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ポトチャリポラパ/コミック/2005年
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2005年/10月
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2005年/10月/31日
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「萌えろ! 杜の宮高校漫画研究部 辣韮の皮」 4巻 阿部川キネコ(ワニブックス)

・ああ、4巻にしてはじめて舞台が仙台ということを知りました。たしかに「杜」って単語がそれっぽくはあったし、地方にいるのはまちがいないと思っていたのですが仙台ですか。なるほど、ピッタリだ。ほどよく田舎でほどよく都会。

・ということで、漫画研究部のオタクどもを描いた4コママンガです。4巻目です。実は4巻目で終わらせるつもりだったそうです。つもりってことは以後もつづくってことですね。なるほど「飽きた」とかあとがきで描いておられますね。なんだろ、阿部川センセは行き詰ってるのでしょうか?

・さて、3巻から乳首解禁(ここいら、だれか詳しく分析してるサイトとかないのかしらね? あるとき突然乳首解禁になった気がする。エロ本が透明シールを貼られたこととか関係あるのだろうか? あるいは月曜22時のドキュメントがなんかありゃ水商売ネタばかりなのと関係があるのだろうか?)になった本作ではあるのですが、4巻ではさらにたくさんの乳首が解禁になってますね。文芸部でメガネで童顔で巨乳でツンデレ属性の塩釜さんまでも! まあ、高橋留美子ばりの半円ドーム状でしたが。
・それよりも塩釜さんが「ボク女」になったネタがかわいくてしょうがなかったなあ。

・ということで、数あるオタク系マンガとの一番のちがいは、登場人物がだいたい分別があるってことですね。みんな大人で、押し引きをわきまえて、その「常識」の範囲内でキャラを発揮されてる。マンガにおいては、実は弱点でもあるんですけどね。「なんだこいつ?」とか、「ひくわ」ってキャラがいるのは基本でもあるんですよね。

・だけど、本作においては、一番のキモキャラでもある軍人クンにしてもとても押し引きをわきまえてますからね。今回の新キャラのコスプレ専門のカメラマンやろう(カメコってのね)で自分のオタクを否定するタイプもお子ちゃまキャラながらも、大人なところがあります。

・以前、リアルに痛い人を描いていくとギャグマンガとして成立しにくいなんて描いておられましたけど、それにしても大人ですよね。だからこそおれはこの人間関係や世界にあこがれるんですよね。

・だから、ホームページを作ろうってネタでは、ややブラックなのがちらほらと。ここいらのドス黒いのを描くとちがってきますからねえ。というか、ここいらの暗黒面をどれだけの割合で配合するかってのが、オタクギャグマンガの裏のコツじゃないかしらね?

・本作は、それでシビアなところを突きつけてきましたね。オタクの将来について。あるものはマンガ家として、あるものは声優として。
「なにかを成そうとする人間なら遅いくらいだよ?」

・と、まだ高校生なのにすごいなあとのんきな感想を述べてる滝沢クン(主人公ってことになるか)を切り捨てる会長のスタンスにしびれるわなあ。
・いや、「大人」のオタクばかりだよ。こういう人の中にいて、滝沢クンはああいうまんまってのも却ってすごいよなあと思ったり。

・4巻ではいろいろと考えさせられました。いまさら考えてもおれには関係がないんだけど、いろいろと現実にフィードバックして複雑な気持ちになるヤングもいるんじゃないかな。
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2005年/10月/30日
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「東風のカバ」1巻 青山広美(竹書房)

・久しぶりだよなあ、青山広美。大昔のギャグマンガを読んでいた記憶があるんだな。その後、野球マンガだったり格闘技マンガだったりして、「へえ」くらいに思ってましたです。あのー、むつ某って野口英世とか第三野球部とか描いてた人と似てるなあと思ったりね。

・まあ、ともかく。

・本作は東風荘という無料で遊ぶことができるオンライン麻雀ゲームの麻雀ゲームをネタにしたマンガです。

・裏家業で激熱いギャンブラー人生を過ごしてきた伝説の雀士カバは引退することになりました。ホステスといっしょに高級マンションでのほほん余生を過ごす予定でした。
・ところが、このホステスさんのPCに入っていた東風荘のおかげで彼の転落人生がはじまるのですというギャグめかした、麻雀マンガということですよ。

・麻雀マンガは読むことができます。麻雀はルールはわかりますしやってましたから。
・パチンコマンガは読むことができません。パチンコをやっていたこともありますが「CR」とかになってからはさっぱりだから。パッキーカードとか買ったことないし。

・そして、東風荘も一時気持ち悪くなるくらいやってました。この主人公の気持ちがとてもよくわかります。

・そういう男が書いてると思ってください。

・ということでして、東風荘をやってる人にはとてもうなづけるってネタからはじまります。東風荘の独特の雰囲気から、しきたり、ルール、システム。
・負けが込んだとき引くに引けないまま家族に八つ当たりするまでムキになるってのはとっても身に覚えがあって笑えない。

・いや、マジな話、そこまでの魔力が存在するように思えた時期もあります。

・あ、東風荘について書くところじゃないですか。

・ポイントは東風荘をどう描くかってことですよね。もともと主人公はまるっきりカバのビジュアルです。そして、ネット上の東風荘をバベルの塔として描いてます。住人もそのポイント(東風荘じゃあ「R」ね)に応じてビジュアルがちがったりもします。Rが100以下の人はゾンビになってたり、Rが2000以上はRPGの勇者みたいに描かれてたりね。

・そして、負けるたびにカバはPCを捨てたり、ネット上だけじゃなくどんどん落ちぶれていく。

・と、まあ、そこいらのビジュアルはマンガ世界の中じゃあベタな手法なのかもしれない。わかりやすいベタな表現が多いですしね。

・ここいらは東風荘という割合と特殊な分野を取り上げてるからしょうがないところもあるし、これがベターなんでしょうね。

・そう、そういった意味じゃあとても狭いところをついてると思うのですよ。麻雀をする人は東風荘をする人じゃないし、意外なことですが、人と麻雀を遊んだことのない東風荘プレイヤーってのもたくさんいると思われるのです。だから、連載誌「近代麻雀」でも、「なんだこれ」って方は多いんじゃないかしら? まあ、人気はあるみたいですけど。

・だから、ぶっちゃけ、麻雀を知らない人、さらに東風荘を知らない人にはどう映るのかよくわからないんです。あまりおもしろいことはないと思うのですよね。

・そして、東風荘に1回でも足を踏み入れたことのある人には「あるある」からはじまって、とても楽しいマンガになると思われます。というかおれはそうでした。ずっと東風荘について書き綴りたくなりますし、なによりも、久しぶりに東風荘起動させたもんな。3位だったけど。
・東風荘ってある日突然イヤになるんだよね。負けがこむとどんどんイヤになるけど、続ける。そして、その臨界点を超えたら「デストローイ!」って状態になってジエンドです。で、またやりたくなる。それの繰り返しです。金がかかってるでなし。これが麻雀本来の楽しさの原点なのかもしれませんねともっともらしいことも書いてみる。
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2005年/10月/29日
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「ういういdays」3巻 犬上すくね(竹書房)

・相変わらずういういしてる3巻です。
・女の子の「ういうい」を固めたようなマンガです。味はなんだろう? ミルキーっぽい感じ? わかりませんけどね。
・たぶん、女性の中に住まってる異性への「ういうい」な想いを丁寧に拾い出して研磨してお届けしてるショートコミックです。イメージとしては、砂金が取れるところで、川に、たらいみたいのをつっこんで砂をふるいにかけてる感じ?

・犬上氏のすごいのは、その「ふるい」能力です。フィルター力とでもいいましょうか。
・こうザックリと「ういうい」を切り分けるのは案外とたやすいことだと思われるのです。自分の学生時代、友達、知り合い、物語、などから「自分はそう思った」というフィルターを通したものが「ういうい」です。ま、とくに物語を紡がない人でも可能です。

・ただ、犬上氏の「それ」は男性の「それ」をわかってらっしゃる気がするのです。これが男の「ういうい」と女の「ういうい」ってのはちがいます。

・そして、性差を超えてそれをわかるってのは存外に難しいと思うのです。それはよく男性向けの青年誌に連載してる女性による「エッチ」なマンガとかラブストーリーに現れがちです。「ママーあそこで女の人が裸でくねってるよぉ〜 怖いよ〜」となりがちです。

・ここいら、あくまで女性視点でなおかつ男性でもOKの「ういうい」を描いてるところです。

・これ、逆に男性が描くところの「こんな女はいねーよ」って想像上のモンスターみたいな女性がたまに登場するじゃないですか。そういうこともないんですよ。この「ひょっとしたらいるかも」ってのの安定度の高いところも特筆すべきところです。かなりいそうです。というか、「いてくれ」と願いたくなるような感じ。

・まあ、実際のところ、犬上氏は「ういうい」な女性に翻弄される男に「ういうい」を見出してそうですけどね。
・そして、それもなんもかんもみんなひっくるめて丁寧に丁寧にキャラを愛してる成果でございます。読者はそのおこぼれに預かって、「ういうい」できるという寸法です。はーありがたやありがたや。

・3巻では15歳年上の彼氏と遠距離恋愛してる巨乳のメガネっ子がかなりメイン(祭り)で展開しておりました。一番キャラ設定としてはモンスターでございますよね。一番「いねーよ」感が高いキャラです。

・ということで、男女ともに「ういうい」できる作品かと思われます。

・犬上作品はサブタイトルに曲名やら小説のタイトルをつけたりもじったりするのが多いのですが、今回、それでわかるのがほぼなくてああおれはオッサンになったし、Jpopとか疎くなったなあとがっかりでした。
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2005年/10月/28日
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「大江戸超神秘帖 剛神」滝沢一穂&近藤ゆたか(チクマ秀出版)

・定価1900円+税ということで考えるなら「ムムム」と思いました。ただ、この復刻シリーズはとてもいいのでその血を絶やしたくなかったし、本作も描き下ろしなどたっぷり3割増量の内容でかなり良心的ですし、その値段もやむなしというところもあります。でも、単純に「おれの1900円」の価値という問題には「ムムム」と思うのです。1900円で楽しめることは多いからに。映画1本だし。

・江戸時代。江戸は世界一栄えた都市だった。そこに他の星から来訪者(星夷)が。そして、それを迎え撃つ謎の守護神剛神。んー、シンプルに表現するなら江戸時代のウルトラマン。

・とても丁寧で精緻な絵と話です。しかも、ウルトラマンよりも地球防衛軍にフォーカスが合っております。本作では、田沼意次が影で操る蘭学攘夷隊として活躍されます。その活躍目線で物語が進行します。つまり、その時代の要素が微妙にからまってくるわけです。歴史上の有名人がからんできたり、風俗やしきたりなども。この手の江戸ウンチクみたいのも随所にあります。

・だから、雰囲気やパロディとしての「江戸」にはとどまってないんですよね。必然としての江戸。そしてファンタジーと。くわえて逆説的ですが、パロディとして、たとえば、星夷の元ネタを探したりってヨロコビもありそうです。そういう細部にわたって楽しむことができる濃さがあります。

・絵も近藤ゆたか氏によるロットリングを多用したと思しき(すみません、見当違いの予感もあります)均一の線で展開するイラストレイテッドな感じでして、黒と白なのに色彩豊かな江戸が浮かび上がってきます。

・ただ、残念だけど「ムムム」なのです。
・マンガとしてどうかって問題になるんですね。細かい精緻な物語は「がちゃがちゃ」しがちだし、細かい精緻な絵は、ところどころ「その絵がなにを表してるのかわからない」現象を引き起こしてしまうのです。

・なにより、その内容が濃いゆえに、読み進むのがかったるかった。すげえ率直なところ。あと、イギョーあたりから、女性がかわいくなくなってきたしなあ。そういうのも大事ですよね、率直なところ。

・ということで、「ムムム」でした。買って損したとまではいいませんが。
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「虎星★来々!」高津ケイタ(FOX出版)

・ジャケ買い1発でした。
・虎の精の少女とクマの精の少女が活躍する拳法ユカイマンガです。

・見開き1話でゆるく話が続いていくというストーリー4コマの4コマを2ページでやってるような豪華仕様で話は展開していきます。
[コミックとらのあな WEB COMIC]での連載です。だからダータでみることができますので百聞は一見に以下省略ですよ。

・さて、それすらめんどくさい方のために以下も続きます。

・5章にわかれていて、拳法マンガのひととおりやる感じですね。ドラゴンボールの初期のような感じですか。地元編、日本へ留学編。御前試合編、5凶星編と、まあ、ここいらのフォーマットがよくできてる証拠ですね。最初に笑って、手に汗握って、感動してってね。
「らんま1/2」でも似たような要素は網羅してますし、翻って中国のほうでも逆輸入してる感じすらありますもんね。まあ、香港映画か。

・でもって、全体的な装丁はその香港映画チックになってます。表紙が映画ポスター風で、カバー見返しに映画館の切符があり、カバーめくった裏表紙には、新聞のテレビ欄の洋画劇場でやってるという。まあ、カバーとった背表紙のぞんざいさがまたいいんだ。

・でもって、カバー裏の各エピソードのよりぬきエピソードのカラー化もいいねえ。できうればオールカラーで読みたいなあ。「AKIRA」のアメリカ版みたいなことは起きないのか? まあ、モノクロでも十分いいんだけどね。

・主役の2人をはじめとして「いい絵」ですよ。これが一番の魅力でありますね。女の子はかわいい。アクションはエキサイティング。ギャグはジャストミート。デフォルメはシャープと、絵の硬軟自在さはすごいです。

・上記の装丁や、描き下ろし多数の、かなり隅々まで気を使ったコミックは、すみからすみまで楽しむことができるようになってます。

・つまりはおもしろい香港映画をテレビでみて思わず見入ってしまい、DVDを買ってみたところ、おまけが豊富でとても面白かったという感じですかね。

・んー、髪の毛1本だけオススメに足りない。エンターテインメント度は満点なんですけどね。ベタなネタをわりにベタにやってるのと後半の展開がややがちゃがちゃするのに、ややコクのなさを感じてね。本当申し訳ないと思いますが。
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2005年/10月/27日
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「バンパイア 昭和不老不死伝説」徳弘正也(集英社)

・いい感じの2巻ですね。
・連載してる雑誌で、かなり期待される立場にあり、それにちゃんと対応してるように思われます。
・マンガには2種類あり、雑誌で連載されてるのを読むのがおもしろいのと、単行本になってからまとめて読むのがおもしろいのと。徳弘氏は職業マンガ家として、ずっと前者ですごしてきたかと思われます。

・で、求められているものを過不足なく本作でも提供しております。ここがすごいし、なおかつ、1回の連載でもそれを発揮しようとされてます。

・ギャグ、エロ、アクション、ミステリー、陰謀、青春、大きなストーリー、すべて1回の連載に盛り込もうとしてます。でも、そのために破綻したり犠牲にしたりはない。

・バンパイアのマリアが覚醒者として選んだ少年とともに、「戦う」マンガです。大いなる敵。敵のうちにいる味方のような敵。「狂四郎2030」以降のメッセージ性みたいなのがまたうまく効いてる。

・ということで、超良心的な大衆食堂の大盛り定食のような安定感と満腹感があります。

・ただ、その安定性ゆえに、スリルが損なわれているような気もします。急流くだりのつもりが、水の底にレールがあるのがみえるようなディズニーランドげな感じがね。

・そういった意味じゃホンモノなんですよね。ホンモノのエンターテインメント。しかも、良心的。

・巻末の描き下ろしエッセイコミックのおもしろくなさがそれを裏付けてくれます。非常に実直に誠実におもしろくしてるってのが伺えますね。
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「鬼堂龍太郎・その生き様」2巻 田中圭一(集英社)

・大バカサラリーマンマンガの2巻です。

・んー、大バカ度はかなり保たれてます。これ、雑誌ではどうなってるのかよくわかりませんが、コミックでは毎回話のはじめに編集との打ち合わせが収録されてるので、それが本当かどうかはともかく、かなり試行錯誤されてるイメージがあるので、「バカ話を毎回考えるのも大変なんだよなあ」とムダに気遣ってしまうのですよ。

・やや、全体的に手塚タッチが荒くなった感じがしました。とくに2巻の表紙にもなってるギャル川という典型的な手塚タッチのエロキャラがかわいくなくなったんですよ。まあ、それだけなのかもしれないですが。

・2巻では主人公の娘が登場しました。マッドサイエンティストで、変な薬を飲ませるという「どこがサラリーマンマンガやねん」と改めてツッコミたくなるくらいです。「ドクター秩父山」(初期の出世作)で描きわすれたのか?とうがった見方もしたくなるじゃないですか。
・たとえば、陥没乳首になる薬。男でも母乳が出る薬。

・あと、息子もいました。3兄弟です。3人ともニートです。毛糸のキャップに「にーと」って描いてあります。

・そして、小泉総理も大活躍です。自分が主人公のマンガを必死に描くために国会をサボったりしてます。

・そういや、最後の最後に、池上遼一チックな描画もトライされてましたね。

・どうかしてる度は相変わらず高いので、ダメな人は反吐がでるほどの嫌悪でしょうが、おれはかなり強烈に笑わせていただきました。ありがとうございます。
(22:54:58)amazon


2005年/10月/25日
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「もうひとつの昭和史 白の本」田埜哲文&二宮亮三(集英社)

・えーと、集英社の伝統ですよね。この手の偉人伝的ドキュメントマンガわ。
・古くはカバ園長の奮戦記が月刊少年ジャンプでありました。そして「ヤングジャンプ」の初期の良心であった「栄光なき天才たち」などがあります。

・昭和の表舞台ばかりではない、偉大なる人々の足跡を追うというものです。「赤の本」と「白の本」と2種でてます。双方のちがいはよくわかりませんが、エッチ産業は赤の本のほうに目立ちますね。

・白の本では「回転寿司」「グリコのおまけ」「プラモデル屋」「バット職人」などが収録されてます。

・ちゃんとっていうとアレですが、原作者の足を使って本人と対峙して得た話の重みはやはり格別ですね。本編後のコラムもとてもおもしろいです。

・具体的なエピソードを少し紹介させていただくと、
・グリコのおまけに「動き」が必要と思った職人は家に大量の虫やらカエルやらを持ち込んでその動きをみて作った。
・大人向けのプラモデルを作りたいが資金繰りが難しいし資料もないので自転車でそれを必死でかき集めた。
・九州でなぜ「とんこつラーメン」なのかって話もいいですね。自分はラーメンの味を調整するために、それまでやっていたうどんの屋台を小学生の息子にひかせるんですよ。

・つぶれる石鹸屋。社員全員が最後に温泉に入る。「これがあがったら解散だ」と。だから、だれもあがらずにのぼせて倒れてしまう。その中で社長が思いついた起死回生の一打とは?

・ということで、「プロジェクトX」が好きな人なら100%楽しむことができますね。このあと「赤の本」のほうにつづきます。
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「もうひとつの昭和史 赤の本」田埜哲文&二宮亮三(集英社)

・昭和の偉大な方のすばらしい足跡を描いた実録マンガです。赤だけあってちょっと下ネタ気味です。

・石川県に日本最初のラブホを建てた人。
・銀座にホステス800人のキャバレーを作ったキャバレー太郎と呼ばれた男。
・コンドーム普及に尽力した女性。

・なかでは海女さんの美しさに感動して水中写真家になった人の話がいいですよ。思わず海女さんの画像を検索しまくったりしましたよ。

「白の本」も「赤の本」もそういった意味じゃあ同等のクオリティがあります。気になった方は両方買うべきです。

・さて、弱点といえば作画です。デッサンという学校の美術的な点でも弱いし、マンガの絵という点でも弱いです。

・ただ、読んでいてどうしてもダメってほどじゃないですし、絵が巧い「だけ」な、どことなくナルシストなものよりも「マンガ」としてのおもしろさはずっと上です。ややぶっちゃけ表現になりますが必要最低限な絵ではあります。

・おもしろかったですよ。この手の実録マンガってのはおもしろいし、集英社は伝統としてこの実録マンガの灯を絶やしたらダメだと思ったよ。
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2005年/10月/24日
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「戦争の犬たち」竿尾悟(少年画報社)

・同時発売の「地雷屋」ともども、「迷彩君」という代表作から、竿尾マンガの2大要素である、「ミリタリー」と「オッパイ」の「ミリタリー」に特化したものです。

・タイトルだと、いわゆる傭兵などの戦争のプロの男くさい戦争マンガを連想させておいて、ストレートに戦場にいる犬のオムニバス読みきりマンガです。犬と兵隊さんのマンガですね。

・ギャグあり、シリアスあり、で、バラエティに富んでます。

・軍用犬として派遣されたけど、まったく役に立たない犬の「コロは戦場に行った」
・本作屈指の泣ける、少尉とその愛犬の犬ベイブの話「小さな英雄」

・ほかに、「迷彩君」が特別出演したり、上記のコロがまた登場したり、ここいらのバリエーションの豊かさはさすがです。まあ、戦場限定なんですけどね。

・犬は有史以前より人間とずっとパートナーだとか。そういうことがよくわかるネタが多いですね。

・個人的には全くといっていいほど「ミリタリー」に興味がない男ですが、本作や「地雷屋」における「戦争マンガに興味のない人にも楽しんでもらえる」ということに主眼をおいた戦略はかなり功を奏しており、あるいは、たまにあった「迷彩君」でのマジの戦争編のときよりもおもしろかったですよ。
・なんつーかな、戦争マンガを極めるゾ!といった覚悟を感じられますよ。

・オッパイがないのは悲しいですが、カワイイ犬がそれを補ってくれます。ほどよくマンガ化され、ほどよく表情がある「リアル」な犬が登場します。種類もいろいろです。
(22:27:54)


「渡良瀬医院へようこそ」みた森たつや(実業之日本社)

・歯科と眼科と脳外科のある個人医院の院長渡良瀬源五郎は、ナリはガキだけど、怪しげな願いを怪しげな代価で怪しげに叶える医者だったりもするんですよ。

・で、毎回、さまざまなおかしな願いをかなえるのです。まあ、エロ込みですが。

・基本的にコメディになっており、明るく楽しくエッチしながらドタバタしております。最初のほうはマジトーンでもあったのになあ。

・エロの組み込みがうまい。「さらくーる」のときもそう思いましたが、すべてにエロをうまく混ぜてます。ストーリーもキャラも描画もちゃんとエロのために機能しております。

・ただ、「おれエロ」みたいな、「おれはこれを描くためにエロマンガ家」って思いみたいのは弱いです。これはシーソーのように、片方がかたむくと片方が弱まるというものでして仕方がないところですよね。「おれエロ」を重視か、全体的な完成度を重視か。両立できる天才はエロマンガ界に1桁といないでしょう。

・あえて「おれエロ」を探すならばぷりぷりしてることでしょうかね。ゆでたてのエビのような女体です。やわらかいというより弾力がすごそうな感じの描画ですかね。

・マンガとして実用として楽しむことができる御徳用になっておりますよ。
(23:03:01)


2005年/10月/22日
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「妹は思春期」6巻 氏家ト全(講談社)

・世界で1番煩悩を刺激しない、「健全」なエロエロ下ネタ4コママンガです。

・実はむしろより「健全」じゃないといけない「週刊少年マガジン」に連載してる「女子大生家庭教師濱中アイ」のほうがやや煩悩を刺激してるような気がします。

・ま、主観ですけどね。

・でも、なんでもゴールさせる中高校生でも難易度が高いだろ。

・基本は妹と兄の漫才。妹がボケ役。あと、妹の同級生他がダラダラと増えていくわけです。「濱中アイ」では女子中学生と女子大生がでるので、そのぶん、女子高生度が高いわけです。考えてますよね。

・兄が妹の背中をみて「シミができてるぞ」と。妹、びっくりしてトイレにかけこむ。そして、「シミなんてついてないじゃない」と股間を押さえてかえってくる。

・と、まあ、こういうの。ひねりすぎてもはやどこかちがう空間を生み出すってスキルがどんどんトクイになってきますよね。

・たとえるなら日本の風俗産業に似てるかもしれませんね。前提として本番はダメなので、逆にいろいろなバリエーションがある。

・先生たちがブルーチーズをつまみに酒盛りしてる。すると、滑って股間にブルーチーズが落ちる。そこでみんな「すごいギャグだ」とウケる。

・なんかすごいでしょ? もはやどこがギャグなのかわからない世界です。幽玄といったコトバすら浮かびます。下ネタを膨らませて、それに起因する記号だけを抽出してわけのわからないところに向かっているのです。

・まあ、正直なところ笑えたり、エロかったりするほうがわかりやすいしいいんですけどね。そういうのはほかにもあるからね。ややレア感がでてきつつありますよね。
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「イリヤッド」9巻 東周斎雅楽&魚戸おさむ(小学館)

・もうミスタービッグコミックですね。あまたある「ビッグコミック」で1番ビッグコミックらしいマンガだと思いますよ。
・いやぶっちゃけたところ「ゴルゴ13」とか「美味しんぼ」のほうが代表だし、売れてるんでしょうけど、「ビッグコミック」の冠がつく雑誌でいくつくらいあるんでしょ、「オリジナル」「スピリッツ」「スペリオール」あたりか。それぞれコミックは発売されてますよね。だけど、なんていうかな、ビッグコミックらしいというか、目指してるラインというかね。望まれるカタチというか、そういうものをかなり高いレベルで実現させてると思います。そういった意味でミスタービッグコミックかと。
・前も書いた気がしますけどね。

・幻の大陸アトランティスを捜し求める元考古学者(この、昔はすごかったって設定はとてもビッグコミックっぽい。そんなやつばかりが主人公だ)で、今、上野で古本屋の入矢。
・それにいろいろあってアトランティスの謎を追い求めて世界中を駆け巡ることになると。とっても夢のある話。

・主人公が一見さえない。でも華やかな過去がある。
・スケールが大きい。
・でも、庶民的な一面も。
・ウンチクが豊富。
・アクションがある。
・つづきがユルく、基本的に1話完結。

・これらの条件を満たしてるビッグコミックのマンガって多いでしょ? たとえば、上記の「ゴルゴ13」もそうだ。アクションはないけど「美味しんぼ」も。「ギャラリーフェイク」「マスターキートン」などなどね。

・9巻では、「金の斧銀の斧」の童話などのネタ。しかも、東西ドイツ分裂時代からの因縁を交えての行き詰るミステリーが白眉。かと思うとかなりのんびりした日本のネタがふいに挿入されたりする硬軟の自在さ。

・それでいて微妙に核心に近づきつつある。本当、このマンガが終了したアカツキにはアトランティス大陸が正式に存在していたってニュースが世界中に報じられそうなくらいさね。

・ま、そういうことで、まだまだおもしろいし「長い」とは思いません。
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2005年/10月/21日
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「賭博堕天録カイジ」4巻 福本伸行(講談社)

・さて、どうもすっきりしない堕天録だ。今回は変則二人麻雀「17歩」です。
・おれは一応麻雀知ってるし、この変則麻雀のルールもわかりますが、なんか、すっきりしないんですよね。いろいろと。

・なんか知らんけど、長引かせようかって意図がかなり感じられるのですよ。なんか知らんじゃねえわな。パチンコ編の後半からしてすでにそういう傾向にあったわな。

・もともと麻雀マンガを描いてたの(アカギ&天他)が、麻雀以外のギャンブルマンガであった「カイジ」において麻雀を持ってきたということの意味ってなんだろう?と考えたりします。

・その意味がわからない現状ってのはどうなんでしょうかね。

・ぶっちゃけ「おもしろい」よ。麻雀ネタばかりじゃなくて、適度にピンチな状況も織り交ぜて、楽じゃない状況を描くことで、あまり麻雀に明るくない読者にもわからせようとする技術はすばらしいものがあります。

・でもなあ。1行目に戻ります。

・その最大の原因は、3行目じゃないかと思うわけです。

・5巻からのペースアップに期待します。ほかは期待しなくても大丈夫そうですが、このちょいとしたスローペースは気に入りませんので。
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「少年探偵 犬神ゲル」2巻 ゴツボ☆マサル(スクウエアエニックス)

・なあんだ。純粋な探偵ギャグマンガとして読めばいいんですねえ。

・鬼畜で金の亡者のクール&バイオレンスのメガネ少年探偵ゲルさんと、助手で身売りされた薄幸の少女マリーの探偵物語です。

・怪盗スパルタン6ってライバルが動かしやすかったのでしょうか、かなり活躍されてます。ここいらは伝統で、クールで無口なキャラを主人公に据えると、まわりでテンションを高めていかんとらちがあきませんからね。

・相変わらずみんながよく動きますね。それに作画のポイントを合わせたかのような、おれだったらこのマンガをトレースするよってくらいのいい動きですよ、末次さん。
・一見、さっぱりしてるようにみえますが、そこいらも「動く」ってことを優先させてると解釈ですよ。

・マリーさんもかわいさアップしましたしね。新キャラもオカマのヤクザ他、いい感じです。

・いいです。で、カバー見返しにあったコメントどおり、次巻以降に期待します。大ブレイクがありそうな気が。
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2005年/10月/20日
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「堀田」2巻 山本直樹(大田出版)

・これって、堀田=ほった=ホッター=ハリーポッターってことなんですか? ほら、同じファンタジーだし。

・なんか限りなくいろいろな設定や裏設定やストーリーがありそうですが、エロに惑わされえる感じです。

・そう、エロティックファンタジーなんですよ。でも、ハリーポッターもそうなんでしょ?

・突如はじまるエロ。突如挿入される非エロ。象徴的に現れる宮殿というか迷宮というか。

・そして2巻ではこれまでの読みきり連作ではなくて突如としてはじまった連載モノ「商品化された性が青少年に与える影響」が圧巻でありましたね。

・漁港にある倉庫。エロマンガがいっぱいあるので少年の秘密部屋として重宝してるところにある日同級生のメガネ女子がいましたよ。

・ということで、こういう学生生活をおれはなんで送れなかったのだろう?と思っていたら、やや剣呑なかげりがみえたまま3巻に続きそうですね。

・山本直樹氏を久しぶりに読んだということもあるのですが、かなりエッチだなあと思ったりしました。

・あまり、詳しくもないんですが、こういう風に連載で1回のエッチを何回もわけてねちっこく描くってのは流行りなんですかね。そういうのもあってエッチさを感じたのかもしれませんね。なんつーかな、スポーツマンガの試合の要領で、セックスでの山場に応じて次号につづくというカタチでどんどんダイナミックさを増していくわけですよ。盛り上がるわけですね。いろいろと。

・マンガ家はそのキャリアを重ねると、絵が淡白になるか濃厚になるって2極化しがちですが、淡白になると思っていた山本氏はPCという武器を利用して、かなり濃厚になってきつつありますねえ。
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2005年/10月/18日
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「瀬戸の花嫁」8巻 木村太彦(スクウエアエニックス)

・ドラマCDにはなったみたいですね。ドラマCDってのは敷居が低いですが、「第一歩」ですね。

・極道の人魚(任侠とかけてるわけでしょ)の娘を嫁にもらった埼玉の平凡な男子のハーレムラブコメです。

・この安定度はかなりなものがあります。毎回、うまくドタバタしてるよなあと。というか、こういうふうに毎回ドタバタさせるってパターンですっかり安定してるなあってのが正しいのか。

・主人公と人魚とその他のナイスキャラたちが学校を中心にドカーンとやって学校半壊とかそういう感じね。「うる星」な感じね。

・これがおもしろいので問題がないんですよ。

・すべてに対してのスキルはまだ上向きにあると思われます。もうそろそろ微妙に賛否がわかれ、「おれは前のほうがよかった」的な人もいるかもしれませんが、おれは作画、作話、キャラの肉付け、脱線具合、ドタバタ具合は、それぞれおれにはバッチリの方向です。

・漠然としたパロディ路線とでもいいましょうか。いがらしみきお氏の初期の4コマあたりが祖先になるんでしょうかね。モデル元がありそうでない、たとえば「学園マンガの番長」の最大公約数の絵。「猫耳メイド」。そういうので浮かぶ絵をギャグとして利用するやりかた。

・本作以前からの脱オタク指向は、ここにきてもう1段階新しいところに向かっていったのかもしれないけど、そんな大仰なものでもないかもしれない。ただ、おもしろいでいいのかもしれない。

・そろそろアニメ化か?
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「女子大生家庭教師濱中アイ」4巻 氏家ト全(講談社)

・前といっしょで、ヤングマガジンで連載されてる「妹は思春期」と同時刊行。

「夏まっさかり氏家ト全フェア」なんてオビがあったよ。もう今は秋でもうしわけないんですけどね。

・さて本作はもうかなり独自の道を歩んでおられる、萌えなくて、エロくない、下ネタを多用してるけど、いやらしくないという、だれも目指してないラインに立ってるマンガです。ほかに似たものがありそうでないですよね。なぜなら、意味がないからです。

・そういった意味ではかなり「ナンセンス」です。

・あらすじを書いてみましょう。
・タイトルのとおりです。主人公(男)の元に処女だけど耳年増の女子大生家庭教師濱中アイがきます。あと、いろいろ同級生とか、際限なく女性キャラが増えていきます。そして、下ネタが炸裂してるけど不発のまま「ポヒュ」とばかりに空気が漏れるような失笑とか脱力を感じられるのです。

・寸止めって言葉がありますが、さしづめ、尺止めって具合で、いうたらなんだけど逆に本作を下ネタとして認識するのはけっこう高度かもしれない。

・ミルクの入ったチョコの中身が飛び出して、顔にかかるってネタで顔射。
・ブラのヒモがみえてるので「ヒモがみえてますよ」というと、ジーパンなのにまたぐらをみる(タンポンのヒモとまちがう)。

・と、まあ、林家三平のようにネタを説明するのもむなしいんですけどね。ネタの内容はけっこうえぐいくらいストレートなのに、全く直接描写がないという。

・とても丁寧だし、いうたらなんだけど、萌えはないけど、描画なんかの向上でかわいくなってきてる。

・以前はその食い足りなさがもの足りなさにつながっていたけど、それは実はどこにもない世界だということに気がついたのです。とくに少年誌である「週刊少年マガジン」に連載されてる本作の特殊具合はちょっとないですよ。昔は少年誌で一番エロだったんですけどね。

・逆に、今の少年週刊誌の歪み具合が浮き彫りになってるってそんなたいそうなもんでもないんですけどね。
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2005年/10月/15日
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「日本一の男の魂」15巻 喜国雅彦(小学館)

・大河フェチギャグマンガですよ。15巻も続いてます。
・もう「継続は力ナリ」ですよ。「かなり」じゃないですよ。「かなり」でもいいですが。

・お笑いには「テンドン」というテクニックがあります。繰り返し同じことをいって笑わせるということです。でも、これはかなりハイテクだったりもするわけです。

・パターンとしては、エロネタで落としてツッコミを入れる。

・ただ、それをいかにバリエーション豊かにするかってことですよ。同じオチのマンガが15巻つづくってのはそういうことです。

・15巻では、東京の小平市との「ふれあい下水道館」のルポなんて新機軸があったりしました。本物の下水を無料でみるところみたいですよ。目黒の寄生虫博物館みたいなもんですか。

・それと、個人的には、デカウンコ女ネタがおもしろかったなあ。あと、非下ネタの銀河鉄道の話もとてもいい。おれは乗るね、銀河鉄道。

・ということで、実は理数系。超精巧なメカニックをルーズソックスでくるんだバカマンガにみせかけてるんですよね。


「それはそれで苦労しとるわーー!!」

・作者のココロの叫びですね。

・いつまでもついていきます(本作はね)。
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2005年/10月/14日
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「機動戦士ガンダムさん さいしょの巻」大和田秀樹(角川書店)

・ま、ガンダム関連の書籍には必ず「原案:矢立肇・富野由悠季」って入ってますけど、関係ないので。

「たのしい甲子園」「マカイど〜」などの熱い男が大活躍するマンガを描いてる人が描いた、ファーストガンダムの4コママンガですよ。

・かなり人間味あふれるシャアと、童貞丸出しのアムロ、だまされるガルマ、かわいいアッガイと、まあ、ガンダムを知らない人にはかなりおもしろくないマンガじゃないかと思われますよ。おれファーストガンダム知っててよかった。おれ、ダンバインまで大丈夫。

・作者は読み込んでますよ。細かくてバラエティにとんだネタが多数あります。下ネタも多いです。爆笑したネタもあります。紫ババァとか。

・長い時間かけて連載されており、それが収録されているものですから、大和田秀樹氏の絵の変遷とかも楽しむことができますね。最初の、アニメ版に似せていた絵もすぐに自分のそれになり、そして変化していくと。

・変化するってえと、大和田マンガはどんどん女子がかわいくなっていくんですよね。ララァなんざかわいくなるよこれが。

・ということで、ファーストガンダム知ってれば笑えるよ。そうじゃないとつらいね。けっこう細かいネタも多くて、正直おれも「?」なネタもちょいちょいありましたし。
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2005年/10月/13日
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「極道一直線」4巻 三上龍哉(小学館)

・強力だわ。
・極道が登場するギャグマンガという設定を髪の毛1本ほど残してあとどれだけむちゃくちゃできるかに挑戦しているマンガ。

・この手のどんどんエスカレートするマンガってのはいつか行き詰まるのです。実際問題、本作もほとんど毎回そんなのにぶち当たってる様子もあります。

「ばからしい」「くだらない」というのがとてもホメコトバになるようなマンガです。そのためにCGを駆使した精緻な画面を利用するし、それをカンタンにひっくり返したりもします。

・だから、かなり賛否両論です。たぶん、一番賛否両論になりやすそうです。好きな人にはたまらないですが、そうじゃない人にはちがった意味でたまらない感じがしそうです。

・だいたい、スキンヘッドの組長がおかしな風になるって感じなんですが、たとえば、アタマにウンコがずっと乗っている。後頭部にスイッチがある。ひげがモーレツに生えてくる。
・あと、おかしな人や宇宙人が登場する。カバティ星からきたカバティ人のJFカバティにカバティを教わったり。美少女のサルと駆け落ちしたり。死神が登場したり。謎の大家も登場。あと、ライフトビラのあいつが登場したりもします。

・かなりアタマのネジが外れてます。「こういうバカを描いて金をもらえるなんていい商売ですね」と憎まれ口を叩いたつもりの大バカがいますが、もはや、芸術の域に達してます。これをカンタンに描くことができると思ったら大間違いですよ。

・いや、正直、おれも1〜2巻はそうでもなかったです。だから、賛否の否のほうの気持ちもよくわかるんですが、4巻ではさらに突き抜けてきました。ここまで行き詰まりやすい題材のマンガで加速し続けられるのはシンプルに「すごい」と。

・現在連載のギャグマンガでのある点で、ダントツにぶっちぎれてます。そのぶっちぎれ具合がとてもいいです。
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2005年/10月/12日
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「ほっぷすてっぷじゃんぷッ!」7巻 岡田和人(秋田書店)

・カエルのスパイダーマンの女子高用務員が大活躍するエロエロアクションマンガ。

・6巻では暗いドシリアスな展開のまま終わりました。メインの女子高生の1人がレイプされて、そのことを知った、幼馴染がバット片手にリベンジってな6巻ですよ。

・いや、明石家さんまに似たタチの悪いチンピラとさらにタチの悪いやつらは依然としていますし、さらにタチが悪くなってますが、またゆり戻しですかね。多少コメディタッチに戻ってるのですよ。まあ、エスカレートしてるのにコメディタッチってあたりにちょっと底知れない不気味さを感じます。

・明石家さんまにリベンジ失敗して拉致られてボコられた少年を助けた腹いせに住んでいるアパートを燃やされるのです。そして、橋の下住まいになる主人公ですよ。

・うーん、笑えない状況がつづいてますが、「笑ってくれ」って雰囲気が漂う。まあ、これが売れないお笑い芸人のライブとかだと悲惨でしかないんですが、マンガの場合、寒い空気をかなり払拭することができますからね。橋の下住まいとかも悪くないんじゃないか?と思わせたりね。

・だから、不思議な状況です。しかも、8巻もけっこうそんなノリのままかもしれない。エッチ度は低かった気がする7巻ですが。
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「幸福のディッシュ」1巻 清水健生&志水三喜郎(芳文社)

・タイトルどおりグルメマンガです。

・これがジャケ買いだったんですよね。ジャケットは写真ですけどね。これが本編に出てくる料理かと思ったのですよ。

「冷製コンソメロワイヤルと夏野菜のカクテル」「ピーチのスープ仕立て」「オムライス小海老のクリーム添え」

・このオムライスがとても美味そうでね。でも、これって本当に売ってるメニューなんですね。「麹町メルサ」の料理だそうで。

・ここですっかりスカシ技をくらってピヨってる状態です。格闘ゲームの専門用語ですが、もうほとんど意味不明になりかかってますね。

・主人公は老舗天ぷら屋の息子。ワケあって食品総合商社に入社。あと、「おれの作った料理を食べてからいってくださいよ」的に。

・料理自体は、かなり飛び道具的モノが多く、冷や飯料理、さんまの蒲焼の缶詰を使った料理、新しいおせち料理などなどね。
・あれだ、ひとことでいうと、「びっくりメニュー」な。そういうのが多い。

・構造でいうと、「美味しんぼ」の設定に「包丁人味平」なびっくりメニューで、なおかつ「クッキングパパ」のようにレシピまで挿入されているという「いいとこどり」を目指しながらも、わりに中途半端に終わった感じです。

・1巻のサブタイトルにもなった、「オムピザ」は、ピザパイをオムライスのように玉子でくるんだものだったりと、「それは、美味いの?」という味がわかりにくいものが多く興味深いのですが、絵があまり美味しくないのがまず痛いですかね。本宮ひろ志の脂抜きをしたような絵でして、病院食っぽいパサパサした絵で、キャラですので、料理自体があまり美味そうにみえなかったりもします。

・話だけでみると大きな到達点がみえないので、不安定な展開です。いかようにも転ぶことができる仕様なのだと思いますが、この主人公はなにがしたいのかよくみえてきません。まあ、よくあるパターンなんですけどさ。

・あと、各有名店のカンタン激ウマレシピってのも、あまり本編と関連性がなくて、「なんじゃそりゃ」感がある。そもそも、そんなに美味そうなのないし。

・ということで、いろいろと混ぜたら灰色になっちゃったって感じのすっきりしないマンガでした。
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「沈夫人の料理人」3巻 深巳 琳子(小学館)

・昔の中国。お金持ちで食道楽の沈夫人と、その専属料理人の李三との女王様と奴隷チックなやりとりとグルメがあるへんなマンガの3巻目。

・なんとなく、パターンづいてきてる気がしました。上記の設定のみで終始してる話が多かったような気がします。
・そこがオイシイところだし、まったく手を抜いてる要素がないし、3巻もつづいてるということはそこがおもしろさのキモであることはまちがいないんですよね。

・毎回、奥様が無理難題を李三におしつけるって図式もちょっと後退して、2人をメインとしてのやりとりに重点をおいて、李三が暴走して自分を追い詰めてるサマを奥様といっしょにハハハと笑う感じ。
・人間を深く追い詰めるように描写するのが得意そうな作者ですよ。たしか、前作にあたる「他人の家」だかもそれがすごかったので、
・これって、吉田戦車氏の「いじめてくん」なのかしら? 思わずいじめたくなる地雷の「いじめてくん」と、その性質を把握しつつも、いじめたくなるぎりぎりのラインを計ってるみっちゃんのママって関係に似てたりするなあ。
[Amazon.co.jp:本: いじめてくんちくま文庫]

・まあ、それはそれとしてもおもしろいのです。最後のぐーたらアニキとのコラボレはよかったですね。

・4巻以降はまた変り種ネタを期待してます。わりと普通なのが多かったし。
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2005年/10月/10日
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「ダブルフェイス」8巻 細野不二彦(小学館)

・泣いたなあ。泣いた自分にびっくり。最後の「雪降る聖夜の贈り物」なんですけどね。

・普段はサエないサラ金会社のダメ社員だけど、実はそこの社長であり、この世の悪をマジックでおしおきする男。そんな「桃太郎侍」げな話。

・毎度かいてますが、最新悪事+サラ金事情+マジックのネタをうまく組み合わせてます。

・8巻ではパターン化を避けるかのようにいろいろな試みがあります。
・たとえば、「小泉じゅん、与信する!」では主人公が悪人を裁きません。「落花流星の夜」では悪人が存在しません。実は「雪降る聖夜の贈り物」もそうなんですけどね。

・これは必殺仕置き人な話がなくなるってことでもなくて「たまにはこういうのもいいんじゃない」ってパターンだとは思われます。まあ、ちょっと割合として多いですけどね。仕置きナシの回はまだありますし。

・あと、後半が妙につながってますね。厳密な「つづき」ではないんですけど、マジックのタネやエピソードが次回に薄くつながってる感じでね。

・ただ、これらのがマイナスではないのがキャリアですよね。余裕を感じます。

・だけど、ここで冒頭です。泣いたんですよ。こう、美味すぎて、キレイすぎて、これまでのはどうも阻害されていた感じですよ。ルノアールの裸婦像でコーフンしないのと同じような要領で。

・特別になにかってことはないと思うのです。奥さんはサッパリとおっしゃってましたし。たぶん、おれのなにかがきたのでしょう。うすうす理由はわかってるのですが、ともかく「泣いたなあ」ということが重要なのです。どれだけおれは酔いしれてるんだ?ってことですよ。今読んでもグッとくるわ。

・ということで、かなり個人的ですが、泣けたと。そういう巻です。客観的にはいつもどおりのハイクオリティです。
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2005年/10月/9日
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「マンホール」1巻 筒井哲也(スクウエアエニックス)

・元webマンガ家の連載作品ですね。

・商店街に全裸の男が現れる。そして死ぬ。彼はどうもマンホールからきたみたいだ。そして、はじまる悪夢の連鎖と、まあ、オビに書いてあるので書きますと寄生虫バイオホラーです。この全裸男は虫を持っていたのですね。で、吐血した血を浴びた大学生が感染して、ってどんどんつながっていく。

・この手のバイオホラーだと、もっと小さいですよね。細菌とかね。あと、ウイルスとかね。それが寄生虫ってのがまず新しいところなんですかね。これがでかいんですよ。そいでもって皮膚1枚下で蠢いている。このヴィジュアルがありきなんですかね。

・作者はとてもヴィジュアルを重視されております。要所要所に浮かんだ「絵」から逆算してストーリーを組み上げている気がするほど、インパクトのあるオイシイ絵がありますよ。

・で、その特性のためか、描き込みのほうもwebマンガであるところの「ダズハント」よりも飛躍的に細かくなった。

・そして、それは恐怖に直結してるわけです。怖いというより、「イヤーン」って効果がとても絶大。とくに「蚊」のみえる「世界」の描写はちょっとすごいね。元ネタがあるんならアレですけど。

・ということで、ストーリーに関しても出し惜しみせずにチャッチャと進行してるのですし、1巻でかなりのことがわかりますし、そのわりに、新米女刑事とベテランクマ刑事とのコンビもときおりギャグタッチを交えテンポをよくしてる。ややギャグが過ぎる感じもあるけどさー。

・作者はわかってる方だと思われますので、某MONSTERや某20世紀少年や某彼岸島や某GANTZみたいにグダグダにならない気がします。だから、早目にケリがつきそうな予感が。いや、わからんけど。でも、これでグダグダだと先がなさすぎるしなあ。この手のバイオホラーの弱点ですよね。なんたって敵は虫けらですしね。
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2005年/10月/7日
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「ぱりあんの園」イマイヒヅル(ワニブックス)

・圧倒的な画力でバカなことを描くってパターンです。本当、美麗ですよ。で、エロバカ柔道マンガです。

・ここいら、やや微妙なところです。男はエロとギャグだとどうしたってエロです。とくに主人公のロリ巨乳が毎回胴衣からポロンとおっぱいがまろびでるのに、「バカ」を感じずにエロを感じます。やや男と女の間のミゾを感じます。どうも作者はムダにポロンとオッパイがまろびでるのをギャグとして描いてらっしゃいますが、たぶん、男子の多くにはズキューンと違う方向に向かうのです。capslockがかかってしまうのです。

・女子高の柔道部。元プリマドンナが柔道部部長のダンディなお姉にホレてしまって、柔道一直線。という基本であとポロリポロリとオッパイがこぼれます。

・で、最初から最後までそれで押し通します。まさに美麗な絵とエロによる暴力です。ぐいぐい読ませます。だから、構造としては往年の永井豪氏の少年誌連載のエッチマンガ的であります。意外なことでしょうが、永井豪はそういう存在でしたよ。

・こういう表現は止めようとは思ってましたが、つくづく「もったいない」。この耽美風な、それでいてシャープな絵なのに、やわらかくてエロい女体と、非のうちどころのない絵で、オッパイポロンのバカマンガってのは、その存在自体が最大のギャグにはなってますが、どうにもこうにも「もったいない」ような。

・まあ、「おねえさま〜」って慕う、かわいらしくて巨乳な女性が好きなら、かなりストライク。おれはまあまあストライクでした。
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2005年/10月/6日
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「お菓子な片思い」1巻 阿部川キネコ(竹書房)

「とてもとても大切な作品」だそうです。あとがきに書いてありました。

・作者の思い入れってのはときにはジャマになります。たいていの作品は読者と作者の入れ込み具合がちがうもんですからね。これが限りなくイーブンに近いようにおたがいがうまく錯覚するのが同人誌なのかしらね。ここいらはよくわからない世界なんですので細かい追求を避けますが。

・だから、「とてもとても大切な作品」と作者が記載するのは往々にして読者にはノイズになりかねません。「そんなたいそうなこと書いて」と。

・とてもわかりやすい例でいうと、人気爆発の車田正美さんが、「リングにかけろ」で成功したノウハウを全部捨てて、硬派番長ケンカマンガの「男坂」を「大切な作品」として描いて打ち切りになったとかね。

・さて本作。

・オビがあのみつはしちかこ氏です。これがかなりすべてを物語ってるような気がします。たぶん、女性の多くに含有されてるし、男性にもあると思われる「みつはしちかこ」度。阿部川氏のそれを搾り出したのが本作です。

・高等部2年の「お菓子部」部長の「ちま」さんが主人公です。小学生にみえるくらいの「ちま」さんです。
・そして、高等部1年のバスケ部に片想いします。

・そういう設定のストーリー4コマです。

・ああ、みつはしちかこ。おれも読んでます。昔の図書館ってのは、「鉄腕アトム」「のらくろ」「小さな恋のものがたり」しかマンガがなかったのです。だから、慢性マンガ欠乏症だったヤングのころにはマンガならなんでも読んでいたのです。だから、おれのココロには「みつはしちかこ」が宿っているのです。たぶん、カタチはちがえどさまざまな人に「みつはしちかこ」はいるはずです。

・だから泣けます。泣いてしまうのです。ちまに感情が入ってしまうのです。

・小さいけど情熱家で猪突猛進しがちなちまと、クールだけどファンシー好きな手塚君(男のほうの名前)、そしてそれぞれの脇キャラ。

・人物の配置と、随所に入る細かいネタなんかのうまさは、さすが「辣韮の皮」の作者だけあります。ややオタクに走り勝ちなところを微妙にセーブしてます。ただ、そう感じるくらいで、多芸多趣味で視野の広い方であると思いますねえ。

・その細かいネタも「キャラの肉付け」という点でかなり成功してます。

・というか、こういう「コミック」なんて、感想書いてるとわかることが多いんですが、このキャラって「少女マンガ」家の名前なのか? しかもトキワ荘がらみの。これは自信がないんですが。

・甘酸っぱいんですよ。これが最高にいいところです。この甘酸っぱい中に心行くまで浸ることができる。それを阻害するものがない。マニアックなネタとかもそれをジャマしてないんですよ。
・ただ、ちまさんはかわいそうですね。タイトルどおり、成就するときは終わるときですからね。それまでは生殺しで過ぎ行くわけですねえ。かなり泥沼に入りかかってますしね。

オススメ。2巻はいつ出るんだろう?と思いますが。
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2005年/10月/3日
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「僕の小規模な失敗」福満しげゆき(青林工藝舎)

・読後、いろいろな気持ちが頭の中を駆け巡る。

・とりあえず、これが「おもしろい」なのか「つまらない」なのか判断しないといけないんだけど、それすらもいったりきたりしてよくわからなくなる。なぜかというと身につまされすぎるし、その逆にとても個人的だからです。

・作者の半自伝物語です。「これぞアックス版まんが道」なんてオビのコピーはまちがいです。かなりきわめて福満しげゆき色の個人的な物語です。

・高校に入ります。すぐに入ったことを後悔します。そしてダブったので辞めます。で、しばらくバイトをした後、定時制の高校に入ります。定時制高校で柔道部を作ったりします。そして卒業して大学にいってます。ずっとマンガを描いてます。そんなマンガ道。

・内省して落ち込んだかと思うと、その反発で制御不能なくらい積極的に動くのが特徴の福満氏(の分身である主人公)ですね。チョロQみたいです。しかも、後ろに10円玉を仕込んだ。
・正直なところ、内省してても反動で動いても「ひく」わ。

・そして、そういわれてみればと気がつきましたが、福満氏の作品は、主人公視点オンリーの超一人称みたいなマンガばかりで、たぶん、それの最高峰が本作だと思います。一人称マンガのカガミのような一人称具合です。

・とくに後半好きな女性ができてからの一人称っぷりはすごいです。酔うと記憶をなくすという「特技」を存分に発揮されてまして、ものすごいグダグダしてます。つーか、ストーカー扱いされます。そして、それに該当する行動は酔ったために覚えていないと。とても一人称です。それで落ち込んだり、しつこくしつこく彼女に電話したり、人前でおいおい泣いたりと、とても情緒不安定なことになっております。

・でも、爆発する行動力が功も奏してるんですよね。こういうところ、「なにごとも一歩踏み出さないとはじまらない」って教訓を読み取ることができると思います。そこはすごく力というか元気をいただいた気がします。「カラ元気も元気」ってな言葉を思い出します。

・つーか、登場人物も少しづつおかしな人が多いです。そして、圧倒的にその内省のコトバ他がリアルに響きます。20代独身はかなり覚悟して読んだほうがいいかもしれない。

・この「リアル」ってのでおもしろかったのは、成人式と同窓会にいってることです。「無職のクセに成人式とか同窓会に遠慮していかないような小市民じゃないぞ」と鼓舞していってるのです。そこでの同窓生がサカってる感じがとてもおもしろかったし、その輪に入れない主人公の感じもよかったわ。

・読むのが苦しい。おもしろいけど苦しい。糸井重里風に表現するなら「おもくるしい」。そんなマンガです。

・とっても人を選びます。そして実に逆説的ですが、適正が高い人ほど苦しいです。とくに最終話はたまりません。これをハッピーエンドかと思ってる人は適正がないんですよ。
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「暴れん坊本屋さん」1巻 久世番子(新書館)

・マンガ家と本屋店員の2足のわらじーな人の本屋店員エッセイコミック。

・こういうのの評価は最近は割合とカンタンです。なぜか? ネットに必ずありますから。書店店員の赤裸々ブログみたいなの。各業界あるんじゃないか? そして、それらよりおもしろいかどうかを判断すればいいんですよね。

・と、書店店員は有名なところがありますよね。「あおてん」って検索したらみつかるところとか、そこらへんから芋づる式にいろいろと。

参照:[業界裏話 お笑い暴露同盟]

・本作は、おもしろいです。十分、上記にタメ張るどころか、640円+税のおもしろさはあります。

・女性エッセイコミックのハマりやすいワナである、必要以上にはしゃいでるってのはあり、「ややうざ」ですが、それはほぼ女性エッセイコミックのデフォルトで、たぶん、それに目くじらを立ててるのはおれくらいだから別にいいんでしょう。
・あと、やや楽屋オチ注意報か。ここいらもサジ加減が難しいところですよね。

・細かい点におもしろさを見出してるところがいいですね。本屋の仕事を愛してるのがよくわかりますし、兼業マンガ家として、自分のマンガを扱うところがまたおもしろい。自分のマンガのPOPを自分で描くってのはおもしろいですね。

・そいでもってBLネタってのも男にはない視点です。BLね。なんの略か書かないですが、口絵を店員にみられないテクとかねえ。

・定番の万引き、マナーの悪い客なんかのネタも手際よく料理されてますね。

・うん、気に入りました。つい、作者の別のマンガもどうかしら?って思うほどです。

・そして、おれは本も好きだし、本屋も好きだけど、店員はムリだなあと思います。ストレスで死ぬわ。ちなみに書店店員は1割引で本を買えるそうです。それは魅力ですが。
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2005年/10月/2日
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「彼岸島」12巻 松本光司(講談社)

・さあ、ちがった意味でホラーになってきました12巻。もはやだれにも先の読めないって意味でとても怖い作品になってきてます。とくに作者と編集がこわいんじゃないでしょうか。この収拾のつかなさはすごいですよ。

・松本氏の作風はわりにそういうところがありますね。「クーデタークラブ」もそうだった。なんつーかな、話の「芯」がないんだよね。だから、今、あらすじを書け!っていわれると、エートエート?ってなるわけですよ。女装癖の主人公がクーデタークラブに入って、部長と山荘で殺しあった? そんな話だよな。で、ラストどうなったっけか? って感じ。

・で、本作は、だまされて吸血鬼がいる島に行きました。主人公の兄もいました。たくさん仲間が殺されましたが修行して強くなりました。悪の親玉はクビを斬られても生きてました。

・さて、12巻では親玉が無敵の吸血鬼になったわけが描かれてました。こういうのの定番の軍隊の狂った実験の結果ですよ。ゴジラですかよ。

・ということで、いよいよどう展開していくのか、先がどうなるのか、どう考えても「吸血鬼サバイバルホラー」じゃねえよなあと思いながらもどんどん続いていくんですね。

・まあ、でも、現在連載されてる単行本10巻以上相当のコミックはたいてい誰も先がみえてなさそうですけどね。作者自身も。だから、本作もいいんかなと思われますが、ホラーってのはこういうパターンと相性があまりよろしくないんじゃないかと思うのですよね。もう、なんかワケわからん敵ばかりだもん。登場人物は相変わらず「ハァハァ」いってるし。

・などと憎まれ口を叩いてますが、読んでる間はおもしろいので終わりまでつきあいます。「GANTZ」と同じで。
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2005年/10月/1日
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「ハクバノ王子サマ」1巻 朔ユキ蔵(小学館)

「つゆダク」でスピリッツ読者の度肝を抜いた朔ユキ蔵氏の最新作です。
・今度は女子高が舞台です。

・女子高に赴任してきた新人教師。全校生徒の前で「年下の女性には興味がない」とぶちかます。
・そして、担任の女性(主人公は副担任)、32歳を、これまたクラス全員の前で「ストライクです」とぶちかます。

・これで、この男子教諭が女子高生から、担任から、「いけない誘惑」をされる、エロコメの素地がばっちり出来上がったところで、朔ユキ蔵さんが「本気」なんだなってのがわかります。

・なんと、その担任の女性にシフトするんですよ。つまり、タイトルどおりになっていくんです。それこそが、おれが思っていた朔ユキ蔵氏の本性ですね。えぐりこむような女性の心理描写。なおかつ、特別な状態の女性。まだ、そこまでいってないんですけどね。

・この分別ありまくりにみえる30歳過ぎの美人独身教師が、25歳の婚約者あり(遠距離恋愛中)の男に翻弄されて、ぐらぐらに揺れてるというマンガになっていくのです。

・この心理描写の揺れ具合は、毎回必ずやっていた「つゆダク」よりもなんていうかな、ドキドキします。
・この「主人公」の女教師の揺れる心理描写にゴクリと生唾を飲むんですよ。
・ナイスバディでありながらも、まだ、直接的な描写はナッシングです(未遂はありましたが)のに、なぜか、異様な生々しさを感じてゴクリと生唾を飲むんですよ。

・ああ、この「ゴクリ」こそ、朔ユキ蔵の真骨頂かもしれないな。

「つゆダク」以前のエロマンガに登場する女性もとてもイヤな存在感がありました。電波で淫乱でそして、「そこ」にいそうな感じが随所にありました。トータルでは創作の女性なんですけど、部分部分に、匂ったり、影がみえたりしたのです。

・それを本気で正面から「タカコサマ」(女教師ね)を描こうとしてる。しかも、内面から。これが息苦しくなるのです。

・2巻ではどうなるんでしょうか。タカコサマは浮気するモードになりかかってるし、男の教師もその気になってきてるので2巻ではちゃんと編集や読者が望んでるようなエロになりそうな気がします。
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