→トップへ/→コミックインデックスへ

ポトチャリポラパ/コミック/2006年
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2006年/4月
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2006年/4月/30日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「クリスチーナZ」 河合克夫 (青林工藝舎)

・フランスのマンガであるBDのようなオシャレっぽい表紙に絵柄で、エロでバカな内容という感じの河合克夫最新作です。

・それに「ミュージックマガジン」で連載されていた「go!go!アプレちゃんず」という作品なども併録。
・このミュージックマガジンの作品がつまらなかったんだよ。だから、河合克夫に出遅れていた感があったんだよ。実際、大ファンとなった今読んでもやっぱりあまりおもしろいことなかったな。まあ、表題作もネタ自体がアメコミ(BD?)のパロディマンガってな、1発ギャグ的な要素が大きいので(ついでに書けば判型も大きい)、従来のものからすれば落ちます。ただ、すげえ超展開になってますけどね。あと、こっちが戸惑うようなエロが逆にギャグになるってパターンか。海でゴムボートに乗ってて溺れてる外人がいて、トモダチがオナりだしたから、自分もオナるところを2p見開きでとか。そして、助けたガイジンの股間にサメが噛み付いていたり。

・ということで、後で有名になったとして、「こんなのもあった」と復刻されるようなマンガですね。わかりづらい表現でもうしわけない。
(16:13:31)amazon

「ピアノの森」 12巻 一色まこと (講談社)

「モーニング」購読止めててよかった。そう思える12巻です。どう考えても「モーニング」で毎週読んでいる人よりおれの感動の方が大きいんじゃないか。だから、実は、1番いいのは終るまでまってイッキに読むことかもしれないし、それでいうなら、現在、未読の方がもっとも幸せです。だって、「ピアノの森」を最初から新鮮な気持ちで読むことができるから。

・と、思えるほど12巻はおもしろかったです。そりゃあもうずっとおもしろいマンガではありますが、連載していた「アッパーズ」がつぶれて、「モーニング」に移籍してから1番おもしろかったのではないかと思えるくらいです。

・やはり修平とからむと格別におもしろくなりますね。で、大人時代のカイになってから初のからみです。

・この友情であり、ライバルである、微妙な関係が紡ぎだすストーリーってのは、鉄板ですね。これまでの色恋ネタより、よほど燃えるものがありますね。萌えるといいかえてもいいです。

・そして、戦いの場を5年に1度ワルシャワで行われるショパンコンクールへと。世界最高峰の場で因縁の2人が対決ということで、こら、あんた、大コーフンではございますよね。

・本作においておれがいいたいことはもうないです。「読め」くらいか。このショパンコンクールがクライマックスになるのか、それ以降も続くのかも、実は興味ないです。なぜなら、読んでる間は「おもしろい」ということが鉄板だからです。そして、その物語の終わりはたぶん一色氏にとっては本意不本意関わらず、「終わり」なんでしょうしね。だから、読む以外のことはやりにくいし、それについて書くときに「読め」以外のことを書くのも難しい。

・そして、イマサラオススメも難しい。まだ未読の方は思い切って完結まで待たれるのも一興かと。と、読むことは必須なんですけどね。マンガを読む能力がある人で本作を読まないという選択肢はありえないと考えます。
(18:03:08)amazon

2006年/4月/29日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「よつばと!」 5巻 あずまきよひこ (メディアワークス)

・ほのぼのマンガのワナにはまった5巻といったオモムキがありました。ま、端的にいうと、これまでよりちょっと落ちる。

・よつばちゃんというヤンチャな女の子が大暴れするほのぼのギャグマンガです。

・1巻と5巻のなにがちがう?という問いに答えられないくらいほのぼのな毎日が繰り広がってます。また、季節固定マンガで、1巻から5巻までいまのところずっと夏です。どうも、「夏」はこれで終わりだそうですが。

・おれは「あずまんが大王」のときからある現象なんですが、あずまきよひこマンガはときおりフッとシラけるんですよ。たぶん、ものすごいデリケートなことだと思うのです。それをキッチリ解明するのは、もっとアタマのよろしいコトバを多用してるカッコいい文章を書いてるサイトなり本なり読んでほしいのです。おれにはムリです。ただ、ここでムリなりに仮定してみるとします。

・おれが飽きた。

・ああ! 答えでたよ。しかも真理かも。
・ほのぼのとマンネリというのはかなり仲良しサンでしてね。長期連載には必ずつきまとうものです。そして、長期連載をモノにされてる方はすべてこのマンネリとの共存をされてます。いいカンケイでいます。つかずはなれず、それぞれの距離感を保ちつつ。
・ところが、正直なところ、あずまきよひこ氏はヘタですね。あるいは、おれとその感性がちがうのか。
・とくに思うのはたまに真正面から抗おうとしてる感じ。「あーあ」と思ったりするのです。そして、最大の問題はそれに正誤はないってことです。おれの感性だけです。

・たとえるなら、カニカマボコ1本作るのにズワイガニ8尾つぶすような、焼いも焼くのに料亭によく出る、固形燃料をボーボー燃やして焚き火にしたりさ。花見でロースター設置して燻製をすみっこでいぶしたりするような。

・2文字で表現すると「過多」。

・モトからそういう感じだし、「あずまんが大王」はその過多なところが、ある種新風だったり、以後の流れ(萌え4コマ)をつくるきっかけにつながってはいますが、まあ、共感を得やすいたとえでいうところの「スラムダンク」の後編みたいな、過多さを感じます。

・そのマンガに必要な絵の技術ってのはあると思うのね。技術って不適切か。レベルというか。それが過多なんですね。話しの作りこみとかもときおり過多。意味ありげな風景描写のインサートとかも、なんかときおり「過多」と思う。もうちょっとくだけて正直な表現だと、「暑苦しい」。
・そいで、それが、つまりはマンネリ打破やクオリティ向上のためってのはすげえよくわかるのです。だからこそ、痛し痒しではあるし、なんていうかなー、空回り?に感じられてね。

・新キャラクターの「やんだ」がイヤなワケでもないし、風香の水着姿が相変わらずあざとくもエロいなと思ったり。星をみにいってお湯を沸かして、カップ麺を食ったりなど、いいなあと思ったりもします。

・あと、超大前提として、けっこう森羅万象すべてに通じますが、楽しみにしすぎたらダメですね。これが基本です。発売前に楽しみにしすぎるとその想いがかなり加速してコントロール不能になったりするんですよね。5巻、わりと楽しみにしてたんだおれ。

・そして暑いねん。今、暑いから。暑いのに暑いマンガ読んでたら暑いねん。あと、よつばはいつになったら小学校にいくねん。

・冬になって読み直したらおもしろいと思います。
(17:37:03)amazon

「世界でたった一人の弟」 坂本ハヤト (松文館)

・いや、「屈辱er 大河原」の作者もすごくイメチェンをはかったなと思ったら、あっちは、坂本タクマ氏でしたね。失礼失礼。
参照:[坂本タクマの絶対ギガモト]

・左下に「ショタコミcollection」とあったり、カバー後にいろいろあったのでどういうマンガかわかっていたのですが、思い切って買ってみました。絵のかわいさ+マンガ読みの直感+最近エロマンガ読んでないなと思ったからです。

・ビンゴ!でしたよ。アッチョンブリケ! それはピノコ。

・ショタってことで、SEXチェックにおいて女性とされる人はこのマンガではほぼいない世界でのエロマンガです。双方チンチンがついてるのですね。で、「ショタコミ」ってことでサカっておられるのです。ハホンハホンとね。

・えーとね、自分でも属性とか嗜好が変わったのかけっこうエロを感じました。とはいえ、マンガは記号だなとも思います。つまりは、フタナリとか、「女」ということで置き換えが容易ですからね。

・だから、1番エロいと感じたのは、道をはさんで和菓子屋職人と洋菓子屋職人がしのぎを削っていたけど、いつしかそれが女装してパンツをみせるということになり、エロエロサービスの店ってことになるんですよ。オムツのように饅頭の「ガワ」を作って、肛門の中にアンを入れて「吸ってください!」とか、チンポにショートケーキをアメリカンドッグ状に作って、包茎のチンポの先っぽがイチゴのようにチョコンと載ってったりするんですよ。なんかアタマがくらくらする。

・と、この世界って、絵柄が全然ちがうけど、上連雀三平氏の名著「アナルジャスティス」の世界に通じるものがありますね。あっちよりもかなり「少年」なので難易度は高いですけどね。

・そして、マンガとしておもしろい。いや、これがとてもおれ的には美味いところ。

・表題作は、世界最高の「弟」を作り上げ、世界はその弟に色じかけに征服されそうになる「世界でたった一人の弟」

・上だけしかない制服(下はすっぽんぽん)で電車通学し、そのたびに痴漢に陵辱される「私立上だけ学園少年記」。

・そして「幽霊と僕と夏休みの宿題」は、普通に映画にもなりそうな泣ける少年と幽霊と少年の友情の話。いや、本作全部に、わりと「せつない」という要素はちりばめられてます。

・花くまゆうさく氏の「東京ゾンビ」(映画化しましたね)にインスパイヤされた、日常にゾンビがいる世界を描いた「生きとし死せる者」です。実は「東京ゾンビ」のほう、あまりくわしくは知らないんで、明言はできませんが、こっちのほうは(が)掛け値なしの名作です。
・ゾンビになると本能だけで生きるようになるので、性欲だけになるのです。で、ところかまわずオカマを掘るゾンビが日本のあちこちにいる世界です。

・えーと、作者自身の体験があるそうで、イジメ関連の話が多いです。その重さと暗さがまたいいアクセントになっていたりします。
・バラエティに富んだ作品群とキッチリしてるエロ。非常によくできてます。そして、描き下ろしなどで構成をまとめ、1冊の本としての完成度も非常に高いです。とくに、「生きとし〜」がなあああ。

・そうなんだよな。男女や女女じゃ成立しない、しにくい、友情からの情愛性愛って感じの話が多く、かつ、ヤオイ関連ともまたちがうという、かなりニッチなところかな。だって、ヤオイにはけっこう必要な耽美成分が薄いもんね。男が読み、エロを感じるショタコミなのかしら。
・ま、ひとつキモに命じておかないとダメなのと、わりに致命的なは、あんまり他人に持ってることを知られたらヤバイことですかね。「いや、マンガがおもしろいからね…」といってもあまりイイワケとして成立しにくいし。

・衝撃的におもしろかったですよ。オススメにかなり近いです。
(21:44:48)amazon

2006年/4月/27日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「トラベル」 横山裕一 (イーストプレス)

「ニュー土木」で世に「なんじゃこりゃ?」旋風を巻き起こしたかどうかはわかりませんが、おれ内には暴風雨というくらい巻き起こってました横山裕一氏の新作です。先行発売のフランス版に大幅加筆のオリジナル完全版です。

・まずこの大幅加筆ぶりが大幅です。48ページまでの1部。そして、その後200ページまでが2部です。そら、制作3年かかるわと。だからほとんど別物。

・あらすじを書きます。あらすじが長いと2ちゃんねるで叩かれたことがあるポトチャリポラパでも安心設計のシンプルなあらすじです。

・1部は列車に乗り込んだ3人が席をみつけて座るまでです。2部は電車から降りるまでです。

・そう、全体的なあらすじは、電車に乗って降りました。です。

・当初、妙な感じがしたんだ。なぜかよくわからなかったんですが、「ニュー土木」をパラパラとめくったら謎が氷解。本作、いわゆる「サイレント」です。「いわゆる」というのが正確かどうかわかりませんが、いわゆる擬音もセリフもなにもないんですね。そこには起こってる現象のみが現れてます。そういう意味では写実的です。音はみえませんからね。

・おおげさにすることでギャグにするという手法がありますね。なんでも数値をでかくいったりね。そういう感じで、なんでもダイナミックにすることで、なんらかの意味をもたせるという展開になってます。

・ダイナミックとは横山裕一氏の代名詞ですからね。当初、自動販売機で切符を買って(600円なんだよこれが)、自動改札に通して入場するところからもうダイナミック。
・以後、席に着くまで車内で延々、空いた席を探して、すでに座ってる客を描写し続けてます。それもダイナミックだし、その無表情だったり、独特のファッションセンスと描写から、読み手が勝手にドラマを紡ぎだそうとしてしまいますが、なにも起こりません。だいたい、セリフはないんですし。

・そして、彼らも横一文字の口元のまま目的地に着くわけです。

・その車内にしろ、車窓の景色にしろ、車内の人物にしろ、不可思議なものが広がってます。あ、ちがった。不可思議なものが「ダイナミック」に広がってます。そして、それはとても「読み」応えがあるのです。読者にとっても新たな旅になるわけです。まさにトラベルと。ま、こういったおもしろいことになってるそうです。

・うーむ。でも、「ニュー土木」はマンガでしたが、これはさらに進んだところですね。「文字」がない世界ですからね。だからさらにマンガ世界におけるハシッコではあります。ギリ境界線を踏み越えた感じもあります。そのアナーキーが心地よくもあり、いきすぎて引くという感覚もあります。すなわち、それ、前衛ですね。フランス的にいうなら、アヴァンギャルドと。

・とはいえ、実のところ、榎本俊二氏のように笑って読むのもかなりアリだと思うけどね。とくに「なんだきみは?」ってヘンなキャラがいろいろと登場しますからね。
(23:22:23)amazon

2006年/4月/18日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「向こう町ガール八景」 衿沢世衣子 (青林工藝舎)

・サブカル成分やニューウェーブ成分が不足しがちな昨今、とんがりキッズのみなさん、および、へんたいよいこのみなさんはいかがお過ごしでいらっしゃいますか?

・ということでニューウエーブマンガ期待の星の第2弾がでましたよ。やったぜベイベー。

・8人の少女を描いた短編作品集です。

・これが最初は「ふーん」と読み進めていったわけです。第一作品集であるところの「おかえりピアニカ」より、オルタネイティブな感じがしたんですね。そう、本作よりの視点でいうと、「おかえりピアニカ」はいろいろとキレイです。

・だから、ノリでいうと、メジャー第一作の成功で、インディーズ時代のアルバムをメジャーから再発売って感じですか。デビュー作も収録してるよ!って感じで。正直「おかえりピアニカ」とどっちが先に描かれたものかってのはよくわからないんですけどね。

・なんか、スピッツみてえ。「ヒバリのこころ」だっけ?

・ということで、8つの話。

「BALL」はドッジボールの話。最も黒田硫黄な絵とノリですね。そういわれてみればなにやってんだろ黒田硫黄。

「サブリ」は「大晦日」と夢のカップリングで2話分あります。佐分利ってハードコアバンド(っぽい)韜晦キャンディーズのおっかけをやってる少女と、その幼馴染の編み物が趣味の少年の話。

「カルシウム」は背が小さいので毎日ミルクを飲んでいる少女と、その親友の身長178センチなのにノミの心臓の女の子の話。


・そういった感じで8編。

・いっしょにしていいものかよくわかりませんが、「スケルトン イン ザ クローゼット」 岩本ナオ (小学館)「東京膜」 渡辺ペコ (集英社)と本作(と、前作「おかえりピアニカ」)、3作に共通するものがあるような気がする。

・それは適切な表現か微妙ですが「薄い」んじゃないかなと。なにが「薄い」のかというと、恋愛要素。

・そう、本作もガツーンと「恋愛」ってガールがいない。ガツーンと恋愛してる女性をみて「はー、大変そうねー」て感じが多いかも。「カルシウム」の主人公は彼氏よりも自分の身長を150cmにすることに夢中だしね。「サブリ」も幼馴染に対する気持ちがまだ確定してない感じだし。

・たぶん、この「薄い」感じは本線ではないとは思います。本線はやはりどろどろぬとぬとの恋愛模様がやはり映画化でアニメ化でしょう。でも、おれはこの「薄い」感じがとても新しい流れに思える。

・こんな言い方はとても差別的ですが「女もいろいろ考えてるんだな」と。ほら、自分以外のことってわりと単純化したりして考えがちじゃないですか。女性も男はセックスのことばかり考えてるとか思ってそうです。そういうノリで、恋愛至上主義なのかとね。

・前作同様、小田扉&黒田硫黄レスペクトです。ほとんど、「ジャンル」として両者を崇拝しております。崇拝しながらも独自の衿沢視点がキラリと光るのです。

・その最キラリで、最「薄い」のが、「放課後バックビート90」。本作と、さべあのま氏の「綺羅星」と比較すれば「薄い」ことがよくわかるし、かなり独自なことがわかる。[Amazon.co.jp:はにほへといろはMF文庫―さべあのま全集: 本]
・どちらも女子高生仲良しグループの恋愛のない話なんですけどね。「恋に恋してる」さべあのま氏の登場人物にくらべると、とっても薄くて無防備で無邪気です。そして、それは上記の通り「キラリ」なんですよ。

・川沿いの道をコンビニで買った肉まん食べながら友達と帰る女子高生の美しさです。ナタデココに胸をときめかせる青春ですよ。

・まあ、わりにムラがあります。完成度って考えでいうとまだもうちょっと研磨できるところが多い気がします。でも、「おかえりピアニカ」より好きですね。描きたいこと描いてる感が小気味いい。とりあえず「ココみて!」ってのがわかりやすく提示されてる気がしていい。

・そして祈ってるのは、前も書きましたが先達のニューウェーブの方々とちがって失速したりせずにガリガリ精力的に描いていってほしいことです。いや本当に本当に。
(08:53:02)amazon

2006年/4月/15日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「おねがい!! 薬女ちゃん」 雑器 (司書房)

・はい、「隠れた名作」大好きっ子に朗報よ。本作「隠れた名作」よ。

・小さな田舎町。ここでは困ったことがあったらお菓子を持って薬女サマにお願いにいくという習慣があります。というか、神様である、薬女(やくめ)ちゃんという少女が登場して奉納したお菓子を食べながら悩みを聞くのですね。

・そういう設定のもと展開します。

・なんていうか、10年続いた長期人気連載のベストセレクションの総集編を読んでいるかのようなクオリティがありまして。10年連載してるから、いろいろな話を描いてみました。の「いろいろな話」にいろいろな描き下ろしを加えてるような感じです。

・わかりやすい例でいうと、「こち亀」ですかね。通常の話のほかにもいろいろなシリーズものとかあるじゃないですか。中川が主役なのはアクション巨編だったり、両津の子供のころの話は泣けるいい話だったり。そういうネタばかり集めて総集編やら文庫本出てますよ。ああ、「ドラえもん」もそうか。つまりそういった感じ。作者自選傑作集的。

・本作、1話目では、女の子が悩みを相談しに来て、それが物の怪の仕業ということでアクションシーンもありの、ちょっとしたドタバタゴーストバスターズってな話。これが基本でしょう。「ドロロンエンマくん」で「ゲゲゲの鬼太郎」で。
・ところが、2話目では、夏休みにヒマをもてあましてる子供たちとキモ試しという、1話目からすれば番外編な話。夏休み合併業特別掲載って感じがするよ。

・3話目は昔の話になり、4話目は「世にも奇妙な物語」なショートショートで、5話目は薬女ちゃん自身の昔話と。とにかく同じ話はまったくない。

・でもって、残るのは薬女ちゃんのかわいさとありがたさ。そして、それらの物語をつなぐ「読んでないけど読んだ」話があるような感覚。
・そう、10年、「薬女ちゃん」を読んできたような錯覚にとらわれるんですよね。

・それくらい、堂々としてるんですね。薬女ちゃんの魅力、舞台(世界)の魅力、ひいてはマンガ全体の魅力ということですね。強力な「馴染み力」とでもいいましょうかね。正直、司書房だし、ペンネームからして、エロマンガと思って買ったおれの期待をちがった方向に裏切りました。

・で、上記の10年分のベスト〜って書き方をしたのは、ぶっちゃけると、絵がやや古臭いってのもあるんですね。でも、技術が古いんじゃなくて手法が古いというかね。頬骨のところがピョンと飛び出してるようなりんかくとかね。すごい細かいトーンワークとか、けして他の絵と見比べても遜色がないんですけどね。

・3話目の村に鉄道を敷くという話は、往年の特撮映画的なメッセージ性を感じたりもしましたね。そう、そういった点での懐古ってなニオイもあるんですよね。「恋の呪文はススキトキメキとキス〜」なんてネタも古いし。神風の術だし。

・ということで、「隠れた名作」ですよ。シングルのみ発表で解散した幻のカルトバンドの未発表音源を加えた初のベストて感じ?

・あー、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、最初のとっかかりで、クセがあるかなあ。古いと思ったりするのも含めて。あと高いしね。でも、限りなくオススメです。
(08:55:48)amazon

2006年/4月/9日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画」 1巻 GAINAX&高橋脩 (角川書店)

・まだまだ商売になるエヴァ。ガンダム以来ですよね。
・ということで、本作は物語自体は一応ケリがついてるので、多層的なアレですね。パラレルワールドっていうか。
・ゲームが直接的な原作ということになるんでしょうか。あのキャラが比較的平和な世界において展開していくという学園ラブコメとして展開してます。おれの感覚でいうと、テレビ版の最終回にあった「こんな展開もあるのか」とシンジ自身がつぶやいていたアレですね。トーストをくわえたアヤナミとぶつかるってやつ。本作、あそこまでちがいませんが。

・ということで、原作を考慮しないで学園ラブコメとしてのあらすじを書かせていただきます。

・シンジという少年がいます。中学生です。毎朝起しにくるハーフの美少女アスカといっしょに学校に「夫婦」などとからかわれつつも朗らかに学園生活を送っているのです。
・そこに謎の美少女アヤナミが同居することになってしまいました。で、三角関係の中、ほがらかに、ちょっとエッチに、学園生活は繰り広げられていくのです。

・と、原作を考慮すると、公式ブートレグみたいなもんで、ほかにも「鋼鉄のガールフレンド」などありますよね。つまりは宇多田ヒカルの曲をクラキマイがやるようなもんですよね。まあ、タトエが微妙に古いのも含めて味ということでさ。大人が本気で同人活動して売上をかっさらいにくる感じ? そら、2pで終って「すまん。冬コミでは必ず!」みたいなのは太刀打ちできんわな。

・また、本作、完成度が高いよ。どこまで原作に忠実なのかは知る由もないんですが、その作画のオリジナルを尊重しつつも作者の味を注入してるところ。各脇キャラ、とくにネルフ(だっけ?忘れた)の人たちが学校の先生とか先輩ってことで溶け込んでるあたり、オリジナルでは、立ちはだかる存在だった、父が、生きている母の尻にしかれてたり、ミサトさんのビキニ姿とかね(なにがすごいかわからない人はオリジナルをみればわかるわ)。

・それでいて、オリジナルに準拠してるキャラ設定だったりするのがおもしろい。
・アスカは男勝りで、レイは謎めいていて、ミサト「先生」は ・そう、つまり、エヴァだからってことなんですよね。これが「おじゃる丸」だったら…って「おじゃる丸」も同趣旨のマンガがあるね。[Amazon.co.jp:おじゃる丸外伝野望の少女マンガ家うすいさちよ―NHKおじゃる丸NHK出版コミックス―テレビコミックス: 本]

・もとい。エヴァというオリジナルがあったからこそできる話だし、ベタすぎる展開や話が逆に強烈に新鮮味を帯びてきたりもするんですよね。なんたって、オリジナルはかなり悲劇ですし。
・それだからこそ風呂上りのアヤナミとバッタリ。ユカタ姿のアスカに膝枕とか「く〜」となるわけですよ。それらを無防備に楽しむことができるヨロコビというかね。

・ま、同人での展開はそれがエロってことですね。ゴムゴムの包皮!ってことですね。

・あと、イマサラなにをいうとんじゃとはお思いでしょうがね。そんなもん、公式、非公式で、商業ベースでもアホほど同趣旨の本は出てますからね。ただ、おれはそういうのを丹念に避けてましたから。だから、「エヴァだからこそ」ってのはおれに対するエクスキューズなだけですね。

・そういうことで、奥さんと息を呑みながらレンタルビデオのエヴァをみていたことを思い出しました。あと、劇場に劇場版をみにいってたしねえ。

・世にある非創作の同人と同様、オリジナル知らない人には無用ですが、本作はそれを了承すれば、かなり楽しむことができる、よい同人って感じですね。

・しかし、ひょっとして、今の「マンガ家志望」はこのラインを最初から目指してる層がいそうですね。「夢は版元&作者公認の公式同人マンガ家です!」ってか。奇病にかかって口からウンコが出るようになればいいのに。高橋脩氏以外。と、それくらいは気に入ってます。
(12:55:24)amazon

「ワールドエンブリオ」 1巻 森本大輔 (少年画報社)

・おれが嫌いなマンガのジャンルは、「中世RPG風ファンタジー」と「SF伝奇ジュブナイル」ですよ。理由は人気ジャンルで、一握りの名作と膨大な数のヌケ作があるから。その後者をオビで堂々とうたってらっしゃる。それでいて、他社のオビコメントをよく書いてらっしゃる気がする、荒川弘センセイがご推薦されてる。いつも軽く「おめえそんなエライんか?」と思うけど、実際、おもしろいし売れてるからね。ナットクではあるんですけどね。推薦してる間にハガレンを描け!と。

・で、本作。SF伝奇ジュブナイルです。
「ワタシヲミツケテ」というコトバと画像とともに「いない」はずの姉からメールが送られてくる。そして、今は廃屋になった入院している病院にいってみるが、そこでは悪い子がレイプ大会の最中。悪い子にからまれて殴られそうになったその瞬間、昔の入院仲間と謎の美少女が現れ助けられる。

・ああ、なんか、こうやってあらすじ書いてると、けっこう複雑なんだなということがわかる。このままどんどん展開していくのですよ。延々だからあらすじを書いていくだけの小学生感想文になりますからして、中断します。

・人間が怪物になりまして襲ってきます、それを退治する組織があります。その際に、カギを握るのは主人公がみつけたタマゴから孵ったコなんでしょうな。そういうSF伝奇ジュブナイルです。

・ビジュアルありきでして、それがいちいちしびれるのがまず最大の特長でしょうね。「棺守」ってのがその敵なんですが、その造形の「物体X」で「寄生獣」な感じやら、ヒロインレーナさんのセクシーな衣装。それぞれのバトルの舞台。どれもキッチリ描いてますし、現代ベースのそれはとても「現実味」をかもし出します。

・また、「棺守」がケータイを媒介するってのもとてもいいアイディア。本作が、ホラーの小道具としてのケータイをもっともスマートに活用してますね。
・ケータイが鳴ります。それを取り「聞く」と、感染して、人が化け物になるんですよ。で、まわりのケータイが同時に鳴る。それはありえないことですよね。だからその変化が「恐怖」のお膳立てとして成立する。素晴らしいですよ。そしてそれが「目安」にもなるしね。つまり、棺守が出現するとき、ケータイが鳴るってね。

・この一連のケータイがらみのアイディアは金賞ですよ。

・で、軽くぶっちゃけると、話し全体は「武装錬金」っぽいよね。確実に「ちがい」はありますが。

・娯楽最優先ってのが、オビ推薦の荒川氏との最大の共通点ですね。そして、「安心」して楽しむことができるという点では荒川氏より勝ってます。とくに作画の点で。まあ、ほかは勝ってないけどさ。

・おお、すげえとばかりに、起こる状況をドキドキみていればいいんですよ。DVDやゲームよりも気軽に手に汗握ることができるわけですね。

・弱点はほんのちょっとある「なにが起こってるのかわからない現象」と、謎をもったいつけるあまりにギクシャクしてる物語展開かなあ。姉のことやら、FLAG(棺守をやっつける組織の名)のこととか、主人公、その他キャラの過去とか。
・もったいつけは、後回しにすればするほどその謎の解答は大きくしなければ納得してもらえないです。よって、尻すぼみってオチがものすごい多くみうけられるんですよね。

・あと、主人公が巻き込まれるタイプの物語で、脆弱になりがちな、主人公の目的意識とそのモチベーションという問題も、本作ではまだはっきりしてませんね。実はこれ非常に大事なところです。今のところ単なるシスコンですからね。

・ものすごい土台がしっかりしてますし、キャラも立ってるし魅力的ですが、少しギクシャクしてる感じですか。

・そして、1行目注目。おれはキライなジャンルです。それを加味してちょうだい。そんな中の一握りの「名作」になれそうなポテンシャルは秘めてるということですよ。

・それもこれも2巻以降の展開次第ですが。
(14:22:46)amazon

「もずくウォーキング!」 1巻 施川ユウキ (秋田書店)

・ブレイクスルーだ。

「おもしろいマンガ」、「つまらないマンガ」って分け方がありまして、「売れるマンガ」、「売れないマンガ」って分け方があるとしたら、施川ユウキ氏のこれまでのマンガは、「おもしろいマンガ」で「売れないマンガ」でした。

・おもしろいものが必ずしも売れるわけではないってのは世の中の道理ですし、そういうものばかりを「通ぶって」好んでいた半生ですが、どうも、「売れる」「売れない」の間にもいろいろとあるらしいぞということが最近判明しましたよ。

・こう、「そら売れるよな」という要素を含んでるものと、「そら売れんよ」って要素。すなわち、「売れてもいい」「売れるはずない」っての。もっともっと細分化できますが、つまり、「売れない」というカテゴリーの中でもいろいろとあるってことです。

・で、施川マンガの場合、「売れない」の中には、「売れにくいというか、よろこんで読んでる人の顔が思い浮かべにくい。いやおれは好きだけどさ」なマンガだと思うんですよ。たくさんある「おれは好きなんだけどさ」な、通ぶり読者によって支えられてる感じですよ。でも、一般人はそういった微妙なことはあまり考えないので「これ、つまんね!」で飛ばすんですよ。いわんやコミックを買おうとか思いもよらないわけです。

・ところが、本作はガーンときましたね。これは「売れてもいい」と思いました。いや、どうせだから景気よくいこう。「売れる」と思いました。

・もずくというオスの犬が、日々考えてるという、やや哲学チックなユカイギャグマンガです。

「サナギさん」(2巻同時発売)で確立した「カワイイ」を強力な推進力として、キャラ力をつけて堂々と進行してます。

・この「キャラ」がいいんですよね。これまではネタのためのキャラという側面が多かったですが、本作では、ちゃんとファミリーとしての、もずくとその飼い主一家。ジャマする猫や、モグラなど、キャラのそれぞれが愛らしいものが多数登場されます。

・といって、「通ぶり」読者がもっともイヤがる、「なんだよ、売れ線狙いかよ」的なことがないんですよ。ちゃんとこれまでの施川節は健在なんですよ。このバランスが絶賛に値するものですし、1行目の「ブレイクスルー」と思った所以です。「はじめて」にも「これまで」にも柔軟に対応してるし、「はじめて」本作に触れた人が、遡って読んでみようかという気にさせるほどの力を持ってると思うのです。
・本作(だけではないけど)における「カワイイ」は糖衣なのですね。中にある、「施川汁」とでもいえる旨味を味わってもらいやすくするためのアレですよ。つまりはこれまでで1番一般ウケしそうな作品になったと。

・基本はもずくの主観で展開するんですが、彼が考える内容とかツッコミが従来の施川ユウキ節ということでね。

・あーと、えーと、そういった意味において、本作はいがらしみきお氏における「ぼのぼの」だと。

・いや、プロデューサー気取りで、「これはアニメ化したらイケるんじゃないか」ってなことを考えながら読みふけってましたよ。「おじゃる丸」の後釜にいいんじゃないかとか。10分ワクで。

・そういう、余計なお世話なことを考えるほどメジャー感が漂うんですよ。だから正直なところを余すところなく書くとしたら「おいおい、施川ユウキ売れるんじゃねーの? マジかよ〜」って感じか。

・そして、ここまで書いた上で大変残念なお知らせがあります。おれのこういう見立てはかなりハズレます。

・ただ、本作はすばらしいです。これはかなりがんばって証明したいところです。

・カワイイし、随所で爆笑しました。これは施川マンガじゃあはじめてのことです。そういう作風じゃないのについ爆笑です。それくらいやっぱ「ちがう」って感じがあるんですよ。とくに野良ダルメシアンのネタで笑いました。あと、登場キャラの猫(名前あったっけ?)がサイコーにゃ。あの猫が出るとかなり勝率(笑率)が高いね。

・ブレイクだろ! ちなみに、同時発売の「サナギさん」と2冊買って応募券を送ったらもずくとサナギさんの湯のみが当たるぜ! 送るぜ!

オススメ
(16:20:09)amazon

「ダンドリくん Black」 泉昌之 (ぶんか社)

・久しぶりの泉昌之名義は、これまた久しぶりの復活「ダンドリくん」です。
・世の中をダンドリよく進行させるダンドリくんの奮闘マンガですが、「Black」なだけに大人の味わいです。
・どこが?というと、まあ、つまり、「裏 エロ MAN-ZOKU」なんて雑誌に連載されてるくらいのもんでね。

・つまり、「飲む打つ買う」が大好きなダンドリくんが活躍する、大人の遊びダンドリ編みたいな感じね。とくに「買う」が充実。というか、ダンドリくんにおける風俗ルポマンガってな感じかな。後半モロそうだし。

・いやあ、これがおもしろいんだわ。基本、ダンドリがいいってのは実はセコイってのは前作にも通じるところですが、それが風俗になると、さらにセコく感じるところがおもしろいね。
・メガネケースを持って遊びにいかないと、オッパイパフパフタイムのときにテーブルからメガネを落としたりして危険。
・デリヘルを呼ぶ前に部屋を掃除して身体をキレイにしておくのは、デリヘル嬢のためというより自分が「恋人」を迎える気分になるため。そうするとよりよい射精ができる。
・唯一あった、「打つ」のほうでの「ポーカーゲーム」も勉強になったな。ああいうシステムになってんだって。

・で、後半はそういうところのガイドということで、SMクラブあたりからはじまって、人妻専門のデリヘル、韓国エステ(本番ナシのほう)、デブ専、ビデオボックス、メイド喫茶(これもいろいろレベルがあるみたいね)、ラブドールのデリバリーの「ドールデリ」などを紹介してます。

・そういった紹介に力が入りすぎて、ダンドリがややおろそかになってるのが残念でしたが、勉強になりました。

・そいでもって全体的に漂う味わいはなんだろうね。風俗を楽しむというスタンスの人が発想しない方向というかね。たとえば、ビデオボックスにマイヘッドフォンを持っていくのはアタリマエなんだろうか? それはそれとして、そこでBOSEをオススメするってのはなんかクスッとしてしまう。

・そういうことで全然エロくない風俗ガイドマンガでした。需要がもうひとつよくわかりませんがおもしろかったですよ。
(16:49:41)amazon

2006年/4月/7日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ホンのはずみちゃん」 金子ねつ造 (実業之日本社)

・いい意味でも悪い意味でも「なんじゃこりゃ」な作品ではありますね。

「はずみちゃん」ってかなり頭のおかしくて豊満なボディのOLさんが、その名の通り「はずみ」でエロエロなことをするというマンガです。

・たとえば1話。給湯室でお茶を入れてます。そして、こぼして身体にかけてしまいます。

「こんなに熱くて濡れてるのは、コーフンしたときのアソコみたい」

・と、そこでオナニーショーが開催です。

( ゚д゚)ポカーン

・2話目。デスクワーク中、ペンを落とします。となりの机の男性社員の足元に転がったみたいなので、思わず、男性社員の股間に顔をうずめるようにして探します。そのうち童貞の社員は勃起してしまいます。すると視界が悪いので、フェラで抜きます。「やっと探しやすくなった」だってさ。

( ゚д゚)ポカーン

・まあ、こういう風に、「なりゆきで」「はずみで」というにはあまりにもメタな状況において、イったりイかせたりするという状況が展開していくショートエロギャグマンガです。

・すごいキャラですね。というか、1回6pってのが最後までなじむことなく終わったのが惜しいと思ったり。もうちょっと長くて腰をすえて展開していくほうが作者の芸風にはあってると思う。

・それが証明されるのは後半の短編。この短編が斬新でよろしかったです。

・B級アイドルのおっかけが、今日で最後のステージという彼女にアドバイスする話「アイドル指南」。彼女がいつも笑わない理由ってのはかなり意表をつかれました。というか、マンガで「それ」を表現したのってかなりめずらしくない? 絶対にあると思われるコンプレックスだけどマンガじゃ描かれないところです。

「オッパイもみもみ」もスゲエ話。巨乳だけど、肩はこらない。だけど、オッパイがこるからマッサージがトクイな男子に揉んでくれという女子が登場。こってるオッパイを揉むと「こりっ」って音がするのがおもしろかったな。

「キャパ」もよかったな。小心でキャパが弱い男の彼女が風俗をやってるのを知り、男がオロオロするという。

・この切り口が新鮮な話と、もうひとつの特徴は、なんかモビルスーツみたいながっちりした女体ですかね。モビルスーツってのはちょっと伝わりにくいですかね。肩幅がガンキャノンっぽくガッチリしてて(いや、キャノンはついてないですが)、下半身周りがパーフェクトジオングみたいな女性が多いんですよ。もちろん巨乳だらけで、やわらかそうではあるんですが。

「ミニスカパラダイスオーケストラ」の男性キャラのセリフは多分作者の性向をまんま代弁されてる感じで、やせて細い足なんか興味ねえよとばかり、下半身まわりは太くコンパクトにまとまってるんですよ。で、肩幅はガッチリされてて、なんかバランスがおかしいような気がしますが、彼には理想の体型なんでしょうし、その心情はたやすく汲み取ることができます。同好の士も多いことでしょう。

・ということで、作者はその話つくりのセンスを磨くようにされるとおれ的には吉ではないかと。
(23:21:28)amazon

「転校生 オレのあそこがあいつのアレで」 古泉智浩 (小学館)

・映画の転校生ありますね。あれは男女が入れ替わるやつです。本作は性器だけ入れ替わるのです。そういう話。

・で、このあとの展開がとても古泉智浩クオリティですよ。

・中身が入れ替わってないんですが、性器が入れ替わることで、徐々にそのメンタリティーが入れ替わってくるんですね。チンポがついた女性は男性的に。男性は女性的に。

・これはつまりどういうことなんだろう?と、いろいろと考えてしまいますよ。 人間は性器の指向に支配されてるのか?とかね。

・チンポがついた女性のほうはトモダチとどんどんヤっていきますし、男のほうはどんどん女々しくなっていきます。

・古泉クオリティの真骨頂であるとおれは思ってますが、登場人物がとっても矮小に描かれてます。なんつーか未熟なんですよね。ま、高校生で老成していたりスーパーサイヤ人だったりするワケはなく未熟なのはアタリマエなんですが、そのハンパない徹底的な未熟ぶりがとってもしみるんですよね。しかも、それを男性の身体で女性、その逆と、さらにこっけいにみせてるから倍率ドンで「人間とはちっぽけな生き物であるな」と思わせるんですよ。

・たぶん、そういったことがらみで、古泉のアンチっていそうな気がするんですけどどうでしょう? おれが高校生だったらとってもアンチになって、キライな100の理由を一生懸命挙げていたかもしれない。絵が下手とか、PC仕上げなのは生意気とか。

・本作、そういった話の流れ上、エロシーンがかなり多い。ヘンなリアルさと、逆に同量ほどあると思われる、ファンタジーさのバランスがおもしろいんですよね。それは性器が入れ替わるってネタのみならず、たとえば、義務的に腰を振ってて「しんどいな」って思う女(にチンポがついた人)とか、女のあまりの気持ちよさにおかしくなる男とかね。

・で、そういうのに興奮してる自分がまた嫌いに思う高校生時代だったろうなあと。まあ、ゆがんでいたんですよ。

・だから、本作を読んでの最大の収穫は、「オッサンになってよかったな」ってことだったりかもしれない。本作を100%楽しく読むことができましたからね。あまりに他人事で昔のことすぎるから、「ああ、矮小なものどもが性別が入れ替わっても矮小なままで展開してるな」ということを比較的冷静にみていられる。

・考えてみれば、ふたなりセックスシーンが満載のエロマンガではあるんですけどね。

・そして、古泉マンガの真骨頂の次あたりにスゴイと思うのは、「それから」が匂ってくることですね。マンガ内のドラマが終わっても、彼らの今後は続いていくんだろうなあと思わせるところ。

・あと、最後の最後に男の友達のほうの童貞丸出しがオチを担当するんですが、童貞と、非童貞の他キャラにちがいがないってのがわかるし、そう思えるところは逆に勇気が出るわなあと。

・そうなんだよな。矮小な方々にやさしく明るい光が一筋さしてるように感じられるのが救いというかな、読後感をよくしてると思うね。まあ、一歩踏み込むと、これだけのことも「昔おもしろいことあったんだよ」的なネタ話のひとつになるんだなあという「どうでもいい」感が漂ってるってのまで考えられる。

・ま、つまり結論としてがんばっていこうかなと。そういうことを思ったり。

・売れてるそうですってよ。実用目的が多いんでしょうか。おれ的には前作「死んだ目をした少年」のほうがよかったかな。もうちょっと踏み込めるところがあったんじゃないかと。
(08:55:30)amazon

2006年/4月/3日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ひとりで生きるモン!」 2巻 西炯子 (徳間書店)

・少し取り上げるのが遅れましたが、まだ、おれが知ってる限りじゃ、ここしばらくではもっともおもしろい4コママンガのままです。安心してオススメすることができるのです。

・長編だとコメディ、短編だとシリアスと、作品ごとにちがった顔をもっておられる西炯子氏の4コマはというと、「全部」だったりするのですよ。
・キャラもあるし、ネタもあるし、エッセイもあるし、下品もある、高度な考えオチもある、絵でもオチ、セリフでもオチ、身近なネタもあるし、豪快なのもある。不条理もある。ああ萌えもあるよおお。と、およそ、4コマのバリエーションを考えられるものすべて網羅してる。しかも、それぞれにちゃんとカッコたるスジが通ってる。

・どういう連載形態になってるのか本当によくわからないです。小学館パレット文庫しおりになってるものが多いみたいですが、1回の中で連作風になってるのが2巻の特長かもしれない。

・2p見開きで4回にわたる連作。たとえば、「中島の風」なんてのは4回、16コマのマンガですが、かなり深い内容になってますよ。あらすじがいえるくらい。
・中島という暗いメガネ男が転校してきます。だけど、川井くんは気づくんですよ。彼は小学生のころ自慰を教えてくれた人だと。しかも、かなり一般的なのじゃなくて、なおかつ気持ちいいというもの。そして…

・ちょっと変則的ですが、3回での「さやかの世界」のスケールったらないしね。

・この手の、連作にありがちの「おまえそれ4コマにする意味あんの?」ってストーリー4コマみたいなのじゃなくて、ちゃんとそれぞれが1本として成立してる、オチがある4コマが続いてるんですよ。
・1巻のときも思ったけど、「律儀」といいたくなるほどのちゃんと4コママンガしてるんですよね。しかも、それぞれのネタをきっちり作り上げてますし。そして、それを特筆するほど、ほかの4コマがダメなのが昨今の状況だったりするんですよ。それでも、これほど引き出しが多いマンガは4コマ史上を見渡してもないかもしれない。いしいひさいち氏の「ドーナッツブックス」シリーズくらいかな。あれだ、「夜は千の眼を持つ/上野顕太郎」よりも辞典的ですよ。エンサイクロペディアってますよ。

・あるいは、4コマの分、手塚治虫氏より天才なのかもしれないなあ。すげえよ。なにげに2006年度のベスト候補だったりなあ。いや、マジで。今、この文章を書くにあたってパラパラ見直してその気持ちをさらに強くもったよ。
オススメ
(23:21:37)amazon


・[ケージバン]