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ポトチャリポラパ/コミック/2006年
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2006年/3月
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2006年/3月/30日
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「瀬戸の花嫁」 9巻 木村太彦 (スクウエアエニックス)

・あれだね、いつからかわからんし、ひょっとしたら9巻からかもしれないし、おれは9巻を読んで気がついたワケなんだけれども、本作のベクトルは「うる星やつら」にむかってますね。

・主人公男がいて、あとまわりにいっぱい個性的な女の子がいて、恋愛要素弱めでドタバタ学園コメディというラインにおいての「うる星やつら」。

・ラムやら弁天が、昔話のソレを題材の宇宙人だとするなら、本作は、魚介類のそれで、ヤクザをベースにした水棲人。

・で、9巻では海藻でストーカーで呪怨的なキャラが登場。いわゆる、性格にかなり難ありのトラブルメーカー的なの。そういうワケで9巻ではひっかきまわすだけまわしたね。かなりのトリックスターで、ピョコっと出てはひっかきまわして去るって役割だけど、インパクトが強くて9巻では全編活躍していたイメージ。実際、メインは最初のホラーなの(なんのパロディがわからんかった)と、最後の「女王の教室」ネタだけだったのにね。

・また、そういう女性をかわいく描いてる木村太彦氏の自信と実力がスゴイね。

・そういうことで、ここをお読みのマゲッツには、「まだまだイケるね」と報告して終りたいと思います。
(14:46:24)amazon

「ケロロ軍曹」 12巻 吉崎観音 (角川書店)

・叶姉妹のようなマンガだなと思いました。まあ、叶美香のほうかな。曰く、「ムダにゴージャス」と。

・ケロン星から地球を侵略しにやってきたケロロ軍曹ほかのユカイな活躍を描く、居候ギャグです。

・なんていうかな、いろいろな点でトゥーマッチなんですね。それは「手抜き」という点からは対極的なわけで実はとてもいいことなんですが、たとえば、カニカマ1本作るのに、越前ガニを5尾つぶすようなゴージャスは、ありがたいし美味いけど、どこか恐縮してしまうような感じがあるのです。

・ま、それはよくいえば自信の表れでもあります。ちなみにおれは「スラムダンク」の後期での「限界にチャレンジ」とばかりの絵にもなんかスゴイなと思ったけど恐縮もしましたわ。

・絵と内容のフィットってのは、マンガ家各位が望む望まないに関わらず、ある一定の基準が存在します。平均株価みたいなもん? よくわからんままたとえてみましたが。基本的に土地の価格と同じで、上がる一方と思われていたレベルは、ある一定のところで落ち着いた感じがあります。

・いろいろ理由はあると思うけど、「しょうがない」ってのも少なくはない割合かと。つまり、全て井上雄彦クオリティの絵のマンガがあっても仕方がねえってことですね。

・本作、そういった意味において、全体的なレベルアップがすごいです。絵だけというと、CGバリバリで、その技術に印刷のほうがおいついてない、どこか薄い感じの印刷になってるといういつものやつなんですけどね。すごいというかすごすぎるというか叶姉妹と。オッパイはデカイほうがいいし、ウエストは絞られていれば絞られてるほどいいだろうけど、ありゃあなあって気分になる。逆に性欲をしぼませるって点ではスゴイですよね。

・つーか、ソツがなさすぎるんですよね。チビッコにも人気になったから、マニア色は弱めて、オタク向けに少年の範囲内での露出もあったりね。そんな中、「怪物くん」のパロディがあったりのバランス感覚も相変わらずすぐれている。

・でも、もうちょっと「抜き」があるといいかなーって。ま、そういうの意図してできるもんじゃないんだろうけどね。

・なんだか映画化されるとか、アニメもまだまだ続いているみたいで、なによりではございますね。
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「暴れん坊本屋さん」 2巻 久世番子 (新書館)

・2巻目もおもしろい。
・マンガ家兼書店員の作者による本屋さん周辺マンガ。
・本屋さんネタを中心に広がっていく本などの四方山エッセイコミック。

・たとえば、婦人雑誌の付録を入れるのは書店の仕事で、なおかつ、婦人雑誌はいい紙なのでスパスパ手が切れるとか。
・返本のシステムとかね。おれもなじみの本屋で知ってるけど、1回も店頭に並ばない本って意外に多いんですよね。あの取次ってどういうシステムなんだろうな? そんな中、I波書店は「買切」で、返本を受け付けないとか。
・定番(書店員がやってるサイトなどでは18番のネタだし)のヘンな客ネタ。
・出版社の営業。図書券&図書カードネタ(もう図書券って発行してないんだってね)。発売日。梱包。

・そこいらのわりと小さいネタを1本の作品に昇華させる手際は1巻よりさらに上手くなっておられます。

・なおかつ大前提として「本愛」ありきってのがすばらしくてね。本来、「本好き」こそが書店員になるべきだし、本書にもあった、書店員のヨロコビであろう、担当の棚を「自分色の棚に染めあげる」などは、感動しましたよ。おれが書店員だったらそれが一番楽しいだろうなと思っていたとおりだったもんね。(半分は取り次ぎからきた売れ線などを並べるけど、あとの半分は書店員のセンスとか好みで変わるそうです)

・とくに感動したネタは、「恥ずかしい本」ってことです。まあ、シンプルにエロ本だけかと思っていたら、いろいろと恥ずかしいってネタはあるのね。結婚情報誌と出産情報誌を同時に買う人とかね。

・ということで、最近じゃ一番おもしろい実録系のエッセイコミックになるんじゃないか?

オススメ

・ハチさんがカワイイね。
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2006年/3月/28日
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「陰からマモル」 1巻 阿智太郎&まだらさい (メディアファクトリー)

・ライトノベルが原作で、アニメ化もされ、ライトノベルの挿絵も描いてらっしゃる方がマンガ化と。あれですよ、妖怪マルチメディア展開の仕業ですよ。しかも、マルチメディア化の権化「月刊コミックフラッパー」連載です。ひーくわばらくわばら。

・と、ライトノベルは知らない。アニメもみたことない。よってからにマンガとして読んだことを書くですよ。

・一見幼馴染。でも、400年ものながきにわたり代々隣りの「姫」を守り続けている忍者。そういう設定の学園ドラマです。

・ほんわかコメディです。オビに書いてありますし。隣りの姫は美少女だけど、天然ボケ系でお花畑タイプ。忍者のマモルはぐるぐるメガネでさえない風だけど、実はキレ者。あと、ツンデレ系のワキがいたり。そいで姫がトラブルメーカーだったり、ひょんなことからいろいろと狙われたりするというドタバタマンガです。

・これがとってもベタなくらいのベタなキャラばかりでかえってホッとするくらいですよ。あ、だから「ほんわか」なのか。

・口元の処理(歯とか)が昔のマンガでいいんですよね。カワイイカワイイ。

・でもって内容も昔のマンガ的ではあるね。ノスタルジックというかね。

・意図的にそういう「昔」のニオイを醸しつつもきっちり現代チューンの手堅さがあるマンガってところですか。

・こういうのはつまりライノベの読者がアニメをみて、DVDを買って、本作も買うわけですか? うーむ、金が続かないよなあなど。
・で、本作もそのコレクターズアイテムのひとつとなる。おれはそういうなんていうか、マンガだけじゃ足りないって未完成感がイヤでマルチメディアモノには距離を置いてるんですよね。

「マルチメディアに美味いものなし」

・これを座右の銘としてるわけです。ところが、その銘をほんの少し揺るがせる程度には本作はおもしろかったですよ。電池が切れかけてるケータイのバイブ程度に揺らぎました。
(20:16:53)amazon

2006年/3月/27日
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「ロボとうさ吉」 2巻 加藤和恵 (講談社)

・スペオペだ。かなりの純スペオペ。それだけでもすばらしい。昨今は「ファンタジー」が手垢にまみれすぎてまったくもってファンタジーじゃないので、逆にとってもファンタジーに感じられるほどのスペオペです。

・超人兵器だけどおバカなコのロビンと、兎人種のうさ吉との珍道中。
・2巻では宇宙船や借金返済のためにマフィアの作った人口惑星でのレースに参加します。

・レースまでの経緯(ややムリある)やら、急にできたチーム(以後レギュラー化?)のギクシャク感。随所にあるギャグ(まさか表紙がギャグとは)、ぎりぎり見失ってしまう(おれ判断。でも、スターウォーズエピソード1ほどひどくない)けどド派手なレース中アクションシーン、途中からのスケールの大きな展開、そいでもってヒロインの女性のかわいさ等、往年の少年漫画誌連載の元気で王道な展開がうれしいところです。

・メカが苦手なんてあるように、ところどころで「がんばってるのはわかるんだけどねえ…」的な、生粋のSF者じゃないところがみえかくれします。目玉焼きにケチャップみたいな奇のてらいというかなあ。具体的にいうと、やはりメカやらSF的設定かな。そういうところで感心することはないですし、なんか、ほんの少しづつ「チョットちがうなあ」ってのがありますか。ここいらは感覚的なところもありますし、ぶっちゃけ、背景やらメカはなるべく描かないでおこうって意思をやや画面構成から感じられたりもします。

・ストーリーもキャラも王道といえば王道。ベタといえばベタ。そういったハザマをうがち漏れ出てくるような情熱。これこそが本作の最大の旨味ではあります。「おもしろいマンガを描く!」って強力な意思。この情熱に身をゆだねて「おもしれー」と読んでいればいいんだよなあとは思います。

・ま、個人的にはレースが決着つかないのは「ナシ」だとは思いますけどね。ああいううやむやはカタルシスを大幅に削いで読み進む意欲をなくすとは思うね。

・おれが2巻でもっとも連想したのは、「モジャ公」というマンガです。藤子F不二雄氏の屈指の名作。スペオペギャグの傑作です。地球人も含む3人がオンボロ宇宙船に乗って珍道中というマンガですが、彼らも借金苦で宇宙船レースに参加することになります。このレースでのドキドキワクワクと同じような感情を現役の少年読者は本作で持つのだろうか?と思ったりしました。まあ、かなり正直もうしまして、レース編のみの完成度だったら「モジャ公」のほうが100億倍は勝ってますけどね。「もじゃら〜」ってか(読んだ人用のギャグ)。

・ただ、それはそれってことで本作は本作のおもしろさはあるとは書いておきます。

・3巻予告でのカットだけでも次の展開が楽しみな感じです。ロビンが大きいもんね。
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2006年/3月/25日
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「オレンジでりばりぃ」 4巻 ボヘミアンK&宗我部としのり (JIVE)

・笑うよね。冬季トリノオリンピックで、日本のカーリングが調子よかったとたんに書店で平積みにしてるところがあったよ。どれだけ機をみるに敏なんだよと。まあ、その余波が収まってから発売されましたね。とはいえ、カーリング人気はまだあります。しかしながら最終巻。どうなんだよ?と。

・ま、JIVEはなんとかコンビニ流通するようにして廉価版みたいなワラ半紙の総集編を出したら売れるんだろうけどなあ。まあ、今ならね。

・ということで世界一おもしろいカーリングマンガは4巻で終わったのです。

・意外といったらなんですが、きちんと終わってました。

・4巻にして試合シーンです。そして、ちゃんと迫力満点のカーリング試合シーンを描ききってます。これには「お手本」がない領域もあります(スポーツマンガという先達のお手本は無尽蔵にありますが、カーリングならではって領域は誰も描いてないに等しいですからね)。それを描いてるってのはつまりカンタンにいうと「前人未到」ということですよ。

・だけど、いろいろと中途半端にカーリング知識を得た人も多いから「男女混合ってない」とかそういうツッコミもあるだろうなあと思ったりもした。

・4巻は試合と、リンさんというかなり特異なキャラにもフォーカスがあってましたね。フィギュアスケート界の天才だったのにプレッシャーに押しつぶされる。で、まんまるになってしまう。ところが、カーリングの特訓でもとの妖精のような姿になる。
・と、まあ、4巻では何回も太ったりやせたりしておもしろかったですね。太ってるとギャグでやせてるとマジで美少女って、マンガのSDキャラみたいなノリを「リアル」って舞台でやってるのがおかしかったな。

・4巻59p。もともとボーリングの選手だった実穂の親友よっしーもカーリングをやっており再会を果たす。

・で、彼女らが戦うには、実穂が2回戦で優勝候補を破らないといけない。よっしーもそのことを心配する。

・でも、実穂の表情をみる。自信に満ち溢れた顔。


…わかった! 決勝で合おう!

・と、約束する。

・紙の上にペンで描かれ、なおかつ、現実のそれとは似ても似つかないのに感情を揺さぶられる。ま、この場合は「萌え」なのかもしれないけど、感動ということですね。

・本作、各キャラの表情がとにかくすばらしい。喜怒哀楽、それぞれミゴトに読者に伝わる。

・キャラがなにを考えているかきちんと伝わるってのはマンガにおいて最重要なことです。

・スコットランドのカーリング選手だった女子大生がコーチです。でも、試合前にスコットランドなんか落ち目じゃねーか。と、試合相手にバカにされます。そのときの女子大生のセリフナシの表情がまた絶品。

・それぞれセリフなしでまさにジャストな表情。

・で、まあ、試合展開はわりにどこのスラムダンクの最終回近くよ?って感じではあるんですが、そりゃまあ仕方がないところですわな。

・あと、全国に続々強豪が現れるって展開もムリがありますしねえ(なんせカーリングですし)。よってからに、4巻で終わるってのは最展開なのかもしれないな。

・なにはともあれおもしろかったですし、4巻なのでイッキ買い&イッキ読み&ご臨終と。くれぐれも「本格」じゃないことだけは頭の片隅においてください。そうすれば100%楽しむことができます。

オススメ
(09:19:55)

「魔女っ娘 つくねちゃん+」 まがりひろあき (講談社)

・アッパーズに連載されていたのが、アッパーズ休刊で、連載終了しておきながらもそのタイミングでOVA化が決まって、なおかつ、それの刊行にあわせるようなカタチで期間限定復活連載をしたのが本作です。「プラス」です。

・ひょんなことから弟子ができたつくねちゃん。あといつもどおり。後半弟子もわりとないがしろになってるし。内容は相変わらず、本人はあまり自覚のないまま極悪なことをしてる、かわいい魔女っ娘のつくねちゃんのほがらかバイオレンスギャグです。

・炎の魔法をたいまつにぶつけて燃やすという特訓でははずれた炎は近くに住む山田さんの家を全焼してしまう。
・看護師のシリをさわろうとするジジイはマチェットで腕を切り落とされます。
・炎の魔法を練習しすぎて、森の木が全部燃えて、森の動物たちが起こったので、「蘇れ」の魔法で木々がニョーンとのびます。でも、動物はその木がニョーンとのびたのに巻き込まれて空中に投げ出されて地面に激突して全滅です。

・などなど、字で説明すると「なにこのGTAは?」って感じですが、シンプルでかわいい絵で体感残虐度はかなり低いので安心です。

・オビでアニメ化のときにつくねちゃんの声をあてておられる桃井はるこ氏のコメントどおり、「絵がすごくうまくなった」ですね。

・なんつーか、シンプルな中にも、ムリせず的確な描写ってのが決まってます。つくねちゃんはもとより新キャラの小泉さんやつくねちゃんの姉なんかもかわいいですしね。

・個人的に白眉は「プラスの6 静かな宝探し」でしたね。榎本俊二氏がトクイな全編サイレントです。なぜかマンガ家は挑戦したくなるジャンルみたいです。たしかに、ジャスト「絵」だけで勝負ってことでかなり力量を問われますからね。
・で、そういうので久しぶりに爆笑しましたよ。

・もう、おれは爆笑がとってもありがたいです。爆笑できるマンガを描く人は尊敬です。

・ということで何回か爆笑させていただいたこのマンガはとてもありがたいマンガです。今後いろいろなところで執筆されるみたいですし、つくねちゃんの続編もあるみたいです。どこから読んでも大丈夫なのもありがたいところですね。

オススメ
(14:29:02)amazon

2006年/3月/24日
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「愛・水族館」 柏木ハルコ (小学館)

・基本、柏木ハルコは苦手なタイプのマンガ家だと思ってます。
・デビュー作「いぬ」や、ちょっと前に完結したらしい長編「鬼虫」は途中で購読を断念しました。それにはほぼ理由はないんですが、前向きに「ダメだ」という感じで、「つづきでたから買うか」ってノリじゃなくて、「もう買わない」と決めて買いませんでした。

・その理由は、女性の生理を強調して押し出してるタイプと、おれが判断してるからだと思われます。

・たとえば、内田春菊、岡崎京子、松本充代、最近だとだれだ? よくわからんけど。少なくともおれ内にはこれと同じフォルダに入れてます。

・そして、かなり微妙なところですが、おれはこのフォルダ内のマンガをけしてきらいじゃないんですよね。岡崎京子氏だとほぼすべてのコミックを持ってるくらいファンですし、今もって復帰を待ち望んでます(せめて原作だけでも)。

・ということで、柏木ハルコ氏も、「ぶらぶらばんばん」や「よいこの星」なんてのは大好きです。

・で、本作、おれ的にはとても楽しめました。傑作ぞろいの短編集だと思います。

・1999年から2005年の間に、たぶん、連載作品の合間に発表してきた読み切りをまとめたものです。

「教師失格」。初体験で短小包茎早漏をひどくののしられたために女性嫌いになっていた男が女子高の教師。そして、登校拒否の生徒の家にいき、ワキガに悩んでいる生徒に自信をつけさせるつもりがなりゆきでペッティングしてしまう。

「エンドレス山田」。不倫に悩んでいる女性。でも、さえない中年男の異様な感度のよさにまた今日も「おもしろくて」やってしまう。

・冒頭からの2編。柏木ハルコ先生の売りである「エロ」が炸裂します。まあ、だいたいエロな作品集です。成年コミックじゃないですが。

・柏木作品の場合、女性側からのエロ方面のレスといった趣向があると思うのですよ。たとえば、「女性にも性欲はある」といったあたりからはじまる「女性が提案するエロ」みたいなの。それこそ、デビューの「いぬ」では、恋愛感情とは別に性欲を処理するための「なめ犬」がいるって女性の話だったし。

・いや、でも、なんつーか、女性視点のエロは男性にはエロくないなあと。とくに柏木氏のは、それにくわえて、いろいろな要素が挿入されてくるんですよね。心理描写とか、そういうの。それがもうひとつエロに集中できないし、エロのせいで話にも集中しきれないしで、痛し痒しな感じだったのです。おれの好きな柏木作品はだからセックスシーンがないものです。

・ただ、上記の2つは短編ということで、あまりいろいろなくてただただエロでよかったなと。

・で、エロ抜きに考えてもバラエティゆたかだし、どれもこれも安定してよいデキです。

「すずめ」は近未来のクローンネタ。クローン人間は、「人間」じゃなくて、その人の臓器移植用のパーツどりのためにある世界。でも、そのクローンに恋をしてしまう研究員の話。まあ、近未来死姦マンガですかね。

「梅沢かりん(32)の場合」はマンガ家女性の話。「海女唄」は海女の恋話(こいばな)。

「ふたりは空気の底に」は、手塚治虫大先生のカバーみたいな。「空気の底」のリメイクというか、やっぱカバーだよな。これは手塚っぽいタッチをだそうとしてるのがなんか蛇足感あり。

・なんか、「らしい」と思ったのは「ぷにぷに」。このゆがみ具合が柏木ハルコの真骨頂かと思いましたよ。とてもいい感じだし、なんかわかるなあと。
・古泉智浩氏の「転校生オレのあそこがあいつのアレで」という作品での[センスがいい子」ってのは本作のトモちゃんが成長したらそうなるんじゃないかなあと思ったりします。

・本作が「小学6年生」に掲載(される予定だったそうで)されて、おれが小学6年で読んだら、必ずや衝撃を受けていただろうなあ。

・元親友だけど、どんくさいとか「ヘンなニオイがする」ってことでハブにされてる子。その子をきったことでクラスの「かわいいこ」ランキングで1位になれたけど、その「ヘンなニオイ」がたまらなく好きな女の子の話。

・イヤいいニオイがする人っていますよね。おめ、それはダメだってって体臭の方。まあ、ちがう方向にダメな方もいますけどさ。

・ということで、とてもおもしろかったのです。誤解されるかもしれないけど、これくらい手加減された感じのほうがおれには合ってるかなと。長編は濃すぎるんですよね。だから、逆に、柏木ハルコ氏の熱心なファンなんかには「ヌルイ」「ウスイ」なんて思われそうな気がしないでもないです。

オススメ
(13:40:39)amazon

「嫌韓流2」 山野車輪 (普遊舎)

・話題の作品の続編。すなわち「2」。
・とても「2」な感じがしました。近いのは映画のそれ。「1」のヒットでさらにスケールが大きくなった! って感じの。ただ、スケールが大きくなった分ほどおもしろさはアップしてない。というか、アップしてる?って感じの。

・なんつーかな、1番大きいのは作者が色気を出してるところかもしれない。はっきり書くと「マンガ」としてのおもしろさを出そうとしてるところか。

・とくに大きいのは前回ではほとんど記号だったり、狂言回しだった、キャラを展開しようと試みてることかな。ま、ぶっちゃけ「ですぎたマネをするな」って感じの大失敗ですし、かなり残念なことに浅い底が完全にみえてしまった。

・それなのに作者があとがきマンガで「マンガが好き」みたいなことを強調してるのがカチンときた。いや、ここまで飛び道具的なことしておいて「こんなの」を発表しておいてマンガ好きってのはなあ。オリエンタルラジオが「日本芸能の火を守るのがぼくらの使命です。がんばりますペケポン」って感じですよ。ほかはいいけど、そこだけはもっと謙虚でいてくれよと思うんだよなああ。あるいは、いえるほどのマンガを描けよって。韓国ネタないと、みるべきものはただの1点もないんだしさ。

・マンガ好きっていってるマンガ家にしてはマンガに対する愛がマンガからは感じられない。少なくとも「1」から「2」でのマンガ技術の向上という点での「愛」は感じられない。


だとしたら漫画ヲタの作者としては
漫画好きで良かったと心から思えるよ


・実際最後のページのこの1コマだけなんですけどね。これさえなかったら素直に「おもしろかった」と書きたいところだったんだけどね。

・おれは本作を読んでマンガ好きで良かったとは心から思えないんですよ。つーか、漫画ヲタはてめえの漫画を客観的にみてどうよ?ってね。で、「漫画」として評価されてると思えるのか?とね。

・ということで、その1コマを抜きにして以下、感想を書きます。

・いやあ、あの「嫌韓流」の第二弾ですよ。1巻は衝撃的でしたよねえ、各方面で話題になりそうで、なりませんでした。なぜなら、韓国をバカにしてる本を取り上げるだけで韓国をバカにしてるという超理論が浸透してるみたいで、売れてるのにみんな静かにしてるという異様な雰囲気みたいです。そこいらはあとがきマンガでくわしいですね。というか、その1巻発売の余波を描いたあとがきマンガが1番おもしろかったですね。
・日本の知識人や著名人の逃げ腰やトンデモ判断っぷりがすばらしかった。

・そう、2巻では「韓国ってひどい!」ばかりじゃないんですよね。そんなひどい韓国に腰砕けで腑抜けなってる日本の姿勢をも指摘しております。たとえば、在日韓国人の信じられないような特権とかね。脱税をアタリマエのものとしてるところとか。

・そういう「なるほどー」などという知識は2巻でも豊富に得られますし、読み終わったあと韓国に対して持つさまざまな感情の変化をして「感動した」といってもいいくらいです。

・学習マンガが、マンガとして語られることがあまりないのは、マンガに登場するキャラがステレオタイプな単なる進行役でしかないので語りようがないのです。でも、「まんがサイエンス/あさりよしとお」などを筆頭に実は豊かで魅力的なキャラはたくさんいるのですよ。

・本作、そういった魅力的なキャラは1人としていません。構造上、あまりキャラに色をつけてもしょうがないってところもありますからね。でも、作者は「2」で、そういうところもいろいろとアプローチしてきてます。空振り三振でした。台湾から来たアニメ好きの女性も、妙にイケメンの韓国のディベートの敵も、記号にしちゃあ無駄に色つけてるし、キャラにしては12点くらいです。300点満点で。

・ああ、そうか。キャラという点では本作でも何回か登場してる「ゴー宣」の爪の垢をせんじて飲んだらいいんじゃないかな?

・つまり。
・内容は「おもしろい」。マンガとしては「つまらない」。そして、「2」では「つまらない」に力を入れてる。もちろん、「おもしろい」にしようと力を入れているつもりでしょう。でも、裏目だった。その努力はみんな「つまらない」に加算される。よって、「おもしろい」4の「つまらない」6ってな割合でした。

・これじゃあ韓国につけいられるなあ。ヤバイなあ。「本作の内容は認める。でも、マンガ自体はクソじゃん。だから謝罪しない」っていわれたら、おれはあやまるよ。「そのとおりです」って。「3」までにネタよりもマンガの練習してほしいですね。あるいは、「つまらない」を上回るくらいネタをぶつけてぐうの音も出ないようにするか。
(16:07:18)amazon

「東京トイボックス」 1巻 うめ (講談社)

・青くせえマンガだな。おれが20年定期購読していて先日購読停止した「モーニング」では今こんなマンガが連載されてるんだな。

・吹けば飛ぶような小さいゲーム製作会社。パチスロのムービーなどの「内職」でつないでる。でも、社長は「おもしろいゲーム」という一点でガツガツと仕様変更をしていく。
・そこに出向というか左遷ということでキャリアガールが登場する。

・そんなゲーム製作マンガ。

・作者は「ちゃぶ台けんた」の方ですよね。後半小学生ラブコメにしたらぐっとおもしろくなったけど、その後、逃げるようにフェイドアウトしたような記憶があります。

・で、しばらくぶりにみたらずいぶんと絵柄もおかわりになられてね。けんたをホーフツとさせる熱血な主人公だけが変わらない。

・そう、本作、いろいろな板ばさみに合いながらもおもしろいゲームを作るという、まあ、少年マンガのフォーマットに則った、日本に住まいしてる元少年のアドレナリンを沸騰させるようにできてるんですね。

・主人公は元大手ゲーム会社にいて、なおかつ、ビッグネームのRPGを手がけていた敏腕でしたが、いざこざがあって辞めた。だから、そこがらみの仕事は断りがち。でも、社長として大人となるべく説得されて、受ける。で、受けた以上、「おもしろく」しようとする。でも、大手会社からはゴツイ仕様書がくる。「このとおりやれ」と。でも、「くそくらえ」とね。そういう展開。

・そのときにヒントをもらうのが「ドルアーガの塔」。ナムコのアレですね。よく考えたらこのゲームに1回100円入れたのってスゴイよなあ。で、このゲーム作った、ゲーム史を語るにあたって飯野賢治より重要な人物であるところの遠藤雅伸氏がオビにコメントを書いてる。

・なるほどねえ。こりゃあファミコン世代はズキューンとくるわなあ。

・で、ラブコメでもあるところがまたすごいですよね。キャリアガールでいてツンデレなんだもんなあ。と、「島耕作」ノウハウも随所に忍ばせてあり、大人の少年が読む熱血マンガに仕上がってもいるわけです。

・いやもうちょっとシャキシャキ話は動かないか?と思ったりはしましたけど。

・で、2巻以降もみないとわからないし。「ちゃぶ台けんた」の前例があるから、ちゃんと終るかどうかも怪しいし。

・ということで保留だけど、感じ入るところがある人は得られるものがあるから読んでミソ。
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「魁!!クロマティ高校」 16巻 野中英次 (講談社)

・なんだか、「天才バカボン」の末期を思い出した16巻でした。いや、もしかしたらもう長い間そういう状態だったのかもしれないですが。

・おれがリアルタイムで「週刊少年マガジン」を読み出したときは、いわゆる黄金時代からちょっと過ぎたころでした。「巨人の星」があり「あしたのジョー」があり「天才バカボン」が連載していたころが黄金期でしょう。ひょっとしたら「天才バカボン」じゃなかったかもしれませんが。おれのときはちばてつや氏は「おれは鉄兵」だったし、梶原一騎氏は「愛と誠」だったし、川崎のぼる氏は「フットボール鷹」ってアメフトマンガを連載してました。ついでにいえば手塚治虫氏は「三つ目がとおる」でしたかね。

・で、もう連載が終りかけの「天才バカボン」がありました。アニメのほうが先だったとは思いますが、バカボンどころか、バカボンのパパすら登場しない、編集とマンガ家のかけあいとか、そういうマンガだったです。

「なんだこりゃ」

・当時は思ったものでした。まあ、しばらく書店で立ち読みなどをして「学習」してから理解するようにはなりましたが。

・本作でもそういうところ。たとえば、「RAVE」のアニメとかみて「少年マガジン」を手にとったチビッコは必ずや「なんだこりゃ」と思うにちがいないと。

・それくらいもう大きな「クロマティ高校」といううねりの中にあるんですね。大きなゲル状のものがうごめいてて、これはなんだ?と思ったら「クロマティ高校」ってな感じ。

・16巻ではバンチョーちゃんと藤本先生のネット恋愛相談ネタだけだった気がします。

・ポイントはそれに支払う対価(つまり本代)が見合ってるかどうかですね。それぞれが判断すべきことです。おれはまだセーフです。かなりサイコー!ではないんですがまだおもしろくはあります。

・そういうところも「天才バカボン」の末期的。まあ、赤塚不二夫氏のギャグマンガの最後っていつもそんなグダグダした感じがあったよなあ。だから、もしかしたらギャグマンガの長期連載の正しい道を歩んでいるのかもしれない。
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「殴るぞ」 8巻 吉田戦車 (小学館)

・なにげに吉田戦車史上最長連載を更新し続けてます。

・完全に型に流し込んで作るシャービックな展開になってきてますね。シャービックはヤングの方ご存じないか。

・8巻では虫のダジャレ、長毛種のメリーの変化、人型食器洗い機あたりかなあ。

・非パターンものでは「ジジョリーノとバビョーン」と、「ふきだしのくち」ネタがややおもしろかったか。

・と、まあ、こういう風に、わかる人はわかれって展開になるのは、長期連載の宿命ですね。こういうのをおもしろおかしくコミックに書くのが技量を問われるところですね。やや投げ気味でもうしわけないです。かなり、このシリーズ飽きてきてますね。もともと、おれは小学館の吉田より、講談社(スコラ)の吉田のほうが好きなんだ。
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2006年/3月/23日
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「鋼の錬金術師」 13巻 荒井弘 (スクウエアエニックス)

・なんだ、この最終回みたいなノリ?

・と、実に初の1巻まるまるだれも死なない巻じゃないか? カバー取った背表紙に天に召される人が描いてあるってのは衆知の事実ですが(おれはBSマンガ夜話で知ったけど)、13巻にはだれも召されてない。って、今調べたら12巻もそうでした。ほかにもあるかもしれませんね。嘘つきね。

・過ぎてしまえば、そうじゃないと成立しないし、ご都合主義とでもいえるところがありますが、13巻での、エドとリンとエンヴィーがグラトニーに飲まれるときのこの3人の組み合わせ。これまでありえなかった3ショットです。

・ま、今回はそういうのが多いですね。スカーとメイ。そして、敵としての大総統とマスタング。

・こうザックリとした区分ですが、物語内で敵と味方を分けるとしたら、かなり「まぜるな危険」になりますよ。これは物語の構造自体にも関わることではあります。

・敵も味方もなく人々はその思惑にそって物語を紡いでいくという「おためごかし」においても物語内の立場においての敵と味方という区分はありますよね。で、敵と味方ってのは接触しますわな。戦ったり話たりいろいろな局面で。

・本作は、それがすごい長いし多いんですよね。たとえば、「ラスボス」ってコトバがありますよね。ラストに現れるボスですからラスボスね。本作はすでに登場してます。ラストじゃないですけどね。そして、あるいは、ラスボスじゃないかもしれない。なんかそういうのが多いんですよね。

・13巻においての上記のグラトニーからの脱出劇なんざその真骨頂ですわな。3者「協力」して脱出しましたからね。

・前の巻のときも書きましたが、敵の言い分に耳を傾けるってのは危険なんですよね。だって、敵の行動を「敵」として、阻止するのが目的だから、「なるほど」と思ったらアウトなんですよね。じゃあ、それでも敵とみなす理由を上書きしないとダメになるから。
・13巻で、マスタングと大総統の会話に伺えるシーンはありました。

・だから、本作、わりときわどいところを歩いてるんですよね。薄氷の上を歩くってね。13巻では思わず踏み抜いたかと思うくらいきわどい感じをもちました。これは14巻に引き継いでるので、13巻ラストをどう片付けるか?で決まるところではありますね。
・普通の流れだと、14巻で終わりそうなイキオイですが、まだまだなんだろうなあ。

・だから、2文字で本作を評価すると「適切」なんですよね。痒いところにはクスリを塗ってつめと孫の手とかゆみ止めパッチを貼るくらいのイキオイで適切に処理してるのです。なにごとでも人にとっては過剰だったり不足だったりしますが、本作はなるべく万人に「適切」であるよう、血反吐と血涙流しながら描いているというすごみが相変わらず感じ取られます。

・あと、ものすげえ最近ですが、荒川弘が「あらかわひろむ」ってことを知りました(ちなみにタイプしてるときは「あらかわひろし」ですけどね)。あと、性別が女性ということも知りませんでした。

・デリケートな展開と、逆に個性とばかりに色気のない描画は、性別で語ると腑に落ちやすいですが、それを超越して圧倒的におもしろいので、あまりカンケイはないかと。ああ、カンケイないついでに、巻末オマケやカバーみかえしなどに登場する自画像はけっこうソックリでビックリです。こないだネット上でお顔も拝見したのでした。
(15:11:52)amazon

「STRAY LITTLE DEVIL ストレイリトルデビル」 3巻 森小太郎 (メディアワークス)

・悪魔の世界の「ハリーポッター」みたいになってきてますね。

・人間だったパムさんが悪魔世界にきて、また人間界に戻るために奮闘するという全体のベクトル内で、悪魔学校でのクラスメイトほかとの交流があったりと、ほがらか悪魔学園という感じですかね。あと、萌え。

・カミオってな、タイムボカンシリーズにおけるドロンジョさまみたいのも登場したし、ますますドタバタ度と、あざとい露出で、目をひきつつ、ストーリーも着実に進行するという順調な展開です。

・絵的にはなにが起こってるかわからないということは皆無だけど、なにが起こってるのかわからない現象が。ま、魔法関連のことをあまり説明なしで展開したりしてるからね。
・とくに後半のレースはよくわからんかったなあ。いや、よくわからんのはかなりおれのせいです。魔法とかそういうのにあまり興味ないからです。なら読むなよ。いや、細かすぎるとどうしてもね。

・萌え方面ではお約束の海水浴があり、露出ありますよ。まあ、いうても成年コミックじゃないし、あくまで刺身のツマなんで多くは望んではいけませんが。

・ただ、どうだろう?あまり長いとぐだぐだ感がまろびでそうではあります。次かその次あたりで決着をつけてほしいかなと。
(20:06:40)amazon

「究極宇宙味帝シーザー」 Boichi (ワニブックス)

「SFグルメアクション」ってことでね。

・スペオペの世界ですね。カワイコちゃん3人のモンスターハンターと、コック帽をかぶると変身して超コックになるシーザーとの珍道中ってあたりですね。

・エロで、SFで、グルメで、アクションという、かなり盛りだくさんな内容です。しかも、「なにもそこまで」と思うほど、律儀に丁寧に作画されてます。SABE氏が死ぬほど気合を入れて毎回描いてる感じですかね。

・すべてに極端から極端に動いてますね。ふり幅が大きすぎて、なんかポカーンとしてしまうくらいダイナミックです。これはホメコトバでもありますが、同時にネガティブな意味もありますね。

・なんつーか、ワビサビみたいなものを感じられないなあというか、その感覚がおれのそれとちがうし、一般的なマンガに比べても微妙にちがう。

・不思議だなと思っていたら、ネット情報。どうも韓国の人みたいですね。どおりで、高麗ニンジンとか、ユッケとかが料理に登場するわけだな。

・そいでもってギャグとかエロの感覚もちがうね。それは逆に日本のそれにきわめて近いからこそ目立つというかね。たとえばアメコミだったら日本と比較もなにもないんですよね。別物って感じが強いですからね。

・ものすごい繊細な絵なのにギャグのセンスは70〜80年代のそれだったり、やたらとセリフによる説明が多かったり、「お尻がすき」とあとがきマンガにあるように、どこかぞんざいなオッパイの処理(乳首もオープンです)にくらべて、お尻の曲線はすごいですね。逆に、食い込み方面にはあまり興味はないみたい。

・グルメマンガとしても、真偽はともかくとして、ゴハンと卵のみのチャーハンを宇宙船のロケットエンジンで炒め、なんちゃら効果やらでものすごい旨味がついたりとか、ナノテクで肉をアイスクリームみたいに柔らかくしたり、ちゃんとSFだったりスペオペなグルメマンガになっていたりします。

・ひとこと結論だと、本作は「ロリ巨乳」だと。幼い顔立ちに反則ボディと。そのちぐはぐさが、新鮮だったり、逆に「うーん」だったり、不安定な感想をもったりします。

・そして本作を不安定と感じられることこそがおれには1番おもしろいところでしたね。

・成年コミックも出してらっしゃるみたいで、そっちも興味ありますね。

[Amazon.co.jp:Lovers in Wintersセラフィンコミックス: 本]

(23:03:55)amazon

2006年/3月/22日
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「隠密派遣 OL くの一番」 しのすけ (ワニブックス)

・現在、たいていのコミックはシュリンクと呼ばれる、ビニールにくるまって、書店で売ってます。一部のコミックは「立ち読み可」みたいのになってますけどね。
・よって、前知識ナシのマンガを買うときは、表紙の絵やらオビの文句のみをたよりに買うわけですね。まあ、いんたあねっつにあくせすしてモノ好きなやつが書いてる戯言を参考にしたりもありますね。

・で、本作ですよ。


本になったよ隠密派遣! お呼びとあらば、即・派遣!?
OL進化極まれり!!


・で、くの一特有の鎖帷子を記号化した挙句に達した、網のタイツを前身にまとう、ボディラインのくっきりわかる主人公の絵。あと、まあ、ワニブックスだし。

・そりゃあエロを期待してしまうってもんじゃないですか。実は、エロなくの一が活躍するマンガっての個人的にポインツです。「ポ淫ツ」っていうほうがムードでますか。

・で、本作はエロじゃないんですよ。あらビックリ。逆のパターンが多かったのでかなり意表をつかれました。というか、それが最大のギャグかもしれないなあ。

・派遣社員として会社に潜入して「仕事」をするくの一の話ですね。やってるのは悪事というより、悪事を働く人を暴くって感じかな。会社の技術を盗みにくる忍者と戦ったり、ライバルに資料を横流しする悪徳社員をこらしめたりね。

・で、主人公のあかねさんは、正社員登用を夢みたり、イケメン社員の玉の輿を狙ったりしつつも、ズッコケ失敗残念賞になるというパターンでつづきます。

・エロはないといいましたが、ボディラインがわかる忍者衣装でのアクションとか、そういった意味でのエロはあります。「ボディライン」というのは、男性向けの場合、たとえば、ドテの盛り上がりが確認できたり、どんな衣服も突き破って主張する乳首とか、そういうのも含まれますからね。まあ、血気盛んなガラスの10代ならイージーカムイージーゴーですお。また、やや筋肉がついてる(あれだけの動きをするなら筋肉もそりゃつくわなあって感じね)、彼女のスタイルもなかなかリアルで「在る」感じが強くていいです。

・で、また、リアルでもデフォルメでもシリアスでもギャグでもよく動くマンガでね。主人公は最初から最後まで喜怒哀楽豊かにバリバリ活躍してます。

・ドタバタで終始してますが、ちがう系統の話でメリハリがついてます。ただ、ドタバタに引っ張られてガチャガチャになって、やや忙しい感じがあります。そいで、いい意味でも悪い意味でも残らないですね。右から左に駆け抜けていく感じ。

・もうちょっとアクセントとかあるといいかなと思います。微妙にズレてるギャグセンスをもうちょっと意図的にずらすとか、逆に、もうちょっと今に準じるか。あと、手っ取り早いのは、エロ方面の特化かなあ。

・次回作に期待してますってところで。ペンネームは覚えました。
(22:16:33)amazon

「でりつま」 山名沢湖 (双葉社)

「でりつま」ってのはつまり、「Daily-TSUMA」ってことですね。昔の4コマだったら「毎日奥さん」みたいな感じか。

・おれはてっきり「デリバリー」の「でり」だとか、「デリモンテトマトジュース」の「でり」だと思ってましたよ。それは「デル」。

・3人の高校生仲間がそれぞれ結婚して、日々ユカイに「妻」してるという1ページ1話のショートコミックです。1回に何話か収録されてるって「ぱにぽに」方式ですか。「ドクター秩父山」方式としてもいいんですが。

・3人の妻トモダチってのは、寺島令子氏の名作大河4コマ[うどんランド]がありますね。

・3人の妻のうち主人公の妻は専業主婦で寝てばかりいるチビッコだけど団地妻。ダンナが少女マンガ家で自分はフリーライターの妻と、ダンナ教授で超年上で、なおかつ講師をやってる長身グラマーでコスプレ好きの妻。

・山名沢湖氏の「女の子」色なマンガは健在ですね。なんか女の子の頭の中のファンシー部門をのぞかせていただいてる感じがするんですよね。

・ただ、本作ではその「女の子」度が薄かったですかね。作業的とまではいいませんが、各話のテーマに沿って、3人のつまはどうしてるか?って並べてる感じが。

・それはそれとして、なんつーか、昨今の山名沢湖氏はスゴイですね。もうかなりカッコたるブランドや地位が築かれた気がします。本作もそういったわけでけして悪いわけではないんです。ただ、おれが好きな「女の子」度が薄かったかなと。「へーそうなのか」的な。
(22:55:00)amazon

2006年/3月/21日
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「ネジマキ」 しかけなぎ (メディアワークス)

「大正時代風カラクリメイド浪漫」ということでね。やっぱりオビのコピーを考える人ってのはウマイですわな。

・大正時代風の東京風。洋服もいれば、ハカマ姿もいる。クルマが走り、西洋風の建物が立ち並ぶ。そして、蒸気機関で動く「自動人形」がいます。そんな中、ネジをまいてカラクリで動く人形は時代遅れです。そんな中、カラクリ技師に憧れて上京してきた少年。
・彼は父の工房で眠っていたネジコの「心のネジ」をまいて目覚めさせます。そして、彼に恋をするネジコだったのです。

・この後はもう萌えニトロ点火で走り去る感じ。

・板角(ばんかく)さんが超ナイスキャラ。少年の同級生であるのですが、ハカマ姿で古風っぽいいでたちで、ツンデレ。思えば、「ツンデレ」という概念が誕生してからはじめて「これぞツンデレ」ってキャラに出会えたような気がするよ。
・メガネでハカマでツンツンしてるけど、実はやさしいってね。

・あと、本作の大正時代風を一手に担ってるのも板角さんかもしれないなあ。板角さんのハカマ姿がなかったら、つまり、産業革命時のイギリスとかでもわりとOKだしね。

・しかし、15年しかなかったけど大正時代って妙にもてはやされてるな。ま、いいんだけどさ。

・ハカマ以外は「時代考証」というコトバを知らなかったがごとくの「チャンポン」ね。

「チャンポン」はなんだろう、「Dr.スランプ/鳥山明」とゲームの「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」あたりが元凶なのかしらね? 昔からあります。それこそ江戸時代からありますよ。あるいは、およそ物語が作られたときからあります。たとえば、「忠臣蔵」ってのは当時は幕府にたてついた話だからって大昔の話にしていたとかね。そういうの聞いたことあります。

・ただ、和洋折衷あたりじゃ収まらない、魔法の世界に飛行船が空を飛びマシンガンをぶっ放すって世界は上記が直接の先祖ってことになると思うのです。

・ここいらの、「都合のいいところから好きな分」ってのは現在かなり多くの作品が使用してます。そいで、多くの作品が「ラク」だからやってるんじゃないか?と勘ぐったりするんですよ。

・あと軽いって利点もありますね。時代考証バリバリのものはどうしてもシバリが多すぎて重厚になりますからね。

・ま、本作もまちがいなくそういうところはあり、いわゆる「古風」「昔よき時代」な、そういうレトロな雰囲気のための大正時代ではあります。時代考証したら作品自体が存在しないものですしね。

・いやまあ本作で指摘するところではないんですがねえ。

・で、PCゲーのキャラクターデザインされてるような作者が描かれてるだけあってしっかりカワイイ女性が大量に登場します。その大正時代風な雰囲気も相まって、どことなくノンビリした空気が居心地よろしいですね。

・ラスト、一応用意してあるクライマックスあたり、そこでも上記の板角さんが関与するんですが、あそこらはもうちょっと後フォローがほしいところでしたね。

・ココロのネジをまかれたからココロのあるカラクリ人形でいられるネジコさんですが、そのために、主人公の少年の魂が削られていくという例の展開で、主人公の命を心配する板角さんが、電話で、ネジコさんにそのことを告げるんですよ。
・ちなみに、その後、板角さんはすべて終ってからじゃないと登場しません。これは1回分くらいかけて描くところじゃねえの?とは思うんだけどね。まあ、ページ数の都合ってやつでしょうか。

・よって、売りはジャスト「カワイイ女子」のみです。大正時代風を望んでも、エッチを望んでも、ストーリーを望んでも、ちょっとせつないです。でも、かわいいからいいじゃない。そこにはかなり応えてくれますよ。
(14:35:18)amazon

「鬼堂龍太郎・その生き様」 3巻 田中圭一 (集英社)

・スゴイことになってきた。
・本宮ひろ志タッチや手塚治虫タッチを駆使してのお下劣サラリーマンマンガのはずが、そういう「サラリーマン」のワクをも超えて、ジャストお下劣マンガとなってきたなあ。いやまあタイトルどおりの内容ではあるんですがね。

・でもって、あらすじを語ることができるのがいやはやなんとも。

・えーと、社長の陰謀にあり、ヒラに降格された鬼堂龍太郎が、どん底から這い上がるサクセスストーリー風ってのがベースのあらすじですが、今回、社長が記憶喪失になりまして、事態を重くみた役員が、鬼堂を拘束してスキンヘッドにして社長のクチビルに合わせるためにタラコを口にはりつけて影武者とすることにしました。
・そして、チャンスとばかり、社長の悪事をもってマスコミに売りにいったところその場で逮捕。刑務所に入れられます。ちょうど時を同じころ、記憶が戻った鬼堂に扮していた社長が、鬼堂として社長になります。
・陰謀により、刑務所内で陵辱される鬼堂。しかし、彼は10万人に1人のアナルの持ち主だった。彼はアナルでどんどんのし上がり、刑務所内ベンチャーを立ち上げて成功する。
・で、その後、刑務所内でトップを決めるためのSEX勝負があって、SEX7人衆との戦い。そして、7人衆のラスボスが実際にRPGとかのラスボスで、そこの膣内に入ると別世界が広がっているという。

・うん、別にボクがおかしくなったわけじゃないよ。あと、文章力がないわけじゃないよ。すごい正確に3巻のあらすじを書いてるよ。

・つまり、そういうマンガです。

・いや、しみじみ、青年コミックでの性の再開放はされたんだなあと。とはいえ、このマンガはオカズにはならんだろうなあ。

・でさ、ぶっちゃけ、ここまで直接的だと笑えないんだよなあ。この作品、ゲラゲラ笑えるのってどういう人だろう?

・あと、作者、スキンヘッドで表紙になってます。その経過もあります。失恋したからヤケでやったそうです。

・本人も自覚してるみたいでもありますが、スゴイところに位置してます。いまどき珍しいくらいフルスロットルでエスカレートしていってます。インフレの極みですよ。
・だから、なによりも次巻が楽しみです。そして、どこまで続くか楽しみです。
(18:09:26)amazon

「そらのひとひら」 1巻 野々原ちき (スクウエアエニックス)

・被害妄想の地味な少年がいました。彼は人にいえない秘密がありました。
・彼のクラスにはとても美人の春賀(はるか)さんがいます。あるとき校舎の屋上につれてこられて「あなたのことをもっと知りたいの」といわれます。
・実はそれ、言葉どおりの意味で、その日から春賀さんは少年のことを観察しはじめます。

・そんな学園ラブコメ。

・えーと、別にたいした秘密じゃないんで書いておきますが、主人公の地味で卑屈な少年の秘密というのは「浮く」ことです。宙に浮かんでいるのです。

・で、ごめん。あとよくわかんないや。

・そう、このマンガ、よくわからんところがあるんですよね。春賀さんが、この主人公のなにに興味を持って観察してるか?ってことを筆頭に。
・主人公は宙を浮くところを子供のときにみられていっしょに遊んでいた女の子がひどくおびえることにショックを受けて、ビクビクオドオドの性格になったので、その体質をだれにも知られないようにしてます(まあ、ダダ漏れだったんですが)。いわんや、高嶺の花で遠くから羨望のマナコだった春賀さんには絶対に知られたくないとひた隠しに隠してます。

・一方、そんな主人公を知ってか知らずか、春賀さんの入ってるのは天文学部。で、別名宇宙人研究部。つまり、彼は「宇宙人」として、天文学部に目をつけられて、観察されてるのかな。そこいら、よくわからないんですよね。はっきりと書いてない。いやにもったいつけてるんですよね。

・まあ、そいで、主人公もうやむやのまま天文学部に入って、いろいろな女子とマッドサイエンティストチックな部長(男)といっしょにドタバタしそうって感じです。

・非常にしっかりした絵です。シンプル主体ですが実は書き込んでいて、すべてカッキリとピントがあってる明瞭さがあり、そのうえキャラがカワイイし、デフォルメなどがありますが、それでも背景その他も丁寧に描かれてます。まあ、ものすげえ端的に書くと「おれ好み」。

・キャラの描き分けもすごいよくできてます。ただ、問題は、その配置と展開かな。あと、話は絵ほど明瞭になってなく、いたずらにややこしくなってるような感じが。展開はシャープでセリフのやりとりなどのテンポもいいんですが、全体的にボンヤリしてる感じ。

・たぶん、作者の中で「まだ描きたくない」ってなコトガラを後回しにしてるのでギクシャクしてるんじゃないかと。まあ、春賀さんが主人公を観察したいと思った直接的な動機とか、そこいらか。

「謎」はそれ自体、話をひっぱるためにかなり有効なものですが、ひっぱればひっぱるほど、その謎は「すごく」ないと反動がとても大きく現れます。清純派スターがタバコを吸ってることが発覚したらアルバム発売中止ってなもんです。

・さ、本作の「謎」はどうかしらね? おれはけっこうがっかりしそうな気がしてます。

・あちこちに変化球的なモノを用意してますが、実際問題、変化球すぎてコントロールが定まっていない。そういう感じかもしれませんね。ややきびしい意見ですが。春賀さんの弁当のタコとか、「なんだそりゃ?」とシラけました。あと天文学部の先輩女子3人の天文学部らしくないっぷりとか。

・いちおう2巻までつきあってみます。なんせ絵が好きですから。
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2006年/3月/20日
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「泣くのはおよしよ仔リスちゃん」 アユヤマネ (東京漫画社)

・いや、わりと丹念に「避けて」るつもりでしたがつかんでしまいました。

・あけすけな表現をさせてもらうとホモマンガですね。男が男を愛するマンガ。

・ものすごい市場があることは知っております。コミックの棚は丹念に眺めてますから。そして、丹念に眺めてるから「そういうの」はなんとなくピンとくるのです。ただ、本作は判断を見紛うほどの絵柄だったのです。もちろん、ビニールにラッピングされてますから中はうかがえなかったのですが、仮に、パラパラ程度中身をみても判断しにくかったかもしれません。

・英語の教科書の挿絵っぽい。作者はイラストレーターでもあられるのでそうまちがったところではないと思うのですよ。

・シンプルではっきりしてる線。やわらかい描画。デフォルメされてそうで実はリアルな描写。どことなくバタくささが漂う舞台(登場人物は日本人だろうけどね)。まさに英語の教科書チック。

・ちゃんと空気があるマンガです。コマの中に空気があり、キャラが呼吸をしてるマンガ。それはつまり、「成立」してるからです。おれはこれをして「絵が美味い」と判断します。

「成立」とはなにかというと、つまり、そのキャラが、ちゃんと画面内の地面に足をつけ、歩くことができる。ドアを開け、椅子に座り、ってことがちゃんとできてること。

・これ実はとてつもなく難しいことだと思います。おれは絵を描かないので想像ですが。そして、これをないがしろにするマンガ家は基本的に好きにはなれません。

・そして、逆にいうと、成立してるからこのマンガはとても好きです。とても美味いです。なるほど「食わず嫌い」だったジャンルなのか、本作だけ特別なのか、わかりませんが、別にわからないままの可能性も高いです。

・で、純情な男たちが愛をもてあまして悩んだりいろいろとせつないことになっているのです。

「サヨナラゆりかご」では先生と生徒。

「タイニー颱風」は叔父と中学生。

「泣くのはおよしよ仔リスちゃん」ではバイトでの先輩後輩。

「待つ宵草」では、死んだ「恋人」の息子と同居し、悩む初老の作家だったりね。

・なるほど、ほとんどはじめてくらいに読んだし、バリエーションや程度があるのは、男性向けのそれで伺えるのですが、いわゆる「やおい」のパターンは友情のそれから発展していくんだなって。少なくとも本作はそのパターンが多いです。

・で、誤解を生みそうなんですが、ちゃんとエロい絵でねえ。あのやわらかい線がエロい。あまり、筋肉を感じないような、やわらかくていいニオイのしそうなキャラばかりです。ああつまり性別は限りなくあいまいなのがいいのかもしれないね。

・実際のエロシーンが多いわけでもない。ポイントは、互いの感情がミソでしょう。でも、「サヨナラゆりかご」での生徒に抱きつかれて狼狽する先生。「タイニー颱風」でバツとしての風呂掃除をしている中学生の甥の臀部にやや劣情を催しかけてる叔父。「待つ宵草」の寝乱れ、浴衣がはだけてる少年をみてココロ動かされる老人とかね。なるほど、そう思うこともあるのか。と、いろいろな点でも思います。それは男性視点でもそうだし、そうだろうと思って描いてる作者の視点でも。つまり、「ホモの男性はノーマルの男性が胸チラとかで興奮するのと同じように、男性のお尻とかに興奮してる」ということに「ほー」と思うし、「興奮してると推測して描いてる」作者の妄想にも「ほー」と思うのです。

・しかし、やはり結論として1コマ1コマがポストカードになりそうなキュートな絵が大きいですね。意味もなく「眺めて」しまいがちです。

・まあ、キャラもキュートですか。カワイイ方々ばかりですね。純愛や友情にホロリときますよ。

・これで、この分野に偏見を持たないようになるかも。というか、作者の続編は買うかな。
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「乙女ウイルス」 1巻 鈴菌カリオ (小学館)

「イッキルーキーズ」ってことでね。毎月1冊づつ雑誌「イッキ」が発掘していた新人さんのコミックを発売されてました。10月の「SWWEEET/青山景」から。で、これがオビによると最後ってことですね。

・なんていうかな、1番わかりやすいです。「THE新人」と、ダイソーに飾ってありそうなマンガでした。安っぽいってことじゃないですよ。あ、やっぱ、ちょっとわかりやすすぎって点で安っぽいかもしれない。ああ、「安っぽい」って表現より、「リーズナブル」とか。ほら、やっぱり「どうしてこんな発想がでてくるの?」「どうしたことだ、この絵は!」みたいなのがあまりなかったって意味でわかりやすかった。

・女性視点でのテンション高めで、なつかしかったり、不条理だったりする感じ。自分の好きな**先生の作風を自分なりにアレンジしてみたっす!ってね。「はてなダイアリー」化されたら、あちこちにリンクのアンダーラインがあるような。

・それが悪いわけではありません。今後、そこからいろいろと生まれていくわけです。むしろ、ほかの全然ルーキーじゃねえじゃん?ってな完成度のほうがおかしいわけでね。

・本作は、毎回読みきりの幕の内弁当的ななんでもありな感じです。

「内輪」では戦隊ヒーローのゆがんだ人物像。
「輪になってくるくる回ったら宙に浮いてUFO」では、かなり多角形の恋愛相関図。
「たからもの」では小さいころの思い出な話。
「ゴールデンボールZ」では潔癖症の処女童貞な兄妹の話。

・と、そういったノリ。すべてに手作り感が漂ってますし、調味料多かったり少なかったり感もあります。

・すなわち、「THE新人」ということですね。とりあえず、「鈴菌カリオ」を代表するのが「まだ」みえてこない感じではありました。芽らしきものはありますが、添加物が多すぎで、もうひとつわからなかった。

・タイトルどおり「乙女」度は高かったですね。それだからおれにはなおさらみえにくかったのかもしれません。
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「さんさん録」 1巻 こうの史代 (双葉社)

・過去、双葉社は経営が傾いたときにカミカゼが吹くなんていわれてました。ヤバイときには必ず反動でバカ売れするものが現れるそうですよ。たとえば、「同棲時代」「子連れ狼」「ルパン三世」「嗚呼花の応援団」「クレヨンしんちゃん」などね。

・で、最近だと、なんだろう? バカ売れではないでしょうが、「夕凪の街 桜の国」ってのがそれだったりしてね。映画化も決定してるそうですし、おれが知ってる限り、発売されてから書店になかったことがないような気がします。むしろ、発売されたてのときのほうがなかった感じ。

・毎回、こうの史代氏の最新作を読むたびに、この作品のことを思い出させられるのでイヤでも取り上げがちですね。もう引き合いに出すのは最後にしますよ。しかし、田舎でこうの史代氏の最新作を苦労なしに手に入れられるのはまちがいなく「夕凪の街〜」のおかげだし、そのヒットは本当ありがたくてありがたくてしょうがありませんよ。

・で、最新作。しかも、1巻。しかも、「アクション」に連載。

・妻に先立たれました。息子夫婦に引き取られました。妻は家事が一切できない夫のために分厚い生活ノートを残しました。彼はそれと息子夫婦とともに生きていきます。主人公のじいさんの名前が「参平」。妻は「さんさん」と呼んでました。その記録だから「さんさん録」。そういうこと。そんなショートストーリー。

「こっこさん」や「長い道」の体裁です。「長い道」が近いか。

・その家族を中心にほがらかじゃなく展開するのがいいところです。ちゃんと物語として展開していきますしね。当初、お客さんだったさんさんは妻の親が調子悪くて、何度か広島に帰る必要がでてきて、それゆえに、はたらきにでることになり、主夫になるわけです。その後増えるキャラも、息子の引抜をするヘッドハンティング(美人なんだこれが)とか、変わったのが多い。

・でも、一番変わってるのは、小2の孫を「オチ」にするようなキャラ設定にしたことかもしれないなあ。カワイイんだけど、世間一般的なかわいさとちがったりねえ。あれだね、自分の子のかわいさってのが近いか。なにげにスゴイことですよこれ。

・相変わらず芸のある構成もいい。きゅうりのなますを作ろうとした話とか、こうの作品にたいていあるようなサイレントもあるし、アイロンの話とかね。布団を干す話もいいな。

・そいでもって1ページぶち抜きのコマなど、絵に相変わらず魂もっていかれる感じも健在。花屋で働いてる妻を迎えにいっていっしょに帰る商店街の風景はなぜか涙がこぼれました。

・とはいえ、「長い道」ほど時間がかけられないんだろうなあと思わせるところも多少ございます。

・家事は楽しいしめんどくさいし大変だってのがわかりますね。

「夕凪の街 桜の国」「長い道」「こっこさん」のちょっと下にピッタリつけてる感じです。よって、オススメしません。とりあえず、この3作を読め。そしたら漏れなくファンですから、それから買いなさい。そして乃菜を「かわいい」と思うようになろう。

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なんて親切なおれ!

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「すぱすぱ」 6巻 三宅大志 (角川書店)

・最終回だけど、最終巻でない不思議。
・7巻が最終巻で、最近のRPGでいうところの、クリア後のエキストラダンジョンみたいな扱いか。

・いやかなり長いスパンでの連載だったので、自信はないですが、結局のところなんだったんだこの話?

・なんか、あらすじ総ざらえってコーナーがありましたが、結局のところ、三角関係のエロコメってことで、なぜかモテモテの主人公が1人選んで結ばれてゴールインと、ベタといえば、これ以上ないベタなラインで収束しました。

・本作をみてるとCG技術に感動します。このみえるかみえないかギリギリのライン、「湯気で乳首が隠れる」という巻頭カラーがとにかく凄まじい。「そこまでして隠す必要あるのか?」という疑問すら消し飛んでしまいかねないクオリティ。

・そいで、最後に必然性のあるSEXシーン。もちろん、乳首NGのSEXシーン。乳首がNGだけどほかは鮮明ってことじゃないですよ?

・そうだ、最初は妖怪退治なマンガだった。それがいつの間にかラブコメエロコメよりにぐっとシフトして終ってる感じ。

・で、おれはずっとそれにお付き合いしていたのはなぜだろう?やっぱエロいからか? 見開き多用で大胆にアップして迫力のある画面構成でひたすら女子をかわいく描くというのに終始されてまして、それがいっそ小気味よかったのかもしれない。読んでいて不快な要素がないのも勝因か。

・まあ、ここまできたのだから7巻もつきあいます。
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「大臓もて王サーガ」 2巻 大亜門 (集英社)

・本作、最大のポイントは2巻の巻末おまけマンガにあると思います。

「あとがきマンガ特別編 漫画家のうちへ遊びに行こう!」

・これで、「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦センセイのパーティーに参加してるんですよ。そのときのルポマンガね。

・それをマンガとして単行本に収めることができる位置にいるマンガ家としての大亜門氏。

・一時期、途絶えてましたが、かように、読者よりも、たとえば編集や同業者がもっとも笑うことができるマンガ。各雑誌にこういうマンガ家は1人はいましたよ。ジャンプはとくに多かった。とりいかずよし氏、車田正美氏、本宮ひろ志氏、江口寿史氏などなどね。

・そういうのの最新版が大亜門氏かもなあと思いました。もう30年くらいジャンプは買ってないのでよくわかりませんが。

・ということで、「ジョジョ」パロをベースとして、各種マンガパロ、楽屋落ち、編集長出現など、いっそ小気味いいほど「ジャンプ読者以外おことわり」の状況をかもしだしてます。近年、ここまで覚悟を据えてるのもめずらしいね。

・正直、ジャンプ読者じゃないので、ネタの3〜6割はわからないです。それでも、なんとはなしに楽しさを感じ取ることができるのはいいところですね。まあ、最低、「ジョジョ」は読んでるからかしら。
・でもって、たぶん、一番笑えるのがパロディネタの気がしますしね。

・次はどうすっかわかりません。3作あとくらいの、非パロディものだとおれも楽しめそうかなあ。
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2006年/3月/19日
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「スケルトン イン ザ クローゼット」 岩本ナオ (小学館)

・新人さんのデビュー単行本。発売は去年です。「flowers」という雑誌に掲載された作品をまとめたようです。この雑誌は読んだことありませんがどうやら少女マンガに分類されるみたいです。少なくともおれは手にとったことのない雑誌です。

・じゃあなぜ?と思われるでしょうが、当サイトをリンクされてる他サイト([Only training - livedoor Blog(ブログ)]でした。リンク&情報提供ありがとうございます)で紹介されてるのを知って興味を持っていたのです。

・表題作の3篇からなる連作と、他短編です。

・4文字で本作の結論を書きます。「やわかい」。

・作画もやわかいし、話もやわかい。登場人物もすべてやわかい。綿などの布のやわらかさというより、春先の陽射しのようなやわかさ。

・もっと具体的に書きましょう。

・ラブまでいってないし、コメまでもいってない、あるいは、ちょっとだけそれにタッチするような微妙なところの話が多いです。処女と童貞の淡い淡いアレです。

「スケルトンインザクローゼット」
・表題作3篇からなりますが、会計士を目指し勉強に没頭してる24歳に15歳のイトコとマンガ家をやってる弟がちょくちょく顔を見せるという3人を描いたもの。
・タイトルの「スケルトンインザクローゼット」というひびきが気に入ったのが、本作購入の大きい原動力でしたが、本文でサクリと明かされる意味を知ると、ちょっと微妙。なぜなら、その意味ほどの人物は登場しないからね。

・たぶん、上記の「やわかい」は、作者にとって、微妙なものとなってるのかもしれない。こういうやさしい人ばかりだと物語にハバが出ないとか、いろいろなキャラを描きたいという欲求がタイトルに現れてる気がするんですよね。
・その心意気やヨシですが、まだ、到達してない「背伸び」してる感じがしました。それがまたいいんですけどね。大人ぶってる少女っていいじゃないですか。まあ、化粧バリバリのタバコスパスパとかそういった方向じゃない背伸びね。

・本作のキャラの多くは、それぞれの話の最後のほうで気がつくんですよね。「これは恋だ」って。それが顕著なのが、「雪みたいに降り積もる」

・本人は自覚してないが、かなりスゴイ男が主人公の「僕の一番好きな歌」がおれはベストかな。ソ連崩壊は国民がビートルズを聞きたかったからってネタは本当のことなんでしょうか?

・ああ、そういや、上記の「スケルトン〜」もそうだけど、学校のウンチクというか、「勉強」みたいな、「豆知識」みたいなノリが好きみたいね。よく登場します。しかも、なんか、その知識も「若い」感じがまた。そういうモノシリのお兄ちゃん男が作者のタイプなのかしら? えーと、くりぃむしちゅー上田とか?

・また、授業の内容がテーマになってるのもあります。「青という言葉のない国から」

・女性視点からのツンデレの図式ってこうなんだろうな。「その彼女の存在」。好きな人はわたしのことをわかってくれるってね。

・そして、かなり意表をつくオチが待ってる「花の名前」。

・自転車通学ヘルメット着用の田舎中学生が、好きな人の前を通るときに、メットを脱いで、道路のカーブミラーで髪型を直すってのがいい感じの「冬色自転車」。

・おお、なにげに全部紹介してしまったな。

・カバー表紙、カバー裏のカラー絵と本文の絵柄がちょっとちがいますね。表紙絵の女性は堀北真希氏に似てますが、中に似た子はいないんですよねえ。たぶん、表紙の絵は「スケルトン〜」の15歳の少女・野花さんだと思うけど。

・と、かように、手放しでサイコー!って完成度ではないです。いちいち重箱のスミはできます。ただ、この全体を覆う「やわかい」空気はとてもいいですね。その空気によって、あまり少女マンガを読まないおれも楽しんで読むことができましたからね。

・まあ、少女マンガを読んだときに必ず男がいうセリフを添えて感想のシメとさせていただきます。

「こんな男いねーよ!」

・はい、チンポがない男ばかりでした。そして、モテそうな男ばかりでした。これを目指せばいいんだよなとは思います。少女マンガを読むとよく思います。実行はできないままです。
(18:16:27)amazon

「55歳の地図」 黒咲一人 (日本文芸社)

・マンガ家の黒咲一人がマンガ家を廃業して、とりあえず、四国のお遍路さんをまわるという実録マンガ。

・いや、まあ、いつも不思議に思えていたのです。マンガ家はみんな食えてるのか?というシビアな問題です。ミュージシャンでもいいや。

・答えは「なんとかなる」ってところみたいですね。いや、人間、「食べよう」と思ってそれにしたがって前向きに行動するとなんとかなるとは思います。それはおれもそうですし。マンガ家として「一生」食っていくのはたぶんとても難しいことだとは思いますけどね。
・そして、黒咲氏の場合、ペンネームが皮肉にも、自身をよくあらわしており、人に必要以上の借りを作るのをヨシとしないところみたいね。で、廃業して、死ぬ覚悟も携えて、「一人」で四国のお遍路さんに向かう。

・さ、ここまでアタリマエに書いてましたけど、もしかして黒咲氏を知らない? 「ハスラーザキッド」「無頼風」を描いてる方ですよ。おれは「ハスラーザキッド」が思い出深いなあ。これみてビリヤードに興味を持ったし、映画の「ハスラー」のミネソタファッツは男爵のパクリだと思ったくらいだもんなあ。
・脂っぽいオッサンを描かせたら非常にうまかった、本作にも登場する、「ジャンプ」における本宮ひろ志系列に所属する感じの劇画タッチの「男」を描くマンガ家さんです。
・本宮氏もそうですし、犬マンガの帝王である、高橋よしひろ氏なんかにも、「面倒みるよ」的な誘いを受けましたが、それを蹴って、お遍路さんにいくわけです。
・アパートをひきはらい、自分の原稿をゴミの日に捨てて、全財産を5000円の中古で買ったチャリンコにつけていくんですね。

・そして、今度はお遍路さんのことですよ。いや、個人的にもちょっと興味があったので、本作を手にとるきっかけとなりましたよ。
・不思議な世界みたいですね。「お遍路さん」ということでみんなに親切にされるんですね。インドでの修行僧みたいな感じですかね。

・で、いろいろな出会いあり別れありで、60日の四国八十八箇所巡りが描かれるわけです。

・作者、異様に潔癖というかストイックな方みたいで(だからこそ、こんな無謀な旅に出るんでしょうが)、かなり切り詰めてギリギリの日々を送り、最初はリアルで死にそうな目に遭っておられます。「ノウハウ」も知らないし。

・お遍路さんには「お接待」というのがあります。つまり、お布施をすることで自分のかわりにお遍路をまわってくれるって考え。それにより、金をほとんどかけずにまわることができるんですね。

・だから、逆に、「托鉢遍路」というのがいるんですって。つまり、スーパーとかで「お接待」のみ目当てで立ってるやつ。まあつまり乞食ですね。

・お遍路さんで路上テント生活になるのもいればホームレスもいます。そういう様々な人種がいるのがまた不思議。おれの住んでいるところは誇張抜きでホームレスは死にますから。

・劇画タッチのリアルな描写はさすがですし、お遍路さんという世界を垣間見せてもらえるのはとてもおもしろいですが、エッセイコミックとみるにはいろいろと物足りなさがあります。少なくともやや似てるニオイを感じる「失踪日記/吾妻ひでお」などとは比較すべきもありません。
・とくに、突然日記になるところはなんかシラけますね。キチンと全部描けとはいいませんが、もうちょっとやり方はなかったのか?とは思います。

「こういう生活」をされてると「よくしてくれた」「ムゲにされた」なんてのはよほど印象に残るみたいで、両方ともいろいろと描かれてましたね。しかし、お遍路さんを大事にするってのがスゴイですね。四国の方々はエライです。

・結局「人としてのつながりが大事」ってベタな真理にたどりつくための巡礼の旅というオチを伝えるということでなら、本作はとても説得力があります。なぜなら、本作が描かれているワケですしね。それをおれが読んでいるということこそ、たくさんの人の愛の証ですよ。

・旅マンガ家として黒咲一人氏の次の挑戦ははじまっているのでしょうか? 次作を期待してます。
(19:33:00)amazon

2006年/3月/17日
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「もえちり!」 1巻 堂高しげる (講談社)

・あの「全日本妹選手権」の堂高しげるの新作でした。正直、燃え尽きたのかと思ってました。

・遷都するということで各都道府県代表の少女47人1クラスが戦いあうという学園ギャグということで。

・いい塩梅になりました。
・以前の「全日本〜」では、濃すぎるオタクギャグがふんだん過ぎて「そんなこと知ってる女子高生はいない」って領域のギャグすら踏み超えておりギャグとしての効き目以上のヘンな感情、まあ、わかりやすいところで「きもい」ってのとかが浮かぶという。まあ、オタクが陥る袋小路にすすんで迷い込んだ感じがいっそ小気味よかったのかもしれませんが昔のことなので忘れました。とにかく「終わった」と思ったのでしたよ。なんか、次はねえなあって。

・ああいう濃い方向にいくと、そこから抜け出せなくなります。これも「オタク向け」を描いてる人が必ず陥るところですね。今はそのオタク相手で十分成立するマーケットなのであまり問題はないんですけどね。ま、おれ的にはけっこう否定。同人でやればいいじゃん。一般書店になくていいじゃん。

・ということで47人の萌えな少女が、そのキャラ自体をギャグにして展開していくので、オタク系は抑え目です。県民性ギャグに、楽屋オチギャグ(本人と編集の会話からはじまる)というあたりで補填して、前作よりも画期的に一般読者層にアピールしてますが、連載している雑誌が「シリウス」だからあまり意味がないような気がしますが、そこがまたギャグになってるという。

・ムードメーカーっていると思うのです。各雑誌においてのムードメーカー的マンガ。まあ、楽屋ネタのギャグマンガを描いてる方のことですがね。その昔、各雑誌に1人いたような気がするんですけどね。それこそ「天才バカボン」という金字塔がありますからね。

・それがあることで、なんとなくマンガ家と編集の関係とか、各マンガ家の交友関係とかが伺えて、雑誌全体のまとまりみたいのが感じられるんですよね。

・本作では、「サルまん」こと「サルでも描けるまんが教室/竹熊健太郎&相原コージ」や、最近だと、「鬼堂龍太郎・その生き様/田中圭一」なんかもそうですかね。打ち合わせがあってからはじまるマンガ。

・で、具体的な内容ですが、東京の「標準」。大阪は「大阪弁」などのまあ1人1県1特色みたいな感じで47通り。
・えーと、わかりやすいのだと、青森は「イタコ」。香川は「うどん」。長崎は「外人(出島)」。鳥取は「アラビアのローレンス(砂丘)」ってな感じですね。作者もあとがきで「全部わかってもいいことねえ」みたいなことをかかれてましたので、深くは追求しません。いや、モトネタわからない方も多数ありますし。

・まあ、わかるところでマニアックだと、福井はメガネっ子ですよ。あそこはレンズ生産量がスゴイんでしたっけか。あと、宮城県は伊達政宗ってことでアイパッチ少女だったり。兵庫は宝塚ってことでお姉さまキャラだったり。

・ええ、収集がついてませんよ。全県が登場することじゃないですしね。正直「出オチ」になるキャラも多いですし。「千葉美樹」とか。

・ということで思わぬ愛県心が顔を出したりしますよ。我が富山県は、薬=医者=看護士=ナース=茄子ってことで、「富山茄子(とやまかこ)」だったりします。しかも、けっこう活躍されててなんか思わぬヨロコビがあったりね。ナース姿でドラッグを駆使してるキャラです。1回優勝してるしね。

・ということで、後半ほど「悪い虫(マニアックネタ病)」が顔を出したりしますが、まあおれには許容(理解)範囲だし、ヨシということで、とても楽しく読ませていただきました。茄子がんばれ!
(23:33:35)amazon

「夜は千の眼を持つ」上野顕太郎 (エンターブレイン)

・しかしなんだって、こうしたんだろうね?
・マンガ読みを自負するために定期購読する雑誌「コミックビーム」において、1998年から連載されているギャグマンガ。1998年から2003年までの作品をまとめたものです。あの「うえけん」の最新作品集です。

・5年分ためただけあってとっても分厚いです。500ページ弱のギャグマンガ。


圧倒的で非経済なボリュームとクオリティーで贈る、"笑いのエンサイクロペディア"!!


・ってありますが、この「エンサイクロペディア」というか、ボリュームにこだわりすぎたんじゃないかなとちょっと思ってしまいます。

・あとがきにあるように秋田書店で発売された「朝日のようにさわやかに」という名作ギャグ集の続編的な、毎回読みきりのギャグマンガですね。

・問題は「クオリティ」のほうじゃなくて「ボリューム」のほうですね。実際問題500ページのギャグマンガのすべてにちがったバリエーションなんて個人にできるわけがないんですよ。つまり、いくつかの「パターン」を繰り返してます。なおかつ、「朝日のようにさわやかに」でのパターンに準じてます。「モーニング」系列での「帽子男」シリーズ的なギャグ(五万節や語感ギャグ等)は意図的に避けております。だから、誇るべき「ボリューム」は「繰り返し」が多いということになるのです。

・それはたとえば「キャプテントラウマ」シリーズであったり、「さわやかくん」であったり、「三人娘」シリーズだったり、「クイズ〜」シリーズであったりするのです。そのほか、コミックビームの「終わった」連載陣のパロディとかね。

・つまり、多いと、読みすすむうちにパターン分析がイヤでもできてしまう。何回も繰り返されるからね。それだけボリュームがあるからね。
・そして、かなり皮肉なことに、実際問題、エンサイクロペディア的な、ギャグ図鑑なネタのほうが多いけど、こういうキャラ先行のギャグ要素の薄いほうが印象に残るのです。イッキ読みすると、三人娘のキャラだったり、漫玉日記のパロディとかが残ったりしがちです。
・つまり、うえけんは「そういうの」と戦うはずが「そういうの」に飲み込まれたりするんですよね。かなり皮肉です。

・そして、さらに上塗りに皮肉なことに、かなり完成度が高いのです。うえけんのモットーとして、「やるならとことん」というのが普通にイイ目に出てるんですよ。

「おもしろければいいじゃない」

・実にそのとおりです。いいんですよ。じゃあ、なぜおれはこんなイヤミくさい姑みたいなことを書いてきたのか?というと、つまり、そういうことを強調しすぎてるからですよ。オビに、まえがきに、「ボリュームがある」「こだわりがある」と。くどいほど書いてあるのがちょっとね。

・ああ、行列が出来るラーメン屋の能書きがうぜえってのと似た感触かな。能書きどおり美味くてもなんかあまりいい気がしない。

・で、ここで、もう1回追い討ちすると、どういう事情があったのか知らんけど、このタイミングで、この厚さで本書の1巻を出すのかがよくわからないね。まだ、「コミックビーム」で連載してるのかは知らないけど、おれが定期購読をしていた限りは続いていたね。本書は2003年までの作品が収録されているのだから、そのあともあるわけですよ。

・1巻と同じ感じでいうと、次は2008年くらいになりそうじゃないか。それまでコミックビームはあるのか? 「こち亀」に登場するオリンピックのたびに登場するヒグラシよりブランクがあってどうするよ? それが最大のギャグなのかもしれないけどさ。おれにはそれは笑えない。むしろ、これまでのイヤミくさい文章を書くくらいの怒りがある。

・単純に早く読みたかったのもあるし、本書の厚さが読みにくいというのもある。

・そして、うえけんのマンガを読むことができるヨロコビもある。まあ、生まれつきのひねくれ体質が加齢とともにひどくなった結果なんですね。しょうがないです。

オススメです。これだけ書いてオススメかよ。サチコシリーズがうえけんキャリアでの新機軸ですよね。
(23:36:12)amazon

2006年/3月/10日
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「ASSASSINS アサシンズ」 さとがねしょう (マッグガーデン)

・組織に雇われている殺し屋。ある日、組織が謎の案山子に襲われる。そして、殺し屋の目の前でボスを殺す。

「オメデトウ 君ハ選バレタンダ」

・次に気づくと殺し屋は謎の場所にいる。四方を壁に囲まれた廃墟の町。そこで同じようにつれてこられた殺し屋と戦い合う。その理由とは?

・まず足りないのは画力。続いて構成力。ストーリー。展開。そしてキャラの魅力も薄い。
・よって、どこかよくわからないところからよくわからないところに移動させられ、よくわからない相手とよくわからない戦いをして、よくわからない黒幕のところによくわからない方法でたどり着き、よくわからないまま終わる。と、かなり「よくわからない」ことになってるのです。

・1番よくわからないのは、このマンガで作者はなにを伝えたいのか、なにを読者に読み取ってほしいのかがみえてこないことですね。「テーマ」ってほどたいそうなものでもないんですが、上記のとおりいろいろと弱いマンガだから、「売り」がみえてこないんですよね。

・というか、これ、最近非常によくみられるパターンですが、語りたいものは、かなりの「大きさ」を必要としてる。でも、それはその大きさを必要とするほどの魅力がない。別にこのマンガだけじゃないです。いうたら、4割くらいこんなマンガかもしれません。とくにマッグガーデンとスクウエアエニックスとJIVEとメディアワークスと角川書店あたりにゴロゴロしてそう。

・本作も詰め込んである設定を語りきれてないタイプです。あきらかに説明不足で「あれはなに?」ってのが読者にたくさん残ります。ムダな描写が多いんですよね。

・たとえば、モトの世界の無国籍風。日本じゃなぜマズイ? なぜ、主人公は二挺拳銃? なぜ、案山子は組織を壊滅させる? そもそもなぜ案山子? なぜ、案山子は血を吸って殺す? 飛ばされた先はなぜ廃墟? なぜ地球上にいないような生物が登場? なぜ時代も超越する? そして黒幕はだれ?

・そして、実は、それらは無くてもいいものです。すなわち、「どうでもいい」ことだったりするんですよ。だから、結論として「そのほうがムードがあるから」って、おれ内では片付けてます。理由も必然もなければ、作者が「拳法つかいはキツネの面をつけたほうがカッコイから」ってことになるでしょう?

・謎の場所での腕の立つ、さまざまなタイプの殺し屋同士の戦いという、オンラインゲームのような感じはなかなかおもしろいです。ただ、そのビジョンありきで逆算して紡がれた物語には承服しにくいことが多かったということですね。

・前提として、異世界にジャンプするマンガはモトの世界をキッチリ描く地力がないときは素直に現在の日本にすべきですよね。じゃないと異世界にジャンプしたときのギャップが弱くなる。これは「絶対」です。
・本作でも日本ではない世界がもとの世界ですね。ケータイ電話が使えてたので最近の感じはしましたが、チョロQみたいなクルマ描写、定規だけでササッサと描かれたとってつけたような洋館とか、ここはどこで、どうして日本人(東洋人)の主人公なんだ?ってのがありますよ。
・それは画力がないからですね。わかってて書きましたよ。いじわるさんですね。

・まあ、ワーワー書きましたが、トータルで最後まで読むことができるのです。そこもフォローがてら強調させていただきます。

・マンガ力みたいのはあるのです。登場キャラ少ないながらもそれぞれの虚々実々の駆け引きはありますし、毎回、ちがったタイプのバトルも飽きさせません。まあ、もっと画力があればなあとか、それなんて鉄パイプ?って感じのライフルとか、それなんて松ぼっくり?ってな手榴弾とか、ネットとかで調べてもうちょっとだけちゃんと描けよとは思いましたけどさ。そういうことで読者は急に冷めてったりってのはありますからね。でも、その場その場での作者の120%を感じられたりもするんですよね。ただ、いろいろと先行しすぎたなあと。フルコースに挑戦して無残なことになったと。目玉焼きからはじめろと。味付けにはみるべきところがあったぞと。まあ、おれがマンガの神様だったらそういうふうにいうだろうなと。

・だから、まあ、次回作はがんばってほしいなあと。逆に絵だけの人よりはこの先いいものが描けそうな気がするしね。
(23:34:22)amazon

2006年/3月/8日
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「ムーさん」 二階堂正宏 (新潮社)

・こう、1番いい表現は「すけべえ」ですかね。「スケベ」じゃなくて、「どすけべ」じゃなくて、「エッチ」じゃなくて、「エロ」じゃなくて、「成年コミック」じゃなくて、「すけべえマンガ」。

「18歳未満閲読禁止」

・この古めかしい表現がオビにありましたが、そういった感じがピッタリくるような。

・内容についてお話しますと、「ムーさん」というデブで坊主刈りで無精ひげが青々してる男が本能のままに女といたすナンセンスギャグマンガです。

・クルマが止まります。女性が、クルマから「先生、お乗りになりませんか?」とドアを開ける。そして、そのままカーセックス。「こういう意味じゃなかったけど まいいか」

・飛び降り自殺しようとしてる女性がビルの屋上にいます。「まて、はやまるな。世の中にはいいことがいっぱいある」「たとえば?」で、セックス。でも、そのまま女性は飛び降りてしまう。それでショックを受けたムーさんも飛び降りようとする。

・漬物を漬けている女性がいます。「ぼくのも漬けてほしいなあ」「どうぞ」とセックス。「まあ、ずいぶんと浅漬けで」。

・このような感じ。とてもベタなナンセンスショートエロギャグが連続してるマンガです。4コマじゃない岩谷テンホーやら笑太郎的な、「三こすり半劇場」な感じ。

・以前より名前は知ってる方です。ナンセンスマンガ一直線でした。当時は大人っぽくて敬遠してたし、つい前まではオッサンくさくて敬遠してました。
・そういうことでくわしいことはわからないのですが、「極楽町一丁目シリーズ」は衝撃的でした。嫁と姑がひたすら憎しみ合い、殺しあうという、ナンセンス短編でした。たしか数多くの賞ももらってました。
・このマンガが画期的だったのは、これまでのタッチとちがい林静一風というか、わからない人には、アメちゃんの「小梅ちゃん」風の絵で、しっとりとしてる風ですか。あるいは、その林静一氏のモトにもなりそうな、竹久夢二風というかねえ。そこまでいうとちがってきますけど、ああいう日本画にも通じるシンプルな線でのペン画です。それでもって残虐なことを描くってのがおもしろかったんですね。えーと、なんかありゃ、北斗の拳とかジョジョの絵柄を真似て落とすって安易な感じに似てますが、それが、林静一なだけにインパクトが大きかった。

・今回もその絵風で、エロなので、インパクトがあるし、けっこうエロ的にもいいんですよ。叙情的というかね。「すけべえ」なんですよ。
・ちなみにエロ的には、立ちバックと、対面座位が多いかなあと、意味のない分析をしてみたりして。

・しかし、女性がこれだけ気前よくやらせてくれるってのはいいですよねえ。夢の世界ですね。
(10:30:09)amazon

「もうすこしがんばりましょう」 山口舞子 (白泉社)

「花とゆめ」に連載中の、女子高校生3人が登場する1ページ1話の「ぱにぽに」形式のショートギャグ。

・冷静に読むと、いろいろなところ引っ張ってきてるし、絵も少女マンガ誌に連載してるとしてももうちょっとなんつーか艶がほしい感じはありますが、なんか好きですね。

・この「なんか」ってのは、冷静に「おもしろい」「おもしろくない」でいうと、後者っぽいけど、「なんか」「***」のなんかです。「***」には、「許せる」とか「おもしろい」とか代入できます。

・たぶん、女性は、男性ほど、「笑わせる」ということに熱心じゃないんじゃないかと思います。

「ここにいる客全員、おれの笑いで、悶絶死させたるわ」

・こういう感覚は理解できないんでしょう。「万人にわかる笑いというものはない」という絶対的な真理に抗おうとしないのが女性かと思います。男性はあくまでそれを目指し、あるときブレイクスルーや新芽が生まれたりします。

・本作はそういった真理を大前提にしており、「笑い死に」を目指してなくて、作者自身の「おもしろ」感覚のみに忠実に素直に表現してるところが好きです。

・ムリしてないですね。たまに散見されます。とくに不条理系に。自分の分を超えたタイプのギャグに挑戦されて、あえなく玉砕してる例が。まあ、「おれにとって」としてもいいですが。そういう作品に比べると、あるいは「これはギャグ?」ってネタも多いです。あれだ、「ぱにぽに」なんかはそういうムリをしては玉砕してる好例ですね。
・そういった意味じゃあ、女子高生3人組の男ッ気のないほがらか生活を楽しんでいるという図式に終始しており、それにムダな要素をできるだけ挿入しないというストイックさすら感じさせます。あとにメガネの委員長が参加してきますけどね。

・3人娘は、明るいバカっ子と、中庸なツッコミと、長身でお姉さんのクールキャラって区分。ベタなくらい食べたがったり、夏休みをよろこんだりはしてますけど、それでも極端なデフォルメはありません。そういった意味でも「おもしろ」に特化させすぎないという、地に足着いたキャラ造詣を目指しておられます。絵的にはリアルにほど遠いものなんですけどね。

・内容は、「消しゴムとって」って、投げてもらったのを額で受けてしまったので、「もう1回投げて、ちゃんととりたいから」といったら、次々にいろいろなものを投げられていじめられてる図式になって「わーん」と。
・トモダチの長い黒髪を「触らせて」といじってるうちに、むずむずしてきて「ハイヨー」とウマの手綱風に引っ張って怒られる「でも、満足」みたいなのとか。

・あと、スカートのすそがほつれたのを裁縫セットを借りて縫う。寒くてたまらないからスカートからはみだすほどのパンツで防寒。バレンタインの祭り気分にあげる人もいないのにチョコを買う。砂糖増量クリーム増量の紙コップのコーヒーを大人ぶって飲むなどの、男EYEにはうかがい知れきれないほがらか面での女子高生ライフを垣間見ることができます。

・これ、意外にダークサイドのほうがみる機会が多いですよね。「実録女子高」ってね。夏場はスカートをばさばさして涼をとるってなベタスタンスで。マンガやらブログやら映画やらでね。

・ということで楽しかったですよ。ぬるま湯に長くつかってると温かくなる感覚で楽しかったです。
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「パシパエーの宴」 とり・みき (チクマ秀版社)

・一応、最新刊になるんでしょうかね。しかし、ずいぶん久しぶりにふれた気がします。とり・みき氏の最新シリアス短編集ですか。

・初出を読むと1990年あたりからですよ。で、最新作が2005年。

・実に小松左京タッチが濃厚な(氏はファンクラブにいたそうです)、「くだん」ネタの「パシパエー宴」
・視聴者提供ビデオから広げたネタで、まったく現実にそうなっている1億総カメラマンな「レンタルビデオ」
・頭の後ろにキツツキに止まられて、頭蓋骨をつつかれる「啄木鳥」
・ラーメン型生物が日本中に蔓延するというシュールでかなり気持ちの悪い「宇宙麺」
・2005年発表の江戸川乱歩原作の「鏡地獄」

・こう読んでると、とり・みき氏自体が懐かしいというのもありますけど、おれが中学のとき寝食を忘れて読んでいた日本SF短編のエッセンスをたっぷり感じることができます。
・前記の小松左京もそうですが、筒井康隆、半村良、豊田有恒、眉村卓などなどの、日本SFの初期に活躍された方々のニオイがします。SFがサイエンスフィクションの略だったころから、SFそれ自体に変わるころの境目というかね、そういうニオイがします。

・とはいえ、おれは基本シリアス路線のとり・みきはキライです。なんか気取った感じと、スカした感じがね。その狙ってるところとかはとてもよく伝わるんですけど、どうしても「ギャグから逃げてシリアス」って思うのです。
・そして、ギャグマンガ家で逃げていない人はいないということにも気がつくのです。すべてのギャグマンガ家はいろいろな逃げ方をしてます。
・酒に逃げる、失踪する、筆を折るなどね。で、まあ、1番ポピュラーなのは、シリアル系のマンガ家に転向することかもしれない。もうイチイチ挙げるのがめんどくさいほどたくさんいます。だから、むしろ現在は、ギャグっぽいものも描くことができる基本シリアスってラインが人気ですよね。だから「純ギャグマンガ」はどんどん少なくなってきます。

・で、現在、とり・みき氏はギャグマンガを描いてるのか? あるいは描くことができるのか?とね。純ギャグではないですが、本作にも「TVブロス」仕込みのサイレントギャグっぽいのはありますけどね。

・つまり、最新作品集をなまじ読んだために「ああ、とり・みきのギャグマンガで爆笑したいなあ」と思ったのです。不幸なことです。悲しいことです。
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2006年/3月/5日
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「チョコレート」 しおやてるこ (芳文社)

「甘酸っぺえなあおい」
・奥さんは読後おれに返すときそういうステキな感想を添えられました。

・田舎が舞台です。中学生が中心登場人物です。主人公は男です。そして、同級生は5人しかいません。そんな田舎の中学生の生活です。登校にヘルメットをつけるような田舎ね。歩きなのにヘルメット着用ね。はなわの歌かよって。ま、うちとこの近所の学校もそれでした。

・そこに「東京」から「転校」してくる「女性」がいます。彼女とは「幼いときに遊んだことがありますが忘れてます」。

・このカッコ内がねええ。名づけて「ミステリアスポイント」です。それぞれに神秘的なものを感じます。謎です。

・おれは人が人に惹かれる最初のポイントはそこじゃないかと思うのですよ。いろいろな謎が生まれる。そして、その答えを知りたいとの想いが、すなわち、その人を知りたいと。

・そういった意味じゃ、上記のは完璧ですよね。しかも、美少女だし、前の学校のセーラー服だし、どこかおとなしくて憂いを帯びてるしね、そら、おれだってメロメロになるわ。

・でさ、もう、その後、甘酸っぱいイベントがあるんですよ。まあ、女性的な甘酸っぱさですけどね。パンツがチラリズムとか、オッパイがポヨヨンとかそういうのはないですし、逆にいらないです。

・そして、ドキドキしながらも楽しく新鮮な毎日が広げられるのですよ。

・タイトルの「チョコレート」のようにほろ苦くて甘い日々ですね。いや、ぶっちゃけ、カバーとったあとがきにそういうふうに書いてありますし。

・本作、すばらしいのは、そういう青春ほのぼのショートストーリーのように思いながらも1冊の作品として、きっちりできてるんですよ。ラスト、ちょっとしたクライマックスがあります。そして、そのクライマックスはほとんど最初のころからじっくり仕込まれていたということに気がついて愕然とするんですよ。このシンプルでかわいい、いい意味で「油断」する絵で、かなり奥の深い演技をさせているんですよ。
・そう、前作の「Pockets」もそうだけど、しおや氏の作画キャラ、とくに女性は、表情がいいんですよね。

・で、東京からきた転校生のかわいい女の子が、だんだんと同級生で大好きなコになっていくわけですよ。つまり、とっかかりにあった「ミステリアスポイント」がなくなるにつれ単に「好き」という想いが強くなる。それがちゃんと読み取れるんですよ。

・正直、もう2〜3編、いろいろと仕込む余地があったらもっとよかった気がします。少しだけラストがトートツな印象があります。あと、各キャラにもうちょっとアクセントがあるとよかったかと。だけど、好きな人以外は「背景」になるって感覚は逆によくできていたかな。

オススメ
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2006年/3月/1日
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「惑星のさみだれ」 1巻 水上悟志 (少年画報社)

・起きたら寝床にトカゲがいた。そして、私は騎士で地球の危機だからおまえの力を借りたいという。地球を救う力を持ってる姫を命がけで守れと。

・まあ、1話目でわかるところだからかきますが、お姫様は隣に住んでる女子高生でした(主人公は大学生)。そして、敵はそれらを追って街中にひょっこりいます。

・よくある設定ですが、トカゲとか敵(泥人形)は普通の人にはみえません。

・そして、よくある設定ですが、主人公はあることで心を閉ざしてます。


平凡な日常と奇妙な世界が交錯する新感覚ご近所ストーリー!!

・カバー裏にはこのように書いてあります。新感覚というより、モザイクのようにいろいろなものを組み合わせて紡ぎあわされている精密機械のような物語ですね。
・ただ、ときおり爆発してます。それがとても痛快です。戦いのシーンとかね。だから、娯楽性は高いものに仕上がってます。

「よくある設定」が多いのですがそれぞれの「よくある」にリスペクトして自分のものにしてます。おれは、遠いですが、「寄生獣」を強く感じましたね。まあ、泥人形がミギーとかの造詣に似てるからかな。

・1巻のクライマックスはかなり感動ですよ。いろいろな要素がぐーっとまとまってかなり爆発します。2巻以降このクオリティが再現できるのか?と思ったりね。

・主人公の成長物語でもあるんですね。騎士としての成長と精神での成長などね。あと姫と関係とかね。

・姫ね。これがまたいいキャラクターなんだよ。萌えるのかな? ベラボーに強いんですよね。いろいろな意味で。で、関西弁でね。かっこいいんだわ。

・2巻まで見極めたいんだけど、1巻でも十分楽しめる。よってオススメ
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「吉原のMIARIさん」 1巻 真倉翔&真里まさとし (集英社)

・吉原のソープランドで働いてるNo.1の未来さんが、妬まれて、合成麻薬をもられ、ふらふらしたと思ったら次には江戸時代の遊郭の吉原にいたのです。そいで、そこでも、ソープランド仕込みの技を駆使してのし上がっていくというSFマンガです。この場合のSFは藤子F不二雄氏の「少し不思議」のSFです。

・余談ですけど、SF知識の国民的な偏差値ってのがあるとしたら、日本は世界一じゃないですかね。それは藤子不二雄氏ほかの功績がとても大きいことでしょうね。

・と、まあ、実はなにげに毎回キモノを描かなければならないし、時代考証とかもあるんで大変そうな気がします。しかも、江戸時代にあるものでソープランドでの小道具を再現しなければならないのはなかなか大変ですね。

・でも、そここそがセンス・オブ・ワンダーなんですよ。ほら、「フリントストーン」って石器時代の話を描いた映画やらアニメがあるじゃないですか。石でできた車に載って、ガス台には火を吐く龍をくくりつけてあるみたいなの。本作もそれに似た楽しさを感じます。

・米粥で作ったローションに、自作のスケベ椅子ですよ。そいで、なめし皮で作ったマットで泡踊りです。で、キメコトバが「未来の技でいかせてあげる」ですよ。すばらしい。

・くわえて、遊郭知識なんてのも豊富に挿入されてます。白眉は5話目の「恐るべき手練手管」という回ですね。
・未来の活躍を妬んでるライバルが「あなただけ」ということで自分の爪を客に渡すというサービスをはじめました。当然、嘘の爪だそうですが、男はそれに恐れをなして浮気をしなくなるそうです。
・それに対抗し、もう未来さんはすげえええプレゼントで対抗しましたよ。すごかった。予想がつきそうでつかないものです。ここいらの発想の飛躍と逆にリンクしてる具合がとてもおもしろいです。

・そう、本作は、エロよりもなんつーかなー、「現代」を江戸でむりやり再現するってな滑稽さがおもしろいんですよね。もちろん、エロも大事ではありますが、それよりもケータイのデジカメで遊郭を撮影してたり、お付の女子に現代の化粧してあげたりとか、そういうのがおもしろいんですよね。

・そして、それは、ソープランドもそう、遊郭もそう、なんつーかな、日本の風俗ってのはおもしろいなあというそもそものワンダーにも行き当たるわけですよ。だって、他国じゃ成立しないでしょ? 昔も今も基本的にシステムとかいっしょっぽいじゃんん? 遊郭ってシステムもソープランドってシステムも双方ともおもしろい。しかも、それが時代を超えて吉原であるってのもおもしろいしねえ。そういうところでもまったくもってワンダフルジャパネスクですよ。

・日本の文化の深さを下半身への刺激を中心に再確認させてもらえますよ。正直、エロほか、女性描写にはもうちょっと精進の余地はあると思いますがね。毎回キモノを描いてる大変さを差し引いたとしても。
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「酒ラボ」 宇仁田ゆみ (講談社)

・知識や経験ってのは大切ですよね。宇仁田ゆみを知らないとしたら、「こんなの「もやしもん」のパクリじゃんか」で片付けそうですよ。そういうふうに片付けてる方は多いんでしょうね。

・農業大学の日本酒製造の研究室の面々が登場するドタバタマンガですね。

・もう堂々たるものですね。宇仁田節ってのが随所に効いていて、ラブ要素は弱いですが、人と人とのつながりみたいなの、同じ研究者としての同士感覚やら友情みたいのを感じますね。それにかなりの酒や農業大学ウンチクが混ざってる。文字だけの注釈が圧巻だったりしますよ。本作で登場した「ミミズコンポスト」などのハウツーもかなり細かいです。

・基本的に「いいひと」ばかり登場で、きわめつけのお人よしのアワモリくんを中心に広がる楽しい「理科生活」ですね。もうちょっと楽しみたい気がしました。
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「ハピネス」 古屋兎丸 (小学館)

・短編集。
「マンガ エロティクス」に収録されたものが多いので、必然的にエッチなものが多いです。

・あー、知った風な口をきかせてもらうと、現代社会? その病巣に、アレして、ホンローされえの、ほんだらかんじゃらなマンガが多いかあ。ココロの病な現代若者が登場しますね。ガラスの10代ですよ。

・先生と生徒の2パターン「嬲られ踏まれそして咲くのは激情の花」「ロリータ7号」
・明るい「悪魔電波」な娘が登場する「あくまのうた」あたりは、古屋氏の真骨頂かもしれないなあ。
・ロックスターが飛び降り自殺した「聖地」でのボーイミーツガールな表題作「ハピネス」

・おれは、後編3編がとても好きですね。

・ちょいと長めの「雲のへや」。頭の弱い少女がいつでも雲がみられる部屋がほしいってことで、大家にだまされてヘンな雑居ビルに住むって話。このヘンな雑居ビルありきの話なんだろうなあと「物件先行」なところがおもしろかった。

・友情モノ。これが古屋氏にはとてもめずらしいよな気がしますが。DQNだけどすばらしい幻想をみる目をもってる男と、その「幻想」目当てでつきあってる男。彼の幻想を油絵に描いていろいろな方から絶賛され、そして高嶺の花と思っていた先輩から逆告白される。「インディゴエレジー」。

・ネットアイドルを「やらされてる」頭の弱い少女。ある日、ファンが彼女を誘拐する「アングラドール」

・なんていうかな、古屋氏って、「パレポリ」で、「パイ」で、メタなことをしすぎたので、ストレートにこられると、どうも「ん?」って気がしてしまうんですよね。

・本作はわりとマジメにストレートな物語が多いです。もちろん、超絶にして、話により、微妙に変えてるというシャープな作画は相変わらずですし、本線以外にたくさんの「しかけ」があると思われます。
・そのトーンも、ゴスとかネットとか、その手のキーワードをたくさん散らしてると思います。

・でも、どこまで「マジ」で描かれたのか不安になるんですよね。メタ的なことをしてきた方の宿命ともいえます。なんつーか、土台からひっくり返したり、茶化して「なーんちゃって」ってやったマンガ家はその後、マジメなアプローチをしてもなんか不安になるんですね。オチがあるんじゃないか?って。
・どっちかというと、メタ以外のほうを多く描かれてるということは知っております。たぶん、ほぼ全部の単行本は読んでるはずですし。でも、「パレポリ」や「パイ」のそれが強すぎて、どうにもこうにもね。

・そして、「でも」、果敢に挑戦されております。作者もそのことは自覚されてると思います。だからこそでしょう。作者の情熱はどこからきてどこにむかってるのか興味のあるところですが、その真摯な姿勢にはやはり心を動かされます。本作は真摯な短編集です。ちょっと気負いすぎなところもありますがね。
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「散歩もの」 久住昌之&谷口ジロー (フリースタイル)

・いや1100円のマンガですよ。それでいて100ページない。

・通販雑誌の「通販生活」に連載されてました。奥さんが唯一定期購読してる雑誌です。

・1回8ページのマンガが8編。内容は、ひたすら主人公の男(妻あり)が、散歩をするというマンガです。
「意味なく歩くことの楽しみ」。主人公は散歩をこのように定義づけており、1人でひたすらだらだらと、変わったもの、「そそる道」などを目当てに積極的にさまよってるサマです。

・そう、本作ほど、「景色」が主役のマンガってないね。実際、8ページのマンガですが、作画時間としては16ページ分かかってるそうですし、資料の写真も300枚ほど渡してるそうですしね。
・すなわち、研磨されつくした現代マンガ最高峰の技術で描かれた「景色」を愛でるマンガです。

・東京を歩くのが好きだったことをキョーレツに思い出す。おれの現在住んでいるところは田んぼばかりで代わり映えしない(最近そうでもないことがわかりかかってきた)、ところとちがい、どこまでもみるべきものがつづく感じがよかったなあと。それを思い出します。よく、上野あたりから秋葉原、御茶ノ水、水道橋をとおって調子にのって池袋とか、本当だらだら歩いていたことがありました。

・といって、ただ、「景色」を描いたイラストがだらだらと連続してるのではないです。これが「マンガ」足りうるために必要なものは芳醇に含んでいるのですよ。つまり、景色描写は、散歩している彼にとっての感情を表現してたりもします。それにブレが生じないための圧倒的な描写なんですよ。

・景色をちゃんと描くことにはいろいろな理由があると思われますし、逆にちゃんと描かないメリットもあります。そういった流れにおいて、必要だから描くというシンプルな理由で、1コマに1日がかりみたいな時間をかけて描く。とてもカッコいいと思う。それがふかすだけじゃなくて読者としてバッチリ恩恵にあずかれるところがいい。
・うれしいときは風景も明るく映るし、せつないときはそれに準じる。懐かしむとき、新しさを感じるとき。

・ま、だから、ザックリと評価すると、「大人の絵本」とね。ベタすぎな評価ですが。

・大名作「孤独のグルメ」を超えたか。そして、またこのコンビの続編は絶対に読みたいね。

オススメ

・適正として本棚のマンガに390円+税のが多い人はむきませんね。週刊少年誌のコミックの値段ですね。これが多い人にはムダなマンガになりますご注意。100ページ以下で1000円以上の本がわかる人、まあ、端的に絵本とか、詩集とか、そういうものを楽しむことができる方にはそれはそれはいいものになりますよ。

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「晴れゆく空」 谷口ジロー (集英社)

・よくできた映画のような。でも、こんな映画はなくて、どこか架空の映画をマンガ化したような。なんか不思議な感触がありますね。

・オッサンの過失で、バイクの少年と正面衝突してしまいます。オッサンは死んでしまいますが、意識だけ少年の中に入り込みます。そして、残された奥さんと子供にメッセージを託そうとします。

・そんなあらすじ。

・もうスムーズスムーズ。ゆっくり着実にムダなく正確に物語を進行させてます。ああ、よくいわれるフレーズかもしれないけど、終わりから逆算して作られてるようです。

・現状を理解するオッサン。でも、まわりに受け入れられる人はいない。そして、それでも、妻子に会いたいと向かうわけですよ。17歳の少年のままで。

・うーん、どこかでみたような感じではあります。それでもベタにベタを重ねた展開を丁寧に丁寧に描くことで説得力を持たせてます。正攻法で、それゆえに遠回りのようで最短距離だったりするんですよ。ただ、それには膨大な時間と技術と才能が必要ですが。

・ああ、「谷口ジローはいい」以外のことはもういえないのかもしれないなあ。

・そういう前提で描かせていただきますが、どこか、ゴージャスがすぎる感じがして、やや居心地悪かったというのも事実です。
・それこそ1行目の文章になりますが、それは「いい意味」だけじゃないわけですよ。
・文句のつけようのない、なにもツッコミのないストーリーや絵はどうだろう?ってことです。というより、映画のようなマンガというのはどうだろう?と。

・ものすごい率直な感想として、「実写映画化されたらおもしろいだろうな」と思ったりしたのです。こういうのは別にマンガに限らず、小説や、あるいは、ゲームにもそう思うときがあります。

・マンガにはマンガの、映画には映画の、「とくい」があると思うのです。本作はいろいろな手段で映画の「とくい」をマンガのほうに引き込むという力技を本作ではみられます。

・それは素直に賞賛に値するんですが、素直なところで「大変じゃねえ?」と思ったりもするんですよね。それは人それぞれですし、おれは谷口ジロー氏のこの手法がいいんですが、「大変なんだなあ」「この絵すげえなあ」「何時間かかって描いたんだろ?」ってのが入って、物語に集中しきれないのがはがゆいというかね。それは作者の本意とちがうでしょうし、もうしわけないと思うんですよね。まあ、ポイントポイントで泣いてるんですけどね。
・とくに、娘に「わかってもらう」シーンね。

・んー。オススメします。赤字はナシですが。933円。名作DVD1枚と同じ値段です。その価値は余裕です。名作DVDと肩を並べられます。ただ、おれにとっては名作DVDと同じで、「何度もみかえす」ことはできません。名作マンガはそういうことはないんです。おれ内では「マンガ>映画」なのです。

・それはそうと、物語のキーパーソンでもある女子高生がかわいかったなあ。これはなかなか意外です。
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ケージバン