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ポトチャリポラパ/コミック/2005年
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2005年/4月
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2005年/4月/24日
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「鬼堂龍太郎・その生き様」1巻 田中圭一(集英社)

・こういうイメージ。
・ヒモの先に水晶みたいなとがった宝石があります。そして、それがゆっくり円の中を動いてます。その宝石の先がさすものが「流行」だと。
・この向かってる先によって人々は踊ったり踊らされたりするんだなと。

・そして、その宝石が現在示してる、あるいは、向かってる先は「下品」じゃないかなと思うのです。本作を読んで強く感じました。

・さて、こういう宝石の動きに応じて、すばやく転身を図る人、ガンコに同じ場所に留まる人、いろいろな表現手段を人は採用してますが、田中圭一氏はガンコ一徹に下品を貫いてます。それは、出世作の「ドクター秩父山」から揺るぎがありません。

・作風も揺るぎがなく、当初は劇画タッチでバカなことや下品なことをするというパターンでしたが、近年、手塚治虫氏をはじめ、有名マンガ家のタッチをモノにしてからは、バリエーションが増えたことで破壊力も比例しました。

・本作は、ぶっちゃけると、サラリーマンの「ドクター秩父山」です。
・あらすじを書くほどかどうかわかりませんが、部長だった男が社長の陰謀により、ヒラまで格下げになりまして、それからサクセスストーリーで返り咲くという設定を下品なギャグを塗りたくった感じのギャグマンガになっております。

・実にマンガ的です。こういうマンガならではのマジックも最近の流行ではありますね。
・主人公の鬼堂は、本宮ひろ志タッチです。そりゃ、こういう題材で、なおかつ、集英社連載ならそれは欠かせないところでしょう。ところが、鬼堂とは会社がちがうけど、陰ながらバックアップをする別会社の専務である、ギャル川って、下品のカタマリのような女は、手塚治虫タッチです。手塚治虫タッチのイマドキ(でもないけど、イマドキって記号での)ギャルと、本宮タッチが同居してます。ついでにいわせてもらえば、社員として、なんだかよくわからないエイリアンがいますが、これは前記の「ドクター秩父山」での名キャラクター・ケロタンをホーフツとさせるもので、実は田中圭一氏の本来のタッチなのかもしれません。
・それらが同居してるというのはマンガが数あるメディアでもっとも表現するのに優れてるし適してると思います。ま、最近は「リアルさが損なわれる」という理由であまり用いられなかった技術ではありますが。
・で、「下品」ですよ。いろいろある引き出しを「下品」ってことでかなり統一してます。ギャル川を筆頭として、変な生物以外のニューキャラはすべて下品です。
・本作を読むと「下品」も難しいと思うわけですよ。たとえば、ギャル川は下品なことばかりいいますし、パンツ脱いで、スカートの中にケータイをつっこんで写メール撮ってみせるというワザとか使いますが、これはともすれば「エロ」に向かうところです。しかし、彼女はちゃんと下品のラインに留まっているわけです。
・まあ、血気盛んなガンバリ棒を持っておられる方とか、手塚フェチはわかりませんが。とってもアッチョンブリケなことになりそうですね。

・なんか知らんけど、ここしばらくちやほやされてる劇場版「クレヨンしんちゃん」も最新作は下品路線に戻ってるし、妙な気品さえあった「ドラえもん」も声優陣を一新してテンポよくしてドタバタさせるようになりましたもんね。

・こういう流れに乗って売れる!までいくのは難しいかもしれませんが、現在のどこか漂ってる下品ブームに合致してたのか、これまでになく笑いました。「死ぬかと思ったH」という実話をコミカライズしたものを勝るくらいの破壊力があります。でも、たぶん、基本的に初志貫徹だとは思うのです。こっちの気分が移ろいでいるだけで。

・ただ、現在2005年の春は下品がキてますよ。サイコー!

オススメ
(15:07)amazon

「不安の種」3巻 中山昌亮(秋田書店)

・最終巻。残念なようなホッとしたような、「まあ潮時か」と思うような。

「新流ホラーコミック」なんてオビに書いてあります。まあ、意味がわかりませんが。「韓流」にかけて「新流」なんでしょうかね。もっと、流通してる言葉でいうと「新感覚ホラーコミック」ってあたりかしら。

・理由なんかナシでただ気持ち悪い、それがホラーかどうかもわからない、奇妙な現象を描いてるショートコミックです。

・たとえば、夜。街中の道路に無数の目が現れる。そして、たまに通るクルマにひき潰される。ブドウを踏み潰すような感じで。で、ほかの目は、その車の後をゆっくりとおいかける。スライムが移動するような感じで。

・霊感のある彼氏。とにかく「あそこいくな」だのうるさい。そいで、たまに入った居酒屋で、あの席はダメだとはじまる。プチっとキレた彼女は「あそこに座る」と向かおうとする。「待てよ」と彼氏は彼女の手をつかむ。そしたら彼女にも「みえた」。

・不自然なくらい鏡のないアパートの部屋。彼女に不便だからとつけられてしまう。そうしたらあらわれる。

・いっこ、トリビア的なこと。観光地のホテルとか、旅館。そこが「でる」ところかどうか見極めるいい方法は、部屋に絵が飾ってあるかどうかですって。ほら、お札とかを隠すために。

・と、こういうのが展開していきます。

・こう、中山氏の絵のすごさを味わうことができますし、3巻ではひときわ風景や背景がとても「芸」をしてました。

・というか、よく「おまけページ」を差し込むような、ページの都合上のあまりのところにその元になった写真がありましたね。鏡のない洗面台や、なにかでてきたポスト、毎夜なにかが立ってる電柱などなど。
・これがなぜか知らんけど、ややシラけた。その場所の写真を元に「でっちあげた」って感じがしたからかなあ。よくわからんけど。それとも飽きたのかしら。ホラーってのは同じ手法が続くと飽きるよ。

・あと、その巧すぎる絵が鼻についてきたのかしら。巧いのはわかったし、すげえ怖い。でも、それが巧すぎるから却って「描かれたもの」という感覚が強くなるというかね。

・だから、そういった意味じゃ潮時だったかなあと。
(15:30)amazon

「ろまんが」2巻 新井理恵(小学館)

・わろたわろた。やっぱ、現在「下品」がきてるよ。
・で、なぜか、新井理恵氏の下ネタはひかないんですよね。おれはたいてい女性マンガ家の描くところの下ネタはギャグでもマジでもショボーンとなるタイプなのに。

・前作の「うまんが」から主役交代劇を経ての「ろまんが」です。
・お嬢さまとそれに仕えてる召使と、お嬢さまのトモダチと、なぞの馬星人たちのギャグマンガです。藤子不二雄の居候マンガの歪んだやつですね。いわば、スネ夫が主役になったようなもんだもんね。

・で、ラブコメのような、ギャグのような、よくわからないラインを漂ってます。ただ、下品路線は強固になりましたね。

・漂流して漁船に救助してもらったら人魚に襲われて、漁師さんが全員人魚の歌声に惑わされて手淫にふけるシーンとかありますよ。
・で、ツッコミが「さながら汁男優さんの撮影風景に迷い込んだ気分です」だからねえ。

・あと、「ケシゴムのケシ太郎」なんてスゴイのもありました。これは読んでみてください。

・相変わらず、ボケにたいして、これでもかって長いツッコミを入れるというスタイルは変わってません。
・つーか、今気づいたけど、ひょっとして、新井理恵氏は、背景を描きたくないからふきだしを画面いっぱいにしてできるだけ省略しようと思ってる?

・まあ、ともかくそういうことで「読みで」がありますよ。1ページあたりに要する時間は、他の一般的なマンガより1.5倍は多いんじゃないかな。「ゴン/田中政志」(サイレント恐竜マンガ)とかだと、6倍くらいちがいそう。

・ということで、発売されてから読むまで時間がかかりましたが(読むのに時間がかかるものはどうしても腰が引けがちです)、とてもおもしろかったです。
「うまんが」からガッと、毒素の強い「ドラえもん」とか読む感覚でどうぞ。
(16:30)amazon

「武装錬金」7巻 和月伸宏(集英社)

・ネット上では打ち切りで話題騒然なやつですね。

・おもしろいと思うんだけどねえ。おれ的に難を挙げるとするならば、アクションシーンが不味いことかな。まったく燃えない。念のために書いておきますと、おれは本作が初和月作品で、以前はまったく知らないし、興味もないです。

・いろいろなことを考えて、試しておられますが、なんつーかな、しっくりこない感じ? ま、おれはもともとこういう超人が空中に浮きながら超能力を駆使して戦うのはキライですけどね。それを差っぴいても、あまりおもしろいことない。
・それを端的にあらわしてるのが、この手のマンガ恒例のキャラの人気投票。1位はヒーローじゃなくてヒロインです(ま、組織票だそうですが)。

・斗貴子さんとカズキの逃避行に1人プラスという状態。で、ヒロインが小さくなったり、相合傘とか、三角関係とか、ラブコメ&萌えの要素を加えてるところがまたおもしろい。

・あと、いろいろ考えておられることがよくわかる単行本恒例の各話セルフ解説。

・んー、打ち切りとわかって読み返すと後だしジャンケンでなんとでもいえるけど、がんばって描いてるし、ちゃんとおもしろいのになあとは思います。だけど、打ち切りでもやむなしと思ったりね。

・ま、雑誌のほうは読んでないんですが、コミックではちゃんと終ってて欲しいなと思いました。
(16:50)amazon

「バトル・ロワイアル」15巻 高見広春&田口雅之(秋田書店)

・最終巻でしたね。終りましたね。一時はどうなるかと思っていましたが終りました。

・この15巻では丸々1巻かけての「グランド」とつけるのがふさわしいフィナーレっぷりでした。

・突然中学校1クラスが無人島に放り出されて殺し合いをさせられる。小説もバカ売れしましたし、映画化もしましたし、有名な話です。

・本作では、そのクライマックスを、最後の「敵」である桐山との戦いに焦点を合わせてました。もちろん、それでマンガの半分ほどですが、それ以降が、グランドエピローグとでもいうべきものですかね。

・いや、終ってみればよくできてたなと思います。「もう終わり」という前提があるからこそ安心して、タール通り越して固まりかけのコンクリートみたいな時間の流れの進み方でクライマックスまでみることができましたし、なんとなれば、往年の名作をホーフツとさせるくらいの堂々とした終わりっぷりだなと思いましたよ。雑誌で読んでいたらイライラでおかしくなっていかもしれませんが。

・巻末対談で、原作者が作画者に「線が細かいけど、マンガ的な絵」なんてホメてるのかなんなのかよくわからん評価をしていたのが鋭いのかなんなのかよくわからないというのが、このコミック版のBRをよく表してるような気がしました。つーか、原作者がどこかエラそうだよな。まだ、1作しか書いてないのに。

・さ、やっと原作を読むことができる。ブックオフではすっかり100円均一ですが。
(17:33)amazon

「GANTZ」16巻 奥浩哉(集英社)

・んー、だいじょうぶか?
・いろいろな点で心配になってきてる16巻です。
・もちろん、考えてないことはよくわかってるんですよ。たぶん、奥氏が表現したいことの1位は、「おれのCG技術のすごさをみてけれ」ってことだと思われるんですよ。すごいですよ。「超リアルじゃね? マジヤバいYO!」ってことですよ。異存はないですよ。

・で、主人公の恋人が死にました。でも、生き返ることになりました。超能力で通り魔退治です。幼児虐待です。カオスです。あと、ドラゴンボールです。

インプロビゼーション
・ジャズなんかの専門用語です。即興演奏のことですね。ロックとかでもあります。こればかりやってるバンドとかもあります。20分でも30分でも続けられるそうです。
・そして、基本的に「どう終らせるか」って考えずにはじめるのがインプロですよ。それはマンガも基本的にそうです。

・マンガは人気がでると、「もっともっと」となります。読者も編集も作者もだいたい「もっともっと」になります。そこでインプロです。この3者で演奏が続けられます。とくに編集と作者のコンビネーションでつづきます。うまくかみ合えば奇跡の演奏ということになります。莫大な金も動きます。
・ただ、その見極めを誤ると、グダグダになっていきます。なにをもって「グダグダ」ととるかはそれぞれの立場や感じ方で様々ですが、ポイントはおれ(=自分)です。おれの感性がおれには一番重要です。

・ということで、最初から、理論もへったくれもないところではじまってるおっぱいとドンパチのマンガだったので、インプロの展開はやりやすかったのですが(即興演奏は曲が単純なほうが楽でしょ)、いろいろとくわえて、ややアンサンブルがいびつになってきつつあるんじゃないか?と思いました。
・もっと直接的なこといえば、無駄に設定を増やしたり、伏線をたくさんはると、グダグダになるよ? というか、すでに「どうなったの?」って伏線ばかりじゃないか。その上、死んだ人が生き返るってのは、タブー中のタブーじゃないか。まあ、集英社マンガのお家芸であるんですけどね。でも、本作はそれをやっちゃうと台無しになるんじゃないかなあ? 死が軽い、どこかウソみたいな世界で、残虐なことが起こってるってのがおもしろいのに。

・ま、飽きたらいつ止めてもいいから気楽に読むことできていいんですけどね。
(18:00)amazon

「おキツネさまでChu」2巻 速野悠二(秋田書店)

・1巻は書店的にはノーマークだったのにも反して売れたって感触がありましたね。そいでもって待望の2巻ですよ。書店にもドーンとありましたよ。まあ、それだけ期待されていたということでね。やっぱり、いつの時代でもエロは強いよね。

・ということで、キツネの神様と合体して、悪霊を退治する、エッチなエッチな退魔マンガです。

・これが「エッチ」ってコトバがとても似合うものです。主人公はサエない男なんですが、妖怪を退治するために変身するものがこれまた女の子(巨乳で女子にモテモテ)だもんで、どうしても、一線を越えないんですね。せいぜいで「ソフトレズ」というあたりまで。
・この湯加減と女性のかわいさが人気の秘密だと思うのですよ。

・エロポインツとして団体戦ってのもあるかもしれません。2巻の最初では、クラス全員の女子がスクール水着でローションプレイです。と、最低でもオッパイ1人前ってことはないです。んー、いいかた悪いですが、数で勝負的なところからきてるのでしょうか。単純にたくさん描くのは大変だと思うのですが、この物量作戦はかなりポインツな方がいらっしゃるんじゃないかしら。成年コミックですが、師走の翁氏も団体戦はトクイな方ですよね。

・で、精緻な線ではあるけど、どこか往年の少年誌エロをホーフツとさせる「健康的なお色気」があるかわいらしさがね。

・ものすげえスッポンポンになる率が高いわりに、下着なんかのシワも増えてきましたね。魂削ってますよ。

・だから、オールヌードでは現れないのに、下着姿だと、メコスジが現れるというユカイなことになってます。まあ、いずれの場合でも女子のエロい姿はユカイでユカイでしょうがありませんね。

・全体的なトーンが明るいことも重要か。これは好みが分かれるところですが、あっけらからんとオッパイやおしりがある状態ってのはいいですよね。いい意味でマンガ的な描写もいいと思いますし。だから、しっとりしたエロが好きな人にはアレかもしれない。

・ああそうだ。AVでいうならば、全裸で運動会したり、水泳大会したりするやつ。ああいうのがスキな人は直球ストライクでしょう。

・後半のプロレスとチャンバラネタもおもしろかったですので、そういった方向もいいかもしれないけど、エロをおろそかにはしないでほしいと思ったものです。
(19:08)amazon

2005年/4月/21日
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「巨乳ドラゴン」三家本礼(ぶんか社)

「ゾンビ家れい子」って作品がありますよ。名作だそうですよ。いろいろな人が絶賛してましたよ。でも、おれはなんか手がでなかったですよ。知った時点で、けっこう巻数があったしね。単行本で10巻すぎたものを読んで「超おもしろかったよ!」と興奮するのはややバカらしいですよ。イマサラジローですよ。

・だから、本作が出るのを待っていたですよ。本当は講談社から発売予定でしたが、なんか知らんけどいろいろと大人の事情を経て描き下ろしも含めて、ぶんか社から出ることになったみたいです。

「ああ、こういうのか」

・読後、そう思いました。以下「こういうの」を分解していきましょう。

・なんか知らんけど、以前、ホラーマンガがブームになりましてね。有名なところでは犬木加奈子とか山咲トオルとか神田森莉とかな。
・おれも唐沢俊一氏をはじめ強力にプッシュしてる方やわかに増えてる雑誌やコミック点数(当時ね)で、どうなんだろう?といくつか手を出しました。そのときの感触に似てる気がします。ただ、21世紀らしい洗練された線ではあると思いましたが。PC仕上げだろうし。

・んー、そして、ぶっちゃけますと、当時のはどれもこれもおもしろいとは思いませんでした。

・本作。ストリッパーとゾンビが延々と戦うものです。いろいろと「差し込む」要素がありますが、連載誌が休刊になったことも含めて、急ぎ足で終った感じですね。

・あと、おれ、終わりがないって理由でゾンビが出てくるマンガもあまりスキじゃないんですよね。映画も好きじゃないけど。

・ということで、オッパイとゾンビと血みどろのアクションが全部の70%くらいを占めてます。


たった7回の短期連載ではありましたが、オレはけっこうがんばった、と思っております。

・あとがきにありましたが、本当にけっこうがんばられたとは思います。

・ただ、基本的に好みではなかったですね。「ゾンビ家れい子」の手が出ない理由がよくわかりました。おれの中のなにかが拒否してたんですね。そういうマンガはいっぱいあります。どんなマンガも読むことができる人がうらやましいところですよ。
(18:29:15)amazon

「BIG乳s です!」七瀬あゆむ(集英社)

・おっぱいのでかい元気印のニュースキャスターがほがらかに健康なお色気を振りまいてる4コママンガです。

・下ネタはあるけど、乳首は死守と。お色気はそういうラインです。

・で、ネタ。ニュースの本番中地震が起こる。当然オッパイはブルブル震える。でも、いつまでも震えてる。おや?と隣りの男性キャスターが思ったら、地震が怖くて自らが震えてるというオチなのです。
・胸の谷間に止まった蚊を「ムギュ」とつぶして「私、蚊をとるのはトクイなんですよ」とか。
・温泉でレポートしてるときに胸を押さえてる。「恥ずかしがっちゃダメだよ、手をどけて」というと、ものすごい浮き上がってしまう。
・台風のレポをしてきました。スタジオに戻って、レインコートを脱ぐと、胸元に雨水がたまってる。

・そういうのー。「うひひひひひ、すげえおっぱいだなあ」と読むためのマンガですね。
・もともと4コマの人じゃないみたいで、各コマ、えらい律儀に丁寧に描いてありますよ。そういった描写はバッチリですね。読みきり版はフェラシーンとかもありますが、基本的に、「健康的な」で止めてあります。

・おっぱいの大きなドジっ娘が奮闘する。女子アナ。健康的なお色気。この2つがストライクゾーンに入ってる方はOKですね。4コマとしてみるところはないです。

・ちなみに、「××in乳 / 奴隷ジャッキー」という「成年コミック」だと、これと同じ、オッパイがすごい女子アナが最終的にすごいことをするというほがらかエロマンガがありますので、よかったらどうぞ。
(18:48:59)amazon

「ロボこみ」3巻 やぎさわ景一(秋田書店)

・変な女性キャラばかり登場する、学園ハーレムギャグマンガの3巻目。

・3巻でも順調にキャラが増え続けてます。まあ、お約束の展開でもありますね。

・まあ、基本ラインは、主人公の男子がツッコミなんですね。で、ヒロインであり、ロボットであるけど、だれも気がついてないロボ子他にツッコミを入れるわけです。走るときに足もとのタイヤで走ったり、水着とかいって変形してたりするんですが、まわりは誰も気がついてないって世界です。ほかにも足がない幽霊の同級生が「幽霊なんて迷信や」といってたり、猫娘がいたりと大変です。
・3巻では、ニセ超能力者と、学校に転校してきたのが幼馴染だけど、どう考えても傭兵をやってきてたりするキャラが増えました。

・いろいろな点で細かいのは、アシスタントをしていた、浜岡賢次(元祖浦安鉄筋家族)氏の影響でしょうか。キレはもうひとつかもしれませんが、キメが細かいマンガです。んまあ、描写とか危うい感じもするけど。たとえば、キャラがパラッパラッパーみたいな薄っぺらにみえたりね。

・ギャグでおもしろかったのは、ニセ超能力者ですかね。「超能力で球を自在に操って勝利するわ」といって、ただシンプルに野球が上手というオチがすばらしい。
・あと、クリスマスネタもよかったよ。ものすごい意表をついたサンタクロースが登場します。

・安定してますね。秋田書店的な安定さ。あとは、画力がつけばつくほど読者が増えると思います。たまにはエッチなのもいいかな。化け猫がキウイを食って成体になって酔っぱらって(キウイはマタタビ科だから)主人公を誘惑する話みたいの。
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「ゼロイン ZERO」いのうえ空(角川書店)

・いや、詳しい内容は忘れたけど、最初におれが手にとったいのうえ空も短編集だったなあ。という書き出しでわかるように本作も短編集です。

・目玉は「ゼロイン」のプロトタイプの「ZERO IN:PROTO」ですかね。とにかくドンパチ描きたい!ついでに女も!って思いがあふれてますね。まあ、それだけって感じで通り過ぎた感じですが。まさにプロトですか。

・アパートの住人がヒーローだったりして、大家の娘があたふたするすちゃらかSFコメディ連作「ダイっキライ!」

・けっこうタッチがむかしであり、ネタも昔の、剣と魔法の中世なんだか、西部劇なんだか、微妙なラインのやつ「風を抱きしめて」

・これまた一時期「もうええわ!」ってくらいあった妖魔退散げな話「デリでり」

・そして、いのうえ空氏の最大の特長でもある、なんだかとても肉感的(デブ寸前)な女性が存分に描かれてるバーチャルアイドルマンガ「ばーちゃるツインズ」。おお、こんな乳首になるのか。

・ということで、「おお、こういうのはやってたなあ」と懐かしい気分になれます。作品解説で書いておられたとおり、すんげーエッチなやつを読みたいです。初の成年コミックとかがでるアカツキにはガッツリ買います。
(22:35:01)amazon

2005年/4月/15日
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「デビル17」1巻 豪屋大介&西条真二(角川書店)


「警告! この作品には過剰な暴力描写・性描写が含まれています!!」

・このオビのコピーが決め手になりましたよ。「鉄鍋の醤」の西条真二の性描写に暴力描写? どんなもんじゃろと。
・考えてみれば、「鉄鍋の醤」は中華料理のグルメマンガではありましたし、直接のソレはありませんでしたが、非常に暴力的で性的な感触があったマンガです。主人公の攻撃的な性格や言動、まわりの女性のやや誇張しすぎの、メリハリがありすぎの描写など、グルメマンガにしては画期的に殺伐としてました。

・まあ、その作家のマンガのコピーにあらためて上記のようなことが書いてあれば興味がでるじゃないですかぶっちゃけエロ描写目当て。

・17歳の高校生だけど、すげえ改造されていてスーパーマンです。銃弾直撃もへっちゃら。デコピンで壁の向こうまで人間はぶっとび、「思う」だけで、女性はヌレヌレになります。そして、望みは平穏な学園生活でした。

・ということで、いろいろな高校にいっては、グジャグジャのゲジョゲジョになるというマンガですね。男は殺されるか巻き添えを食って死に、女はエッチな目に遭うか死ぬか。そして、敵は死ぬ。

・主人公の少年があまり「いいやつ」じゃないのがおもしろいですね。そりゃああれだけの力があって高校生ならやりたい放題になるもんねえ。

・まあ、西条氏も原作付き(小説みたいね)とはいえノビノビと描いておられる感じがしていいですね。基本的にこういうのが描きたかった人じゃないんかなあと思います。

・小説のほうもおもしろそうかも。「ウルフガイ」的なカタルシスがありそう。
(13:33:51)amazon

「バカ姉弟」4巻 安達哲(講談社)

・2人で暮らしてる、未就学(3歳)の姉と弟。そしていろいろと世話を焼く近隣住人のホノボノショートコミック。オールカラー。

・これ描くと、ほかのマンガ描けなくなるんじゃないかと思うくらいな気がします。なんつーか、ボンノウが抜け落ちていく感じがするんですよね。読むほうも不思議な気持ちになります。いろいろと俗っぽいところもあるんですが、清濁混ぜ合わせながらも姉弟が浄化していってる感じでね。

・なぜか、オリエント急行に乗ってる話(食堂車のシェフが姉弟に食べさせようと必死になる話)と、姉弟のために近所の職人が作ったものが次々と通販のヒット商品になる話あたり大好きですね。

・癒されるってのとちがうんですよね。上記のとおり「抜け落ちる」って感じ。ハラリハラリと抜けていく感じですか。

・作者はこれだけで食っていけるでしょうか。
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「平田弘史のお父さん物語」平田弘史(青林工藝舎)

・侍の登場する劇画を描かせたら日本一の方の、エッセイコミック他です。

・実は、おれが最初に触れた平田弘史がこれだったんですね。
・あるときトートツに「ヤングマガジン」で本作の連載がはじまりました。強烈なインパクトがありましたよ。おせじにも「新しい」とはいえない作画スタイルと、説教じみた内容。でも、異様に記憶に残ってる。

・平田氏は趣味でDTMをやっておられます。まあ、当時はPCでの音楽は主流ではありませんが、シンセやシーケンサーのタグイを駆使して、打ち込みで音楽を作っておられます。ただし、我流なので音楽知識がわかりません。そこで娘さんに解説してもらうわけですが、かんしゃくを起して表に飛び出して木刀片手に素振りをはじめるのに大笑いした記憶がありました。
・今回久しぶりに読ませていただいたのですが、また笑いました。イキオイだけってのはわかりますが笑ってしまったのですね。

・そのあと、「ミスターマガジン」やら「アフタヌーン」の講談社系列で、本域の歴史時代劇を拝見させていただきましたが、なるほど、すごい方ではあるなと。ま、今より、時代ものに興味のないころだったのですが、すごかったという記憶は残ってます。まあ、それにしても、本作が効いてると思うのですね。本作アリきで読んだから時代劇画も読むことができたと。そういう平田弘史の人とナリと考え方がぎゅうぎゅうにつまった表題作です。

・ここでちゃぶ台をひっくり返しますが、「なにいってんじゃ、このオヤジ」ってのは当時も今もあります。ただ、ものすごい自分の頭で考えてらっしゃる姿勢に感動しますね。すべて試行錯誤の上に自分のモノにしてきたものばかりですよ。
・こういう姿勢の方が作るものが、世の中を動かしたりするものだったりするんですよね。もしくは、そのきっかけ。

・いろいろなものを上手にいただいて「編集」するほうが売れるものを作ることができます。「創作」とは編集のことだとフランスのえらい人がいってたそうです。でも、その編集を非常に効率が悪いですが、全て自分内に消化してから独自の展開をする人というのが、だれにも思いつかないものを提示したりするんですよね。だからこそ提示したものに自信がみなぎっていたり、読む人にインパクトを与えられたりするわけですよね。

・結論とか、最終的に提示してるテーマなどは、これまでにいろいろな人がいってきた「あたりまえ」なことが多いですね。まわりの人や家族と楽しくまじめに生きろってことでね。ただ、ソレに至るまでの葛藤やら、不器用な逡巡やらがおもしろいとはいえますし、通り一遍の書物を眺めて書いたものじゃないわけで重みがちがいますよ。まあ、それを「重いな」と思うのが本書なのかもしれないなあ。

・あと、オマケでギャグマンガとかあります。意味不明で、本人もなんでこんなの描いたのかわからないって4コマがいい味だしてますね。

・オススメはしませんけど、またいつか思い出して読むかもしれないし、ひょっとしたらそのときにココロの中でオススメをしてる感じもしますねえ。
(14:45:03)amazon

「マサシ!!うしろだ!!」押切蓮介(講談社)

「でろでろ」を好評連載中の押切氏の「でろでろ」までの短編を集めたものです。

・なるほど、若いし、青いし、ワケわからんし、それでいて「でろでろ」へといたる道がはっきりわかるという、押切氏の終始一貫ぶりがうかがえるとてもいい短編だと思います。

・とくにおもしろかったのは、女性描写ですね。またかよ。いや、大事なことなんですって。
・たとえば、「悪霊ドリル」という短期連載作。悪霊に騙されて恋人を奪われた主人公が悪霊をやっつけるために道場に通うというムリだろ?って展開なマンガなんですが、女子は目を大きく描いたり、オッパイ大き目だったり、明らかに記号的には現在の「でろでろ」より「美人」のはずなんですが、もうぶっちぎりでルカ(でろでろの主人公の妹)さんのほうが勝ってますよ。

・あとは、「変」な感じがすごいです。この「変」はいいも悪いも持ち合わせてる「変」で、「カースダイアリー」やら「悪霊ドリル」がずっと設定や話を次に持ち越してつづいてるところや、そもそもこれらはなにを目指してるマンガなのかとか、謎が多いです。
・正直「悪霊ドリル」の読後は非常にさわやかでした。いい青春マンガを読んだ感触がありました。せつないしねえ。「カースダイアリー」のラストもよかったです。でも、それと同じくらい「わけわかんねえ」って思いもあるわけです。それがとくに変なところです。

・まずは「でろでろ」をお試しください。それで「押切超いいよ」となったらぜひ本作も。本作もいいんだし。ああ、そうだな。「インディーズ時代」って感触か。
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「でろでろ」4巻 押切蓮介(講談社)

・いい。ものすげえぶっちゃけトークでいうと2巻くらいまでは「おもしろ」を読み取ることはできてましたが、好きではありませんでした。もう4巻あたりはすげえファンになってますよ。すばらしいね。

・ということで、乱暴な男が幽霊をぶん殴りまくるギャグマンガです。
・笑える幽霊マンガということですが、女の子がかわいいね。巻を重ねるごとにかわいくなってます。今回にわかに新女性キャラが増えましたしね。それでもずっと登場されてる妹のルカさんがとてもいい。現在連載中の全マンガでもいいところにいく「妹」キャラじゃないでしょうか。そして、ルカ萌え〜とか書かれるのはあまり好きじゃないんだろうなあとも思ったりする。
・サイトーさんもいいですけどね。「マサシ!!うしろだ!!」の最大の弱点はサイトーさんがいないことだな。あんなかわいくて忠実な犬はいないですよ。主人公とサイトーさんの人格が入れ替わった話なんかもとてもよかったね。ヒューマンタイプのサイトーさんもとてもいいですね。

・あとは、話のまとまり方も一段とよくなってきた。ちゃんと「怖い」ってシーンではホラー特有の怖さみたいのが醸し出てきてますよ。いや、これまでは主に画力のせいで、「ああ、ここは本来怖がってみておくとあとのギャグが活きるんだろうなあ」と読者が多少補填してあげないとダメだったしね。

・黒ナースもよかったね。
・わりに絶賛。
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「赤灯えれじい」3巻 きらたかし(講談社)

・ナニワ純情ラブコメの3巻ですが、巻頭からうれしはずかし初体験シーンなので「純情」ではないわな。

・あと、ラブコメではひとつの到達点でもありますからねえ。男性視点だと「ゴール」だし。ラストが射精で終るマンガは多いですよ。

・この後の展開、まあ、まったりと過ごすみたいですね。あんまり、ジェットコースターみたいなめまぐるしいんじゃなくて、お猿の電車みたいなノリで。ゆっくりと愛を育んでいきまっせ的な。

・だからかもしれないし、前からそういう傾向にありますが、背景描写が多くなりましたね。あと、その書き込みも加速がついたかのように細かくなってきてる。まるで、精緻にリアルに描写すれば、それだけチーコとサトシが生きていると思ってるみたいに。

・あとはどうなのか微妙なところですがチーコの顔つきが変わったように見受けられます。ものすげえ大きな変化じゃないですが、ケンカっ早いパツキンのヤンキー女のカドが丸くなってきたような。それを描写で表現するとしたらすげえことですよ。まあ、全体的な変化でたまたまおれがチーコの顔だけ目がいったからかもしれないんですけどね。

・今後どうなるんでしょ? 恋のライバル出現とかそういう展開になるの? それはなんかちがう気がするんだけどねえ。
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「ややBUSU」2巻 綾小路あや之&前川かずお(講談社)

・あー、1巻発売時は非常にこのワードで検索してくる人が多かったのですが、最近はないですね。

・性格良し、ナイスバディ、一途、でも、鼻と口まわりがちょっとアレな「ややBUSU」を恋人に持つ男のラブコメ。

・1巻では、ライバルの女性に巻き込まれるパターンでしたが、2巻は、血液型やら女性のほうのライバルやらです。

・アレですね「赤灯えれじい」とは対極をなすラブコメではありますよね。どちらもラブコメであるから、共通のテーマは「愛」なんですがね。
「キーワード」ありきで展開していく話が多いですし、そういうのがすけてみえる感じです。でも、そういった点では非常にわかりやすいです。次から次へと、キーワードを軸に、アップダウンの激しい展開があります。
・ただ、だからこそ、そのキーワードがハマると大きいけど、アレだとアレになるんですよ。2巻はどうもアレだったんかな。3巻はグラビアアイドル編になるんか。それでまた人気が出るのでしょうか。
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「πパイ」8巻 古屋兎丸(小学館)

・いつまで続くんじゃと思っていた大河オッパイマンガも次で最終巻ですね。なんだか、小学館コミック、とくにスピリッツ系はここんところ大変革にあるみたいで、いろいろとめまぐるしい感じがします。「ギャラリーフェイク」も最終巻らしいし。

・結局のところ、ラブコメの王道である主人公とヒロインが両思いでゴールインという展開のために仕込んでる8巻でしょうかね。そのための「はさみっ娘」か。

・あと、久しぶりにパロディなネタ。「つげ義春」はマンガ界における公式パロディ元の財産ですね。もし、パロディに金が取れるなら、今ごろ、マイケルジャクソンくらい金を持ってるんじゃないかな?

・鉄砲水ネタも久しぶりに強引なやつでおもしろかった。昨今はうまくいきすぎて破綻がなかったけど、8巻では初心に戻ってムリ目なネタが多かったのもよかったなあ。「はさみっ娘」の調教にバタバタしたりするのとかね。

・最終巻はどうなるんでしょう。こういうマンガマンガしたものの最終回って描いたことないでしょうし、楽しみです。
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2005年/4月/10日
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「ホントにあった痛いお話」VA.(Gakken)

・うぎょーとか叫びながら、グッと息を飲みながら、お尻のあたりがキュっとなりながら読みました。

・やはり田島みるく氏がはじめたのでしょうか、「ホントにあった〜」シリーズって。そういったやつで、笑える話や、恥ずかしかった話を投稿やマンガ家さんの体験をモトにマンガ化したものです。

・で、本作は「痛いお話」ですよ。

「愛のさかあがり」という名著があります。とり・みき氏のエッセイコミックですが、この本の中に読者投稿というカタチで「痛い話」がありました。トタンの屋根に飛び乗ったら、ボルトが出たところを踏んでしまって、足の裏にぽっかり穴があいて、しかも、ピンセットでそのアナから、靴下と、靴の裏地が出てきたとか、朝ねぼけてて、歯ブラシと安全剃刀をまちがえてごしごしと歯を磨いたりねえ。
・この深夜のラジオ番組みたいなノリでエッセイコミックを展開するパターンはとても画期的でした。なぜなら、その後、とり・みき氏、この「痛い話」ネタを紹介する「タレント」としてテレビでレギュラーコーナー持ってましたもん。ちなみに、「愛の〜」はそれだけじゃないですけどね。

・そういう「痛い」を寄せ集めて1冊の本にしたもの。メジャーなマンガ家さんは、うぐいすみつる、流水りんご、山田貴敏といった感じですか。なにげに、うぐいすみつると流水りんごってビッグネームですよね。あとは、浪花愛さんなんかも。「OUT」世代だから浪花さんだけ敬称。シャア猫萌え〜。

・おれは成年コミック雑誌と、4コマ雑誌を読むたびに、「マンガ家って世の中にたくさんいるんだなあ」と感嘆します。あと、2時間ドラマのクレジットとかみても似たようなかんがいにふけったりします。

・おおむね、4コマ雑誌ってのは、読者も作者も女性によるものが多いですね。「パロ野球ニュース」とかだと別ですが。前記の田島みるく氏の「ホントにあった〜」なんてのも、後で月刊誌になりましたが、8割〜9割が女性読者の投稿で、女性マンガ家によるマンガ化だった気がします。本作も、いちいちマンガ家さんのプロフィールとかないけど、自分の分身であるキャラやら、ただようムードやクセなんかでおれ判断する限りは、山田貴敏氏以外は女性じゃないかしら。

・で、これがまた「絵」として判断するとTHE稚拙なんですよね。だいたいが、ビッグネームだろう、うぐいす氏の表紙イラストですけど、「どこの中学生文集だよ?」って感じですよ。ものすげえ率直に書かせていただくと。

・ところが、マンガ本来の目的であるところの、「痛いお話」となると!

「ほほほ。女はね、毎月見てるから血なんか怖くはないのよ」

・と、「吉祥天女/吉田秋生」のセリフを思い出すくらいの痛さですよ。
・こう、「絵」の持つ奥深さというものを改めて考えてしまいますよ。たとえば、ルノアールの裸婦画より、トイレのラクガキのほうがコーフンしたりするっていえば、わかりやすくない?
・ちょっとそれはひどくない?ってスーパーの特売のビラの捨てカットより不味い絵がたくさん登場します。もちろん、リアル描写ってのとは程遠いものばかりです。まあ、三原千恵利氏(この方も名前は知ってました)のような「うげげげげげ」っていうようなスーパーリアルなのもありましたが。
・だけど、ちゃんとどれもこれも「痛い」んですね。まあ、ぶっちゃけ、この題材にあんたの画力じゃあアウトだろう? 青木さやかの水着グラビア程度にアウトだろうってのもありましたが。

・痛い表現ってのは女性は長けてるのかもしれませんね。あと、「ホントにあった〜」ってのがかなり効いている。

・で、本当イッキ読みできないです。ちょっと読むのを後悔するような痛い話のオンパレードで、なおかつ、バリエーションがとても豊富な。まあ、指先とツメがねえ。あううううう。

・軽い例を挙げると、両手に大事な荷物の入ったカバンを持って、駅の階段で転げてしまって、転ぶわけにはいかない、荷物も放り投げるわけにはいかないとって一瞬の間に迷った挙句、正座したまま、階段を滑り降りた話とか。

・耳かきしていたお母さんの後ろから子供が抱きついたら「パーン」って音がしたり(なんでかはわかるでしょ)。

・なかでも、新しいと思ったのは、天ぷらを揚げていて、落としそうになったから、揚げたてのエビ天を空中で思わず握りしめたってやつ。これはないパターンですよね。

・もうそこいらの呪怨や貞子や稲川淳二より恐怖体験ですよ。読む絶叫マシーンですよ。坂を登りきったところの「助けてくれえ」って感じがソックリ。

・ということでインパクト一発ではありますが、オススメ
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「あまえないでよっ!!」3巻 宗我部としのり(ワニブックス)

・いいね。好調3巻目。なんでもかんでもアニメ化決定だからして本作もアニメ化決定さね。

・尼寺に男が1人の尼寺ハーレムマンガです。
・で、修業する日々ですよ。主人公はオッパイとかみたら「覚醒」してしまうんですね。で、いろいろとドタバタしたりしんみりしたりと展開するんですね。

・原作協力のボヘミアンK氏の力も大きいのでしょうがバランスよく展開していきます。それはカーリングマンガであるところの「オレンジでりばりぃ」でもいっしょです。坊主の妖力対決マンガにもならないし、単にエロコメラブコメにもなってない、かといってどっちのニーズにもきっちり応えつつ展開する。

・3巻では敵キャラ登場ですよ。「適乳」ですよ。大きすぎず小さすぎずですよ。いいですよ。おれは登場キャラじゃ生稲雛美さんの次に気に入りましたよ。ボーイッシュで中性的でありつつ適乳ってあたりがとてもいいですね。エロキャラとしてのツカミもとてもよかったですし。

・こう、マンガ家さんの描く絵にはそれぞれ特性がついてる場合があります。RPGにおける「とくぎ」とか「ジョブ」みたいな感じで。
・絵が精緻とか、大変萌えるってのは、全体的なレベルですが、そうじゃなくて、もっと細かいところでして、たとえば、それをエロに特化して考えますと、「やわらかそう」(これにしてもいろいろな形容詞がつきますよ。ゼリーみたいとか)とか「大きい」「ツユだく」「いいニオイが漂ってきそう」とか。まあ、狂人レベルだと感じられることなのかもしれませんが。
・で、宗我部氏の女性には、「温かそう」と思うのですよ。体温以上の熱を感じたりします。おれだけかもしれませんがね。

・さて、業界全体の傾向なのか、今年に入ってからか、ビーチクが急速に解禁になってきてます。少年誌以上、成年コミック未満な、いつまでも大人になれないアダルトチルドレンなぼくらが読むタイプのマンガ、ああ、もっといえば、青年誌あたりから、徐々にビーチク描写が見受けられるようになってきてます。
・で、この3巻目は、COMIC ガム 2004年12月号の「海女えないでよっ!」と、COMIC ガム 2005年1月号の「いっしょに覚醒こうね!」では、その描写にあきらかな差があります。
・なんつーかな、それまでは、ビーチクが描いてなくても不自然にみえない描写で隠したり、間に服を入れて、NASAで開発された、女体のカタチがよくわかるピチピチスケスケスーツみたいのでニーズに応えていたのを「おまちどうサマ、乳首デース!」とばかりドーンと描かれてるような気がします。
・まあ、いずれにせよありがたいことです。不粋な団体が「ハレンチは許せないザマス」と再び叫ばないように口をミシンで縫ってしまいたいくらいです。とくに和歌山のほう(成年コミックのマークが出る原因は和歌山の主婦のガキの本棚からその手のエロマンガを発見したことに端を発しますからね)だったかな。

・ということでかなりファンになったので、羽田としのり名義で「夜のオカズ」を発表していたころの本も探してみようかしらという気になってます。

・あと、今、気づきましたが、「あまえないでよっ!!」ってのは、「尼えないでよっ!」ってことなの? ダジャレ?
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「ナノトリノ」3巻 ふくやまけいこ(ワニブックス)

・最終巻です。きちんと終りましたね。すごいすごい。

・いや、なぜに、大きなオトモダチの読むような「COMIC ガム」に連載されているのか謎でしたが、それもあとがきマンガにありました。

・田舎の姉妹が両親にあうため、ギシン様(トトロみたいなもんですか)といっしょに旅をする、江戸時代ベースのスチームパンクげな世界、んー、アニメ版の「あんみつ姫」みたいな世界(わからないですね)、ああそうか、「銀魂」みたいな世界でのアドベンチャーですよ。

・ラスボスのいる国の描写がとてもおもしろいんですよね。オンライン社会になってるわけです。どんな情報も購読鍵を使うと手に入る。無人カゴの入場券も、お芝居のチケットも。そう、つまり、インターネットになってるわけです。ただし、そのオンラインの「ライン」が目視できるようになってるわけです。上空に張り巡らされてる線をつたってるわけです。しかも、購読鍵ってのも銭湯の下足を入れるための木の札の鍵だし。
・ここいらの世界設定のバランスは今風でもありますけど、どこか懐かしい感じもあります。藤子不二雄や星新一などの1970年代の未来描写チックなアナクロを「ワザ」と描いてます。ここいらのセンスや手際のいいまとめっぷりはベテランの出せる味わいですね。ふくやま氏もかなり長い間オタク道を歩んでそうですしね。

・それでいて、その世界でのクライマックスまでの一気呵成の盛り上がりがすばらしいですよ。過不足無く、いろいろなキャラの見せ場を用意してます。アクションあり、裏切りあり、友情や愛情、そして、上記のオンラインはウイルスによって破壊したりしてますよ。

・感心するのは、それらすべての描写にブレが感じられないことですよね。「リュウ」って雑誌に連載されていたころがデビューなのかよくわかりませんが、そのころから拝読させてもらってるのですが、すべてにブレがないです。「まったく」ではないですが、かなりない感じ。

・いろいろな意味でなつかしくもおもしろかったです。巨乳女性キャラの入浴シーンとか珍しいシーン(おまけマンガで)とかも拝めたしラッキーでした。

・そろそろNHK教育あたりのアニメキャラ原画を描いたりしたらいいんじゃないかと思った。というか、本作をアニメ化しろよ。と思ったけど、そうならない「なにか」。もっといえば、犬丸りんやさべあのまが持ってない「なにか」がふくやまけいこ氏にはあるような気もした。
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2005年/4月/9日
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「華中華」1巻 西ゆうじ&ひきの真二(小学館)

・ひきの真二氏は好きな絵を描く人です。どれくらい好きかというと、「作画:ひきの真二」でとりあえず買ってみようかなと思うくらいです。「ドラマ新婚さん」というマンガからのファンです。まあ、それはともかく。
・そのオールドタイプの人物と、相反するかのような精緻な背景描写、まあ、学習マンガなんてのも描かれてる影響なのでしょうか、それでいてそれぞれのセンスはそう古くないし、ちゃんと背景と人物のバランスも取れているという、総合で、とてもマンガの巧い方ですよ。ちなみに本作の表紙では主人公ハナちゃんが「ペロリ」と舌を出してますよ。ペコちゃんみたいに。これがゴクゴク自然なたたずまいでそこにいるってのはスゴイことですよ。

・さて、本作。ヨコハマ中華街の名店で働くハナちゃん。楊貴妃の幽霊に見初められて、中華修業をすることになりました。そこで、昼休み時間に、2時間だけ開く老夫婦の店でチャーハンを作ることになりました。

・そうです、本作はチャーハンマンガだったのです。

・チャーハンはスターです。すなわち、星の数ほどそのバリエーションがあるということで、いろいろと変わりチャーハンを作り、どんどん有名な店になっていきますが、まわりの人はみんなハナちゃんがチャーハンを作っていることは知りません。

・そのチャーハンも巻末に詳細なレシピがありまして、かなり実用的なものにもなってます。

・これが、チャーハンですべてを解決な「美味しんぼ」みたいな話であり、なおかつ、パートナーとして、幽霊の楊貴妃ってのも相まって、どことなくストーリーがチグハグな感じ。流れはとてもスムーズだし、チャーハンが解決の糸口になるってつくりも堅実でおもしろいんだけどさ、幽霊に阿波踊りを教えたりしたらなあ。まあ、そういうのも嫌いじゃないけど、今風ではないわな。

・そこいの「おっさんファンタジー」は、ひきの氏の絵にあわせたのかしらね。とにかく懐かしいタイプキャラを描く人ですからね。かなり、リアル志向になった今でも(昔は3頭身キャラが多かった)、その当時の受け入れやすいキャラは最大の武器かもしれないし、それだからこそ、幽霊などといった展開にも割合とムリがないんでしょうか。これが作画:池上遼一だったらねえ。

・ラスト近くの「オムチャーハン」の回では妹も登場して、これがまたかわいいんだよ。と、女性キャラがいいですねえやっぱり。素直にカワイイわ。萌えの要素もあるけど、トータルな評価で「カワイイ」と思える感じ。

・ということで、奥様にはチャーハンレシピとして、オッサンにはビッグコミックうんちく部門として、お兄ちゃんにはカワイイ女性が登場するマンガとしていかがでしょう?

・あと、2巻以降もずっとチャーハンでいけるかな?原作がキツくなりそうな予感。
(16:39:10)amazon

「鉄子の旅」3巻 菊地直恵(小学館)

・先日、日本の全鉄道の駅下車を達成した横見浩彦氏と、マンガ家の菊地直恵氏、担当カミムラの3人でする鉄道旅マンガ。

・3巻では「とくダネ!」でおなじみの笠井アナがお子さん2人をつれて参加されてるのが白眉ですか。

・ということで、相変わらず、「おもしろ」を探しすぎて、ついつい1番目立つ「おもしろ」である、横見氏のウォッチングに終始してるあまり、鉄道も旅も関係ない「珍道中」になってますね。
・それはそれでおもしろいんだけど、なんとなくもったいないような。いや、そこいらの「いったところ情報」も律儀なくらい生真面目に挿入してるんだけど、おれはもっと普通に、いった先々の景色や駅舎をみたいと思ったりもするんですよね。

・だいたい、これから前時代的な差別発言を思い切って書きますが、女の「おもしろ」ってすごいおもしろかったためしがないんじゃ。ズボンのまま足湯に入ったり、タオルが足湯に入ったからって、別におもしろくもなんともない。うわ、いっちゃったよ。

・いや、今のままでもおもしろいんだけどね。もう髪の毛4本分くらい、景色とか場所のネタを挿入していただけるといいかなあと思うのですよ。

・ちなみに、鉄道好きのことを「テツ」というそうですが(本作で知った)、列車の写真を撮るのがメインな人は「トリテツ」、列車に乗ることがメインな人は「ノリテツ」というそうですよ。
(17:01:24)amazon

「竜宮殿」3巻 松永豊和(小学館)

・最終巻。いい配分ですわな。これ以上長かったらダレるしね。

・3巻では全編、タイムパラドックスネタであり、クライマックスであるという展開。
・竜宮殿という夢のような場所にいたただ1人のオス・博は反乱を起して竜宮殿を支配しようとした。そこに客として現れた、坊と兄の兄弟が立ち向かうと。でも、歯が立たないので、タイムマシンを作動させて昔に戻し、リセットしようと。

・とても「きれい」な話でしたよ。本当、ラストから逆算された物語ってのはキレイに決まりますね。マンガではほとんどないので見落とされがちですが、本来これが「物語」というものですよね。キャラをおいて、戦わせて、どんどん進行するってのは、それはそれで燃えるけど、結局、最後はなにも残らないし。たとえば、「ドラゴンボール」のストーリーを最初から最後までよどみなくいってみて、それになにか意味があるとは思えないじゃないですか。

・おもしろかったです。みなさんの心にどういう形であれ「残る」作品だと思います。3冊できれいに終ってますし。オススメしてもいいくらいですが。一応、赤字でのオススメはナシで。
(17:25:58)amazon

「ルサンチマン」4巻 花沢健吾(小学館)

・最終巻。かなり急速にしぼんでいった感あり。
・ネットゲームと、ギャルゲーと、恋愛というラインから、とてもおもしろい物語を作られたと思います。だけど、それを「紡ぐ」上でいろいろと問題があったのではないでしょうか。

・とくに4巻ではいろいろなことが「え?そうなの」とばかりドンドンドンと展開していきました。とくに顕著なのがキャラの心境変化ですね。これがつかみきれない。

・主人公のモテないくんが、ネットでバーチャル恋人と、いろいろとあった末に、恋人同士になりました。ところが、現実でもひょんなことから恋人ができて、オンとオフでのモテない君争奪戦がはじまったワケですよ。

・この主人公のモテないくんはともかく他のキャラ、とくに女性キャラの心境変化や、どうしてこんな行動してるの?ってのが解せないんですよね。
・ぶっちゃけ、エロシーンにエロシーンを描いてないのが最大の要因かもしれない。これは品位が落ちても描くべきでした。とくに主人公のバーチャルセックスシーン、モノホンのセックスシーンはどっちも重要でした。そして、女性には、そのモテない君と「してもいい」と思わせる説得力をもたせるために、もっとページを割くべきだと思いましたよ。
・それをやらずに風呂敷を広げて地球の危機みたいなところまでいっても、「はあ、そうですか」と。

・女性描写のリアルってのは、精緻でもなく、あけすけでもなく、「アリかも」と男が思った時点に生じるものですよ。だから、ツノが生えて、トラ縞のビキニで語尾が「〜だっちゃ」でも、「アリ」なんですよ。
・本作の最大の弱点はその女性描写に「アリかも」感がまったくなかったことです。それこそタイトルどおり、どこか、ルサンチマンがありそうな女性描写です。バーチャルもリアルも双方「いねーよ」か、「いてもタイプじゃねーよ」と思われた感じがあったような気がします。しかも多くの人に。だから、4巻で終るんだし、4巻にはオビがつかなかったのではないかと。シビアですけどね。

・風呂敷が広かったけど、別にたいした包むものがなく、なおかつ、うまく包むことができなかったと。

・うーん、描きたいことはわかるような気がするけど、描ききれてないこともわかったのですね。残念でした。次回作に超期待しています。
(17:47:33)amazon

「ダブルフェイス」6巻 細野不二彦(小学館)

・マジックで悪をこらしめる仕事人マンガも6巻です。

・非常に安定感があります。マジックのネタ、悪の手口、主人公がつとめてる消費者金融のウンチクと、1話にかけてる薀蓄の多さはかなりの目安になりますが、かなり毎回盛りだくさんです。

・たとえば、今回収録の「浦島マジック」。老人相手に高額な商品を売りつけるセールスマン。彼は近道だからと商店街を横切ったりする。そして、「老人に媚を売ってるから老人は嫌い」と傍若無人の限り。それをスタンガンで眠らせて、老人の特殊メイクと、身体中に老人シミュレーションキットを仕込み、老人の大変さを味わってもらうというオチ。
・これにちゃんとマジックも、サラ金ネタもからませてますよ。

・ただ、こういう幕の内弁当的なのもいいけど、マジックや仕事人シーンがなく、ウンチク+サラ金ネタの「イケメン店長」という話もよかったね。「美人には金を貸したほうがいい」っての。たしかにそうだよなあと。その理由とかは読んでみてください。

「うまく騙す」という点では、マジックもマンガも同じようなところがありますからね。細野氏もマジシャンに通じるものを感じてるのでしょうか。
・ガチです。まちがいなくおもしろいマンガを読んでおきたい石橋叩いて渡る派は読むべしよ。
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「ヤミの乱波」1巻 細野不二彦(講談社)

・講談社のもうひとつ路線がはっきりしないけど、ビッグネームを並べておけばなんとかなるだろと目論んで発売されてる「イブニング」において、ビッグネームのひとつとして連載されているハードボイルドスパイ活劇ですよ。

・舞台は終戦のGHQ支配下の日本。諜報部隊として活躍していた元軍人の桐三五が、再び「犬」として、活躍するんですね。そういう話。

・なんつーか、ついに歴史モノに踏み込んだかと思いました。わりにデビュー時期より読み続けている作家です。マニアではないので、全作品は知らないですが、だいたい舞台は現代日本だったような気がします。

・でもって、そのエンターテインメントの度合いをどうするかもうひとつ決めかねてる感じね。思想と身体をロシアに改造されたターミネーターみたいのと戦うって荒唐無稽なところもありますからね。「コブラ」みたいに片手がガンになってたりな。ま、ややスチームパンク風味があるのかしら。

・ただ、ページ数が多いのと、執筆ペースに余裕があるので、細野氏の本来のペースみたいなテンポで展開してるのが、なつかしくもあり、「ギャラリーフェイク」のフォーマットになれていた身には新鮮だったりしましたよ。相変わらず「これでもかこれでもか」とウンチクとかもつめこんでありますし、「お堀端無念仇討」のルメイ少尉、「敗残の離宮」の赤坂離宮などと、実在する人にからめて展開するウソ歴史話もミゴトです。

・しかし、オタクのいい年齢の重ね方の見本ですよね。デビュー作が「クラッシャージョー」のコミカライズで、「どっきりドクター」(最近アニメ化されてたよね。あれなんだったんだ?)で、「さすがの猿飛」あたりまでは、コッテコテの「萌え」サイドの方でしたからねえ。それをミゴトに路線変更で、オタクのスキルはそのままで、より広い読者層を確立したってのがすごいですよ。

・本作はポンポンとコミック出るわけじゃないでしょうしノンビリと次巻がでるのを待ちたいところです。
(19:31:14)amazon

「魔法少女猫X」2巻 おりもとみまな(角川書店)

・最高。ウマコ最高。

・でも、最終巻なのか? 残念。超残念。1巻からウマコがいてほしかった。

・人間と獣人が住む世界。獣人ってのは尻尾と耳がありコトバを話す「ケモノ」です。主人公のムッツリくんは、カンチガイオタクですが、暴走して人間に脅威を与えそうな獣人を取り締まる仕事をしてます。アキバ在住で魔法少女猫のペケと同居しながらアレやこれやとしてるギャグマンガですよ。

・2巻では、ウマの獣人でなおかつフタナリのウマコさんが登場しまして、それこそ馬並のチンポギャグをあちこちで展開しておられてそれがとてもいいです。でかいサラミとチンポを並べて「どっちがホンモノだ」にはかなり虚をつかれて爆笑してしまいました。

・ものすごいエロコメです。それに下品なギャグです。でも、いわゆる「萌え」な絵なんですよね。そのギャップにまず戸惑ったりするんですよ。
・あと、なんだかうやむやのうちに乳首解禁令がが業界を駆け巡っており、本作も後半とか、描き下ろしっぽいところで、「せっかくだからビーチク」攻撃が多数ありました。うれしいですね。

・ま、おりもと氏の次回作に期待と。ウマコは惜しいキャラですねえしかし。
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「元祖!浦安鉄筋家族」9巻 浜岡賢次(秋田書店)

・相変わらず日本一のギャグマンガですか?(そういうコピーだったことがあるのです)

・今回、顔のアップが多かったですね。表情の機微がすごいことになってます。
・でもって、学園ギャグ。まったく登場しなかった地味な3人にスポットライトをあててましたが、その3人の描写もすごいことになってましたね。どんどん、背景が精緻になってきて、それに付随して絵全体の底上げがすごいことになってきてますよ。

・それもそうだし、給食のメニュー「X」の話とか、掃除で蛍光灯を割り続ける話とか、通販で3段ベッドが5個くる話とか、地味なんだか派手なんだかよくわからない話がよかったです。

・書き込みとトーンワークが大変なマンガというくくりなら日本一のギャグマンガのままでしょう。
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「Pocket」1巻 しおやてるこ(芳文社)

・最高。最高。KR COMICS初の最高。

・ということで、何度も何度もスカをつかまされてきた「KR COMICS」(韓国淋病コミックス)の中で唯一もろ手をあげて最高といえるマンガについに出会いました。かなり悩んだけど買ってよかった。

・で、KR COMICSではめずらしいだろう、非4コマで、非萌えマンガなんですよね。

・ダイスケという小学生少年と、そのまわりの女子たちのショートコミックです。なぜか、ダイスケさん、モテるっていうか、女子には不自由しない星めぐりで、まわりにはお姉ちゃんの同級生から、ダイスケの同級生、幼馴染と多数登場しますが、あまり女子に興味ないダイスケは宝の山を目の前にしながらハナクソをほじってる毎日ですよ。

・でもそれがいいんじゃあ。

・アキってダイスケの同級生だけど、ボーイッシュでいつもダイスケを蹴ったりしてるけど、ダイスケは好きだし、わりにあからさまに好き好きビームをだしてるのに気がつかない。で、ダイスケが唯一「女」として憧れてる姉の同級生をみて、「スカートをはけば対抗できるかも」なんて、次の日にスカートをはいて現れたりするんですよ。
・ダイスケがカゼで休みだからって、さりげなさを装って御見舞いに行き、みかんをむいてあげたのをダイスケは受け取って食べる。それにすごく感激するも、ポーカーフェイスを装ったりね。

・ダイスケじゃないけど、同級生で、わりに好きあってるカップル成立しそうってのがいますけど、その女の子が転校。なんとか声をかけたいけど、ダイスケとかがニヤニヤしてみてる。だから、手をとって逃げ出すわけですよ。この後は涙涙ですよ。

・まあ、男子も女子も全員が全員、かわいいし、愛らしいんですよね。そういうピースフルな空気にあふれてる、かなり幸せなマンガですよ。

・で、おれは絵がいいんですよね。おれはシンプルな線でカワイイ絵がとても好きです。書き込んで書き込んでカワイイってのより断然好き。

・カバーめくったシークレットあとがきマンガにありましたが、たしかに、萌え4コマばかりの連載誌の中じゃあ浮いてるでしょうが、作品からにじんでる、このほのぼのとした時間が止まった感じこそが、実は萌えの真髄ではないかと思うのですよ。武士道とは死ぬことかもしれませんが、萌えとは寸止めのことかもしれません。

・小学生までの男に、女子高生までの女だと、あやまちは起きないし、スカートの中をみても、「そんなもんみせんなよバーロー」で終るんですよね。実際、そんな下品なシーンはないんですけどね。

・いいです。なんか、いいです。どこかがうずく感じです。「あずまんが大王」のキャラは同人誌に汚されるためのストイックな描写だけど、本作は汚したらダメな、ノーブルな感じがどこかしら漂います。

・んー、人を選ぶよなあ。オススメを出すべきかどうか。おれ的にはサイコーなんですけど、画期的なものがある?とか、たくさんの人とおもしろさを共有できるか?っていうと真剣にわからないんですね。
・無性にハラが立つって方がいてもおかしくない危険性もはらんでいたりするかもしれない。おれも20代だとあるいは「け!こんな女に都合のいい小学生がいるか!」って気分になった可能性もある。
・まあ、今はサイコーでしたが。

・そうそう余談。本作はそういうことでKRCOMICSだから手が出なかったんですよ。腐ったリンゴコミックの略ですからね。だけど、どういうわけか、ビニール包装してなかったので、中を確認したら、「大丈夫そうだ」と思ったので買いました。
・おれはビニール包装をしてるから「どんなだろう?」と買った本もたくさんありますが、その逆もたくさんありますよ。だから、どうだろう? たくさん売れそうなのは1冊はわざとビニール包装せずに立ち読み可にするとか、そういうのはどこでも推奨していったらいいんじゃないかな?

・個人的に、エミちんみたいなキャラが最近気になりますけど、彼女の男運の悪さは宿命みたいですね。
(20:39:40)amazon

2005年/4月/4日
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「アカシヤの星」2巻 たくまる圭(小学館)

・2巻も重い幼稚園マンガ。
・舞台がアカシヤ商店街って、いろいろな国の人がいるところです。そこの幼稚園だからいろいろな国の人がいる。で、差別やら偏見やらにまみれながら傷ついたり傷つけたりしながら主人公の青年はライフ・ゴーズ・オンといった感じですね。

・とにかく、差し出すカードが重くて重くて。そりゃあ、感動もするし、泣けたりもするんだけど、たとえば、読者がバッターだとすると、ボーリングの球を投げてよこして「打てないでしょ?」っていってる感じですよ。そりゃあ打てないよ。

・全然系統も内容もちがうんですけど、「G線上ヘブンズドア/日本橋ヨヲコ」を連想します。これもボーリングの球を投げてよこします。つまり、なにがいいたいのかというと、ホメる気がないやつが気軽にふれるには荷が重過ぎるマンガなんですね。逆にいうと、ホメる気がないなら取り上げるなよと。まあ、そんな理由で発売から1ヶ月以上放置されるのもなんだし、勇気を出して取り上げたポトチャリポラパの姿勢に拍手をヨロシクですよ。気軽に触れていきますよ。

・黒人と日本人のハーフの幼稚園児が「みんなと同じ」になるために漂白剤を飲もうとしたり、ガイジンだから差別されてると思って、日本人とは遊ばないと宣言したりね。もう、ウンコとウルトラマンのことしか興味がなかったおれとちがってかなりヘヴィなエピソードがあちこちにあるといった趣でね。
・それでも子供はかわいいよ。人間は人間だよと。たしかにそのとおりとしかいいようがないですが、つまり、それに導くまでの道程がけっこう「痛い」のですね。

・こういう表現だとカチンとくる人が多いでしょうが、あえていいますと、「感動マゾ」って人種がいるわけです。感動するためには手段もなにも選ばない、おれ(わたし)を感動させてくれ!って方々。
・おれはそこいらはライト指向なので、気がついたら涙が流れていたとか、後々まで深く印象に残ったって感じが好きで、「あっしがこうやったら感動してください」と、感動編の林家三平みたいのは苦手なんですよね。

・いや、本作がそれじゃないんだけどね。そこまで下品じゃないんですよ。それはフォローしておかないとダメなんですけど。
・作者は重いこと、ボーリングの球ってことをかなり意識しておられます。それでも描きたいって欲求と、読んでもらってナンボという鉄則の上でうまくバランスをとってるほうだと思います。おれは感動マゾ度がかなり薄いし、拒否反応があるタチなので、そういうところが敏感肌なのです。
・だけど、そういったダークサイドに片足つっこんでるなあと。もう最初のテーマからしてそれだし。このテーマを選択した以上、抱腹絶倒のギャグマンガになるはずはなくてね。でも、描きたいと。

・泣けますよ。と、いって終わりにするのが潔いのかな。
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「金色のガッシュ!!」20巻 雷句誠(小学館)

・好調ですね。累計2千万部ですか。各100万部づつか。そいつはメルメルメーなことです。

・いい意味で力を抜いてますね。ここが尾田栄一郎とちがうところです。だから、ギャグが決まる。まあ別に尾田栄一郎と比べなくてもいいんですが、おれの定期購読してる同じくらい売れてそうな似た感じのマンガが「ONE PEACE」なもんで。

・20巻にしてモモンみたいなキャラが「ちゃんと」登場してられるってのがスゴイですよ。スカートめくりが得意な魔物だってさ。そこで、ジョージ秋山のパロやら、いろいろと「悪ふざけ」をするところがエライなあ。

・あと、後半の音楽対決も笑うなあ。最初は雷句ギャグは嫌いだったですが、最近はかなりクリティカルにヒットします。

・まあ、その他は、こないだの団体戦の焼き直しみたいけど、それはそれでいいんじゃないかな。偉大なるパターンですよ。
・まだまだ「好き」です。
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「伊勢佐木真剣卓球師外伝 ラバーズ7」3巻 犬上すくね(小学館)

・そうかわかったぞ。犬上氏は女子なのに男子の萌えに理解を示してる感心な女子ではなくて、男子が女子に萌えてるのに萌えるという図式を描いてるんだな。だから、男子にあまりリアリティがないんだ。
・というか、本作の、30歳過ぎて、雑居ビル経営してる、ヤクザなオッサンが女子高生にオロオロしすぎ。これがやっぱり2巻から度を超してるわ。

・それでいて、もう1人の男子キャラ(高校生)も、みてらんない。
・これって図式として、萌えのために在るキャラを女子がみてて思う感触に近いのかしら。

「こんなやつぁいねえ」

・ものすごいベタに出てくる感想です。ただ、女子キャラは「こんなやつぁいねえ…but」って感じですよね。それがロマンというものです。

・だから、男子キャラをおろおろさせるナツキという天然小悪魔キャラの目的は男子読者を萌えさせるのではなく、そのキャラにおろおろする男子キャラを描きたいからって構造なのですね。まあ、そのナツキさんもいろいろと大変な目に遭ってますけどね。なんか、このマンガ、登場キャラは楽をさせてもらえない感じですのね。

・そういう運命とはいえ、男子キャラに「もっとしっかりしろ」っていいたくなるおれでした。
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「風水先生 Dr.このは」2巻 寺田としのり&C-SHOW(角川書店)

・オビはウソだよなあ「痛快!!!!風水ラブコメ」だって。かなりタチの悪い(ホメコトバね)パロディ満載のSMギャグマンガだわなあ。
・まず最初にパロディありき。で、これでもかとパロディをつめこんでます。これが原作つきってこともあり、かなりテンコ盛りです。つーか、なにがなんだかわからないくらいです。
・そう、「不条理日記/吾妻ひでお」が確立した元ネタがわからなくてもなんかおもしろいってミラクルが本作でもやや発揮されてました。
・基本的にベタなのもありますけどね。忍者の「山田"風"太郎」とか。これは和風の風です。頭のミソのかわりにプリンが入ってるというかなり力技。というか、ムチャクチャ。なんかなつかしいギャグマンガって感じもするくらいハイテンション。
・これといい「魔法少女猫X」といい、角川書店のギャグってなにげにすごいよなあ。

・あらすじを書こうとしていろいろと眺めたのですが、よくわからんかったよなあ。珍奇なマンガということでいいのかなあ。
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「団地ともお」4巻 小田扉(小学館)

・相変わらずとてもとてもおもしろい、小学4年のともおが大活躍のマンガです。
・んー、昨今の小学館コミックはオビがアタリマエだったので、4巻にしてオビがなくなったともおは売れてないのか?って気がして不憫です。ちなみに最終巻の「ルサンチマン」もオビがなかったです。
・でも、とてもとてもおもしろいので安心してください。

・4巻では凛々しい美人なのにバカの女子高生・青戸さんとちょっとガサツな小学生ケリコとのケンカ。
・出番が多かった単身赴任のともおの父親が出演する話全般。とくに、来るといった父親がこなかったときに怒ったともおが夏休み中海パンで過ごすという話。
・ともおの命名のひみつ。
・委員長とともおの日直の話。

・そして「スクールテクニック」。

・こういうなんでもない話が大好きです。ともおには重要であり日常であるスケッチ。
・そうじゃない話もありますし、そういうのが好きな人もいるのかもしれないし、週刊ベースで描いておられるとネタがつづかないのかもしれないです。そういうムラをどう思うかですよね。

・たとえば、人気があるのか?と思う「スポーツ大佐」というマンガ内マンガといったオモムキでともお世界においてともおたちが熱中してるマンガのエピソードとか、ともおのお姉さんの同級生だけど交通事故でずっと植物人間だったコの話。どうしようもない母親と父親といるこれまたお姉さんの同級生の男とか。ときおり、重いのがスルッとはいってるのですよ。

・真剣白羽取りをするともおみたいに「なんだこりゃ」ってのもありますし。

・まあ、4巻は青戸さんとお父さんが濃い感じでしたね。ともおすら薄いくらいこの2人が活躍してました。

・ともおはおもしろいのでまだまだ続いてください。
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2005年/4月/3日
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「失踪日記」吾妻ひでお(イースト・プレス)

・結論からいうと傑作ですよ。オススメです。ある程度客観視していかないと書くことができないので、まずは、そっちのほうから書いてみます。

・マンガ家がいました。ベテランといえるキャリアを持ち、2度もアニメ化され、長者番付に載ったり大金持ちになったりはありませんでしたが、根強いマニアを多数持ち、かなり成功したと思われるマンガ家。

・ところが、「描けない」という理由で彼は失踪します。そして、ホームレス。1度は警察に捕まって家に帰りますが、2回目も失踪。今度はガス配管の仕事をします。そして、再び家に戻り、今度はアル中になり強制入院。

・そのサマを描いたエッセイコミックです。

・ホームレス時期には、シケモクや食い物を拾ったり、凍死寸前になる筋肉が収縮する状況になりながらも生き延びたりする。晩年にはスーパーを発見し、優雅なホームレス生活を満喫したりする(なにせ太って帰って家族にひんしゅくを買ったりするくらい)。

・ガス配管工生活では、かなり窮屈になる人間関係も赤裸々に。

・そしてアル中として精神病患者としての入院生活では、まあ、ネタには困らない方々が大挙していらっしゃるわけです。

・巻末のとり・みき氏との対談でも語っておられたし、まえがきにもあったとおり、「リアルだと描くの辛いし暗くなるからね」というスタンスで飄々と描かれてる。「貧乏」を「ビンボー」にする感覚ですかね。ビンボーにすれば、ゴールデンでもバラエティとして成立しますからね。

・ここいらのスタンスや構成の妙は、さすがに長年のマンガ生活で培ったフットワークですよ。純粋にあまり知られてない世界を垣間見ることができる知的好奇心もかなり満たされますし。

・ただねえ…。いや、もうちょっと客観してみるか。

・継続は力なりなんてことはよくいったもんで、ギターなんざ3日も弾かないとそれを取り戻すのに1週間かかるっていいますけど、マンガもそうなんですよね。
・ちょっと前に、復刻マンガブームみたいのが一瞬ありまして、なつかしのマンガ家が、どこにいたのか、いろいろと引っ張り出されて、ちょろちょろ描いてましたよ。
・ただ、これがおもしろいことになつかしくないんですよね。だって、10人いたらだいたい9人までが当時の絵じゃないんだもん。

・描き続けていても、マンガ家はそのキャリアと顔に刻むしわと反比例して、線が簡素になる傾向にあります。逆にアシスタントやPCを駆使して「これでもか」って濃厚になるマンガ家もいますけどね。

・本作も、(あえてこう書きますが)おれの「吾妻ひでお」とはちがう「吾妻ひでお」が描いてる「失踪日記」ですよ。

・小学校5年生の春休みに在原書店で買った奇想天外社の「メチルメタフィジーク」で脳天をぶん殴られてそのあと人生のかなり大きな軌道修正を強制させられたあの「吾妻ひでお」じゃないんですよ。「陽射し」で美少女エロマンガのプロトタイプをすべて作り上げた「吾妻ひでお」じゃないんですよ。「やけくそ天使」のサンタになって孤児院のガキ全員とやる阿素湖素子に興奮した高見クンがおれの「やけ天」の2巻(秋田文庫版)をかっぱらったまま転校しやがった「吾妻ひでお」じゃないんですよ。

・いや、冷静に考えると、それ以前の「吾妻ひでお」、すなわち、「ふたりと5人」やら「ヤドリギくん」とかともちょっとちがいますしね。

・とにかく、絵の差がとても大きい。それはいいとか悪いとかの評価は分かれると思うし、この作品にはとてもいい感じに作用してるとは思うけど、あの「吾妻ひでお」の絵と考えると「なんだこりゃ」なんですね。

・それは、同人誌での「産直あずまマガジン」でさらに顕著です。おれにとって最盛期だったと思われる、「ななこSOS」や「スクラップ学園」(今からなら、この2作品をそろえればいいんじゃないかい?)のリメークがとくにアレなことになってます。

・んー、ものすごい率直な意見を書かせてもらうと、現在はどこか寝ぼけたような絵なんですね。シャープさがないというか。全体的にボワンとしてるというか。まるで最盛期の吾妻ひでお氏の絵がドラえもんだとすると、今のは、「うまい棒」のあいつって感じですよ。そういった駄菓子屋コピーな風情を漂わせてます。
・本作でも、92年に復刻された「不条理日記」の巻末に描かれた「夜の1」と、その後の絵の落差を見ていただくとその一端はわかるんじゃないかなあと。

・いや、でも、今の絵になって最初の傑作かもしれないよなあ。復活したときは「やっぱ年齢には勝てないか」とがっかりした記憶があります。一応コミックは買ってましてましたが。

・吾妻ひでお?だれそれ?の人のほうが「絵、下手だよなあ」と思われるかもしれないがおもしろがれると思ったりしますね。

・そう、正直、大ファンだったので、吾妻ファンの警官が「なんでホームレスなんかしてるんですか?」と嘆く(本作に収録されてるエピソードです)のと同じ気持ちになるんですよねえ。

・ただ、おれも失踪したい願望があるので、最初のホームレス編(アル中で入院とかはゴメンだけど)はうらやましいなと思ったりねえ。

・ということで、エッセイマンガの傑作としてオススメ

・余談。
・これはなかなか手に入らなかったので、同人誌を買ったり、「COMIC新現実」の吾妻ひでお特集を買ったりしてましたが、どれもこれもおもしろくはありませんでした。本書だけあればいいんじゃないかと。本書は復活のための第一作って感じはしませんでしたが、とてもおもしろくはありました。
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「るくるく」4巻 あさりよしとお(講談社)

・現在、もっとも、吾妻ひでお氏の血筋を引き継いでる作家ではありますよね。
・4巻です。悪魔の娘るくるくとネコにされた父親とスローライフを営む少年の物語です。
・4巻ではとくにそのノホホンライフがクローズアップされていてよかったです。
・フィルムのカメラ(しかも、メカニカルシャッターな。ライカタイプの)で写真を撮るるく。想い出のアルバムネタはよかったね。
・まきで風呂の湯をわかするく。
・魔法の水の話(知らなかった)。
・ディジリドゥ。

・かと油断してほのぼのしてると、「悪魔の奇跡」みたいなネタをすっと差し込んだりね。ここいらの硬軟の巧さはたまらないものがありますね。

・るくさんも相変わらずカワイイね。無表情のようでかなり表情豊かってのがいいよね。
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「真・異種格闘大戦」1巻 相原コージ(双葉社)

・復活した「アクション」で連載されてるものですね。相原氏はデビューがアクションでしたっけか。

・まー、デビューからずっと迷走し、模索し続けてる作家さんでありますよね。それで、毎作品作風を変えるいがらしみきお氏なんかのラインを憧れつつも、失敗作や大空振りをしてしまう。それは実に代表作で出世作の「コージ苑」ですらそういうところがありますからねえ。

・で、本作。格闘マンガです。トーナメント方式で強い相手を取り揃えて闘っていくというアレ。軽くネタバラシをすると、動物のソレです。
「人間ごときが史上最強などとは片腹痛いわ」
・ってことで、18歳の人類の頂点に立った少年は1回戦でカバに負けます。
・そいで、動物の格闘マンガになっていくわけです。

・マニアックだなと思います。この場合は、一般的な意味じゃなくて、悪いほうの意味。偏執的ってことで。

・全体的なトーンは長編忍者マンガ「ムジナ」をホーフツとさせる、サジ加減であり、「かってにシロクマ」をホーフツとさせる動物ウンチクなどが盛りだくさん仕込まれてます。

・しかし、いろいろな点で「なるほどね」と思ってしまうのですね。イヤな読者丸出しな感想でもうしわけないんですが、「やりたいことはわかる」なんて思うのですよ。

・たとえば、全体的に格闘マンガのパロディなタッチといい、「バキ」的な人間キャラ。随所にある「おもしろ」なくすぐりなど、いろいろ盛り込んでおもしろくしよう、笑わせようって構造がよくわかるんですよね。

・実に相原氏の作風の本質に近いものがここにあるんですよね。シースルーのエレベーターみたいな感じか。「だからダメ」ってことはないけど、「狙ってますよ」って宣言されたものを「うーん、狙ってますね」と読むのはどうか?ってことになるわけですよ。
・ここいらは好き好きなんでしょうけどね。パロディってのは実に難しいものです。マニアックになると「は?」ってことになるし、わかりやすすぎると「浅い」って思われるしね。相原氏は正々堂々と後者を選択しておられます。あくまで「器」としてそれらを借りてる感じですね。描きたいのは動物同士の対決ですからね。

・で、個人的にはおもしろいです。おれは「ムジナ」も「かってにシロクマ」も好きだったわりに生粋の相原コージファンですから。「ギャグマゲドン」も小さい版型で持ってるくらいで。本作でも最大の特長である、ジタバタぶりを感じられていいです。これはホメコトバです。彼はどの作品でもあがいてあがいてあがきまくってます。もっとおもしろくもっとおもしろくって暑苦しいほど貪欲に攻めてきます。それが時折トゥーマッチになるんですよね。というか、大体全作品トゥーマッチ。

・でも、それがひいてはだれもマネできない相原コージスタイルなんだなと。だれもマネできないし、あまりすすんでマネしようと思わないでしょうけどね。
・ということで、最近はわりとゴブサタ(おもしろさと値段が折り合わない高い4コマばかりだったから)だったけど、本作はおもしろかったなあ。2巻も楽しみかな。ちゃんと終るまで「アクション」が持つかどうかってのもあるけどね。
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「シートン〜旅するナチュラリスト〜」1巻 谷口ジロー(双葉社)

・シートン動物記をあの谷口ジローがマンガ化。1巻は「狼王ロボ」。

・いや、正直、小学校の図書室では江戸川乱歩と「少年」の復刻版ばかり読んでました。あと、「のらくろ」「鉄腕アトム」など。でも、このタイトルはグッとくるものがありましてね。まだ、おれがガキのころは、物語世界ではオオカミが有効だったし、「ロボ」ですよ。巨大ロボットアニメで育ってる男ですよ。マジンガーZの主題歌のイントロがかかるだけで血圧が上がるような男がロボってコトバに過剰反応するってもんじゃないですか。だけど、イヤな小学生で、「絶対におれが想像したよりおもしろくない」と予想はついてました。ついでにいえば「イワンのばか」もタリラリラーンのコニャニャチワじゃないことくらいわかってました。

・で、30年経過してマンガで読むということです。「ああ無情」を「アームジョー」って黒人が活躍する物語だと思っていた泉昌之氏のマンガの少年くらいの期待感がありました。

・すっげーおもしろいんだよこれが。

・19世紀末、アメリカはニューメキシコ州。毎夜現れては牛や羊を殺していくオオカミの集団に地元のカウボーイたちは頭を悩ませていた。そして、懸賞金をかけ、それを目当てに賞金稼ぎが多数現れるも、散々な目に遭って帰っていく。ボスのオオカミの名前はロボ。

・そしてシートンとロボの知恵比べがはじまるわけです。

・これ、解説であり、原案でもある、今泉吉晴氏が指摘されてるように、ちゃんと舞台の「ニューメキシコ州」に意味があるように描いてあるんですよ。たぶん、現在、「絵の巧いマンガ家」リストだとまちがいなく3本の指に入りますね。絵の巧いイラストレーターでもなく、絵の巧い画家でもなく、絵の巧いマンガ家ね。ここが最大のポイント。絵がうまいだけのマンガもどきを描く人はけっこう多いですよ。だけど、その持ってる技術をマンガに対しておしげもなく投入されてるか?というとあやふやになるですよ。

・本作ではロボの頭がいい理由。捕獲が困難な理由。そして、もとは人間が原因であるということもキッチリ描ききってますよ。

・写実のタイプでこうまでも感情が読み取れる動物描写という点でも追随者は少ないでしょうね。ロボのココロの動きまでものすげえよくわかるですよ。

・いいものを読んだ。ジャストそんな気分になりました。これはかなり多くの方にもご賛同得られるのではないかと。なるほど図書室にあるわけだ。

オススメ
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