→トップへ/→コミックインデックスへ

ポトチャリポラパ/コミック/2005年
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2005年/2月
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2005年/2月/28日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「魔女」2巻 五十嵐大介(小学館)

・まいったね。またおもしろくなった2巻目です。魔女がいる連作読みきり。
・今回は2編「PETRA GENITARIX」と「うたぬすびと」にオマケ1編。

・宇宙飛行士がつれて帰った「石」を戻す話が「PETRA GENITARIX」
・女子高生が島でリセットして生き返るけど、掟をやぶってしまうのが「うたぬすびと」

・どちらも神話とか伝説っぽい話がベースにありそうな。とくに、「PETRA〜」は、諸星大二郎氏の「週刊少年ジャンプ」でのデビュー作である「生物都市」を彷彿とさせる話です。

・そいでもって、この根底に流れる、正直胡散臭いとおれみたいに心のねじくれた男が思うくらいの「自然サイコー!」節をすべての点で「これでどうだ」と押さえつける、やや強姦チックな強引さすら感じられます。そこにはすごい「力」があるわけですよ。この力に任せるのは快感でありますよ。被レイプ願望っての? どうして、エロ方面に走るのか? これはポトチャリポラパ特有のテレ隠しということでファイナルアンサーですよ。

・好き嫌いはあるでしょう。おれもどっちかというと嫌いなほうかもしれない。でも、だれもが「すごい」と思う作品です。

・個人的にはこの才能をムダ遣いするような作品を描いてほしいなあ。魔女ってことで、「おジャ魔女」のエロパロとか。

オススメ
(22:36:23)amazon

「魁!!クロマティ高校」12巻 野中英次(講談社)

・もう10年以上描いてるんですって。
・12巻は「不死鳥編」ですって。そいでもってiモードのクロ高サイトで公募で決めたんです。

・12巻は前田の母オチが前半。後半はなぜか相撲部マンガとして延々とスポ根にならずにつづくという相変わらずいい意味でも悪い意味でも力が抜けた垂れ流し風にみえて実は意表をついて本当に垂れ流してそうな。

・でも、アレですよね。あのー、「ガキのつかいやあらへんで!」のオープニング企画で、松本人志氏がギネス記録に挑戦するってネタがありますが、松本は完全に脱力してタコのようにぐでえとしてる中、浜田やココリコやその他が一生懸命、記録を越えるために四苦八苦するんです。
・松本氏によれば、「あれは完全に脱力してないとギャグにならないから、実はとてつもなく怖い」そうです。

・まー、野中氏もいっしょじゃないかなあと。とくに本作は、マーケット調査を念入りにして、そのデータから必要なマンガを描かせるという方針(今はどうか知らんけど)の「週刊少年マガジン」において、まったく人気のなかった(らしい。解説に書いてありました)相撲部部長が毎週登場する相撲編を延々と連載する度胸が、実は本作の1番のギャグじゃないかなと思ったりします。また、それに絶対の自信があるわけでもないのが微妙な匂いを漂わせますよ。

・12巻はフレディがいなかったのと林田があまり活躍しないのが残念でした。ぼくはあと藤本も好きです。
(22:51:56)amazon

「ミララとラパララ」くら★りっさ(宙出版)

・山間の村にバアちゃんと住んでるミララが巨人族のラパララと探検家の両親に会いに冒険に出かける「ほのぼの冒険ストーリー」ですね。

・ジュヴナイルなわけですよ。まあ、たとえるなら、「となりのトトロ」のトトロとさつきが、「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」のように旅をするって感じですか。

・元気な絵と話で、健全に、明るくのんきに展開していきますね。

・ただ、これは、子どもが好きなものが好きな大人が好きそうな感じですよ。ちょっとややこしい表現ですが、たとえば、お寺とか、温泉地のオミヤゲ売り場にあるオモチャですよ。木でできた空気鉄砲とか、コマとか、ビー玉やおはじきの詰め合わせとか。
・まあ、子どもはありがとうとはいいますが、「本当はポケモンがよかった」くらいに思うと。
・本作はそういった位置付けですよ。「ONE PEACE」や「鋼の錬金術師」のほうがいいわけです。ガキほど「ガキっぽい」ってことに敏感で反感を持ってますからね。

・逆にいうと本作をよろこんで読むことができる人ほど大人なのかもしれないなあと。ミララの快活さに目を細めてみる感じ? おれなんかにゃあもはや孫ですよ。

・ということで、ノホホンと余裕を持って眺めるマンガでしょうかね。
(23:25:55)amazonはナシ

2005年/2月/27日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ののちゃん 全集」4巻 いしいひさいち(徳間書店)

・おなじみ朝日新聞で連載している大河ほのぼの4コマ。

・この全集、819円+税で、350p弱、1pに2本の4コマがギッシリ650本+アルファ。
・参考までに「Amazon.co.jp: 本: 1年777組 2 (2)」は何ページかわかりませんが860円です。同じ値段かな。どう考えても650本はないです。

・ということで、とりあえず、この全集は、量では随一です。読んでも読んでも終りませんでした。
・そして、それがくだらなかったらゲッソリですが、みんながみんなおもしろいんだわな。つまり、かなり質もともなっている。

・つまり、日本一の全集ですよ。4コママンガを読みたいのならこれです。トイレにおいたり、枕もとにおいて、少しづつ読まれることをオススメしておきますよ。

・と、まあ、いつものいしいひさいち賛歌はここまでにしておいて。

・4巻にはある疑惑があります。
・どうも、いしいひさいち氏は、手塚治虫氏と同じように、いつまでも現役で最前線を全速力で駆け抜けたいって欲があるみたいですねえ。
・こと、4コマという点においては、手塚氏のそれを凌駕するイキオイで、ありとあらゆるジャンルを極めていますし、新しいジャンルにも挑戦し、それも極めていってます。

・そして、4巻ではどうも「萌え4コマ」を極めようとされてるフシがあるんですよね。
・主人公の、ののちゃんに同級生の三宅さん。担任の藤原先生なんかはアニメ映画にも登場されてますが、4巻では、さらに小学校の先生にタカダ先生という落ち着きのない先生、のぼるのクラスの委員長、小学校入学前のサッちゃん。そして、のぼるのクラスに転校してきた月子と。
・そう、月子が登場する巻です。たぶん、いわゆる大新聞と呼ばれるような新聞4コマで、はじめてとはいいませんが、10本とないであろうキスシーン(たぶん、いしいひさいち氏にとってもはじめてじゃないか?)を演じてますよ。
・ミステリアスな女性でね。いつの間にか登場して、プツンと登場しなくなった。さすがに朝日新聞にはダメだったのかしらね?
・あと、なにげなくつげ義春パロディを挿入したりしてます。

・そう、新聞4コマにおいてここまでアナーキーに展開してるのは類がないだろうよ。なんたって、ライバル新聞の社主を「ワンマンマン」として登場させてるんだもんなあ。

「ほのぼの」を前においておいて、あとやりたい放題してる感じ。「なんだこれは?」という奥の深さというか、ふと、背筋が寒くなってくるほどのヤバさがあります。

・とはいえ、長い時間をかけてやっておられることで、それにもムラがありますけどね。いかにもファミリー4コマってヌルいのもあるし、ちょっと苦しいなってのもあります。でも、それでも、そこいらの凡百のモノとは次元がちがう感じ?

・ほのぼのとしながら、世相を斬るってのは、基本として、ほのぼのでシュール、ほのぼので萌え、ほのぼので爆笑、ほのぼので大阪、ほのぼのでオカルトなどなど、「とりあえずほのぼのならなんでもいいんかよ?」と疑問すら浮かびそうな。

・と、月子さんもミステリアスガールでいいんですけど、やっぱり藤原先生ですよね。テキトーにどんどん磨きがかかってきます。

・あ、そういや、上記で手塚氏をひきあいに出してましたが、もうひとつ共通点としてスターシステムを採用してるところがありまして、別のマンガでは、藤原先生は、教師を辞めて、ミステリー作家のほうの先生になられてるんですよね。ちゃんとその伏線も「ののちゃん」で描いてるのがすごいところです。

・上記の女性もそうですけど、各キャラが立ってるんですよねえ。

・いやあ、タンノウしましたが、未読のマンガがたまってるときはかなり障害になることがわかりました。本当、コストパフォーマンスでは日本一のマンガですよ。再読性も高いし。
(22:55:39)amazon

2005年/2月/21日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ジェノサイド」1巻 中島かずき&小林拓己(双葉社)

・正直に書くと、エロかと思っていました。下のリンク先の画像をみていただけるとおれがそう思うわけもわかるでしょう。不可抗力です。あと、おれはくノ一がエロエロ忍法(淫法ってか)を使うマンガが好きなのです。
・くわえて、原作付きだと、話の体裁も整ってるし、こりゃあええわいとなるんかなあと期待しました。

・それは裏切られました。

・150年前に滅んだはずの里見八犬士と、真田十勇士とが、豊臣家の千姫をめぐって争うと。まあ、オビにある「ネオ忍法帖」のまんまですね。山田風太郎チックです。というか、まんまです。でも、パクリじゃなくてオマージュ。かなりリスペクトです。

・えーと、ヤングにわかりやすく説明すると「バジリスク/せがわまさき」ってあったじゃん? ああいうのさ。真田と里見がお互いに珍奇な忍法を繰り出して血で血を流し合うわけですよ。

・この珍奇具合もなかなか山田風太郎のラインでありながら、ソンブレロ着て、銃弾をけさがけにして2丁拳銃のマカロニウエスタンな少女がいたりねえ、氷の竜を使ったり、自分の血を浴びせると強烈な解毒作用な気がある女子とかねえ。
・あ、エロはないっていったけど、けっこうオッパイはあちこちに転がってますよ。陰毛もそよいでたり。ただ、夜の忍法的なのはないですけどね。

・ということで、丁々発止とテンポよし。土台がガッシリしてるところからの荒唐無稽。作画もバッチリ魅力的。

・どうしても似てるから、比較してしまいますが、山田風太郎氏のもってる残虐性とかが薄いですね。あまり人が死んでいかないしなあ。忍者は非道で孤独に死んでいくみたいなシビアさがないかな。まあ、そればかりあってもしょうがないけど。

・いや、だから、「バジリスク」好きな人、あと、原作の人は、おれは全然知らないけど、「劇団☆新感線」の人だから、そういうの好きな人にもアッピールするかなあ。

・あと、普通にチャンチャンバラバラとかアクションが見たい人にもバッチリっすよ。雑誌で読んでる人は「アホか!」ってツッコミたくなるおまけ4コマもいい感じ。
・2巻おもしろかったらオススメしますよ。
(22:28:37)amazon

2005年/2月/18日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「こっこさん」こうの史代(宙出版)

「夕凪の街桜の国」で一躍有名になられたこうの史代氏が1999年から2年間連載されていたニワトリマンガです。
・小学生のやよいがひょんなことでニワトリについてこられてうやむやのうちにニワトリを飼うことになり奮闘する1回8pのほのぼのショートコミックです。

・同人誌でかなり活躍されてる方で、そっちのほうはあまり知らないんですが、商業ベースで発売されてる分だと「ぴっぴら帳」というインコの4コマが2冊、で、このニワトリマンガ。それに「夕凪の街〜」ってことで、つまり、鳥マンガが大半の方ですよ。だから、「夕凪の街〜」の方にはこっちが本線だってことを知る必要があります。

・たとえば、「銭っ子」だけ読んで、水島新司氏を語るように、「夕凪の街 桜の国」だけでこうの史代氏について知ったふうな口をきくセニョーラセニョーレはゴゥトゥヘルってことさ。ちなみに、「夕凪の街」は映画化決定だけどさ。

・では、「こっこさん」だ。

・よく、マンガを描くセオリーとして、1ページに1コマは全身を収めたコマを挿入することってのがありますよ。もはや、過去の遺物的な考えかと思います。ただ、ぶっちゃけ、絵の上手下手をみるには1番手っ取り早いポイントです。
・全身を入れて背景も描き込む。それはモノや人の大小をきちんと把握して、絵で表現できるってことで、正直なところ、マンガ家全体でこれができない人のほうが多いでしょう。ええ、それはいわゆるプロと呼ばれ、単行本も沢山出してる方でもそうです。というか、本作のオビにコメントを寄せておられる、たかの宗美氏はどうでしょう?読んでないからわからないけど、できてなかったような気がします。

・そう、絵の上手下手はマンガのおもしろさにはあまり関係ないです。ただし、強烈な武器にはなります。こうの氏の1番の武器はそれです。
・ただ、1ページの1/3のスペースに、家族4人がちゃぶ台を囲むって絵を全身で描く。普通は描けないし、描かない。なぜなら、それだけ小さくなるからね。狭くなるからね。
・でも、そのおかげで、1回8pとは思えない芳醇な世界が広がってるし、1pぶち抜きが、ことのほか鮮烈に映るわけですよ。

・夏休みの自由研究に植物採集をする。やよいさんはこっこさんを連れて植物を採集して回ります。そして、ある土手で、小さいころ見た黄色の花が咲き乱れるところにいき思い出します。そこに1pぶち抜きでドーンですよ。
・トンボの幼虫のヤゴがいよいよ羽化するために水面に顔を出してるが、あいにく雨が降りそう。羽化の最中に雨に当たるとヤゴは死んでしまうそうです。生き物係のやよいさんはそれで家に持っていく羽目になります。で、翌朝部屋いっぱいに羽化したトンボが飛んでます。それを1pでドーン。

・圧倒されて見惚れる感じ。とてもいいなあと思います。絵の持つ説得力ですね。そう、絵で表現できるところは極力絵で表現するってのも、こうの史代氏の特徴ですよね。

・んー、ひとことでいうと古いタイプのマンガなんですね。だから、人によってはせせこましいちまちましたマンガに映るかもしれません。話もダイナミックとは縁遠い、小学生の半径100mの物語ですし。全体的には地味です。

・だけど、とてもおもしろいし、何度も何度もふと手にとって読み返したくなるマンガです。「夕凪の街〜」にはない軽さがありますし、こういう地に足がついてるけど軽い感じの絵はなにげにワン&オンリーかと思われますよ。

オススメ
(18:02:40)amazon

「けいちゃんに一本!」高田ミレイ(宙出版)

・最近、宙出版とは縁があるなあ。「おおぞらしゅっぱん」って読むのですよ。

・双葉社の「まんがタウン」で連載していた諸作品を集めた4コマ作品集です。作者は村上もとか氏のアシスタントですね。巻末お祝いメッセージに村上もとか氏と、同じアシスタント仲間の金平守人氏があります。

・剣道部の元気女子のけいちゃんを描いた剣道4コマ「けいちゃんに一本」
・教師の父娘(学校はちがう)のファミリー4コマ「パパがいなくちゃ!」
・バーを舞台としたバーテンダー4コマ「ぴかぴかカクテル」

・設定はひねってますが、4コマの内容自体にはひねりがなく、絵はイマドキめずらしいくらい萌えがないです。ただ、全体的にはとても丁寧な仕上がりにはなってます。基礎がしっかりできている人が技術を投入して描いた感じ

・とくに未発表で非キャラものの4コマ作品集「一寸寄道」なんてのは、ときわ荘の人が少年時代に投稿していたもの?って感じですよ。4コママンガの原点をみる感じです。

・けいちゃんがゴハンを食べてると、ハエが飛んでいる。それをハシで捕まえる。「すご〜い宮本武蔵みた〜い」といわれてよろこぶけいちゃん。でも、そのままそのハシでゴハンを食べてるのをつっこまれて「ありゃ?」
・ビニール傘だとすぐに失くすから、スプレーで彩色してキレイな柄にする。「その労力がもったいないよ」
・警察に追われて逃げる犯人。露店の風船売り場のヘリウムを吸って浮かんで逃げる。

・うーむ、THE古い。

・ただ、逆にいまや貴重ですよ。ここまで時代性が欠如したものは。小学生からお年寄りまでなんの問題もなく読むことができます。
・おもしろいおもしろくないは別としてな。

・実は、表紙から受ける印象のままの少女が主人公のはつらつほのぼの剣道コメディ(非4コマ)が1番適正があるんじゃないかなあと思ったりします。それをとても読みたかったりします。ヌルイ「ハリスの疾風」みたいの。「コータローまかりとおる」でもいいです。あるいは、「がんばっていきまっしょい!」って映画をコミカライズする感じかな。
・とかいって、奥にいくほど新しくなっているのですが、4コマもかなり洗練されてきてますよねえ。だから、現在も「まんがタウン」で連載されてるそうですが、それはかなりイマドキの4コマしてらっしゃるんじゃないかと思います。
(18:30:01)amazon

「シガテラ」4巻 古谷実(講談社)

・うわ止めてって展開が続いて非常に苦しい。
・オビのコピー「幸福の影に潜むは、形なき鋭利な刃」なんてのはおおげさな気もしますが、この次から次へと暗雲が立ち込めて、笑っていいのか、戦慄すべきなのか、よくわからないところで不安定にゆれてる感じは、前作である「ヒミズ」より気持ち悪くて怖いです。

・なにがどうなるかまったく先がみえないし、それ以前の展開がどうカンケイするのか、あるいは、まったくしないのか、本当、真の意味でどう転ぶか、まったく想像がつかない。また、
・ディズニーランドのホーンテッドマンションやスペースマウンテンじゃなくて、浅草花やしきのジェットコースター、あるいは、ただ単に、ガケから海に飛び降りる。そんな感じの怖さ。

・それが現実的なのかどうかはよくわからんわ。高校のときに彼女いなかったし、いたとして、こんないろいろなことで悩んでいたのかどうかもわからないし。

・ということで、17歳の青春グラフティは歪なまま、あちこちから変な音をたて、ケムリをあげながら走っている感じ。
・彼女がいて、その彼女が「もうヤメテー!」って目に遭う巻ですね。
(19:08:47)amazon

「ユキポンのお仕事」9巻 東和広(講談社)

・巻頭の「ヤマネの冒険」がかなり新機軸。
・ヤマネって山に住んでるネズミのカップルが大冒険する話です。
・このマンガ内では、ネコと人間は意思を疎通することができます。それどころか、主人公のユキポンは飼い主ですけど、グータラで社会人失格でありながら恋多き乙女のアケミさんの代わりに金を稼いだりしますよ。
・たぶん、現実にいるネコはこうやって働いたりすることはないと思うのですよ。たまに、モデルネコとしてや血統書の種付けネコってことで金を稼ぐやつはいるかもしれませんが、ロボットに乗ったり、飛行船のレストランでウエイターしたり、小学生の家庭教師することはないでしょう。
・そういう夢のある動物と人のほのぼのコメディです。

・ところが巻頭のヤマネは、かなり、現実の生態に忠実なヤマネです。ヤマネのクリ吉(オス)は森で出会ったナンテン(メス)とソッコーで恋に落ちます。そいで、もうちょっとでつがいになれるところをユキポンにつかまってしまいます。再びナンテンに出会うためのクリ吉の奮闘振りを描いたのが本編なんですが、随所に、現実の生態がギャグとして挿入されてます。
・たとえば、ヒミズというモグラの穴を使って移動したり、ヒメネズミの巣に居候したりね。

・ということで、この話だけでも、ディズニーがピクサーにつかませてアニメ映画化したらどうだよ?と思ったりね。

・本編のほうも充実してます。円熟期ですな。アケミさんの変な髪形編では笑い、さすらいの犬彦の医者編は感動するし、ユキポンの陶芸家編も感動。相変わらず変な人間キャラも多数登場しますしね。

・まあ、正直「ユキポン」1本で終る人(少なくともおれは)だと思っていましたが、「ヤマネの冒険」は「次」へつながるものを感じましたね。
(19:27:48)amazon

2005年/2月/14日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン」沢井鯨&深谷陽(新潮社)

・カンボジアのプノンペンに冤罪で拘留された日本人の話なんですよ。「週刊コミックバンチ」に連載されていたそうですよ。で、原作者は実際に拘束されたことがあるんだそうですよ。
・作画は東南アジアバカ一代な東南アジアを描くことに一生を捧げてそうな深谷センセです。

・そして、ごっつい1冊の本です。1400円です。

・ここいらがおれの買う前の予備知識でした。これらモロモロで、プノンペンの拘置所ってどんなんだろう?って好奇心も含めて購入に踏み切りました。

・読みはじめます。
・北海道の学校の先生をしてる主人公は、夏休みに気まぐれでタイに旅行に行くことになります。そこで出会った日本人旅行者に、カンボジアのアンコールワットをみにいかないかと誘われ、ベトナム人の置屋にたどり着きます。そして、美少女と出会います。美少女は金に困ってるのでえらい大金を渡します。そして帰国します。
・帰国しても彼女のことが忘れられなくて、なおかつ先生という職業に絶望まくりで、思い切って、学校を辞めて、全財産をもってふたたびカンボジアに行きます。彼女と会えるかも?って希望をもって。
・で、いっしょに置屋にいった日本人旅行者はなぜかカンボジアで孤児院をしてます。なんとなくそこの仕事を手伝うことになります。そして、ネパール人の金持ちがいい話を持ってきます。

・などと、ぶ厚い本の半分近く読んでもまだ彼はプノンペンの拘置所にいませんよ。

・で、まあ、その後、やっとタイトルどおりの展開になっていきます。

・そして、地獄の展開、裏切りに継ぐ裏切りや悪いほうにしか向かわない展開で、主人公はどん底になります。そこですでに残りが50pほどになります。

「あら?打ち切りで尻切れトンボ?」

・まあ、よくある話ですよね。テキトーに帳尻合わせてオシマイと。

・ところが、そこからの一気呵成の展開がすごかった。どうスゴイのかは実際に読んでいただくとしますが、こうも「ちゃんと」してるとは夢にも思わなかった。「連載時より全面改訂!! 描き下ろし大増63ページ!!」がかなり強力に効いてるのかどうかわかりませんが、振り返ってみればとっても1本のちゃんとした作品になってるのです。

・とりあえず、東南アジアバカ一代の深谷センセの基本東南アジア描写と、実際にいった人じゃないとわからないチックな、拘置所でのすさまじい現状はスゴイですよ。
・たとえば、くせえメシとスープしか配給されないから、メシどきは「自炊」するんですよ。燃料はペットボトル。それでいて、タバコはちゃんと定価で警官が売るそうで、まあ、嫌煙者は1日で死ぬな。あと、1日手桶に3杯の水しか配給されないので水浴びをしたかったら大便をガマンしなければならないとか。
・やっぱ、オッサンになるとこういうリアリティにグッときたりするんですよね。

・いやあ、すごかった。正直、拘置所からをもっと長い構成にしていただくともっとうれしかったですが、その冤罪になるまでの半分の展開も飽きさせないのは両者の力ですよね。

・後半の原作者のコラムもよかった。よくわからなかったカンボジアという国がちょっとわかったような気がしました。登場人物の90%が詐欺師ってのもすごいですしねえ。ちなみにその中には日本人も多数含まれてますし、たぶん、今ごろ、その詐欺師は日本でのうのうとしてると思われますよ。そういう社会問題にまで踏み込んでる硬派っぷりですよ。

「アジア旅行者必見!!」などとオビに大きく書いてありますが、これを読んで「アジアに行こう!」って思う人は減るんじゃないかな?それくらいイヤーな汗をたらしつつ、おれは読みましたとさ。

オススメ
(17:41:02)amazon

「監督不行届」安野モヨコ(祥伝社)

・マンガ家の安野モヨコ氏がダンナ様でいて映画監督で、なおかつ、オタクの庵野秀明氏とのニコニコオタクライフを描いておられるエッセイコミックです。

・実に初めて金を出して買う安野先生ですよ。もう大家ですよね。最近、おれが購読してる雑誌「モーニング」「イブニング」において、「働きマン」「さくらん」と描いており、その認識を新たにしていたところで、タイミングがよかった。
・こう、思ったのの何倍も血反吐をはきながら真摯にマンガに取り組んでらっしゃるし、視点が常識人のそれだよなあと感心していたのですよ。

・でもって、本作です。エッセイコミックです。かいつまむと金持ちのオタク夫婦がいちゃいちゃしてるってマンガです。

・前半のオタク化にとまどう安野氏、どんどん染まっていって同化していくってサマは「おそるべし洗脳社会」ってのと「似たもの夫婦」という、フレーズを連想させます。

・そして、エッセイコミックの最大のキモは、登場人物(=作者)を好きになるかどうかってことですが、それはバッチリですね。本当、WアンノLOVEになりますね。愛らしい方ですよ。このお互いの信頼っぷりとか、観察ぷり、とても愛を感じますね。恥ずかしいくらい愛ですよ。オタクのバカップルですね。でも、「けっ!」とならないのは全然うらやましくないからでしょうね。実際、安野モヨコ先生はとても美人なんですけど、作品中ではロンパースという赤ちゃん風味(どうやら自分の分身の定番みたい)で描かれてますし、最近では自動車のCMにも出演されてるほどの、庵野監督こと、カントクくんもあんまりなほどの描写です。本当はかなりの長身なんですけどね。

・でも、愛らしいんですね。
・庵野監督にも後半インタビューされてますが、そのときの「男」っぷりもカッコいいですね。

庵野秀明×安野モヨコ 超豪華結婚パーティ 独占レポート!!

・思わず、こういうのを検索して眺めるほどですよ。まあ、本書をみてからみてくださいよ。

・で、まあ、そういうところを抜きに考えるに、うまくできたマンガなんですね。オタクと常識人との2足のわらじをたくみに履き替えて、常識人にもオタク人にも、庵野ファンにも、安野ファンにも大丈夫な、エンターテインメントを作り上げておられる。
・非常にスタミナのある人ですよね。強い方でもあります。

・おそるべし。

オススメ
(18:49:53)amazon

2005年/2月/13日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「イリヤッド」7巻 東周斎雅楽&魚戸おさむ(小学館)

・アトランティス大陸が実在することを探し求める日本の考古学者入矢、アトランティスの謎を求めるものを殺す謎の組織。そんな彼らの「チェイス」を楽しむマンガですね、もう7巻。
・ウサギの話を求めて出雲大社へ(もちろん日本の)。ウサギは最後の哺乳類になるといわれてるくらい生命力の強い動物らしく、古来から昔話には多く登場し、そのウサギが登場する昔話こそがアトランティスへのカギとなるそうで。
・そして、ハンガリーの首都ブダペストで、ナチスドイツの「ドイツ古代遺産調査団」にいた日本人博士の謎にせまる、ユリとデメル(まあ、仲間ですね)。ところが彼らに敵の手がのびていることをしりハンガリーに飛ぶ入矢。ユリとデメルは無事か?

・って感じの7巻ですか。

「いっしょにすんな!」といわれそうですが、たとえば、イースター島のモアイ像、ナスカの地上絵、エジプトのピラミッドなど、超古代文明が作ったなんて、少年マガジンのグラビアに書いてあったし、木曜日の19:30には日本テレビ系列でヤオイがうるさかった時代に多感な少年時代を送った「ムー」っ子ですよ、こちとら。この手の、「実はこうだった」とか、こういうことも考えられる的な、超科学やオカルトに足をつっこみそうなものから、「へー」と単に頭がよくなる感のウンチクまで、とても幅広く虚実ちりばめられてる本作ですよ。そりゃもう、コーフンするのもしょうがないじゃないですか。

・たとえば、あのヒトラーすら寝返るほどの力をもった組織。エジソンより以前に存在する世界最古のフィルム映画とかね、いかにもありそうで、ワクワクするじゃないですか。

・本作はそういう「子供だまし」をかなり磨いた、大人のための「子供だまし」なマンガになってるんですよ。「ムー」っ子は楽しいと思うんだけどねえ。ちなみに、ムー大陸はウソって1行くらいで切り捨ててますけどね。半村良センセごめんなさいって感じか。

・ということで、物語はかなりいいところです。クライマックスなのかしら?よくわかりませんが、物語の本線がものすごい勢いで動いてます。
(14:36:12)amazon

「PS 羅生門」7巻 矢島正雄&中山昌亮(小学館)

・矢島正雄節が冴え渡る1話完結の感動刑事ストーリー。本作と「イリヤッド」はもっともっとたくさんの方におもしろがられるべきマンガかと思うんだけどねえ。

・7巻での白眉は、天使みたいな女子高生が登場する話だな。
・誰にきいても、「天使みたい」と答える女子高生がこつぜんと姿を消す。「偶然」その捜索願を目にした主人公の刑事グループは、聞けば聞くほど天使だったそのこを必死で探す。そして…。
・ええ話や〜って。まあ、その「ええ話」のオンパレードなんだけど、この前後編の話は極めつけにいい話。

・あと、ダンナが横領だかで犯罪者になり、その妻がまわりから差別されて、苦しい日々が続くが、面会でのダンナはとても明るいって話。
・無免許運転の原付やろうを追ったために殺してしまう話。
・本編でもないんですけど、普通に家にいって、母親の前で、強姦をした息子を逮捕していくってエピソードのなんかゾッとするくらいなリアルな感じとかな。

・あ、ここまで読み直してたら、1話完結より前後編のほうが多いね。
・よくできてますよ。矢島氏の話、中山氏の絵、どっちもいいテンポですね。それぞれ、相手に合わせつつも自分のものにしつつも展開してます。
(14:52:37)amazon

「のどかnobody」1巻 田山りく&及川雅史(角川書店)

・のどかという天才建築家が温泉を「ブラックジャック」する話。絵画を「ブラックジャック」したら「ギャラリーフェイク」ね。

・これ最大の謎が「角川書店」ってことなんですね。どう考えても日本文芸社か実業之日本社でしょう。「ゴラク」とか「漫画サンデー」とか、ああいったノリ。

・パートナーの女の子といっしょに、流行っていない温泉をビフォーアフターしてみちがえるってパターンさね。それに温泉ウンチクとかを盛り込んでナ。

・たとえば、ヒノキの浴槽を作りたいという先代の夢だったのだが、予算の折り合いがつかない。でも、ヒノキは譲れない。で、のどかはコンビニのオニギリをみてひらめく!

・そんな感じです。基本的に、アイディア風呂ってのより、人情話のほうに重点がおかれてますね。まあ、そこいらのサジ加減はなんとでもなりますし。

・軽くポトチャリポラパらしい苦言を呈させていただくと、温泉が舞台なだけに入浴シーンが多く、主人公ののどかさんも相棒の女の子も入浴されるのですが、乳首解禁してないですよ。今はつけ乳首ブームだから乳首がないのは時代に逆行してますよ。あと、毛もないんですけど、それはそっちのほうがいいって人が多いかもしれないので黙っておきます。というか、連載誌である「ドラゴンエイジ」ってどういう雑誌よ?

・ただ、上記の趣旨の作品であるからして、温泉場や背景などの描写は超重要。そして、それはかなりハイレベルでクリアしてます。普通に「この温泉入りたい!」とか、前橋(出てくる地名は実名です)の足湯に行きたい!とか思います。

・乳首も含めてキャラにもうちょっと味をつけたらいいんじゃないかなあ。やや弱い。
(15:10:05)amazon

「HUNTERxHUNTER」21巻 冨樫義博(集英社)

・今、世の中で1番先が読めないマンガとして、マンガ読み以外にも波紋を呼びつつある、HxHです。伊集院光氏もラジオで「おもしろくてしょうがねえよ!」とやや吐き捨てるようにいってました。ジャンプで読むととてもスリリングなようですね。
・今、「完全版」ブームですが、本作は「雑誌掲載版」でも発表してほしいものですね。

・おれは、雑誌で読んでませんし、やきもきしてコミックを発売するほどのファンでもないです。それがいいのか悪いのかはよくわかりませんが、21巻もとてもおもしろかったです。カバー見返しのジャンプコミック特有の作者のあいさつは、「へのへのもへじ」と「いっぱいいっぱいです」だけでした。同日発売の「ONE PEACE」と対照的なこと。

・昆虫の女王様は息子を産みました。そして、けっこうたくさんの人にモデルがわかる国の、君主さまを軽くひとひねりして、そこに治まりました。
・そして、ゴンとキルアはまた修業(結果的に)か。彼らとの対決に備えて。
・また強さのインフ化レと、ジャンプの黄金パターンに飲み込まれましたが、そうなる理由をできるだけ丁寧に、他のすべてを犠牲にしても提示した巻といえますか。
・昆虫の王の強さを示し、そこにたどり着くべきスキルを示し、ゴンたちはたどりつこうとあがくと。だから、ゴンとキルアは強くなりますよと。

・もう、冨樫センセは一生遊んで暮らすことが可能だと思います。でも、本作をダラダラで終らせたら、ファンに殺されると思います。それくらいはおもしろいです。なにがどうして「いっぱいいっぱい」なのかはわかりませんが、本作を「ちゃんと」終らせてから死ねばいいと思いました。

・というか、息子を産んだ時点で「ちゃんと」終らせるには、ちゃんと描かなければいけないじゃないか。どうしてまたこっちほうを選んだんだろう?とも思ったりね。
・いや、そういった意味じゃ、エライとは思いますよ。だって、息子産む前にピトーやっつけてカイトを助けて、父親に逢えばとりあえずノルマ完了だろうし。それで終れば最低限のカッコはつきますよ。「冨樫終ったな」扱いですが。

・ま、集英社もノンビリ描かせてやれよ。で、コレ描いたらあとは垂れ流しの寝たきり老人みたいな生活で一生を終えればいいじゃん。それくらいはできるでしょ。
(15:34:47)amazon

「ONE PEACE」36巻 尾田栄一郎(集英社)

・あちゃー。なんだかなあという展開です。尾田栄一郎はしてやったりと思っているんでしょうか?
・水の都編でいろいろと展開してます。仲間かと思っていたロビンが行方不明だわ、市長殺人未遂の嫌疑をかけられてるわ、ルフィたちに罪をなすりつけられてるわ、金を盗んだやつのお礼参りのお礼参りはあるわ、その上、また市長暗殺があるわで、しっちゃかめっちゃかです。

「ONE PEACE」の初期の感想で、「いつも105%でがんばっておられる」なんて評した記憶がありますが、実にいまでもそうなんですね。
・オビにあるように、史上最速で1億冊売れてるように、本作はとてもたくさんの人に「おもしろい」として受け入れられてます。たぶん、考えたり計算したりするのもメンドーなほどの金も手にしてると思われます。あと、一生贅沢に遊んで暮らせます。子どもと孫くらいなら余裕なんじゃないかな。
・でも、彼は105%ですね。それが、空島のあたりからマイナスに作用しはじめてるんじゃないかな。もう、105%の必要はないんですよ。もちろん、個人的に、100%のおもしろさではないですが、毎回基本的には楽しみに読ませていただいてます。一時期までは新刊が出るたびに1巻から読み直すくらい好きでした。

・すべてに105%のおかげで、蛇足な設定、無駄にコッたストーリー、がちゃがちゃしてる画面構成、ネームの多さ、など、入りにくくしてる要素が多くなってる。

・だれのギャグか忘れた、たぶん、うすた京介氏だったかな、「おれはこの1年で「こち亀」を抜いてやるぜ!」っての。尾田栄一郎氏はマジメにそれをやろうとしてる感じが見受けられる。
・なにを追い求めているのかはわからないです。ジャンプでもすべての点で歴代1位を目指してるのか、よりマニアなファンを獲得したがっているのか、やみくもにマンガ界の頂点に立とうとしてるのか。ただ単に力の抜き方を知らないのか。

・でも、正直、それには分が重いし、まだまだ足りないものが多いと思う。たしかに1億冊売れてますが、そのうちの「熱狂的なファン」の割合は、ジャンプでも1位では絶対にないと思うし、無差別に「1番おもしろいマンガ」というアンケートをとっても10位までに入るかどうかわからない。
・ものすげえ簡単なおれ判断だと、1億冊売れたわりに「軽い」んだよね。どこか軽い。それはもう尾田氏の資質としかいいようがないんですよ。「はじめの一歩」でいうと宮田のパンチですよ。ってここでそんなわかりづらいたとえを出すなよ。
・本人もそれなりに自覚してるのか反動でムダにいろいろ重くしてるような。でも、軽い。そして、空回り感。それは考えようによっちゃあ非常に強い武器でもあるんだけどね。でも、なんか、重厚さや奥の深さをかもし出そうと必死になってる感じがする。

・まあ、いいんだけどさ。それでもおもしろければ。
・水の都編に入り、35巻まではおもしろかったのに、36巻でかなり大きな音をたててしぼんでいった感じですよ。つーか、後半のあのオチはなんだよ? だまされた快感より、不快感がただよう。大阪がウルトラマンの面をかぶって、「じゃーんわたしでした」って現れたときのようだよ。いや、「あずまんが大王」の1編なんですが。

・とかいって37巻はおもしろいといいですね。もっとシンプルを心がけたほうがいいですよ。シンプル・イズ・ベスト。このコトバを1億冊売れた尾田氏に進呈するよ。かわりに1億円ちょうだい。
(16:20:05)amazon

「DEATH NOTE」5巻 大場つぐみ&小畑健(集英社)

・わけわかめ。
・かなり置いていかれました。さよならが近いかもしれません。
・5巻をお持ちの方は25pの下のコマのLの独白や表情が、おれの感想に最も近いので参照してみてください。
・つーか、書き込んだ人を殺せるノートのルールが毎巻いろいろと増えている気がするんだ。おれは基本的に、そのマンガでしか通じないルールはシンプルなほどいいと思ってる派ですよ。たとえば、「カイジ」における限定ジャンケンとかね。
・本作もそういった点では、現実の世界に死神がいて書き込んだ人を殺せるノートがあるってだけのことです。だけどねー。
・いや、素直におれはもう話においていかれそうになってますよと。
・ちなみに、「ヒカルの碁」でもそうでした。わけわかめなところがいくつかありました。だから、意外に原因は作画の小畑健氏にあったりしてー。絵はうまいけど、構成やコマ割が下手とか? でも、たしか、「ヒカルの碁」はネームの状態で小畑氏に渡されてたそうですしねえ。

・まあ、そこいらをふまえて。5巻ではミサミサがとてもかわいかったし、いろいろな表情やデフォルメがタンノウできて萌え萌えだったことはまちがいなく記載。

・あと、どうなんだろ? ライトとLってそのスジの女性にはクるんでしょうか? きそうかな。

・そうなんだよねえ、なによりも小畑氏の絵ですよ。人間に艶があるんだよな。あと表情のバリエーションがとても豊か。リアルでもディフォルメでもすばらしい。77pの1,2,3コマでのミサミサの表情をみてくださいよ。

・まだ、買うかな。
(16:52:55)amazon

「武装錬金」6巻 和月伸宏(集英社)

・なかなか盛りだくさんの巻。話も大きく動きましたね。
・大ボスが復活し、カズキも主人公らしいことになり、蝶の人もいい感じだし、斗貴子さんのおへそもよかったし。

・それを踏まえての展開もおもしろかった。カズキを再殺ね。その任務を遂行するキャプテンブラボーの表情をけっこう仮面の陰部のようにうまく隠すという技術もすばらしく効果的。

・コミックの「これはこんな苦労したんだよ」的な描き下ろしライナーノーツを読むのもまた楽しみ。彼の神経質度合いはそれ自体がちょっとしたネタのように楽しめるしね。毎回血反吐ですね。

・しかし、「キャプテンベラボーだ」ってギャグはいかがなものかとは思った。
(17:05:36)amazon

「オリオン街」5巻 山本ルンルン(JIVE)

・虫にビビるネタからはじまり、キモだめしにビビり、アンラッキーな服占いにビビってるという、ビビってばかりのスモモさんがワーキャーいってる5巻でした。

・いや、うちの上のガキがそうなんですけど、異様に虫を怖がる女子っていますよね。ちょっとうっとおしいくらい。山本ルンルン氏の怖いのは、それをギャグとしての領域を越えて、「うっとおしい」って思うくらいまで踏み込んで描いてるんですよね。だから、主人公のスモモはとてもうぜえ女に映ります。というか、ああも虫が嫌いな女はキャンプにいったらダメな。
・そういったなにげに踏み込んだ人間描写が、たんにガキ向けのマンガ以上のものをかもし出してるんですよねとひいきのひきたおし。
・スモモのココロの葛藤は非常によく描けてます。これほども踏み込むのは「マシュマロ通信」じゃないですね。だから、山本ルンルン氏はスモモとサンディーならスモモのほうが自分をより投影されてるんじゃないかと思われますよ。

・次で(オリオン街は)終わりみたいですね。これで毎月ルンルン地獄も終わりか。幸せでした。
(17:18:18)amazon

「STRAY LITTLE DEVIL ストレイリトルデビル」1巻 森小太郎(メディアワークス)

・知らない方の知らない作品です。ジャケ買いです。あと、単巻ものかと思っていたんです。1巻の「1」がみえにくいところにありますし。

・中1の子がひょんなことから悪魔の国の悪魔の学校で悪魔になるべく入学することになりました。あと、悪魔の世界の「ハリーポッター」みたいな話ですよ。

・最大の武器は絵ですわな。絵の生きっぷりがすばらしい。主人公を含め、女性もすばらしいけど、そのほかすべていい感じで、そこで「生きて」ます。まあ、生きてないもの、たとえば、背景などはやや弱いですが、生きて動いてるものの元気のよさのありがたさに比べればたいした問題でもないかもしれません。
・つーか、これがありがたいってのも問題ですが、大きいものは大きく、小さいものは小さく「ちゃんと」描けているのです。これができないマンガ家のほうが全体では大きいのかもしれない。

・少女たちも精霊も、使い魔とか、モンスター、ドラゴン、すべていいですねえ。それらがまたよく動くんだ。それを眺めてるだけで楽しいです。ぶっちゃけ話は2の次って感じでね。なんだか、ややわけがわかりませんし。
・キャラも同級生トリオ、めんどうみてもらってる先生兼下宿先、ライバル、使い魔と、わりとベタながら磐石の配置。それぞれを見失うことは金輪際ないたのもしい画力もあります。

・ということで楽しかったです。2巻以降もドタバタのほほんな感じで継続されることを希望。
(17:42:53)amazon

2005年/2月/12日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ピピンとピント☆ -旅路へ-」2巻 大石まさる(少年画報社)

・オビの「大石まさる渾身!」とありますが、それに偽りなしですよ。渾身の力で「ちょっとえっちなラブ&コメ」をいかせてもらってますよ。

・2巻ではなぜかモテモテの少年ピントが、旅立つというロードムービーげな、水戸黄門諸国漫遊記げな、やじきた道中記げな、男はつらいよげな、展開になっております。それが副題になっておりましてね。

・旅先でもモテモテなラブ&コメなのは変わりませんが、なんでもアリな世界でして、毎回、かなり趣向をこらした展開になっておりますよ。ほぼ別物的な。
・朽ちかけた大橋の「渡し」をしてる高所恐怖症の少女。大阪げなところ。幽霊の出る旅館。人種によって住む場所がアカラサマに分けられえてるタワーがあるところなどなど。
・それぞれゲストが登場して、ラブ&コメもたっぷりだけど、それ以外も超たっぷりに展開します。
・明るくて元気な女性が、汗や水やその他液体で濡れるってのがパターンとして多いです。大石氏のツボなのかもしれません。そういった方面でも全く出し惜しみしてませんね。おっぱいやおしりもドーンと。まあ、一線は越えないのですが。

・そして、すべてに特濃なんですが、それが、人にとっては「ガチャガチャしてる」という感想につながるかもなあと思ったります。

「空からこぼれた物語」のSFストーリー、「みずいろ」のボインと夏、「りんちゃん」シリーズの少女の描き分けバリエーション、「泥棒猫」のハイテンポ。あと、エロマンガ家時代のエロと、引き出し総ざらえですし、本当オトクな1冊になってます。

・個人的には、オープニングのモモカさんがとてもいい感じ。夏に本を読むために、河口近くの橋の陰にパイプ椅子を置いてサイダー片手に日が暮れるまで読書ですよ。
オススメ
(14:34:54)amazon

「つゆダク」10巻 朔ユキ蔵(小学館)

・最終巻。まさか10巻も続くとはね。さすが天才だよな。普通にすごいことだよ。

・ということで、テレビ局に入社したエロザルの主人公の仕事は、タレントの性欲解消業だった。そして、はじまる平成版「やるきまんまん」と。

・少年誌やなんかの燃え展開(塔の各フロアの敵を倒して上を目指す等)をあてはめた、青年誌エロコメのパロディでありながら、そのエロコメがちょっと前のベタなタイプだったので誰もやらずに、結局王道になってしまうという変な位置のまま駆け抜けましたよね。だいたい、本作ではじめて朔ユキ蔵氏にふれる人は、まったく「そういうもの」として受け止めてチンポ勃たせて、「おれもアイドルとヤりてえなあ」と思ってることでしょう。というか、こいてるでしょう。

・水面下でVシネマ進行中とか?それくらいの普遍性も兼ね備えてるんですよね。そこがスゴイ。

・で、作者の次回作はどうなるんでしょうか? 「少女、ギターを弾く」のつづきを描いたりする気はあるのでしょうか? それともすでにどこかでまたこの手のメタエロコメの連載がはじまっているのでしょうか。

・と、まあ、コミックでは大体読んでると思うのですが、相変わらず、おれにはコないマンガ家だなあ。まあ、山本直樹氏もチンピク度が低いので、逆に、おれが興奮できないマンガ家は大成するのかもしれない。あと、最近では玉置勉強氏とかねえ。ほら、みんな、メジャーどころじゃないか。
・だから、おれは純粋にマンガが好きなんですよ。こう書くと説得力があるでしょ? 次回作を期待してます!
(15:02:54)amazon

「ライドバック」3巻 カサハラテツロー(小学館)

・正直、あまり期待してないんですが、3巻はおもしろかったな。
・ライドバックというモビルスーツなバイクがある近未来のキャンパスライフなマンガです。
・3巻では死のライドバックレースから、いろいろと謎が明らかになり、暴走族の抗争に巻き込まれるといった具合で、拡大し、拡散するスケールをちょっと戻した感じになってましたね。

・やっぱ、森とか、いかにもなところより、舞台としては土手とか市街で展開するほうがおれ的にはグッときますね。

・で、どことなく「ワイルド7」を思わせるような展開がありました。暴走族とのバイクチェイスとかね。
・あと、警察とライドバックってののカンケイが、ゆうきまさみ氏のパトレイバーとは真逆の位置にあるのがおもしろい。悪役なんだもんな。

・3巻で個人的にグッときたのは、ペットボトルに入ったビールですわな。近未来では最初からペットボトルにビールが入ってるんだなあと。ライドバックより、そういうところの未来具合が、より未来を感じられるってことなんですよね。

・このまま、地に足ついた感じで展開していくのか、ぶっ飛んでいくのか、微妙ですが、おれはカサハラ氏の描く未来をながめたいので、そっちのほうは手を抜かないでほしいところです。
(15:47:59)amazon

「極道一直線」3巻 三上龍哉(小学館)

・相変わらずバカマンガなことです。極道一家のほがらかギャグマンガ。

・CG画で、多少画力が落ちたような、なんだか落ち着かない画面構成になっており、和月伸宏だったらストレスで心筋梗塞になりそうな感じですが、それ以上に内容がグダグダになってるので問題がないです。

・とくに「テニスの王子様 全仏オープン編」「同 ウインブルドン編」はかなり笑わせていただきました。あと、「ちん毛」ね。

・いやあ、下品とバカに磨きがかかり、最初はマネっ子かと思っていた「クロマティ高校」よりも瞬間湯沸し的な笑いが多いですね。
「バカだなあ」とゲラゲラ笑って、その後すっと切れる感じ。
・こういうのは再読性が低いんですよね。「また読もう!」と思わず、1回で気が済むというか。だから、イキオイ、その1回目に命をかけるという形。その命のかけ具合は、現在、おれが購読してるギャグマンガではNo.1ですよ。この見開きで、笑い死にさせてやる。プライドとか品位とか、そういうものより笑い。ここで絶対に笑わせるという、魂のボケ具合ですよ。まあ、絶対に笑えるわけでもないんですけどね。

・笑い自体のクオリティがもうちょっと上がるのと、いわゆる繰り返しの天丼ネタを控えると、もっとよくなると思います。パロディネタも微妙ですねえ。「ドラえもん」が実は植物状態ののび太がみていた夢って都市伝説のパロディとかわかりづらいし。おれがわからないパロディネタも多数ありそうだし、それがさして効果的ってことでもないし。
(16:22:10)amazon

2005年/2月/11日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「花子と寓話のテラー」2巻 えすのサカエ(角川書店)

・やべ。2巻もとてもおもしろいです。
・本作に対しては作品以外の情報がまったくありません。本屋でテキトーに選んで手に取ったものですし。まあ、ちなみに、「ONE PEACE」も「鋼の錬金術師」もそうなんですけどね。もしかしたら、それ以来くらいにおもしろいのかもしれないまでいったらどうだろう?と思うけど、ここしばらくのジャケ買い作品では最高のヒットであることはまちがいないです。ま、おれ調べでね。

・寓話です。寓話専門の探偵が活躍するマンガです。寓話ってのはよくわからんけど、2巻では、「合わせ鏡の悪魔」「テケテケ」「白い糸(ピアス穴から白い糸が出て引っ張ると失明するってやつ)」「コックリさん」が登場します。つまり、「都市伝説」とかそういうタグイのものですね。

・探偵・亜想と、助手のカナエさんと、トイレの花子さん(文字通り都市伝説の花子さん。名うてのハッカーでもあります)の3人が都市伝説と戦うのですよ。

・今回も硬軟混ぜ合わせて、コメディタッチあり、ミステリーあり、ホラーあり、アクションあり、と、出し惜しみせずにドカーンドカーンと全力で悪ふざけしてるような暴走機関車チックなノリのよさがあります。
・カナエさんがスーパーアイドルになるコメディタッチの「合わせ鏡の悪魔」との契約からはじまり。
・テケテケという上半身のカマをもった「寓話」による女子高生の連続自殺事件。ところが真相はってミステリーがあり。
・ピアス穴から白い糸が出てる少女が登場してコックリさんと、探偵たち自身の問題にも触れていくわけですよ。

・相変わらず花子さんがキュートですし、「都市伝説」のそれぞれのビジュアルもいいですし、絵のほうもバッチリですし、かなり充実したオモシロさが万人にあると思われます。そんな怖くて死にそうってこともないですし。

オススメ
(22:23:14)amazon

2005年/2月/10日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「さべあのま全集1 モト子せんせいの場合」さべあのま(MF文庫)

・NHKのアニメ「スージーちゃんとマービー」の原作でおなじみ(おれには全然おなじみじゃないけどね)の作家さんの全集です。現在はほとんどマンガ家としての活動はされてませんし、単行本未収録もほぼ網羅してるので、この全集の全6巻を集めると、自動的にさべあのま氏のマンガ作品は手元に揃うというスンポウになっております。

・さべあのま氏は大友克洋氏や高野文子氏、いしいひさいちなどがずいずい表舞台に登場した、「ニューウェーブ」期に登場されてましたよ。で、おれが積極的にマンガを読みはじめたころと完全にリンクしてるので、当然のことながら、出会うワケですよ。
「チャンネルゼロ」「Peke」「コミックアゲイン」「別冊奇想天外SFマンガ大全集」「デュオ」などなどね。なつかしい!ってのもありますが、正直知りませんね。

・で、おれも既刊はほぼ持っていたのですが唯一持ってないのが、本作「モト子せんせいの場合」だったりします。なぜ持ってないのかというと、本作は純粋に少女マンガだったというか、おれのチェックしてる場所にはなかったのです。主婦の友社で、OLコミックってところから出てます。

・この全集6巻をイッキ読みさせていただくと、大きく2つのパターンが見受けられます。当時流行の萌芽がみられ、現在ではとてもポピュラーな手法であるところの身の回りの半径50mの「等身大ストーリー」。そして、まったくそれとはちがいますが、同じくらい現在ではポピュラーな手法であるところの、「どこでもない時代のどこでもない国のストーリー」。

・本作は少女マンガ家で恋愛マンガも多数描いてるくせに本人が恋に引っ込み思案の女性が主人公。
・そして引っ込み思案になった理由は、合コンで酔っぱらって気がついたら男の家に裸でいて、無意識のうちに処女喪失してしまったショックからですよ。その男が自分の担当編集になったからさあ大変と。

・まあ、そういった感じのラブコメです。1981年作品。
・これが恐ろしいくらいに1981年を感じさせるものになってますね。この貞操観念や物語の動機からしてそうじゃないですか。合コンではじめてあった男性に無意識のうちに処女を奪われたかもしれないというショックを引きずって恋に臆病な女性は現在でも存在すると思いますが、物語にはならないでしょう。
・そしてファッション。ああ、1981年。

・ところがおそろしいことにそれから24年経って現在2005年に読む本作に絵の劣化は0です。まったく0です。なるほど、CG処理のものに比べるとアレですが、アナクロな技術によるトーンワークや絵柄などの時代性をまったく感じないです。あと、物語の構成やアングルその他の、作画以外の技術もまったく劣化してません。

・本作は初見ですが、他作品によっておれはさべあのま先生から「少女マンガ」というものをレクチャーしてもらっていたのかもしれないなあと思いましたよ。ポップではっきりした絵柄は、当時から、少女マンガや書き込みの多い劇画タッチの嫌いなおれには逆にとてもなじみがあり、かっこよく、「ナウイ」絵だったんですね。で、今、現在、読むと、まさに少女マンガ以外のなにものでもない内容ですよ。後に柏原よしえ、石黒賢主演で実写ドラマ化もされてるそうで。

・ということで、少女マンガ久しぶりに読んだなあという気分になりました。
(13:29:51)amazon

「さべあのま全集2 地球の午后三時」さべあのま(MF文庫)

・全集2巻目は、同タイトルの朝日ソノラマ版をベースに、「物語」な作品を集めたカタチになってますね。
・古きよきアメリカにある古きよき「物語」をベースとした、「おとぎ話」といってもいい感じのものも収録されてます。
・たぶん、本作か、6巻「ライトブルーペイジ」がおれにとって最初期の出会いだと思いますが、本作を1番多く読んでましたね。最初に買ったものですしね。そりゃあね。ただ、本作はより「アメリカン」な風に4冊の単行本から作品を集めた感じです。一応、アメリカ風でいて、アメリカじゃないもの、アメリカなものと別れてるんですけどね。

・アメリカの「モト子せんせい」みたいな、小説家志望でOL(お局さま)で男性不信なマリアさんが出会った写真家の夢とは?と、樹里アロバーツが主演で映画化でもおかしくない、「ミス・ブロディの青春」
・うまくいってない家族をクールな目でみてる少年の話が表題作「地球の午后三時」(午後の後が后なのは、后のほうが好きな字なんだからだそうです)。
・インディアンに憧れる少女と、むりやりつき合わされてる弟の話「タイガー・リリィ最后の冒険」。
・単行本未収録で最新作21世紀になってからの唯一の作品で、とてもサイバーメルヘンな「夢みる筺の王子」。

・1979年の作品から2001年まで、かなりの時間が過ぎてますけど、恐ろしいくらい絵にブレがない。というか、ブレの差が少ない。どれもこれも「さべあのま」ですよ。それこそ、朝日ソノラマからでた作品集「SABEAR BRAND」そのものですね。

・そいでもって、この「物語」感。こういうややもすると、童話やメロドラマになる感じのものは「リアリティがない」と切り捨てられていた時代もあるですよ。そこにこれなんですからね。実はアナーキーなんですよねえ。派手なのやアグレッシブなのがアナーキーなばかりでもないと。

・あとがきのインタビューによると、氏の子ども時代にテレビでみた外国ドラマの影響だそうですよ。あそこいらのドラマのアメリカってなぜかノスタルジーを喚起しますよね。おれなんかはまったく影響0なんですけどね。「サンダーバード」くらいですよ。あれはイギリスだっけ?

・ということで、短編集は本作と、「3」の「はにほへといろは」でバッチリ。全6冊、1冊だけでさべあのまがわかりたいって趣旨だと、本作かな。
(14:35:45)amazon

「さべあのま全集3 はにほへといろは」さべあのま(MF文庫)

・全集で最厚で、1番高い。
・本作は白泉社から出た、同タイトル版をベースにして、日本を舞台とした「等身大ストーリー」な作品を集めたものです。

・父親と息子にはさまれて疎外感を感じる主婦。そのうちダンナの会社は倒産し、自分は妊娠してることを知る「はにほへといろは」
・おお、女子大生。女子大生のブランド価値がとても高かったころだな。交通事故で死んだ同級生がなぜか幽霊となって化けてきて、困惑する女子大生を描いた「DAY IN DAY OUT DAY GIRL」
・そうか、1980年には「不思議ちゃん」って概念はすでにあったんですね。その不思議ちゃんが登場する「三時の子守唄」
・考えてみればおれがユーミンを意識したのは本作のせいかもしれない。女子高生の青春を描いた「綺羅星」
・考えてみればすげえオチでなおかつそれを間に受けたやつが大勢いたという2段オチになってる、アイドルに恋する少女の話「変光星」などなど。

・うん、やっぱりおれの「少女マンガ」の師匠はさべあ先生ですね。ときわ荘の連中における手塚治虫の感じ。

・本作は1番作品によって絵のブレがあります。なぜかというとブレる時期に描かれてるものが多いからですね。意図的に作風や線の細さを調整されてるのもありますし。

・そして1980年代。おれにもわかるくらいファッションや小道具がその時代のものですね。「地球の午后三時」のそれのように当時から時代を超越してるものとちがうので、はじめての人にはダイレクトに「古くさい」という印象を与えかねないですよ。まあ、実際古いんだからしょうがないんだけどさ。
・そういった意味じゃ、当時の風俗を真空パック的なアレもあります。

・今、この路線でさべあ氏になにか1本短編を描いてもらったらそれはどんなものになるんだろう?と思ったり。
(14:54:13)amazon

「さべあのま全集4 ネバーランド物語」さべあのま(MF文庫)

・本作は長編1本です。
・タイトルからも想像がつくでしょうが、「メルヘン」な1本です。

・舞台はアメリカっぽいどこか。時代は1900年代のいいとこどり。ああ、そうだ、イマドキのキッズにわかりやすいたとえを思いついたよ、ゲーム「MOTHER」の世界観が近いね。
・男の子のように育てられた少女。それまではその境遇に不満はなかった。姉のキャピキャピぶり(死語だなあ)をみてると、それよりマシと思っていた。
・ところが最近どうもおかしい。そして、空から天使が降りてくる。

・こんな感じで波乱万丈で甘酸っぱい物語が進行するですよ。

・さべあ氏の物語部門での最高傑作です。ほどよくメルヘン。ほどよく少女マンガ。ほどよくファンタジー。ほどよくパロディ。アクション、涙、興奮、そして感動の物語と、まったく1本、かなり上質の映画をみた気分にさせてくれます。初見のとき、ラストページで泣きましたし、この涙はいい映画でのそれと同じタイプの涙だよなあと思います。えーと、「さらば宇宙戦艦ヤマト」とか?って茶化したくなるくらい感動ですよ。

・作者もかなり思い入れがあるみたいですね。熱くあとがきで語ってます。

・いや、これはぶっちゃけディズニーがパクってもいいから、ものすげえ大金を使って実写でもアニメでもいいから映画館の大スクリーンでみたい感じだよなあ。そういうことを意識して「見る」ということにはかなり重点をおいてます。「絵」になるシーンが多いんですよ。とくにクライマックスにかけての一気呵成の展開とか。エピローグでの上品な感じとかねえ。

・まあ、「時代を超えた」逸品です。ぶっちゃけ、全集をそろえようとしたのも、未読の「モト子せんせい〜」と手放してしまった本作を再読するためですからね。

オススメ
(15:15:35)amazon

「さべあのま全集5 マービーとギジェット」さべあのま(MF文庫)

・本作は「マービー」と「ギジェット」として、別々に白泉社から刊行されたものの合本です。あとがきによると元々合本で出したかったそうです。

・で、本作はいよいよ円熟期の完成度MAXの「SABEAR BRAND」の頂点に立つものです。普通に2005年の新刊として書店に並んでてもまったくおかしくないです。ちょっといいすぎですが、違和感は限りなく少ないです。
・というか、表紙は、たぶん、現在のさべあ氏による描き下ろしですが、絵のキレというより、もっと書くと「好き嫌い」でいうと、「マービーとギジェット」のころのほうが好きです。おれ的には最高です。表紙の絵はややカートゥーン的というか。

・やんちゃな男の子が大暴れする、とってもギャグマンガな「マービー」と、メロドラマの作家である父親とニューヨーク(そう、これは本当のアメリカが舞台です)で2人暮らしの少女の物語「ギジェット」。

・そう、「ネバーランド物語」が大作映画なら、「マービーとギジェット」は2本立てでノンビリ家のビデオででもみてるか、2番館の味わいです。そして、期待を大きく上回るおもしろさに興奮するような感じ。「すげえトクした!」って。

・マービーのギャグすぎる感じも、ギジェットのメロドラマすぎる感じも、それが過ぎてるので逆に時代から超越してるので、一生楽しむことができるのですよ。ちなみにこのマービーがアニメのマービーにつながってもいるんですね。アニメのほうは、「おめえ、もっと張った声で歌えよ」って空気が抜けた浮き袋みたいな主題歌しか記憶にないんでよくわかりませんが。

オススメ
(15:31:02)amazon

「さべあのま全集6 ライトブルーペイジ」さべあのま(MF文庫)

・同人誌や商業誌に載りたてのころの作品集です。

・ぶっちゃけ、この作風で続いてたら、好きな作家になることはないです。ここいらの作品には、個人的にあまり魅力を感じないんですね。

・どっちかというと等身大ストーリーで、内省的なものが多いです。んまあ、いかにも創作系の同人マンガって感じですか。身もフタもない書き方ですが。

・初主演作が散々で、傷心のまま故郷に帰り、少女と会う女優の話「帰郷」
・おろしたてのスニーカーを履くのが気恥ずかしい少女の話「天気雨'79」
・梶井基次郎の「檸檬」ごっこをしようとして、叱られる少女の話「TRIP」

・などなど、正直、あらすじの書きにくい話ばかりです。そういった意味でも同人的。おれの思ってるところの同人ノリってのが満載です。
・青臭さもポイントですよね。

・とりあえず、1〜5まで買ったし、6も買えば全部買うんだし…って感じかなあ。

・よって、全6巻を順位つけるとすれば、4,5,2,3,1,6って感じですかね。もし、ゆきつけの書店で全6巻をみつけたら、この順番で買っていかれると、6巻ころには、さべあ氏のことを好きになってるのでスルリと読むことができるんじゃないでしょうか。

・いや、まあ、あとがきにもありましたけど、よく、同人誌と商業誌にちがいはないっていいますがウソですよね。絶対にちがいはありますよ。そういうことがわかります。
(15:54:36)amazon

2005年/2月/9日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「パチモン大王」2巻 唐沢なとき(同人誌)

『フィギュア王』にて連載中の『唐沢なときの〜〜大王』シリーズの単行本(自費出版)です。各種コミケとか「唐沢なをきオフィシャルウェブサイト「からまん」」で通販したりして手に入れるのです。通販で唐沢なとき先生や奥様から買ったほうがいいアンバイなんでしょうね。

・ガキはキャラクターの入ったものをほしがる。でも、版権を買うと高い。だから、パクったニセモノを使う。で、後で訴えられたりしないためにちょっと変えたりするんですね。その変えっぷりを愛でるというのが趣旨だったりします。

・ということで、図版豊富なオールカラーでゲップが出るほどパチモンをタンノウできますよ。

・とくにおれがおもしろいのは海外のパチモン事情だったりしますね。2巻ではとくに全開になり、タイの妖怪で、生首から内蔵をぶら下げる女性「ペナンガラン」情報からはじまって、タイのドラえもんのパチモンとか、塗り絵とかねえ。パチモンは万国共通の技術ですよ。だからこそ味わいがあります。もちろん、国内版もたっぷりです。

・ここで重要なのは「ニセモン」とのちがいですよ。ニセモンってのはたんにコピーであるわけで、そこに工夫や味わいがないとってことですよ。その工夫や味わいが作者の思惑とちがうところに笑いとかが起こるわけです。本作は資料性よりそこに重点がおいてあり、自体が娯楽性の高いものになってるのですね。

・結局のところやってるところは非常にオタク的でありまして、唐沢氏も本域でそういうのが好きで好きでたまらない人なんだなということが非常によくわかります。

・ということで、3巻は2005年の8月くらいだそうです。最後までつきあおうかって気になってきてますが、この本、「コミック」として書くことがねえなあ。
(20:58:05)

2005年/2月/8日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ラヂオヘッド」1巻 内藤曜ノ介(講談社)

・破格の待遇ですね。アフタヌーンコミックで、新人でデビュー単行本で、この大きくて高い版型で発売されるのって、「拡散/小田ひで次」以来とか? まあ、奥付の初出をみてると小田ひで次の「拡散」ばりに掲載ペースが遅いもんなあ。そりゃあでかくなるわなあと。

・電波の人ってよくいうじゃないですか。 ほら、ブリーフ一丁、包丁一丁で剣の舞を往来で披露する人さ。
・電波が本当にあるとして(本人には当然本当にあるものでしょうが)、受信する人を「ラヂオヘッド」と呼びます。そして、それを取り締まる刑事さんがいます。そんな世界の物語です。厳密にいうと宮内庁の管轄になるんだな。

・ものすごいよくあるパターン。1話目の敵が2話目から味方になるってことで、女子2人のラヂオヘッドが電波な人を迎え撃つって図式になってます。

・あー、ものすごいザックリ書きますが、大友克洋はこう描けばかわいい女性が描けるんじゃん!ってかわいい女性が登場する大友克洋〜な絵になっておりますし、その大友克洋で思いましたが、「童夢」ってのがもしかしたら、超能力者は空を飛んで戦うって図式を生み出した諸悪の根源なのかしら? 「童夢」が提唱して「DRAGON BALL」が完成させたのかな? 人間の空中戦。あるいは、アメ公の「スーパーマン」まで遡る?

・まあ、本書もその「作法」に則って、空を飛んでます。えーと、幽体ってカタチで空を飛んでるのかしら。

・しかし、その大友〜なところがとてもいい感じ。そういや、最近、本家がマンガで描いてない分、模倣犯が少なくなりましたものね。内藤氏はとてもいい感じで大友〜です。大友〜の真髄は背景や群集の無駄なところでのしつような書き込みにあると思います。しかも、1巻の後半ほど、進化してさらにその真髄がわかってらっしゃる感じでよろしい。

・で、「電波」ってのを主題においてるわりにどこか明るい感じがあるのもいいですね。限りなく重くグロくすることも可能だけど、わりに快活で明解でどこか少年マンガなノリがあるところ(少年ジャンプに描いていたころの諸星大二郎氏を思い出したり)、なおかつ、電波憎んで人を憎まずというある種ベタなところが逆に好感です。

・そうなんですよ、いろいろと「古い」手法」を使われてる方なんですよね。でも、古いがゆえに、あまり追随者がなくて逆にとても新鮮ってことですよ。

・ということで、2巻目でいろいろと完成されると読みましたのでオススメは2巻目で出せたらいいなあと。
(17:44:23)amazon

「ななこまっしぐら!」1巻 小池惠子(竹書房)

・若奥さま4コマですね。
・平凡な専業主婦の若奥様と平凡なサラリーマンのダンナ様。そして、若奥様はダンナ様にラブラブと。

・昨今のひねりをきかせてる4コマの中にあって正面突破なノーギミックぶり。というか、王道はいつもノーギミックな設定なんですけどね。「サザエさん」「ののちゃん」「ここだけのふたり」等、とくに設定に特徴があるものはないでしょう。

・絵も丁寧で、後半ほどSDキャラ化していき(やっぱり4コマだとある程度の簡略化やSD化は必須ですな)、こっちはいい意味でも悪い意味でもイヤミのないものになってます。

・そして、肝心のネタも「ほのぼの」の真ん中を全力で駆け抜けようとして、あるときは盛大にスベったりもしてます。

・たとえば、奥さんは大の納豆好き。ダンナは大嫌い。だから、昼に1人になったときにこっそり食う。そして「は!これが禁断の味?」となるほのぼのっぷり。
・体脂肪計を、いきつけのドラッグストアで無料で計る。でも、ついに買った。ところがそれでも毎日計りにくる。なぜなら、ドラッグストアにある体脂肪計は計測が甘く体脂肪率を低めに表示するから。
・テレビで、お金持ちの冷蔵庫の中身を公開してる。すごい食材が並んでるけど、若奥様は、「あんなに長時間冷蔵庫を開けると電気代がすごいはず。でも、平気なのはお金持だからだ」と納得されている。

・とてもヌル目ですよね。おれは、「秋月りす氏が思いついたけどボツにしたネタを拾い集めてる」などと思いましたよ。

・ただ、すべての点でヌルいことが却って最高にバランスが取れているということになってるわけです。たとえば、秋月りす氏のは、そのキレすぎるネタのシャープさと、寺島令子のマネから派生したほんわかした絵にはギャップがあります。その寺島令子氏もほのぼの感やネタのヌルさでは定評がありますが、ときおりとってもオタクなネタが顔をのぞかせたりします。

・そういうのがあまり見受けられない。あえていえば、ドラッグストアの小物にこだわってるネタや、1人上手な若奥様(あまりダンナ以外と会話とかない)、全体的に「あるある大辞典」ライクなヘルシー志向にあふれてることなどはあります。もしかしたらその方面を掘り下げていくとなにか生まれそうな予感がしますが、そういうヘルシー志向な女性マンガ家は腐るほどいるので別の競争場所に向かうだけかなとも思います。

・おれの判断としては、「標準」です。2005年度の4コママンガの標準です。テレビのコントラストなんかを調整するとき「工場出荷時に戻す」なんて項目をクリックしたかのような標準っぷり。目盛りがみんな真ん中。そういった感じです。
・イヤな感じが少ないです。ただ、好きな感じも多いわけではないと。

・あと念のために書いておくと、非エロですからね。まったく下ネタないですからね。
(18:19:13)amazon

「ぼのぼの」26巻 いがらしみきお(竹書房)

・もうかれこれ20年くらい「ぼのぼの」とともにある人生だったりしますねえ。
・基本的に長いマンガはきらいですが、本作は別ですね。

・おれはやっぱりクズリのおとうさんが好きで好きでしょうがないなあと思うし、最近は1巻の中に必ず出演してますよ。ぼののお父さんが出ない巻でもいる感じ。
・彼のいいところは、確信犯的なボケですよね。26巻で、主人公のぼのはおとうさんの悪ふざけで怒りました。でも、彼は怒らせようと思って悪ふざけをしてます。
・でも、そう考えると「天然ボケ」ってのはタチが悪いですよね。天然ボケのボケは怒らせようと思ってやってるわけでなく、そもそもボケようとも思ってないんですからね。その結果、怒ったり笑ったりがまわりで起こるのは、だれも予期してないし期待してないところにありますよ。
・たとえば、ぼのは天然ボケですよ。彼は突然立ち上がるってボケをよくかましては、アライグマくんに「なんで立ち上がるんだよ!」とぶん殴られます。でも、ぼのは殴られたいから立ち上がったわけでも、笑いが取りたいためでもないですよ。つまり、天然ボケってのはそういう危険がはらんでるわけです。
・この場合の「天然ボケ」はかようなもので、テレビとかの天然ボケ、たとえば、山田花子さんやドランクドラゴンの鈴木先生のように、かなり予定調和な笑いに直結してるモノとは別ですよ。

・だからこそ「おれは悪ふざけをしてるぞ」と、子ども相手に全力でボケ倒すことができるクズリのおとうさんはステキですし、準レギュラーのようにいろいろと登場してるんでしょうね。

・そして、天然ボケの最たるものといえば、本作での「空を飛ぶ丸い雲」のことですね。すなわちUFO。ついにそういうものもネタになっていってます。そう考えると、動物漫画の規格を次から次へと更新していってる大河長寿マンガでありながら、未だに革新性を失っていない偉大なマンガといえますね。
・かつて、動物しか登場しないマンガでUFOが登場したマンガはあったか?ということですよ。

・相変わらず動物マンガのくせにおそろしいほどの「人間描写」があるマンガです。何回も書いてますが(たくさん出てて、たくさん感想書いてますからね)、ぼのぼのの登場キャラには人間の性格分類上のすべての種類の人間が登場してるそうですよ。だから、性格判断ゲームなんてのも売ってるくらいでね。「ぼのぐらし これで完璧でぃす

・でもって、26巻でも「空を飛ぶ丸い雲」のことに非常に興味を持ってるマニアとか、シマリスに突然トモダチになろうぜ!といってくる、「お笑い「キング オブ コメディ」」のおもしろい顔をした方に似ているリスとか、イヤな方面で非常に人間臭い人が多数登場します。

・まあ、結論としてまたしてもおもしろいなあと。
(19:18:06)amazon

2005年/2月/7日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「日本の夏、天狗の夏。」藤本和也(宙出版)

・藤本和也メジャー第一作ですよ。「中央線系マンガ家」ってオビにありますが、どっちかというと関西とかあっちのほうを思い出しますがねえ。大阪弁を使う話が多いし。

・個人的に出会って云々は省略させていただきますが、これまで、藤本和也といったら「餅屋ブック」であり、その中での「藤本和也作品集」より6作品。ほか、描き下ろしも含めて19作品。

・なんとなく、インディーズ時代の代表作も含めた満を持したメジャー第一弾といったオモムキがありますねえ。

・短編集ですね。
・天狗の面をかぶった女の子と同級生の野球部の男の子との会話を描いた「日本の夏、天狗の夏。」
・ふと立ち寄ったソバ屋の娘と寝る話「そば屋の娘」
・おれにはファーストコンタクトであり、思い入れが多い、ダメ男が10日で辞めたカメラ屋からくすねてきた使い捨てカメラで、彼女のアソコを撮る「カメラが欲しい。」
・川崎ゆきお氏の「猟奇王」に憧れる娘さんの話「屋根裏の猟奇娘」
・人型CDプレイヤーの話「美しひしらべ」(これはレアアイテム化してほしかったなあとか)
・藤子不二雄に挑戦の「ひまわりモコちゃん!」。講談調でエッチな「天狗退治」。「PEANUTS」に挑戦の「HOT HOT BOOGIE」。

・バラエティに富んでます。でも、その印象的な絵とともに統一感があります。

山川直人氏がサイトの日記で、「モテるマンガ」と評してました。山川氏はよく引き合いにだされますね。2〜3件そう評してるのをネット上で読みました。おれも引き合いに出したことをがありますが。

・このモテるってのは、本当、いい表現です。もうちょっと補足させていただくと、人懐っこく、嫌われないマンガともいえるんじゃないかなと。それでいてエッチな内容が多いので、つまり、嫌われないで下ネタを話す人ってのは、モテる人でねえ。すなわちそんな感じのマンガ。
・この点で最重要なのは、エッチだけどエロくないことなんですね。実は、細かくみるとけっこうエロいと思うんですが。「隣りの女」の事後の上気した表情とかねえ。きゃしゃだけどやわらかそうな女性のラインとか。

・で、明確な人なんですね。絵からしてイラストレイテッドな感じで、すべてにジャスピンです。それはすべてにそうです。わかりやすいテーマ、わかりやすいキャラ、わかりやすいストーリー。そして、それだけじゃないという。逆が非常に多い昨今ですよ。複雑なだけ、考えているということを誇示したいだけの「ストーリー」までいかない「設定」を並べただけのものって多いですよね。

・そして、本作であらためてセリフまわしの妙に感心しました。ネイティブな大阪弁というかねえ。生きたセリフの数々ですよ。

「カメラが欲しい。」はココロのベストですが、本作収録で描き下ろしの「夜を作る」が個人的にはとてもよかったです。夜、ラジオ、屋根、火星、タバコを吸う女子、いいところをみせたい男子、と、男子のロマンがあふれんばかりです。つまり、こういうことにつきあってくれる女子がとても萌える!ってことですよ。

・男のワガママや見栄張りや強がりにそうと知りつつも、つきあってあげる女子。
・それを描かせたら藤本氏、日本一じゃないでしょうかね。
・野球談義をちゃんと聞いてくれる天狗の彼女、求められるままに身体をあずけるそば屋の少女、ちゃんとパンツを撮らせてくれるカメラが欲しい。の彼女。講談もつきあってくれる、三上寛もかけてくれる。屋根の上でラジオに耳をかたむけてくれる。
・これらは相当グッときますよね。それが成年コミックのただヤらせてくれる女子ともちがい、ちゃんと「生きて」る感じがあるし(もちろん、成年コミックでもすばらしく「生きて」る女性を描ける人は多いのですがね)。

・ということで、先生の話長くなってしまいましたが、オススメと。
・また何度も何度も読み返しそうです。もう4回くらい読みましたが。

・藤本氏、以後、大作家となられて、文庫本サイズの「日本の夏、天狗の夏。」が発売されたら、また新しい発見がありそうな気がしますねえ。
(14:46:25)amazon

2005年/2月/2日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「東京命日」島田虎之介(青林工藝舎)

・グランドホテル方式という名前を覚えました。

様々な登場人物がひとつの場所に集い、それぞれの人生が交錯 していくストーリーは、その原点である名作の名を借りて「グランド・ホテル 方式」と呼ばれている。

・つまり、本作もこれです。ちなみに作者の前作である「ラストワルツ」もそれです。

・そして、また名作でした。

・12月12日は映画監督小津安二郎の命日だそうです。そこに集まる人々の「物語」が交錯するって話です。

・前作より物語の展開は地味ですが、さらに複雑な構造の話になってます。
「2回目」が楽しいマンガですね。2回目を読むときにあちこちにちりばめてある仕掛けに「ほお」と感心する。背景、群集かと思っていた1人が物語りのキーパーソンだったり、なにより、小津安二郎自体の持ってる仕掛け。そして、「これまで」「これから」のある芳醇なそれぞれの「ストーリー」。

・そして、ここで大事なのが「2回目」を読ませようと思うおもしろさがあることですね。こういう自称「壮大なスケール」の話はあちこちにあふれているのですが、それがおもしろいかどうかってのはかなり幅がありますよ。

・CF業界、バニラエッセンスをたえず携帯してるストリッパー、ピアノ調律師、ストーカー、消防士一族、太宰治、小津安二郎、寺山修司、青森、東京、ボーリング、それぞれの物語が交錯し、1冊の「東京命日」という作品になっている。

・人間賛歌であることよのお。前作も本作も共通するテーマは人間賛歌ですよ。複雑なストーリーからは一直線の極太のテーマが貫かれているわけです。

・問題があるとすれば絵柄かな。かなり人を選びそうなイラストレイテッドなタイプで、「絵がダメ」って人はいそうです。これは前も書きましたが、それでスルーするのは人生の損失ですよ。

・ところで、小津安二郎っておもしろいのでしょうか。おれもまだみたことないんだよ。たぶん、探せばビデオはありそうな気がするんだけどね。そういう元ネタを知らなくてもまったくもっておもしろいです。

・次はグランドホテル方式じゃないのも読みたいなあ。

オススメ
(18:05:34)amazon

「御緩漫玉日記」1巻 桜玉吉(エンターブレイン)

・待望の新シリーズです。
・もう、日記マンガ一代男として、その人生を「ときわ荘」とかの人とはちがった意味で一生を捧げているような方でありますよねえ。

・釣りをバリバリしていた「防衛〜」。なんだか歯車の狂っていた「幽玄〜」に続いて、伊豆に家を建てて調布と2足のわらじ生活と、10年前の女性アシスタントのトクコさん(メガネっ娘で巨乳で純情)編との変則2本立てで続いてます。

・このトクコさんシリーズがいいですね。おれは、セーターを着た巨乳に弱いってことを思い知らされました。トクコさん最高ですよ。

・すでにそれが事実なのか虚構なのかは基本的にどうでもいいことですわなあ。そこに「おもろ」があるかどうかですよね。
・とりあえず、桜玉吉が描いてるって理由ONLYですよ。連載してる「コミックビーム」を買ってるの。

・今回、2つの時間軸をいったりきたりしてたり、伊豆の家にいるとき、昔の調布、今の調布と、わかりにくいところもありますし、やや混乱してますが、おもしろいです。楽しいです。これは素直に楽しんでアハハと読むのが1番、作者も喜ぶのじゃないかなと思うのですよ。

・ちなみに、リアルタイムの話ですが、つい昨日、桜玉吉氏は盲腸をガマンしていて腹膜炎を併発して入院されていたそうですよ。で、単行本1巻分くらいのネタを仕入れたそうです。ますます「おもろ」は安泰ですね。(参照:「たけくまメモ: 桜玉吉、無事退院」)

・あと、トクコさんはどんどんエッチでかわいくなるところが、おもしろいですねえ。ちなみに声を出して笑うほうは、O村編集長(ま、この場合、種村か)が最高でした。「ヴーメコメコメコ」では声が枯れるくらい笑いました。

・ちなみに、カバー取った後のギャグなど、あまりそういうところの遊びがないのがやや残念なような、それでも内容が濃いのでいいのかと思ったり。

・んー? すげえすげえ面白いのですが、これを1巻だといって買ったところではじめての人が面白いのかどうかおれには判断できないんですね。それこそ、「ファミコン通信」での創刊号の「しあわせのかたち」から読んでるんですしねえ。
(18:55:28)amazon

2005年/2月/1日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「雲の上のドラゴン なつこの漫画入門」塀内夏子(講談社)

・全然知らない人です。もちろん、名前は存じてます。ただ、まったくマンガを読んでません。なぜならおれはスポ根マンガを読まないからです。サッカーとか登山とかそういうマンガを描いてる方ですってよ。知ってた? とかいって。

・おれがスポ根マンガを読まない理由はさておいて、本作はそのマンガ家さんにおける「マンガ入門」マンガです。たとえば、石ノ森章太郎氏の「漫画入門」なんぞは文章がメインのマンガ入門だったりするんですよね。

・ひとくちに「マンガ入門マンガ」といってもいろいろなアプローチがあります。技術論、根性論、「自分の場合はこうだった(半自伝風)」論、などなどね。
・本作は3つくらいのパートに別れてますね。意外に長期間にちょこちょこと描かれたものをまとめたためかな。

・最初は素人の投稿に直しを加えるタイプ。
・続いて、「私はこうだった」って自伝風。これが1番長いかな。
・他プロ作家さんとの対談マンガ。

・最初の技術論でのかなりストレートなアドバイス。意外に描かない「金」についてのネタも多いし(巧い絵は金になる等)、自伝パートでのけっこうさらけ出してる感。母校の中学でのマンガ研究会にいったときの話や、森川ジョージ、小林まこと、島本和彦諸氏との対談マンガもいい。とくに小林まこと氏との話がすばらしい。というか、小林まこと氏はすばらしい。

・描き下ろし巻末の話もとてもいい。

・こういうエッセイマンガだと人となりがとてもよく出ますし、エッセイマンガに限った話じゃないし、本作でも言及されてる部分がありますが、自分が出てない表現ってのはダメでございますわなあ。そういった点ではとても塀内氏のことは好きになります。

・で、やりたいことやって食っていくのは大変だぞってメッセージも良く伝わりますね。

「マンガほどめんどくさいことはない。まだ働くほうがマシだ」

・などといってマンガを描かなくなった桜日の丸ってロクデナシの名言を思い出しますよ。

・あと、ポイントは、マンガ家になってからのことがけっこう細かく描いてるところかな。自伝パートのところにありますが。
・持ち込んで、賞とって、さあ連載!ってところまでのいろいろを、これだけ細かく描いているのは、あまりみない。というかはじめてかもしれないなあ。連載決まるまでが大変なんだなあ。
・シロウトのマグレ当たりから、それをアベレージにするのがプロって感じでしょうか。そして、なってしまうと「楽」って描いてるところもステキかも。これも一理あるしね。

・あけすけな人だよなあ。

・けど、塀内氏のマンガを読もうとは思わないなあと。本域の絵が嫌いだし。前も書いたとおりスポ根も嫌いだし。ただ、本作はとてもおもしろい。「マンガ論」で、「マンガ家論」で、「プロマンガ家論」で、「技術論」で、自伝。
・商業誌で描いてるやつでこれを読んでおけって思うやつが何人かいたりして。

オススメ
(14:30:58)amazon

「らき☆すた」1巻 美水かがみ(角川書店)

・あずまんがーな4コマです。女子がたくさん登場して、日常をほんわかほんわか過ごすタイプの例のアレ。

「コンプティーク」で連載?(ていうか、まだあんだね、コンプティーク)で、どういう形態での連載かわかりませんが、雑誌掲載時はカラーだったのを白黒にしました的なボンヤリした画質がマイナス。ややイラっとするんだこれ。

・具体的な内容を紹介させていただくと、小さくて運動神経バツグンで一夜漬けの天才でありながらゲームオタクなこなたさんと、トモダチの双子(性格正反対)がメインですかね。あとは、メガネっ娘の優等生、大阪弁の先生、婦人警官等等。

・まー、ぶっちゃけ、設定組替えズルってなニュアンスはありますね。そんなことをいうと、芳文社と竹書房の80%の4コママンガを否定することになるんで、いいませんが。いってるやん!

・問題は萌えるか萌えないかです。おれは表紙のこなたさんの口元にホレて買ったくらいで、絵はバリバリOKです。ただ、みかけだけで萌えるほど男は安くないんじゃあ。萌えの奥は一応深いことになってるんじゃああ。

・ということで、内容なんですが、本作を読んで気づいたことがあるんですよ。
・たぶんに、本作、女性的かとお見受けするんですが、「こんなもんで萌えるやろ?」的なサジ加減を感じるんですが、ひとつ致命的なミスがあるんですよ。
・それは「男」なんですね。実に男が描く萌えマンガは、あまり男の影はありません。エロマンガですらない場合があります。
・本作もそのフォーマットに則って、男キャラはほとんど登場しませんが、「それじゃあ、あまりにも不自然だ」とばかりに、セリフやネタに男の影をチラつかせます。それはダメです。決め付けますがダメです。逆に不自然です。むしろ、男キャラがいるのにまったくその存在を感じられない「あずまんが大王」の大発明ぶりを感じます。いかにあのマンガは不自然な世界にあるのかって思い知るんですよね。
・で、かがみさん(双子のつり目のほう)に男がいるってネタをふられると恐ろしくシラけます。なんだろこれ? だけど、担任の先生に男がいないネタとか、こなたさん、ギャルゲーやりまくりってネタは、別におかしくないんだわな。

・その男がいるいないってネタがこの「もえよん」な世界に合わないんかな。

・ああ、ネタっていえば、ほのぼのネタからオタクネタまでいろいろとありますが、その濃度のバランスもちょっとアレかもしれないなあ。エロゲーを父親に買ってもらうってネタと、扇風機に声をだして「あ〜〜」ってやるネタが同居してるのってどうよ?

・ま、ネタも絵も後半ほどいい感じなのでまだおれ的には大丈夫ですし、いわゆる芳文社の「もえよん」がらみの中でもぼちぼちクオリティは高いんじゃないかなあと。2巻も一応買おうかなあと。

・しかし、マインスィーパ上級クリアに100秒切るってものすげえことじゃないか?
(14:58:19)amazon


メールケージバン