまざまなタイプも常駐してる。ロリからお姉さままでに、加えて、大阪弁でチャイナ服(これってサクラ大戦の影響でしょうかね。もう大阪弁とチャイナはセットになってますね)に、高飛車な女王様タイプも加わり、あくまでビーチク禁止でありながらも、エロとコメがほどよい湯加減の作品に仕上がってますね。
・ま、冷静に考えると、登場人物(とくに女性)の90%がロボット(マンガ内表現じゃレギオン)ってことになってるのは、かなり倒錯した世界ではありますね。

・えーと、警察が舞台なのに、事件めいたものがまったくないのはどうしてでしょう? 旅行や体育祭みたいのにものすごい力を入れてます。まあ、そこいらの思い切りのよさも、そんなイヤじゃありませんね。

・これでいいのだ。と、バカボンのパパみたいなことをいいたくなりますね。ユーリのパイオツねぶりてええ!でいいんじゃないかと。
(18:53:28)

「イリヤッド 入矢堂見聞録」4巻 東周斎雅楽&魚戸おさむ(小学館)

・幻の大陸アトランティスをみつける=究極の料理ってノリの考古学的「美味しんぼ」なマンガです。

・4巻では、長崎編が白眉でしたね。長崎ってロマンティックなんだなあ。ホメロスの叙事詩「オデュッセイヤ」と長崎に伝わる百合若伝説との相似点を追いながら、サマザマなドラマが織り成される。「オデュッセイヤ」は英語では「ユリシーズ」ってことで、シャレかよ!であるんですけどね。
・途中登場する長崎の少女がいい感じ。バリバリ長崎弁でしてね。萌えましたよ。


あ、あたし…/おかあさんみたいな
大人になりたくねえっち言いよったけど…

おかあさんみたいな
大人になれたら、
上出来や!


・なーんてね。カワイイ響きだなあ。大阪弁ともちょっとちがった感じでね。

・話全体としては、次の巻で大きく動きそうですね。
(19:17:41)

「質草物語 壱六のシチ!」やまざきみき&ひきの真二(日本文芸社)

・おれは作画のひきの真二氏のファンだから買いました。

・質屋さんのハートウォーミングストーリーでした。当初。
・質草が繰り広げるサマザマなドラマをほのぼのと描く感じでしたが、途中から、人気が伴わなかったのか、ライバル店を登場させて、なおかつ打ち切り感が強いまま終了といったアンバイですよ。

・養子として入った若ダンナ。妻はスチュワーデスで、普段は質屋人生50年とかのクソババアと2人。でも、クソババアはよく遊びにいって、1人で勝手なことをして問題になったりとかそういうパターン。

・で、質屋といえば、切っても切れないのが、ニセモノ問題ですね。ブランドバッグやら時計やら、いろいろとありますですよ。
・あとは、敵が、いわゆるリサイクルショップの大手みたいな感じで、質草として預かるのではなくて、買い取って、その場で売るって手法のところ。そこでのニセモノ勝負とか、いわゆる定番パターンも用意されてますね。この手のウンチク付きヒューマンドラマもかなり固定パターンってのができましたよね。

・個人的に感銘を受けたのは、ひきの真二氏の絵ですね。
・とくに女性描写がすごいね。たとえば、無職でアル中でDVのダンナに虐げられても耐え忍んでる女性。日々の生活の疲れが顔に出てやつれてるけど、実は美人。アーパーで欲しいものがガマンできずに親の着物を質屋に持ってくる女子大生。そしてその親。

・いやあ、なんかいいんですよねえ、ひきの氏の女性は。萌えとかそういう次元の絵じゃないんですが、人懐こい感じで。そういや、その昔学習マンガ的なのも数多く描いておられましたしね。今はかなり頭身が増え、リアルな劇画タッチでありながらも、どこかそのころの面影を残しておられる感じがいいんですよね。

・ま、そういうことなんで、買えとか読めとかそういうんではないんで。
・おれはひきの真二が好きだなあということをいいたかったんですよ。
(19:53:01)

2003年/12月/2日
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「翼はいつまでも」2巻 川上健一&倉田よしみ(双葉社)

・これはこれで完結ってことなんですかね?

・1巻の弱小野球部奮闘マンガから一転してラブコメっすよ。

・ビートルズが登場した時代、イナカの野球部の一員である主人公。主力メンバーが相撲部に引き抜かれたために、それを取り戻しにいいったけど、絶大な権力と暴力を手にした先生にボコボコにされる。

・で、屈折。

・それはそれとして、中学生の主人公が今度は女に走るわけですよ。湖に行ってヤリマン女をひっかけて童貞とオサラバしようと、単身、十和田湖に向かうのです。旅先の女は開放的ですぐにやらしてくれるからだそうです。

・そして、甘酸っぱいことが起こるわけなんですね。

・これが甘酢っぱいんだあ。清廉とした気持になるというかねえ。このさわやかさはいいですよ。

・たぶん、ここを御読みの方の多くがノーマークでしょう。本作のさわやかさはかなり純度が高いです。んー正直、オッサンのほうがクるかもしれないけど、ラストの1枚絵は、男にとって、ある点での最高の幸せを描いてると思いますよ。こういう場面が過去にあった人は真剣にうらやましいと思いますし、実は探せばそれぞれそういうシーンを持ってるような気がします。でも、思い出せない人も多いでしょう。おれも思い出せない。そういった意味じゃ幻のような1枚絵です。
・そんなこんなで感極まってしまいました。いや、ベタだってのはわかってるんですよ。絵もたいしたことないです。丁寧ですが、「萌え」とかそういうのとは最も遠いところにあるものです。

・でもね。

・この続きはあるんだろうか? 連載誌(アクション)はもうないんですものねえ。未完のような、完結のような。

まあ、感極まったことだし、オススメ
(22:16:01)

「のらみみ」1巻 原一雄(小学館)

・連載している「IKKI」ってのは創刊号からしばらく買っていた。でも、読まなくなり、ほどなく、止めるかって気分になった最期のほうに原一雄氏が新人として読み切りがボツボツ載りはじめた。これが段々よくなっていったんだ。最初のころは不条理ギャグとショートコミックの中間のような、奇妙な笑い系のよくあるパターンかなと思っていたんだけど、ぐんぐん、独自のカラーみたいのがでてきて、「こりゃあ、チェックだよなあ」と思ってたんです。
・で、コミックが出たから買った。そのときまで覚えていたってことは、やっぱりおもしろかったからですよ。

・本作は長編。「居候キャラ」」がいる世界を描いてる。本作ではあいまいにしてましたけど、これってほとんど藤子不二雄が開拓して、発展させた分野ですね。一般家庭に居候しているユカイなキャラ。「ドラえもん」が有名で1発で説明ができますね。
・そういう「キャラ」を斡旋する会社に焦点を当ててるという話です。毎回さまざまなキャラや問題が起こり、斡旋所の面々や貰い手がなくて、斡旋所に居候している「のらみみ」が解決したりするというほのぼのファンタジーということですよ。

「おもしろい」

・最初に3話くらい読んでそう思いました。そして、最期まで読んだ感想は、

「よくネタつづくなあ」

・と。これがキャラのネタ出しも大変でしょうし、ストーリーのほうも大変でしょう。上記の設定を提示されます。ネタを作れといわれます。さて、いくつ出てきます?

・正直後半息切れ気味なところもありますが、ものすごい毎回キッチリとほのぼの&感動を提示してくれます。キャラたちのかわいくてとぼけた味わいや、悲哀など、みどころも豊富です。

・システムとして、居候キャラは小学生までで、中学生になったら、キャラとは別れなければならないってのがサマザマなドラマを生み出してるんですよ。そのために斡旋所があるってことにもなるし(次の居候先を探さなければならないから)
・たとえば、23歳になってもキャラ離れができないとかね。

・個人的にベストは「はじめての代キャラ」って話かな。キレイにまとまってましたし。

・本作、ストライクゾーンは非常に広いですよ。「なんだ、キワモノか」と思わず手にとってみてください。自分でも意外なほどのおもしろさに驚くと思います。
・なぜなら、たいていの人は「居候キャラ」の登場するマンガを読んだりみたりして育ってるから。

・2巻以降のネタのつづき具合が気になります。

オススメ
(22:51:04)

「愛…しりそめし頃に…」6巻 藤子不二雄A(小学館)

・さ、その後の「まんが道」も6巻目です。
・赤塚不二夫と石森章太郎がトキワ荘から、最初のブレイク組になります。赤塚はそれまでイヤイヤ描いていた少女マンガじゃなくて、ギャグを描き、なおかつ認められて有頂天です。
・そして、藤子不二雄のプロトタイプといえる、どこでもいる少年が不思議な力を借りて強くなるという原型が登場し、藤子不二雄も安定した時期にいます。

・で、失恋もあると。

・つまらないわけがありません。
・おれが気がかりなのは、どこまで描くのだろう?ってことですね。
・この後、けっこう、グジュグジュしたことが起こるんですよね。文章のほうの自伝(二人で少年漫画ばかり描いてきた )には、書いてある、プロダクションを作る話とか、アニメスタジオを作る話。テラさんこと寺田ヒロオ氏の突然のリタイアとか。そういう光と影。さらに、そこですら書いてない、藤子不二雄分裂の真相とか。

・ま、寿命が持たないとは思いますけどね。

・そう思うと、終わりどころが問題かなあと。タイトルどおり、「愛」を成就したところまでかしら?

・あと、つのだじろう氏と藤子不二雄両氏でいった旅行は、ものすごいマンガっぽい話だけどマジだったのかしら?サルのかくし温泉につかってたら、サルの大群に襲われるって話。

・しかし、ぶっ殺されるかもしれないけど、藤子A氏のペンタッチはまた一段と味わい深くなってきた気がしますね。脂が乗ってる感じ。
(23:16:51)

「ワイド版 風雲児たち」19巻 みなもと太郎(リイド社)

・去年から今年にかけて、本当に楽しませていただいた、本作(復刻ね)も残すところあと1巻になってしまいましたよ。
・歴史大河ギャグ。これは掛け値なしに本作のことを端的に表わしてますね。
・関が原の合戦からはじまり、江戸時代を駆け抜けたわけです。ラス前ということで、ペリー来日間近になってますよ。
・勝海舟、坂本龍馬、佐久間象山、西郷隆盛、村田蔵六、吉田松陰など、村田以外は、一発で変換してくれるような有名人が大挙して登場しますよ。

・前半は少年坂本龍馬の青春。後半は高野長英の逃亡劇に焦点が合ってる。逃げながら、歴史に残る偉業を成し遂げてるあたり、すごいことです。実行力の伴ったビッグマウスですね。で、ビッグマウスといえば、佐久間象山もすごいね。

・そして、あと1巻でまとまるのか?という素朴な疑問も浮かんだり。まあ、その後、「幕末編」や坂本龍馬に焦点を当てた「雲竜奔馬」なんてやってるからいいんですか。

・これは、しばらくは絶版にしないで欲しいなあ。いつか、ふっと読みたくなる人がいるだろうし、そう思った人の多くに満足してもらえるものだと思うしね。
・でも、案外と書店にはなくなってるね。あっても数巻とかね。一時期はローソンにもあったのにねえ。
(23:39:13)

2003年/12月/1日
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「デッド・トリック」上下巻 華倫変(講談社)

・故カリンペン氏の唯一の長編だそうです。

・んーと、「ケイゾク」とか? ああいうノリが濃厚な猟奇殺人モノですね。その謎を解き明かす、あまりやる気のない警察とかの面々。

・上下巻合わせてエピソードは3本。でも、1本は番外編的なので、実質2本。上巻1本、下巻2本となっております。わかりやすい。

・これを書くにあたり、はじめてサブタイトルがあることに気がつきました「七本署稀覯犯罪図鑑」

・高校で起こる連続殺人事件。被害者はすべて女性で、子宮を抜き取られている。そして、あちこちに点在する血文字の魔方陣が書かれた紙。これがエピソード1「連続子宮強奪殺人事件」

・徳子さんが酔っぱらって起きたら、凶器の包丁を握っていたエピソード2「徳子の犯罪」

・それを科学捜査研究所の徳子さんと、若ハゲ刑事の一森くんと、変態だけどキレモノの畠山警部らがユルユルと解決していくのですね。

・あー、もっと、元も子もない説明しちゃおうかなあ。キャラやセリフまわしはうすた京介氏の影響を感じますね。うすた氏ほど、ボケとツッコミを確立してませんけど。そのキャラを猟奇殺人の現場に放り込むといったアンバイですかね。
・一応、読者視点役の一森くん以外はキレモノだからして、ダラダラしてそうで、物語はちゃんと核心に向かうし、あくまで、これはスパイス的な役割で、意外なほどキチンとミステリーしてるんですよ。
・本書内のエピソード3「一森くんの挑戦状」によると、ミステリーの区分でいえば、「新本格」ってやつなんでしょうかね? 「本格ミステリーなんてバカらしい」とか書いてますけど。

・このキャラの変なやりとりはいらんスパイスだと思ったなあ。讃岐うどんにタバスコかけるような感じ。意外と美味いのか?と思うでしょ?すげえマズイよ。そういった感じのチグハグさが残る。

・でも、ラストの犯人への追い込みシーンとかはすごいですね。重箱の隅を針でチクチクつつくようなえもいわれぬ迫力がある。それはその手のミステリーを読んでないからかもしれないけど。

・そして、「カリクラ」風味も随所にあるわけです。と、書きながら、もう「カリクラ」とか忘れてますけどね。
・ちなみに、氏のサイトによると、2週目で打ち切りを迎えた作品だそうですよ。で、本書の解説によると、本人がやりたがっていた作品だそうですよ。新境地を目指したけどアレだったのか?って。

・各巻1143円(税別)。ちと高いなとは思いましたよ。
(18:11:48)

「エロ魂!」1巻 ダーティ・松本(オークラ出版)

・サブタイトル「私説エロマンガ・エロ劇画激闘史」。あと、オビの「これぞ裏まんが道。」ってのが決め手だったのです。

・さて、古い人なんですよ。だから、おれみたいなそっち方面をつまみ食い感覚でしかつきあってないものでも知ってる有名な人です。ただ、おれとは合わない人だなあとはずっと思っていたんですよね。そういった点でも1回買っておくのもいいかと思ってたんですよ。

・時代は1970年初頭。若き血潮に燃えてる青年・松本ほかの激闘を描いてるわけですね。
・実名出しまくり。それは、マンガ家にとどまらず、出版社名、編集者名におおいても。仮名とかはわからんけどさ。
・で、担当を日本刀でぶっ刺したり、出版社を破壊したりしてます。異様な迫力があります。

・また、全編CG仕上げになってますね。それがまたいろいろ意味の効果を生み出してます。個人意見だと「カオス」と「カロリー」を強力に感じました。押しつぶされそうになる将来の不安を押しつぶしながら(実際、たぶん、実名だろうけど、食えなくて死んだ人が登場する)、それでもペンを走らせる状態は、「混沌」であり「高カロリー」であるなあと。そういうことはイヤってほどわかりますよ。

・ただ、まだ、「はじまってない」感が強い1巻なんですね。本当におもしろくなりそうなのは、ダーティ松本氏が売れてきてからだと思うのですよ。そして、盟友(かどうかわからんですが)中島史雄氏他も活躍しだす2巻から本番という気がします。

・期待してます。
(18:58:25)

「喜喜」宇仁田ゆみ(白泉社)

・ヤングアニマルで描いた読み切りを集めた作品集。

・ラブストーリー集ですね。「ウサギ」という作品のセルフ解説をみてはじめて気づきましたが、みんなハッピーエンドなんですねええ。そういわれてみると、そうだ。で、「ウサギ」だけ唯一、巨乳の女に浮気して、同棲相手に「許してもらえるだろう」と踏んで告白したらフられるって話。

・登場する女性はいそうでいない。でも、「リアリティ」を内包した、デフォルメの少ない女性キャラが多いですね。
・たとえば、猫耳のメイドというのと現実の女性。その中点から、かすかに、現実よりに針を動かした感じ。かなり、それの調整にココロを砕いておられる感じがする。「私が女性というものを教えてあげる」なんて大上段にかまえたものはないけど、なんとなく掲載誌を考えると、「現実の女性もいいもんですよ」という作者のメッセージを感じ取ったりして。
・考えすぎか。

・だからか、逆に、「グラススパイダー」という3話の作品に登場する、ややマンガ寄りの女性に人気が集まってしまうという皮肉な現象も起こる。彼女の「スゴイ調節」は本当にすごかったなあ。あんなことやられたら男はイチコロだろうなあ。

・「たりないひと」に登場する女性。酔っぱらって初対面の男の部屋に転がり込む。着替えて本格的に寝ようとして、ブラジャーを外しかけて、また、着け直す。

・ウソ胸を隠したまま付き合ってる女性の苦悩「ひみつのこと」

・実習生と女子高生の「むく」

・などね。

・描き下ろしの「グラススパイダー」「たりないひと」の後日談もすごくいいですね。

・ま、どうなんでしょ? よくできてますけど、「スキマスキ」や「マニマニ」などの名作を読んだ今となったら、「ちょっと薄味?」って気もします。
・絵柄からして、ちょっと軽い感じがする宇仁田ゆみ作品なんですけど、それよりさらに意図的にさらっとさせている感じがしてね。
(19:46:13)


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