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ポトチャリポラパ/コミック/2005年
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2005年/12月
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2005年/12月/30日
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「方舟」 しりあがり寿(太田出版)

・ルーツは多分「未来少年コナン」かもしれない。
・NHK教育ではじめて連続放送したアニメだったそうですよ。名作ではあります。わりと最近見直してますし、まちがいないです。
・主人公コナンがおじいちゃんといっしょに住んでいた「のこされ島」です。
・滅んだ後の世界。かつての高度な文明は海の底に沈んでいる。コナンはそこに毎日もぐっては、ビルの陰にひそむサメなどをやっつけながらもエモノを獲っている。この設定とビジュアル。
・次は藤原カムイ氏の初期の短編群にそれがある。水没していく町。水没した町のビルの上の階に住んでいる人々。

・そこいらから、おれは水没する町というイメージにはとても弱い。ドラえもんにおけるドラ焼きくらい弱い。

・本作は、滅ぶマンガです。しとしとと降る雨が、いつまでも止まずに、ついにすべてを飲み込んでしまうというマンガです。本当になにもなくそれだけのマンガ。

・その昔、「完全自殺マニュアル」という本のまえがきにおいて、ノストラダムスの大予言のような「でかい一発はない」とありました(だから自殺して「終わる」ことができる心構えが大切だとか)。

・本書の雨も最初から最後までしとしとと降り続けるだけです。だれもこれが滅びの雨とは思わないのですね。そして、最後にだれもいなくなると。

・やりきれない怖さがそーっと忍び込んできます。意図的なところか、いろいろな諸事情(技術とか)かよくわかりませんが、「大」を描いてないんですよね。あくまで降り続ける雨に「いやんなるよなあ」と嘆いてる等身大の人間の視点です。それは、やることがなくて、ずっと家族と一緒の旅行のビデオばかりみなおしてたりする父親だったり、方舟(はみがきメーカーのキャンペーン)に乗ろうと強奪したり、方舟に乗るといった妻を尻目に家でPCをいじってばかりの男だったり、方舟でなすすべがなく衰弱していったりね。

・きわめつけだとおれが思ったのは、過疎化された標高の高い廃村寸前のところに肉親が帰ってくる話か。雨音しか聞こえず、1人住んでいた父親とたいして話すこともないうちに、みんな水没していく感じ。

・そう、つまり、おれが惹かれてるビジュアルがすべて裏返しの「恐怖」として描かれてるのがとてもショックだったりするんですよ。

・そして、あとがきにあるように「とびきり甘美な終わり」としてラストの見開きが描かれてます。とても美しい終わりです。

・と、まあ、いやんなるマンガです。とびきり甘美な鬱をもたらすとね。いやんなるからオススメしない。
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「短編マンガ集 バニーズほか」 笠辺哲(小学館)

・マンガ雑誌の「IKKI]のイッキルーキーズの一環として発売されました。彼は2ヶ月連続で発売されます。来月は「1巻」が発売されますが、これは短編マンガ集です。

・おれは短編の上手い人はすべてに上手い人だと思ってます。映画も小説もバラエティ(ショートコント&テキストサイトなど)もすべて短編が大事です。

・ということで、久しぶりに上手い短編を書く「新しい」人と出会えたかな。

・描き下ろしも加えることで、硬軟自在な、かなりなバラエティに富んだ短編を書いてます。ちょっと視点を変えるならば、「名刺代わり」って感じかしら。いろいろなの上手く描けますよってアピールしてるように思えます。そして、実際問題、「上手い」んですよ。

・漂流した男が流れ着いたのは無人島に移住して家族で暮らしてる一家だった「島一家」
・団地にUFOが飛び込んで、中から宇宙人が現れる。留守番していた子供にお礼をしようとする「エデュケーションフロムアウタースペース」
・通いの軍隊、職業としての軍人である、「衛生下士官」

・だけど、おれが「上手い」と思ったり、感じ入ったのは、描き下ろしの3篇だな。この3つのクオリティやバラエティ具合がすごいし、「おれはこんなのも描けるぜ!」って感じが。

「渡る世間」「わすれな草」「イパネマの娘」の3作。まったく傾向のちがうものです。この3作とも、すさまじい完成度だったりします。いやほんとすさまじい。とくに「渡る世間」がすごい。ただのナンセンスにみえて、ゾクっとくる読後感がみょうに続く。この感じは新しい。こういうのが連発されるとまたスゴイことになりそうだなあ。

・そして、とぼけたサラリとした絵柄、AAで表現できそうな感じのものに、さまざまな話。でも、「渡る世間」、「バニーズ」、「ロッカー貿易」あたりが1番合ってるよなあ。
・すなわち、SFなSSですよ。SSはショートショートの略ね。意外に星新一氏が書くところの「エヌ氏」ってのは笠辺氏のキャラだったりしてねえ。

・来月でる「フライングガール」も楽しみ。オススメ
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「Dear Monkey 西遊記」 1巻 白井三二朗(講談社)

・ノーマークでした。「シリウスコミック」ってことで、「ロボとうさ吉」を買うついでに買いました。決め手はかわいい女の子と、タイトル。西遊記モノってハズレがあまりない気がするし、おれはやっぱり好きなんだろうね。日テレの「西遊記」とか、ドリフの西遊記とか手塚治虫のとかいろいろありますからね。

・玄奘がいます。三蔵法師ですね。三蔵法師ってエライ人の異名みたいなもんだそうで、まだ、玄奘です。
・中国は妖怪に支配されているような暗黒大陸になってます。これを打破するには、天竺にある妖怪をやっつける経文を取りに行かなければなりません。そいで、玄奘の旅がはじまるのですが、妹のテンテンもいっしょに連れて行くことにします。
・玄奘はテンテンの前で殺されます。テンテンは助かります。そして救助されます。そして、奇妙な噂をききます。
・おともをつれたお坊様が天竺を目指している。
・そして、テンテンの目の前には玄奘がいました。

・ま、つまり、玄奘に化けて、天竺に乗り込もうとする妖怪の陰謀に巻き込まれたわけです。そして、テンテンは彼らより早く天竺を目指そうとするのです。

・おー、よくできてます。

・そいでもって、テンテンもゴクウにハッカイにサゴジョウと共に天竺を目指すことになるんですよ。このキャラがまた抜群。これはネタバラシになるんかな。

・生き生きした少年マンガ系の絵。カワイイ女子。かっこいいアクションシーン。メリハリのあるストーリー。随所に効いてる小技。伏線もあるし、意表をついた史実ネタなども。

・いわゆる、「なんでもあり」な世界です。敵はセーラーバニーのメガネっ子だったりしますしね。ハッカイの武器はハンドガンですし。

・ということで、本作で最高に画期的なのはサゴジョウの設定です。これについて書きたくてしょうがないんですが、これからお読みになるみなさまのためにナミダを飲んでガマンします。

・後ろ盾がほしい? オススメ
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「ゆめの底」 岩岡ヒサエ(宙出版)

・実は買うのに躊躇したのです。近作「花ボーロ」はとてもよかった。だけど、その前の同人誌をメインの「しろいくも」は微妙だった。
・本作は、創作同人を出版させたら日本一の宙出版ってことで、同人誌からのものにいくつかの描き下ろしを加えたものです。
・連作短編というようなオモムキになってます。というか、「連作」にすべき、ジョイントとしての描き下ろしですかね。

・生と死の間にあるコンビニの話し。少女がそこに迷い込み店員として働くことになりました。

・店長は犬だし、とりとかの配達夫がいるし、それですらないあやふやなものがきたりね。

・メルヘンタッチにするりと触るヒリヒリするネーム。そう、ストーリーもメルヘンでもないんですよね。

・で、やっぱ直結したネームは無いけど「居場所」なんですよね。居場所を求めてさ迷う休憩所というか中継所というか。そして、このコンビニでは「気持ち」を残すことができる。つまり、託して次に進む場所。その目的地はつまり「居場所」とね。ま、居場所作家とでもいいますでしょうか。居場所を探すマンガを描く人はずっとそうなのかしら。

・そいで、そういう居場所居場所ってのを「抜こう」とあがいてる風にもお見受けしてました。というか、いぬの店長が非常にそれに貢献されてますし、この店長の「創造」が、ブレイクスルーだったのかもしれないねえ。あとがきによると作者にとっても重要な人(理想の人)ということになってました。

・うん、おれは岩岡作品がかなり好きになってきてるなあ。というか、「花ボーロ」以降はみんなおもしろいとこれで確信しました。
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2005年/12月/29日
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「トイレの花ちゃん」 1巻 古川新(集英社)

・スーパージャンプに連載されてるエロマンガなんですが、それにつけても一時期のアホみたいな健全なマンガ世界はなんだったんでしょうか? それでいて現在のナアナアぶりはなんなのでしょうか。
・和歌山の主婦のガキがエロマンガを持っていたことを「けしからん」とはじまったエロマンガ弾圧大会ですが、ここで不平不満を言っていた良識人はどこさいっただ? ガキどもが成人したから関係ないってか。あるいは、エロ本はシールでとじるから関係ねえってか。

・ま、ということで、主人公が住んだアパートには巨乳の幽霊の花ちゃんが住んでいたというのじゃ。で、SEXでイクと昇天できるそうで、お願いしますとHカップで迫られて、あとズコバコズコバコと。ほかにも幽霊のHフレンドができたりという定番の展開(もしかしたら出版社にマニュアルがあるのかしら?)。

・で、肝心のそのシーンですが、オッパイがシリコンっぽいよなあ。あと、男女の作画がちがうなあ。

・不思議なことに、「エッチっぽい」と思って買ったマンガが予想通りにエッチだったら逆にややシラけるというやっかいな性質をもってることを発見しましたよ。

・15年ほど前ののびのびやっておられた大手出版社の青年雑誌のエロマンガ的。具体的にいうと「週刊プレイボーイ」に連載されてる的。「ヤングジャンプ」もこういうマンガあったよなあ。だから、ややなつかしかった。もちろん、作画はそのときより洗練されてる(と思う)。

・ま、雑誌にあると重宝するライトエロというレベルで。
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「M-エム-」 1巻 新井理恵(幻冬舎)

・有料のWEBコミック誌に連載されていたエロマンガです。だけど、新井理恵のことなので、そうならないのです。すべてのことは「笑い」より優先されないという、作者のナンギな性格が幸いしてるのか災いしてるのか。

・でも、「花ちゃん」よりはエッチだったね。

・高校のとき女教師を襲いましたら、逆襲されて、手でイカされました。そいで、尻のバージンも指で奪われました。それ以来童貞の主人公が先生として高校に赴任いたしましたならば、その女教師がまだその学校にいましたよ大笑い。

・ということではじまるエロマンガ希望のうじうじ主人公のうじうじギャグマンガです。

・だいたい、毎回、新井理恵のマンガにはおろおろしてる方がいて、それに作者や作者が委任してるキャラが、「アホか」と冷静にツッコミをいれる構造になってるのですが、今回、主人公がセルフサービスでツッコミをいれてます。自虐オチですかね。だから、うじうじ度が上がるのですが、いつもの粘っこい長い、ツッコミがなりをひそめてますかね。

・この設定、「ハクバノ王子サマ」の対になってますね。ハクバ〜が女教師視点で、本作は、男視点です。そこが最大のちがいです。そして双方うじうじしてます。本作のほうがスムーズですっきりしてるような気がしますが、ネームが多いですか。それは「THE 新井理恵」みたいなもんだし。

・1巻のあとがきのとおり、もっとエッチになった2巻を期待してます。
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「こどものじかん」 1巻 私屋カヲル(双葉社)

・ロリマンガです。エロマンガです。ネットで話題沸騰です。「青春ビンタ!」のほうがエロマンガ度が高かったのに、本作のほうがネットで話題沸騰ってことはつまりロリコンが多いってことですね。ベドフィリアん?

・小学3年生の美少女3人と担任教師とのエロコメですね。

・実はその効果範囲を考えており、担任の同僚に巨乳を用意したりねえ。で、担任は童貞と。「童貞の教師」ってジャンルが流行ってるのでしょうか? 「M-エム-」もそうですよ。

・担任を好きなのは、子猫な小悪魔タイプ。そのコを好きなおかっぱの和風。小3にして巨乳のメガネと、リアル小5と小2のガキがいるものとしては、猫耳やフタナリくらいのファンタジー設定です。

・で、小3の挑発や胸のふくらみにどぎまぎしてる担任ってのは、設定といえばそれまでだけど、かなりヤバイんとちがうか?

・本作は、かなり思いきってます。「青春ビンタ」や以前の少女マンガ期にあった、「コメ」をかなりバッサリと省略しております。ゲームのコントローラに「コスプレ」して、好きな男にオッパイをいじってもらうという思いつきそうでだれも思いつきにくいエロギャグとかがあまりないのは惜しいですが、基本的に私屋氏のエロギャグや普通ギャグはスベることが多かったので、ナイス判断ではありますよ。
・それでもネット上で有名な、習字に「中出し希望」と書いたのを先生にみせる等のギャグはありますけどね。

・そう、わりにシリアスに展開していきます。すなわちシリアスにエロだったりするところがあり、まあ、ファンタジーの世界と割り切って考えると、エロいなと思います。エロ関連で、いいブレーンができたのでしょうかね。

・で、全体的にはさすがのベテランクオリティですしね。

・ただ、真・ロリにはあまりアピールしないような気がするんだけどどうだ? 少女の中の「女」を強調するやり方は、「真」にはダメな気がするけど、実は、「真」って少ないと思うので却ってOKです。そう、実はチンポといっしょで、多くの方は「仮性」なんですよね。

・そういうことでよくできたエロマンガです。
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2005年/12月/28日
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「NHKにようこそ!」 4巻 滝本竜彦&大岩ケンヂ(角川書店)

・アニメ化企画進行中だそうな、オタクネタ&電波ギャグマンガです。4巻目です。

・相変わらず、スイカ割り前の目隠し&回転状態でF1に参戦するような先がみえない暴走っぷり。

・そいで、謎のヒロイン(4巻でも表紙だったところをみるとヒロインでしょう)がとてもイタイのです。つまり、まともなキャラクターが皆無になったんですね。で、ねじれまくってる展開。

・で、4巻まで、主人公を筆頭として、各キャラが「ひどい目に遭ってる」マンガですね。ジャストそれだけ。つまり、「そういうマンガ」だったりするのですよ。

・そう思うと、「電波美」とでもいうような、思いつめた、受信トクイな女性が大量に登場されるので、そのスジにはいいです。純粋にみかけはカワイイですしねえ。

・で、謎なのは電波ビリビリでテンパった行動をするキャラは「あるある」なのでしょうか? 本作を熱狂して受け入れてる方って「おれもこうだった!」って方なんでしょうか? えーと、ネガティブキャンペーンに応募してるようなやつら。

・ま、おもしろい。おれはいろいろな点が「みえない」のも込みでおもしろいかなと。
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「ハクバノ王子サマ」 2巻 朔ユキ蔵(小学館)

・いわゆる「負け犬」な女教師の揺れる乙女心をじっとり描いてるマンガです。
・なるほど、今になってタイトルどおりの内容なんだなと思いました。

・女子高に新任男教師が赴任というオープニングがいつのまにか、その年下男教師が気になって気になって仕方ないのですが、30歳オーバーと知性がそれをGO!させてくれないんだね。

・それをひたすら描写してるんですよ。これがかなりひたすら。

「男は負け犬大好きだよ」

・とは、中尾彬氏の名言ですが、そういうことで、この女性のぐじぐじしてるのがとてもキュートなんですよね。

・酔っ払ってよろけて、男性教師に腕を捕まれるですよ。で、家に帰って素っ裸で反芻するけど、そのとき二の腕がぷよぷよなことに気がついて、「今やってもムダ」と自覚しつつも、素っ裸でダンベル体操したりするんですよ。んー、とってもキュート。

・ということで、男は負け犬が好きなのかもしれないなあと思いつつも、これは単にこの女教師が魅力的なだけなんだなと思ったりするんですね。

・ただ、おれは年上の立場として女教師がかわいいと思うのですが、年下や女性にはどうみえるのでしょうか?
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「ボーイズ オン・ザ・ラン」 1巻 花沢健吾(小学館)

・ん?「宮本から君へ/新井英樹」を読んだ?と思ったりねえ。

・ということで、ネットゲームの女性にホレるマンガ「ルサンチマン」を描いた人の次の作品ですが、どうだろう?とおれにはかなりクエスチョンマークが頭に浮かぶものでした。

・まず、構成、どうよ? 1話に登場した人が、1巻の最後10話目に登場するのかよ? そして、1話に登場したもう1人のキーパーソンっぽい人はもう出ないの?

・えーと、で、2話目以降が本題みたいな展開なんだよね。

・モテないサラリーマンがいます。ガシャポンの会社にいます。そいで、ちがう部署ですが、好きな女性がいます。
・1巻かけて、いい仲になります。ラブホテルまで入ります。でも未遂でした。

・そういう話です。で、1話目のネタフリが10話目に炸裂すると。

・んー、いいところも多いですが、この思い切りな構成のアレなところにかなりひっくり返りました。「なんじゃそりゃ」って。

・主人公がホレる女性がとてもかわいいんですよね。これが1番大きいかも。というか、「ルサンチマン」のヒロインとかぶってるところも多いんで、なるほど、花沢氏のツボは、この2人の中から救いだせそうね。

・こう、「どこにいくの?」って感じか。ということで、1巻だけではなんともいえない。そこらも、なんともいえないまま終わっていった「宮本から君へ」をホーフツとさせる。あのマンガもなにがなんだかって感じだったし。ついでにいえば絶賛するファン層もかぶってる感じがする。
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2005年/12月/27日
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「時の守護者」 1巻 岸大武郎&一ノ瀬珠緒(秋田書店)

・昔から「時間モノ」には弱いのです。タイムマシーン、タイムパラドックス、藤子不二雄から知ったのか、ほかから知ったのかよくわかりませんが、そういう時間がカギを握るドラマはわりと目がないのです。だから、「月刊プリンセスGOLD」という、何歳を対象にしてるのか、ほかにどんな作品が連載されてるのかよくわからないし、それを調べることに意味も見出せない感じです。ま、少女マンガに連載されてるんだろうなと。

・で、おれが手に取ったのは、オビやタイトルの時間モノという情報のほか、くっきりしたわかりやすいピントの合った絵に惹かれたわけですよ。

・主人公、ま、少女マンガのセオリーである、どこにもいそうな元気印で、なおかつ勉強は苦手で、明るいという少女が、ひょんなことで、時間の質屋に迷い込んでしまう。そこでは、時間を貸し出してくれるというのです。
・どうしても確保したい時間を得られるかわりに美しい思い出を担保にとられる。ま、あと、いろいろとルールがあります。

・で、おきゃんな主人公が、時の質屋の店主の謎の美青年と、喋るカエルとともに、毎回時間を求めてくる「ゲスト」の悩みをかなえるという感じですね。で、「感動」と。

・助かる確率が少ない大手術を控えてる少女がどうしてもその前にデートをしておきたいから1日。
・人気絶頂のアイドルが、父親に認めてもらうために説得にいく半日。
・時間を止める機能を使っている優等生。彼は時間を止めてなにに使ってる?

・この3エピソード。かなり読み応えがあります。物語は「感動」に導かれるし、感動というのはすなわちベタがつきものです。つまり、わいりあい先が読める話です。ただ、それは逆にいうと安定した感動を約束されているのですよ。

・そいで、少女マンガにしてはって書くと、差別的になるんでしょうか、背景がかなりしっかり描かれております。そう、全体的にシャープな線ですね。少女マンガ的というより、月刊少年マンガで連載されてる感じ。もっと具体的にいうと、そういうところで描いてる人のアシスタントやってたんじゃないの?って感じ。全体的に丁寧です。

・手堅く感動したい方、時間ネタが好きな人は、お試しください。
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2005年/12月/24日
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「さちことねこさま」 3巻 唐沢なをき(エンターブレイン)

・最終巻。
・ここ10年くらいの唐沢なをき氏は、なんていうか、わりと「まわし打ち」的な作品が多かった。自分内の引き出しのこれとこれのミックスとか、セルフリメイクとか、そういった感じです。それはそれでまったく問題はないんで、吉田戦車氏やらうすた京介氏は、そのデンでいうとデビューからずっと自家再生産を続けてる感じですし。

・ただ、デビューからしばらくの唐沢氏は「絶対に同じことはやらない」というスタンスで、かなり気を吐いておられました。それに毎回度肝を抜かれていましたよ。そう、オビにあるように「希代の実験ギャグマンガ家」をほしいままにされていたのですよ。やや過去形。

・そういった意味で、本作は今までやったことのない新機軸である「ラブコメ」をやっておられるのです。それが画期的でした。これもまた過去形。結局、いつもの長い連載のときのようにグダグダとしてくるから。

・本作で思ったのは、唐沢なをき氏がエロくなってるってことかしら。本作の女性は露出が多いってのもありましたけど、これまでにないくらい女性のいろいろ面を描いてますよ。ないパターンの女子をいっぱい描いたんじゃないでしょうかね。本作でギャルゲーが作れるくらいいろいろな女性が登場しました。ま、視点を変えると、あおくさクンが主人公のハーレムマンガでも成立しそうですからね。

・そのバリエーションゆたかな女子がけっこうエッチな目に遭ってるんですよ。主人公のさちこは3巻では入浴シーンあり、ボンテージファッションあり、首輪をつけられてメス犬プレイありと、盛りだくさんです。
・ライバルのお嬢様(こういう名前でもある)も「のりまきのりまき」の妄想他、ツンデレ的なかわいさを思う存分に味わえる。

・そして、ラスト。わりと唐沢マンガにおいての連載モノのラストはオビのとおり毎回「怒涛」の展開になるんですが、本作が、史上最大に大掛かりかもしれない。

・本作が与える影響が大きいのか小さいのか、はたまた、「それはそれ」ということで描かれたのかはよくわかりませんが、久しぶりの「実験マンガ」ではありましたよ。
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「唐沢なをきの幻獣事典」唐沢なをき(講談社)

・未確認動物(UMA)マンガで、格闘マンガというアレ。
・すなわち、世界各地の未確認動物と拳の会話を試みる主人公の話です。
・雪男、ネッシーからはじまって、ツチノコやら、スカイフィッシュやら、河童やら、いろいろと登場します。

・と、実は巧妙に、少年マンガの定番パターンや、固有パターンのパロディになっていたりするのですよ。

・1話目で負けた雪男は2話目では仲間になり、以後の旅をいっしょにするし、チュパカブラでは拳法マンガでの定番である、主人公の師匠が登場したり、UMAが子供を人質にとられていて、隠居してるのにしぶしぶ戦ったりね。

・そう、それらの定番パターンを異形のモノ、すなわちUMAがやってるってのがギャグになっているのですね。スカイフィッシュのSちゃんとかね。Q太郎のもじりですよ。

・主人公のセンセは「BURAIKEN」の鬼畜サムライにちょっと似てますかね。少年誌連載だから、即レイプって展開はないですけどね。

・で、「怒涛」のオチになります。というか、ぶっちゃけ、構造は「さちことねこさま」といっしょじゃないかい? キャラ総出演でドタバタしつつ終わるってやつ。

・いや、展開の多様さではここしばらくの唐沢マンガで随一だったかもしれない。導入が全部いっしょな分、その後の展開で、いかにちがうことができるか?ってのに命を削ってたんでしょうね。
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「漫画家超残酷物語」唐沢なをき(小学館)

・永島慎二氏って故人なのな。知らなかった。[永島慎二 - Wikipedia]

・その永島慎二氏の「漫画家残酷物語」の作風やキャラをベースに使用したもので、パロディ風でありながら、そんなパロディでもないという感じになっております。正直なところ同作品を読んだかどうかも定かでないんであまり大きいことはいえないんです。

・永島慎二をパロディしたのでいうならかつて「鉄鋼科学大魔号」という作品において、見受けられますね。それを正面向いてやったのでしょうか。

・唐沢なをき作品では必須のパラノイアなキャラが多数登場します。その見本市といったオモムキすらあります。ただ、永島風キャラである分、「薄い」気はしますが、かなりえぐい面々が出演されます。

・ここいらが、唐沢なをき作品が「おしゃれ」化するのを防いでいる1番大きいところかもしれませんね。たとえば、昨今はマンガ作品がさっぱりお見限りで、なおかつ、同じ「理系ギャグ」の使い手とされるとり・みき氏なんかはここまで描いてないですよね。「遠くへいきたい」なんて、「おしゃれ」ナンセンスマンガを描いてますからねえ。個人的にはなんとなく「終わったな」と思ったりした作品でしたよ。

・で、本作、えぐりこみの深さじゃ、たぶん、ネタ元の永島作品も、これまでの唐沢作品と比較してもかなりのものですよ。

・アシスタントが全員コミケで描くから休ませてくれっていわれ、ヤケクソで1人で描いて死んだ作者の遺作を、アシスタントがコミケで売る話。
・アシスタントが作者の作品に入り込みすぎて、あれは自分の作品と言い出したり。

・父親と息子が共同でマンガを描く話がなぜかとてもいい感じだと思ったりしました。

・なんやかやいうて多作でありながらクオリティ保ってますよね。なんたって4冊(ほぼ)同時発行とかされてますからね。
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「電脳炎」 6巻 唐沢なをき(小学館)

・電脳4コマですね。これがなにげに長寿連載。
・考えてみれば、唐沢氏がデビューした当時は、ギャグが徹底的に不遇だった時期でして、週刊誌もギャグは4コマのみってのがあったような気がします。「こち亀」とかはのぞいて。
・だから、当然といえば当然なんですが、唐沢氏も当初、並行するようなカタチで普通に4コママンガも描いてらっしゃいましたし、4コママンガの単行本もけっこう多いんじゃないかな。

・6巻からかしら? 半エッセイコミック風な、作者が登場する、飼い猫がカワイイってネタが多く見受けられました。

・4コマ以外でもそうですが、いわゆる、「またそのオチか」って、お笑い用語でいうところの「テンドン」が多いですよね。本作はそのテンドンが多用されており、なおかつ、ギャグとして成立してるものが多いです。4コマでは意外とだれもがやっていながら、それを隠すようにしてますね。なぜなら「手抜き」に思われるからです。

・6巻ともなると、いろいろなキャラが出ては消えしてますが、パソコンキライの課長と、新テクノロジーをおしつけにくる「おしつけくん」では、いろいろなITネタを課長におしつけては課長がひどい目に遭うというパターンを6巻分つづけてます。

・山本エロ子という処女のクセにエロ画像収集の達人は、6巻では「モトカレ」につきまとわれるが、彼をだまして逆にひどい目にあわせたりしてます。

・友達ほしいクンは人間をあきらめて、犬を友達にしようとして、いろいろ巻き込まれて、ブリーダー地獄に陥ってるし、ネットアイドル子ちゃんは生写真付のヴァレンタインチョコレートが1個も売れなくて、やけ食いした挙句デブデブになった自分をネットに晒したら、逆に人気者になるという、業が深い人々をサラリと描いてますね。これが6巻も続いた秘密かしら。OA仮面も家族が登場してます。

・6巻での業が深い新キャラは貝柱ルリカですかね。中学生の息子のPCをのぞいては、エロ画像等をチェックして、息子のエロ度合いを把握したり、からかったりしてるんですよ。イヤな「あるある」ですよね。こんな母親いそうだよ。コレがじょじょにおかしな方向にエスカレートしていくんですけどね。

・ということで、いつしか代表作になっていくのでしょうか。
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2005年/12月/22日
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「花鳥風月紆余曲折」 3巻 佐佐木勝彦(講談社)

・20年以上定期購読していた「月刊少年マガジン」を止めてからしばらく経ちます。だけど、本作に収録されてる作品は全部読んでました。だいたい2001年から2005年までの佐佐木勝彦先生の血と涙といろいろが混ざったものです。なかなかコミックにならないんですね。3ヶ月連載分で単行本になる先生とかもいらっしゃるのにね。

・本作は四文字熟語をからめたギャグマンガです。だけど、四文字熟語はあまり関係ないんですね。

・パロディ、時事ネタ、下品、などなど。たとえば、ゴミ屋敷を片付けてると、やくみつるが「あーこれは**が吸った吸殻なのに」とすがりついてるってネタとかね。

・なんつーかなー、「あ、お疲れで?」というような回があって、正直、すげえムラがあるんですよ。同時期に連載していた「グミ・チョコレート・パイン」(最終巻と本作は同時発売でした)のほうに全力投球すぎたのかな?とカンぐるくらい。というか、1アイディアでGO!って感じで「やっつけ」てる感じが濃厚ですね。

・そして、その結果、佐佐木先生の人とナリが浮かび上がってくるんですよね。ま、とっても、根性が曲がってらっしゃいます。同い年生まれですし、同じくらい曲がってるので、その曲がり方にかなりのシンパシーを感じるのです。

・そして白眉はあとがきにも書いておられたとおり、大問題になったらしい、「喫煙を擁護する」ってネタです。喫煙するメリットをズラズラと並べてるというものです。
・構造としては「メリットなんかない」ということの裏返しの無理やりなギャグだったのですよ。だけど、怒った方が多いということを、最後にからかって終わるという、かなり複雑な構造の根性の曲がり具合。

・ま、最後のネタ、 荒俣宏の「ヒロシです…」ってのは風化してから味わいを増しそうですね。

・また何年かあとに4巻が出るんでしょうね。
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2005年/12月/19日
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「花ボーロ」 岩岡ヒサエ(小学館)

・メジャー第一弾って感じ? 以前の「しろいくも」は同人誌からのチョイスにプラスアルファといったオモムキでした。
・これと「ビーム」を読んでればマンガ通でおなじみの「コミック IKKI」で連載されていたオムニバス読みきり10作で、なおかつ、「イッキルーキーズ」という新人さんの宴シリーズの第2弾。

・学園モノならぬ、「学校」モノですね。学校を中心として、生徒だの、先生だの、ちがう学校の生徒だのが織り成す、あまり、ドラマチックじゃないストーリー。

・刻むようになりましたよね。同人誌時代の気負いや背伸びがなくなり、すーっと入ってすーっと抜けます。とくに3話以降、どんどんよくなっていきます。

・すっきりしてくるんですよね。すっきりでも深く描くことができるコツをつかんだというかな。

・それで、MAXでないMIXな感情を描くことに腐心して苦心されてますね。

・MAXでない感情というのは、血涙を流すような怒り、思わず電車に飛び込むような悲しみとかじゃないものです。それでいて、悲しくてうれしいなどのMIXしたもの。イメージとしてはイコライザーですか。
・そこいらの微妙さ。たとえば、「ウチマス」では、ウチダくんとマスダくんの仲良しヤンキーが登場する。だが、彼らは原チャリでの無茶運転がたたり、怪我をして入院し、バイクに乗れないようになる。それからは、バイクに乗らないし、「怒らない」というオキテを自らに課して生きている。だけど、バイトしてるコンビニで万引きの疑惑をかけられる。
「坂の上」では、思い出の駄菓子屋に教え子を連れていく老先生。「夜の王国」では子供だけの国を作ろうとする子供。「悩める先生」ではデブに恐怖をもってる先生が給食センターのデブとつきあう話。

・そういう、日常の中の微妙な感情の増減を丁寧に描こうとしてるよみきり漫画です。喜んだり悲しんだり、その幅が微妙ということを感じられるデリケートさ。そうそれが「デリケート」とわかる描写力。

・あと、背景もかなりいいですね。もっと「演技」させたらもっといいかもしれませんね。

・次回作もきっとよくなっていると思われます。
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2005年/12月/18日
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「ソラニン」 1巻 浅野いにお(小学館)

・うまい人だよね、まったく。

・バンドもののマンガだからってことでもないんですが、浅野氏とアジアンカンフージェネレーションが被ってみえるんですよね。雰囲気とか具体的な共通項じゃなくて、「姿勢」が。

・自分を客観視して、分析した上で、自分の表現欲と、世間からの欲求を、うまくリンクさせている感じ。

「本当に描きたいもの」ってのを隠しながらマンガを描く、音楽をやるなんてのはもはやベタなんですよね。本作でも、売れないバンドがアイドルのバックバンドをするならデビューさせてやるなんて展開がありますけどね。

・そういうのをつきつめていくと、「本当に描きたいもの」ってなに?って感じになるんじゃないかなと。それがそのまま作風になるような感じだけど、その「本当」を見失いそうで、実はそんなものねえ!ってドライなところもありそうな。よくわからないこと書いてますね。

・バンドマンの彼氏と同棲してます。彼氏はプロになれそうなレベルの人ですが、もうひとつやる気がないまま、月に2回の練習がなんとなく続いてる状況。

・それからいろいろと展開していくわけです。

・日和ったというのは悪すぎる表現です。えーと、かなり「明解」になりました。「素晴らしい世界」「ひかりのまち」などに比べて、いろいろな点でわかりやすくなりました。んー、「マンガ」寄りになったって表現はどう?(だれに聞いてる?)

・なにより、主人公であるところの芽衣子がかわいいね。これはそのままの表現でかわいい。絵がかわいい。キャラとしてかわいい。

・あと他のキャラもわかりやすい。とらえやすい。把握しやすい。

・だから、物語に入りやすい。

・ただ、この物語はなんだ? 物語自体がとらえにくい。同棲してる。けっこう現代社会は冷たい。でもがんばってる。ってラインから急速に変わっていく展開。でも、1巻の時点ではその見通しの悪い物語の先になにがあるのかわかりづらい。

・もうちょっと正確に書くと、プレイステーションやセガサターンの初期のポリゴン3Dドライブゲームのように、近付いたら急速に背景が「生えてくる」感じがする。そこにあるのはわかるけど、描画スピードが足りないのかあわてて先がバタバタと出来上がっていく感じ。
・わかりづらいね。濃霧でのドライブみたいなもんですよ。視界が悪い中、急にいろいろなものが飛び出してくると感じるじゃないですか。

・道路の先があるのはわかります。考え尽くした内容だと思います。でも、なんだか、不安なんですね。それは物語自体というより、物語の外にある部分で不安というか。

・もっと具体的に「ちゃんと終るの?」って。

・この場合の「ちゃんと」ってのは辻褄があって物語に整合性をもたすという意味より、このキャラたちをちゃんと終わりまで導いてくれるの?って意味です。なんか、(このキャラほかのいろいろなことを)ぶん投げそうな不安がつきまとってるんですよね。それはたんにおれの思い込みですが。

・そう、つまり安心して読めない1巻ってことだったのです。これまでにないマンガ的なキャラと、マンガ的な世界を持て余すんじゃないか?って、みょうなドキドキが最初から最後までありました。

・おもしろく読んではいるのですがね。
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「林宏」 袈裟丸周造(集英社)

・オビに「10年に1人の天才」とありましたが、実にそのとおりだったので驚きました。

・とにかく全編を漂う緊張感です。そして全ての点で緊張や緊迫をかもし出すあたりが天才の所以なのかもしれません。

・組織のエージェント林宏は、元エージェントだが認知症になったジジイを殺すという任務を受けた。

・1冊まるごとこの話が展開していきます。登場人物はほぼ2人といってもいいです。林宏と、ターゲットのジジイです。で、どうにか殺そうとする話です。ホテルの一室からはじまり、最後は意外な場所で終ります。

・最大のポイントはとにかくいろいろな点で先がまったく読めないという不安感が最後の最後までつきまとうことです。実に、完全に読了してもつきまといます。

・天才なのか天然なのかよくわからないが、少なくとも画力という点ではやや劣る作者の絵がその役割にかなり貢献してます。

・マンガっぽい絵や写実な絵、あるいは、もっと大まかな「うまい絵」というものには安心感がつきまといます。「ソラニン/浅野いにお」なんかはそれが逆要素になり不安感につながったのですが、本作は、その微妙な絵柄がダイレクトに緊迫した状況が最初から最後までつづく本作にとって絶大な効果を生み出します。

・読んでいて、こんな落ち着かないマンガはめずらしいです。広義ではハラハラドキドキなんですが、たとえば、ディズニーランドにおけるそれとはまったく異なるものです。たとえるなら、まったくコトバが通じない、非日本人と2人きりでとても狭い部屋に座っていなければならないみたいな。で、お互いに少しの動きも緊張してけん制してる。

・把握できる点での「天才」もあります。この先の読めない物語の妙や、数々のトリック、最後の舞台の妙(こっちは奇妙の妙)とか。
・だから、次回作で、本当に「天才」なのか、「天然」(偶然が重なってこのクオリティになった?)なのか、わかると思います。
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「シートン 旅するナチュラリスト 第2章 少年とオオヤマネコ」谷口ジロー(双葉社)

・このシリーズと、みなもと太郎氏の「風雲児たち」は全国の小中学校の図書室に漏れなく置いておくべきですね。最高ですよ。

・こういういわゆる「名作」ってのを素直に名作と認めることができるのにこれまでの時間が必要だった、天然ヒネクレ者のおれは特別として、たいていの方にはスルリと圧倒的な感動を持って本作が入り込んでくるはずです。

「シートン動物記」が原作なんでしょうな。読んでませんが。そのシートンの少年時代の話が本作です。
・少年シートンが1ヶ月、森の奥にある農場に暮らすことになりました。まあ、今でいうところの「農業体験」みたいな感じかしら。

・森と動物が大好きなシートン少年はたちまちその場所を気に入りました。ある日、農場のニワトリを奪うオオヤマネコと出会います。
・そのオオヤマネコとの話が本作です。

・毎回、絵が上手い的なことを書いてるのですが、今回、当初、絵にややブレを感じさせるのはどういったことでしょう。もちろん、谷口ジロー氏の水準においてのブレなんですが。

・あと、PC処理なんでしょうか。マンガにおいての「スピード」を表わすため用いられる集中線という技術。これの新しいやり方がありました。谷口氏が創始者ではないと思いますが。どうやってるのか想像もつきません。トーン多用と背景のトーンを削ってやってる集中線ですがね。

・以前に比べるとだいぶ「マンガ」のキャラになってきました。どういう現象なのかよくわかりませんが、トーン多用の精緻な背景にマンガなキャラです。その分、表情が豊かになりました。

・本作では登場人物が全員熱病にみまわれて苦しみます。その段階で、オオヤマネコに飼っていたニワトリを全滅に追いやられるんですよ。

・その熱病で、各マンガキャラがリアルに衰弱していくのがまた凄まじい。それで、夢うつつで自分のベッドの足元に侵入してきたオオヤマネコがいたりするんですよ。

・そしてラスト。ああ。

・ということで、万人に刺さる可能性の高いマンガです。多くの人に読んでもらいたいものです。

・まあ、ぶっちゃけ、ナチュラリストとかどうでもいいんですけどさ。そういう高尚なこと抜きにしてもとってもいいです。

オススメ
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2005年/12月/17日
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「大臓もて王サーガ」 1巻 大亜門(集英社)

「無敵鉄姫スピンちゃん」の人の連載作品ということですね。
・異世界からきた王子さまがモテるためにがんばるギャグマンガです。

・また、こういうマンガが登場しはじめたんだなあと思った。というより、ちょっと前のこの手のマンガがまったくないほうがおかしかったんですね。

・どういうマンガ?

・えっとね、その連載されている雑誌で最新を毎週(毎月)1話だけ読むのが1番楽しいマンガですね。

・連載されている「ジャンプ」の作品を中心にいじっていきながら進行していくやつ。


「とりあえずいちごの真中くらいもてたいんでよろしく」


・っていわれても「いちご100%」を読んでいないとわからないでしょ? おれはわからないんですよ。「いちご100%」を読んでませんから。
・ほかにもそういうネタがつづきます。「内輪ネタ」といいますね。パロディは日本語では内輪ネタっていうんですね。

・これはその「輪」を広げすぎるとおもしろくないし、狭めすぎるとヒット率が悪くなるしで、難しいところです。だから、流行らない時期があったのです。不景気でしたしね。

・だから、このように、「ジャンプ読者だけが客」みたいに割り切ってるのはまわりまわって日本の余裕につながるわけですよ。なんだ、このムダにデカイ話。

・ということで終わらせるのもアレですので、「ジャンプ」読者でないおれにもわかる範囲で話をふくらませてみよう。

・基本的に大臓のボケに、なぜかつきまとわれる番長がツッコミを入れるんですが、このツッコミの雰囲気が、ヒットマンという若手の売れてないお笑いの河野ってやつにとてもよく似てるんですよね。もしかしたら河野ラインの伊集院光好き?

・と、内輪ネタのマンガにさらに狭い内輪ネタをかぶせてみました。わからないでしょ? つまり「ジャンプ」読者以外が読むとこういう感じになるってことですよ。

・最近流行ってるのか、各話のセルフ解説が単行本用に描き下ろされてます。こういうのはどうでしょうかね?

・と、いろいろ微妙なダメだしを書きましたが、なんだか、とっても懐かしいノリです。しかも、ある点でとっても「ジャンプ」らしいかもしれない。「こち亀」「東大一直線」「すすめ!パイレーツ」があった、ジャンプギャグ黄金期(なんたって3方ともまだわりと一線だし)にいてもおかしくないドタバタノリがいいです。下品具合もそうだね。なんたって「ハレンチ学園」や「トイレット博士」を生み出した「ジャンプ」に連載されているんだからね。

・だから、今後も「ジャンプ」の最新号に載ってるときに一番笑えるマンガでいるように心がけるといいと思いますよ。

[TBS RADIO 954 kHz|伊集院光深夜の馬鹿力](ここの音声を聞くと河野氏のツッコミを聞くことができます)
(23:17:38)amazon


「ヒッカツ!」 1巻 矢上裕(メディアワークス)

・オビにもあるように、世間的には「エルフを狩るモノたち」「住めば都のコスモス荘」の方だそうですが、おれはそれらを読んでなく、かなり異色のスチャラカウエスタンである「Go West!」の矢上裕の新作として買いました。上記のは「アニメがらみ」くさかったので避けました。「メディアミックスに美味いものナシ」ですからね。基本はそう思ってるのが無駄遣いしないコツですよ。例外はありますけど。

・で、本作は、「Go West!」と同じロードムービー風なマンガに思います。上記2作品もロードムービー風なのかもしれませんが読んでないので比較はできません。

「一撃必殺」ならぬ「必活」を目指す空手かのショータとユカイな仲間が織り成す珍道中。

・えーと、調子の悪いテレビをたたくと映りがよくなったりするじゃないですか。それから派生して、すべてのものを一撃で直す拳法を編み出そうとするわけです。

・主人公はつまりそういった意味で、天然ボケで、仲間がそれにツッコミを入れつつ、この超天才が巻き起こすドタバタに翻弄されていくという骨子です。

・おれが前作「Go West!」で気に入ったのは、目的地であった「西の果て」というところのビジュアルがよかったからです。

・本作では、自然描写がおもしろいですね。吹雪、火山の噴火、オーロラと。あと、「ドラゴンボール」ライクな時空が捻じ曲がった「なんでもあり」な世界。そこで毎回、かなりスケールの大きいドタバタを繰り広げてます。

・おもしろいです。
(23:35:09)amazon


2005年/12月/15日
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「ピューと吹く!ジャガー」 10巻 うすた京介(集英社)

・なんだこのマンガ?
・10巻になっておいて、まだおかしいよ。まだ爆笑してるよおれ。すごくない? マンガがスゴイというより、爆笑してるおれがスゴイよ。すごいよまさるさんだよ。

・だいたい5つくらいのパターンがあって、それをまわしてるという安定供給に、たまに素っ頓狂なのがあるという感じか。
・それぞれ細かく描くと、ちがう!っていわれそうなので、「おれ内」ではだいたい5つくらい。

・10巻ではジャガーのお父さんが登場するネタが爆笑を誘発しまして、あとはそのノリでいけましたよ。

・そして、10巻ではおれには爆笑要因で要員だった、ハマーさんがイマイチ。

・やっぱり、おれ的にはジャンプコミックスで1番楽しみにしてるだけあります。
(22:54:21)


2005年/12月/12日
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「仮面のメイドガイ」 2巻 赤衣丸歩郎(角川書店)

・いや、角川書店のギャグは本当侮れない。

・大金持ちの後継者になっている姉弟が、その後継の日がくるときまで外敵より身を守るために使わされた不死身で仮面のメイドガイとメイドさんが巻き起こすギャグマンガです。

・基本的には昔なつかしの殴りツッコミが満載のギャグマンガで、かなり万能だけど、デリカシーとその方法を選ばないやり方のメイドガイをぶん殴って「ツッコミ」をいれながら展開するというものです。

・また、主役の「ご主人」の「なえか」様が巨乳で頭が弱いって設定もかなりいいんですよね。

・あと、デブの弟、常識派で万能なんだけど、「人間」のメイドさんなど、設定がすべてキレイに活きてるってのがまたサイコーにいい。ムダ設定がわりと皆無。物語のための設定ですよ。

・で、銀行強盗に巻き込まれたり、病気の看病したり、朝青龍そっくりの女子と剣道の試合したり(これがベストかしら)、ダイエットしたり、ロリキャラに決闘を申し込まれたりするんですよね。

・明るく、かなり寸止めですがエロに、そいで、ドツキ漫才チックにハイテンポで展開していきます。

・すなわち、サイコーに楽しいのです。

・ぶっちゃけ、絵はまだ発展途上かも。おれは十二分にかわいいと思いますが。

オススメ
(22:57:05)


「赤灯えれじい」 5巻 きらたかし(講談社)

・いいマンガだよなあ。
・大阪が舞台のヤンキー娘と、ヘタレ男の同棲コメディです。
・この金髪娘のチーコさんがありえないほどかわいく感じる。これはいわゆる「萌え」とは逆のベクトルで、1人の人間という視点で、かわいい。かわいいというより愛しい感じ? おめえ37歳で正気かよ? いや、正気ですよ。こういうのは年齢を重ねるほど遠いものだから、余計に幻想を感じてしまうのですよ。

・でも、かわいいなと思いつつも「人間」としていろいろと描いてるもんで、「つきあう」ということで考えるといろいろとメンドクセーとは思います。そういった点でも萌えみたいのとは遠いです。しかも、ヘタレ男のサトシとお似合いではあるんですよ。それを認めて応援したくなるくらい「人間」なんですね。

・ポイントはかわいくてケンカっ早くて、シャキシャキしてモテモテのチーコさんに「ふさわしく」なるように、サトシが奮闘してる、成長記になっているのですよ。1巻でいじめられていた元同級生に5巻の成人式でいいかえしたり、これまでのフリーターを脱却して、ちゃんとした職につこうと努力してると。

・そういうのを「サトシがんばれ」とみていられる感じ。

・プロポーズまでが着地点なのかしらね。タイトルみたいな「えれじい」、すなわち哀歌にならないでほしいものですね。
(23:24:50)


2005年/12月/10日
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「おかえりピアニカ」 衿沢世衣子(イースト・プレス)

・ライド〜〜ン。はい、きましたよきました。どこからどうみてもVV(ヴィレッジヴァンガーダー)でーす。

・サブカルフォー!

・ということで、サブカル大好きVVも御用達の三代目マンガ描かない王(初代は大友克洋、二代目は江口寿史)よしもとよしともさん原作の「ファミリー・アフェア」が目玉の新人の作品集が登場ですよ〜。というか、ヴィレッジヴァンガードにはそのよしもとよしともの原作のためだけに買えという乱暴なポップがありましたよ。

・いや、たしかに、「ファミリーアフェア」はよしもとよしともの味わいをかなり高く再現しており、よしもとよしとも成分に飢えていたVVに満足を与えました。

・父はリストラ、母は元恋人にいいよられ、兄はひきこもり、姉は中年オヤジと援助交際、妹は小学生という家庭の話74ページ。

・父親が電車内で逆電車男ヨロシク大暴れするシーン。その後の見開きの線路。あそこらが白眉ですね。


「ダメだよう君たち」


・実は、よしもとよしとも氏が描くことができてほかのVV御用達が描くことができないのはこのセリフなのかもしれないと思った。電車内でタバコをふかしてるヤンチャ坊主に父がいったセリフです。

・このアナーキーさは、本作の衿沢氏の本来の引き出しにないところですね。

・他の作品は、衿沢氏が描いてるものです。

・学校をさぼって動物園へいくはじめてあった男2人の「Deer and Giraffes」

・タケコプターがあり、それで空を飛べるのは子供のころだけという話で、おれが最初に触れた衿沢マンガで、それでいて、つげ義春氏の「紅い花」や勝又進氏の「桑いちご」などの、少女から女への初潮フォーな話にもつながる名作「鳥瞰少女」

・よしもとよしとも氏絶賛の「夏坂」は、エンデって女言葉のデブちんがとってもナイスキャラの話でしたね。

・女子のブルマーを支持する謎の組織と戦う少女の話「体が育つ」

・で、表紙の少女が登場して、おれが1番好きな「明日の空に」

・そいで、よしもとよしとも原作を作画したつながりである、黒田硫黄タッチの絵での「初体験」もの「サッカリン」

・と、思わず全部並べてしまったな。

・女性が小田扉や黒田硫黄、そいでよしもとよしともあたりにリスペクトしつつも、「自分」を混ぜて投げてきたボールが本作ですね。

・とても重い、いいタマでした。ま、おれもVVだからして。ここに登場した作者は全部大好き「バッチコ〜イ」状態ですよ。ついでにいえばHGも好きですよ。HGが廃れるとここは一気に風化するので、なるべく売れ続けてほしいですよ。

・で、衿沢さんもどんどんマンガ描いて読ませてほしいですね。上記マンガ家のように「描かない」なんて悪いところはマネしないでくださいね。ま、小田扉氏はちゃんと描いてますけどね。ほかのがしんたれどもね。
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2005年/12月/9日
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「人情幕ノ内」 1巻 昌原光一(集英社)

・集英社ってのはときおり良心のカタマリみたいなマンガをさりげなく提示するのがおもしろい。
「友情努力勝利」なんて3つの柱がございますが、その裏のテーマとして「人情」というのもあるような気がします。人情が持つ普遍的な魅力を知ってるのでしょうね。

・本作は江戸を舞台とした1話完結の人情話を描いております。

・目の見えないお嬢様の元に毎日現れる「家無し」の金坊との交流を描いた「金坊」
・ビンボーしてる夫婦。「起こし絵」という今でいうペーパークラフトになってジオラマになる料亭の宣伝を作っては眺めて、こういうところで食べたらいかほど美味しいだろうかと思いをはせる。で、家を出たら、目の前に財布が落ちてる。さて?「ノミの夫婦」
・金に困って、啖呵をきって飛び出した師匠の家に金の無心にいく絵師「鶴蔵」

・こう、タイトルがすばらしいことに気がつくんですよ。「人情幕ノ内」。本作を如実に表してる。

・日本人は幕ノ内弁当が好きです。なんでもちょっとづつつまむことができる幕ノ内に食べる弁当です。

・この幕ノ内のちょっとした小品というニュアンスもあるし、少しづつたくさん色とりどりに配置してあるという点で、ジオラマ的なチマチマさ。日本人は手が器用なんていわれてますが、その血を受け継いで、このマンガの繊細で精緻で「カラフル」なチマチマした背景がまた最高なんですよね。1コマ1コマの情報量がオニのようですよ。しかも、ショートコミックなので、コマが大きいわけでもない。それがなんていうか、ミニチュア感を非常にかもし出してる。フィギュア的というかね。

・しかも、それが基本的に白と黒の絵で描かれてるわけですよ。もちろん、おれは白黒の絵から「カラフル」を感じ取るマンガ読みのスキルはありますからして、この絵のカラフルなサマもばっちりわかりますし、材質や手触りまで感じ取れる絵のすさまじさもよくわかりますよ。

・それでいて、その精緻な世界であくまでベタな人情話が繰り広げられているのです。

・しかも、回想シーンには昔の白黒映画のノイズをかませたりする芸の細かさ。それがちゃんと白黒にみえるし、回想が終わった現在の時間はちゃんとカラーに戻るんですよ。そら、あくまで、白と黒のトーンですよ。

・それでいて、絵がすごいことをわざと隠すところがまた憎い。表紙もぶっきらぼうな感じだし、せっかくの口絵はフルカラーで使えるのに、わざとその白黒映画風にしてるんだもんね。

・ただ、おもしろいことに絵がすごすぎで話に入り込めないなんて逆の現象が起こったりするんですよね。絵からの情報量に圧倒されて、目がくらんでしまうのですよ。しかも、さらに恐ろしいことに、話によって、絵のバリエーションを調整したりもしてるんですからね。その話も前回の登場人物が次では脇役にいたりと、細かいことをしてます。

・つまり、オビの立川談志家元のおっしゃるとおり「よく出来てる」んですが、よく出来すぎてるってところもあるんですよね。完成度が激高すぎて、物語に浸りきれない、感動しきれないところがあるんですよね。

・そらあんた、すべてフリーハンドで描かれた、背景のない、絵でも感動できるのがマンガのマジックですからね。それとは真逆のベクトルに向かってはいるんですよね。

・それはそれとして個人的に「ハッ」としたのは江戸の「暗さ」です。電気がないところ、夏に涼を取るため、いろいろな理由があるために、暗さがあります。影があります。それをマンガで感じた最初のものかもしれません。前記の白と黒の「黒」をものすごい積極的に描いてらっしゃる。
・ま、それが「地味」やら、「見にくい」ってな欠点につながったりする可能性もありますけどね。

・いろいろ書きましたが、すべての完成度は高いのはまちがいのないところで、「いいもの」が読みたい人には絶対ですよ。
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2005年/12月/7日
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「ぺたんこナース」 2巻 みずきひとし(実業之日本社)

・感動の最終巻です。作者もあとがきで描いておられたとおり、まだまだ世の中には「ぺたんこ」好きが少ないんだなと思いました。

・2巻にして物語のテーマが語られましたが、貧乳の妖精と、巨乳の妖精による、陣取りゲームだったのですね。

・そいでもって、ナースのコスプレをするとチンポが生えて、それで巨乳といたすと、その巨乳を吸い取ることができる等の、「DEATH NOTE」な設定がいろいろとあってね。おっぱいの争奪戦をするのです。

・ということで、終わっていきました。

・ぺたんこでエッチのポイントってことで、乳首描写に命を削ってる感じがありまして。割合でいうとちょっと大きいくらいに乳首を描いておられますが、それがまたいいんですね。触ってみたいなと。

・あと、男率は0でした。女子しか登場しないマンガですね。フタナリ女ばかりです。で、やったりやられたりって関係がまたおもしろいんですよね。で、おっぱいもいったりきたりするしね。

・ということで、今回は、フィギュアサイズの巨乳の精のおっぱいをキツめにいじくるシーンがきましたね。

・あと、みずきひとし氏の作品って、これのほかは「巨乳家族」しか知らないんですが、どちらも、なんていうかな、SEXシーンでの「日常」な感じがいいですよね。恋人同士のドキドキというより、たとえば、本作では女友達同士でのオッパイ移動のためのSEXだったり、巨乳家族だったら、姉弟間の性欲解消だったり。そのなれたもの同士の会話がなんか平和な感じでいいですね。

・ま、月並みですが、次回作を期待していようかなと。

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2005年/12月/6日
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「らき☆すた」 2巻 美水かがみ(角川書店)

・1巻はなんか「わからんでもない」みたいな鷹揚にかまえていた記憶があるんですが、2巻はとーってもおもしろく読ませていただきましたね。これはどういうことだ?
・おれがなれたのか? マンガがこなれたのか? ま、両方ということで。

・女子高生ほのぼの4コマという「あずまんが大王」以降のあれの2巻です。

・このマンガのポイントはキャラの立たせ方かしらね。いろいろなキャラ特性をならべてそれをそれぞれ貼り付けているんですが、それが変わってるのな。

・たとえば、こなたってキャラは目の下にエッチほくろがあり、チビッコで、オタク度が激高で、クールで、それでいて、運動神経が抜群で、格闘技にも通じてるという、正直にもうしまして「意味あんの?」ってくらいいろいろ混ざってるんですよね。

・そのマンガが「オタク」寄りか、「一般」寄りか、わかりやすい目安としてはキャラメイキングにあると思います。
・話のためのキャラ設定か、どうかです。話にからんできにくい、「いらない」設定がヤマのように盛り込んであるのが、オタク寄りってやつです。まー、本作でそれを論じる意義はまったくないんですけど、思いついたので書いておくのです。

・そして、本作は、一見「いらない」と思われそうなのが、味わいになってるのがいいですね。「オタク」系のマンガで「おもしろい」かどうかはわりとそこにかかってるような気がします。

・なんか、みんな「かわいい」と素直に思えるようになって、それはつまり「おもしろい」になるんですね。まんまとしてやられてる感じですかね。

・こなたよりチビッコの従姉妹とか、そのトモダチの無口&ショートカット&クールなのに、胸がないことを非常に気にしてるって設定とかいいなあ。相変わらずつかさ&かがみの双子もナイスだし。

・そして、元も子もないことを書くと、好きになるかどうかってマンガです。ぼくはめでたく好きになりました。OKです。

オススメしておきます。だって、好きになったし。
(21:15:01)amazon


「ぱにぽに」 8巻 氷川へきる(スクウエアエニックス)

「ぱにぽにだっしゅ」が絶好調ですね。その原作といったノリで売れているのでしょうか。

・その主題歌であるところの「ルーレット☆ルーレット」は2005年の邦楽ベスト20に入るくらい気に入ってるのです。ついでにいえば、その前のオープニングである「黄色いバカンス」も「ガールッピ」もかなり好きです。

・そいで、アニメもちらりとみる機会がありました。それをみたら、「!」と、なりました。

・よく、アニメはイメージがちがうとか、幻滅したとか、いろいろなネガティブなイメージがありますし、なっとくできるところも多かったのですが、本作はアニメのおかげで、これまで、おれ的に弱点だった、登場人物の把握ができないってのが解決されました。これは奇跡的なことですよ。モーゼが波を割ったくらいの奇跡。

・と、そこでふと「おれは今までなんで買っていたんだろ?」という疑問が湧き出るのです。よくわかりません。

・でも、そんなこといいじゃない。今はこんな楽しいのだから。

・ということで、一応1巻からずっと書いておきながら、今まで書いてなかった、キャラを並べて「萌えー」とか「あれって**のパロディなんだぜ」的なことをちょっと書こうかな。

・一条さんが好き! あと右手に銃はコブラ!

・これくらいでいいかな。

・冷静にみると絵で落とすギャグマンガってことで、実は、近いのは「クロマティ高校」だったりするのにちょっと気がつきました。あと、いい意味で後先考えてないところとか。あと、クロ高は男ばっかしで、ぱにぽには女ばっかしって共通点もあるか。

・で、お互いにキレがあまりよくなく、ギャグ以外に妙な味わいがあるところも似てるかも。

・姫子も8巻では好き!

・そして、1〜7巻を読み返すとおもしろのではないか?という疑問がわきあがるも、おれの部屋から1〜7巻を発掘するのはとっても難しい。アスベスト除去より手間がかかりますからして。

・だから、9巻をみんなといっしょに楽しみに待ちます。あと、「だっしゅ」も楽しみます。それはうそですが。だってやってねえもん。
(23:05:18)amazon


2005年/12月/5日
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「たまごのきみ。」 1巻 住吉文子(スクウエアエニックス)

・地球とよく似た惑星がありまして、そこでは、美醜の感覚が地球とはまったく逆で、自分がとてもブスだと思い込んでる女の子(つまり美少女ね)が地球に瞬間移動(これに細かい説明がないところが潔い)してしまいます。

・そして、自分がとてもイケてると思い込んでる金持ちのナルに拾われます。

・そいではじまるラブコメです。

・1番のギャグというか「コメ」なところは、かなり不安定な画力で、この題材に挑んだことでしょうかね。かなりのチャレンジャーです。スペランカーの主人公がスーパーマリオをやってるくらいのチャレンジャブルです。主人公からして、コマ毎に顔がちがいますからね。
・このマンガだと、美醜を描き分けないとダメで、なおかつ、美醜の差をきちんと読者に提示する必要がありますし、場合によっては、その程度やバリエーションも要求されます。

・いや、ま、それはきちんとできてます。なんつーかな、記号としてのヒロインや主人公をみちがえることはありません。だから、マンガとして読むには問題がないんですけど、やっぱり揺らいではいるよなあ。

・ギャグは決まるところは決まります(とくに「おまけ」にかなり笑いました)し、テンポもいいし、キャラもいい具合に立ってるし、ムダはなにもないところも好感が持てます。

・美醜の価値が逆転して、ブスだと思ってる美少女と、ナルで「主人公は美しいけど、おれのほうがもっと美しい」と思ってる、パートナーって設定もいいです。それだと、「こいつブサイクなのに自分がイケてると思ってるキモー」と主人公は思うし、それがまちがいって気づきにくいしね。ナイスアイディアですよ。

・でも、美少女って設定の主人公が本当に美少女にみえるとかなりいいなあと、つい本音が漏洩。

・トン子などはとってもおれの店のバイトにそっくりでいい感じなんですけどねえ。
(22:03:52)amazon


「シンシアザミッション」 2巻 高遠るい(一迅社)

・これ、タイトルが失敗だったんじゃない?

・3人のとても強い女性を軸に展開する暴力絵巻。

・もう、圧倒的に暴力です。

・吉田戦車氏の「フロマンガ」という、フロネタのギャグマンガに、通常「暴力団おことわり」の健康ランドに、暴力団用の「暴力エリア」ができるってギャグがありました。そこは、あらゆるものが暴力団用になってまして、「暴力シャンプー」が備え付けられ、「暴力サウナ」があり、「暴力貴重品置き場」があったりするんですよ。そういうラベルや注意書きがいちいちあるんですね。

・え、つまり、なにがいいたいのかというと、本作も、そういった意味で「暴力」にあふれてるんですよね。

・かわいい女性(掛け値なしに魅力的な女性ばかりよ)が、「暴力シーン」を「暴力コトバ」を喋り、「暴力アクション」を駆使して、「暴力ストーリー」の上に「暴力展開」していくのです。

・とくに本作「Evil_14」「Violent_16」は、やめてーってシーンの連続です。もう、「暴力わしづかみ」で「暴力目が離せない」状態に陥りましたよ。

・美少女のハンニバルレクターが大暴れする話なんですがね。とくに展開がすごすぎでね。斜め上に向かう展開で、読者(おれ)に冷水を浴びせまくる展開。「えええ! そうなるのー!」って。

・さらに「暴力」的だと思うのは、そんなマンガなのに、ギャグがちりばめられている学園マンガということです。デフォルメキャラが登場した2コマ後に無残な死体が転がるって感じのマンガですよ。
・なんたって、最大のギャグは、「これまでのお話」ってあらすじですよ。どういうあらすじだよ? 当たってはいるんだけど。

・すごいわ。1巻よりおもしろくなってるのが最高にスゴイ。ただ、「シンシア」だけの話ではなくなってるのがねえ。まあ、3巻はシンシアの姉妹ケンカからはじまりそうですが。

オススメ
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「花子と寓話のテラー」 4巻 えすのサカエ(角川書店)

・最終巻。いいマンガだったなあ。感動のラストでした。

・4巻かけて3人の主要人物をえぐっていきました。主人公の寓話探偵、おしかけ助手のカナエさん、そして、パートナーの「トイレの花子さん」。その花子さんが主人公の4巻でした。構成でいうと3巻くらいからずっと「終わり」にむけて走っていたような気がしますね。

・そいで、この花子さんがとてもよかったねえ。主人公が幼いころの花子さんとの出会いの話がとてもいい。なんか久しぶりにマンガを読んで、甘酸っぱいドキドキを感じたね。エロ度は低いんですけどね。
・かわいいなと思ったですよ。前からそう思っていたけどさ。病院のベッドでの添い寝シーンなんか最高でしたよ。

・4巻はセリフのないコマがとても効果的でした。「セリフのないコマ」が持つさまざまな意味の見本市のようでした。

・よくできてます。4巻にいろいろつまってて、「もっと読みたかった」と思いました。というか、3巻分くらい足りない気がします。

オススメ
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2005年/12月/4日
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「ヴィンランド・サガ」 2巻 幸村誠(講談社)

・アフタヌーンに移籍するそうです。ちょっとがっかりです。これは「週刊少年マガジン」で描くことに意味があるマンガだったような気がします。
・どうせ、「プラネテス」のときも、連載してる「モーニング」では、原稿があがったときに掲載というお大尽仕様だったし、そのノリでよかったのかと思いますが、森村ジョージ先生あたり黙っていなかったのでしょうかね。いや、推測ですが。

・で、「プラネテス」同様、そういうお大尽仕様の価値があるマンガではありますね。この重みのあるマンガが鉄槌のように、少年マガジンに掲載されるってのはけっこう痛快だと想像されるんですがね。ま、単行本で読んでる身としてはどうでもいいや。

・2巻では主人公トルフィンの少年時代、戦士としての父親が自分の目の前で死ぬところまでです。

・1巻の初っ端では、戦士として雇われている、海賊の首領によって殺されます。1stエピソードのあと、過去に遡るパターンですね。

・これって流行ってるのでしょうかね? おれはあまり好きじゃないです。「ヒストリエ/岩明均」でも使われてますが。「ベルセルク/三浦健太郎」もそうですかね。延々過去編になったじゃないか。だから、途中で買うの止めたんだよ。

・でも、2巻での主人公親子のやりとりは、どことなく「がんばれ元気/小山ゆう」という名作の少年時代をホーフツとさせますね。

・言葉少ないがたよりになる強い父親。やんちゃな主人公とね。そして、壮絶な最期。いや、正直なところ30年近く前に読んだ「がんばれ元気」なので自信がないんですが、そのイメージとしてかぶってる気がするのです。

・1巻はその壮大な感じに飲まれましたが、2巻では親子のドラマに飲み込まれました。

・いいマンガですね。3巻は2006年に出るのでしょうか。

オススメ
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「未完成No.1」 1巻 マジコ!(角川書店)

・ジャケ買いした前作「夜ニモマケズ!」で知ったマジコ!氏の2作目です。

・絵ですね。それは今作でも健在です。

・少女マンガですよね。でも、まったく抵抗無く絵が飛び込んでくるのがすごい。
・白と黒のコントラストがはっきりしており、シャープな絵柄は、ますます切れ味アップしてます。素直に上手い絵だと思うし好きな絵です。モノクロでものすごい映える絵です。だから、カバーの絵だと誤解されそうな。

・話は未来からタイムスリップした少女が、少年と一緒にアイドルとしてデビューしようとする、アイドルマンガですね。未来からきたって設定にあまり意味がないようにみえるのですが、それは今後なんか関係あるとは思っておきます。

・それと1話目に張り巡らせたもろもろがあまりにも頭に入らないですね。そこいらはダメです。

・2話目以降、シンプルな展開になってからは素直に、デコボコ男女ユニットが、お互いを理解して、息を合わせていくという、王道展開になり、安心して読んでいられてます。

・そういうぶっ飛んでる設定や展開を絵でねじふせていくサマも、前作ゆずりではありますね。
・ストーリーや設定や構成という点では、あちこちにツッコミどころが存在しますが、それにツッコミをいれることに意味はないと思わせますし、場面場面で「音央かわいー」とか「サヤは男版のツンデレだよなー」とか「絵うまいよなー」「このデフォルメいいねえ」と楽しむのが1番かと。

・だから、「普通」を描くといいと思いますよ。普通のラブコメを描けばいいんだよ。描けないんなら最初は原作つけてもいいんじゃないかなとは思いました。

・2巻も買いますよ。絵を目当てに。
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「GANTZ」 18巻 奥浩哉(集英社)

・絵としてはピークだし、ある点での本当の意味での最先端じゃない? 連載しているマンガの絵ではまちがいないある点での最高峰だと思います。

・ホメコトバととってほしいのですが、18巻は、ハリウッド映画をみてる気持ちで「見て」ました。それこそ、「マトリクス」とかのCGバリバリの「超大作」として。

・池袋を舞台としてオニ星人と戦うというあらすじです。

・どこかで振り切った感があります。もはや、マンガとしてじゃない、絵で描かれた映画として、存在してる感じ。
・それは、「まんが道/藤子不二雄」において、バスでみた「新宝島/手塚治虫」に雷撃にうたれたようなショックを受けたヤング藤子不二雄のようなものを若者に与えたかもしれません。「新宝島」も映画的な手法を多数使ったちょっと実験的な作品ですが、それに似てるかもしれません。

・んー、作者は、最終的に大友克弘になりたいのかしら? GANTZをフルCGでアニメ映画化か。そうなったときのシミュレーションって感じがとってもしました。

・ああ、そうか、「新宝島」「童夢」「GANTZ」って流れなんだ。

・ただ、GANTZはギリギリですね。これ以上だと、マンガじゃねえだろ? 単にCG並べただけの画集になりかかってる。

・19巻ではどうなるんでしょうか? そういった点で楽しみ。話がどうでもいいってのもハリウッド的であるかな。
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2005年/12月/2日
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「女子恋愛百科」 加藤マユミ(集英社)

・女性による、女性の恋愛模様読みきり連作。ヤングジャンプコミックスだからエッチでもあるよ。ってスタンス。

・オビに「女性だから描ける」なんてあります。まあ、軽く、「性別が女性だからって女性すべての気持ちがわかるわけねえじゃん。おれは亀梨クンの気持ちはわからんぞ」的なツッコミを用意しておいて読みました。

・着ぐるみのバイトの話からはじまり、モテモテの高校デビューのギャル、百戦錬磨のOLさん、恋人ができたときの予行練習が本気になるショートカット高校生、二の腕の太いのが気になる女子中学生、匂いフェチのラグビー部マネージャー、ケータイの浮気メールでケンカするカップル、年上の上司、恋愛にハマって絵を描かなくなったイラストレーター。

・個人的には二の腕の話がとっても「女性だから描ける」ってネタだと思いました。巨乳=デブってのをあからさまに(かつ魅力的に)描くのはやはり「女性だから」度が高いかと。

・ここいらのコンプレックスに悩んでる女性路線が活路じゃないかと。

・あと、3マタの挙句、「重いからうざい」と思っていた男性が本命であることに気づいたけどふられるOLってのもなんかよくよく考えてみればすごいなと。

・ページと時間が足りないってのが全体的な感想ですかね。どうも、パックツアー気味に駆け足観光になっていますね。もっと、ここんところじっくり描きたいとか、そういう欲求が感じられる作品が多かったですかね。そういったところも「ノルマ」がジャマになってるのかもしれないです。ま、そこはでも、ちゃんとクリアしてる先達が多いんで、フォローしすぎたかなとも思いますが。

・柏木ハルコ、きらたかし、花沢健吾の3方が、お祝いメッセージを描いておられます。なるほど、なんか納得。

・んー、エロはいらないと思うけど、エロがないと売りがないということで、わりと苦しいラインに立っております。ここいらのサジ加減を今後どうするかがポイントじゃないでしょうか。
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ケージバン