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ポトチャリポラパ/コミック/2008年
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2008年/1月
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2008年/1月/28日
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「生活1」福満しげゆき(青林工藝舎)

「1」ってことは2以降も期待していいんでしょうかね? 著者初の長編ストーリーです。

・コンビニでバイトしてる小説家志望がいました。彼は電車内で、喋っているやつのケータイを奪い取り駅のゴミ箱に捨てて逃げ出した男に興味を持ってあとをつけていきます。

・意外だったのはアクション巨編として物語が進行していることで、暴力にひっぱられているようなマンガになってます。

・出会った彼らはひまつぶし半分と正当化半分のように、悪い人を退治しはじめます。たとえばわいせつ教師とか。

・そして、それは雪だるま式に展開していきます。

・出世作ってことになるだろう「僕の小規模な生活」なんかには伺えないスケールの大きさがあります。といっても町内で展開していることなんですが、家庭内だったのが町内を巻き込んでいるというところ分の広がり。

「噂の真相」という雑誌がありました。休刊になる2年くらいまでの間、定期購読していたのですが、そこでの映画コラムの人が、とにかく、三池崇史監督の熱烈なファンで、それにほだされて、そのころの作品はマメにみていました。
・本作の暴力というか、雰囲気はそのころの三池監督の諸作品に通じるところがあります。圧倒的な暴力によって、磁場がゆっくりとゆがんでいくさまというか。

・本作は、これまでの諸作品での主役であり、「僕の小規模な〜」などのエッセイ風コミックにおける作者の分身のようなキャラが主人公ではなく、スターシステムでいうんなら、作者のトモダチのハンサムだけど先の展望がなくて漠然とミュージシャンを目指しているうちに無為に年齢を重ねているフリーター青年(をモデルにした青年)に据えているのですね。ここが作者の「物語」を進行しようという判断を感じます。彼目線のほうが物語がおもしろいからですね。
・もちろん、作者の分身もほぼ準主役としていますけどね。彼は忍者的な武道の達人であるけど、超内省的といういつもの感じです。だから、分身クンが主人公だったら、こういう展開にはならなかったろうな。
・2人の大きなちがいは、女に左右されるってところですかね。主人公は女はわりと「どうでもいい」ってスタンスのようです。分身クンは左右されっぱなし。煩悩の種類がちがうって感じか。

・しかし、こういうときに、彼の作風である、キャラに名前がないってのはけっこうなアクセントなんだなと思います。けっこう大量のキャラが登場します物語上、ややこしいときがありますね。

・女性キャラもメガネっ子が新味ではありますが、彼女の魅力も暴力にうずもれている感があります。

・そいでまた、物語自体も暴力に歪んでいき、崩れかけていく感じがまたなあ。ギャグめかしたり、軽さを出そうとしてますが、暴力に薄められていくんですよ。それだけ目もくらむ圧倒的な暴力。
・これらをどうとらえるかですね。たぶん、奥さんカワイーとかいって「僕の〜」からのファンはかなりキレイに評価が分かれそうな気がします。しかも極端に。

「やっぱり心の旅だよ」でも「カワイコちゃんを2度見る」でも、自伝風の「僕の小規模な失敗」においても、福満氏と暴力はけっこう密接だったりするんですよね。それを全開にした感じがあります。
・本作における、「実現できそう」な、身近な暴力は、作者の電車内でケータイで喋ってるバカや、コンビニ前でたむろってるバカ、つるんで原チャリに乗っているバカへの怒りと、「こうしてやろう」という妄想が表れているようです。それがより現実的で具体的なあたりが彼の真骨頂じゃないかなと。

・おれとしては、福満氏の群集劇はちょっときびしいところがあるなと思いました。おもしろいんだけどさ。つげ義春氏が「三国志」を描けないように、それぞれの資質ってのがあると思うワケで。

・本作、バッドエンドしか想像できないんだけど、1巻では未完のままです。どうなんだろう。もはやおれは福満氏のマンガを読むことができるだけで満足なので本作じゃなくても定期的に新作が出るならそれでOK。よって、未完でもいいかなと。
(18:47)
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2008年/1月/22日
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「おジャ魔神 山田くん!!」2巻 ダイナミック太郎(講談社)

・掲載誌が終わったことによる完結と思いたい2巻目。非常におもしろかった。
・ランプの魔神山田がアンラッキーの少年の願いをかなえるギャグマンガ。

・このあいだダウンタウンの漫才を作る方法なんて文章を読みました。
・実はすごくオーソドックスに作っており、たとえば、テーマを決め、その中に、ギャグを肉付けしていきますが、そのときに、松本氏が、「笑いなれ」している人の「こうくるだろう」という予想をもう1個上回るネタを考えるそうです。

・本作も、次にこうなるって予想を覆すようなネタが多いです。

・月に500円のおこづかいじゃさびしいと思っている少年に、「金のなる木」の鉢植えをプレゼントする。そこに500円玉を植えて次の日に、手が生えている。そして、水をかけたら指が蠢く。その次の日には、「犬神家の一族」よろしく下半身が突き出たものが生えている。しかも、夢だと思い、ドアを閉めてもう1度みたら「ぶっ」っと屁をこく。その後、思いもよらない方向にいきます。

・カップヌードルを食べようと思ったけど1個しかないから魔法で2個にしようと思ったら、カップヌードルの側面に顔が浮かび上がり、身体が生えてきて、斬りかかってくるとかね。

・ダウンタウンの「笑い」の最大のポイントはツッコミの浜田氏です。松本氏のセンスをうまくガイドして、笑いどころを導いてくれます。彼により咀嚼されているのが天下を取れた秘密だろうなと思います。よく「ガキのつかいやあらへんで」のフリートークで「なにいってるかわからへん」みたいな切り落としをするじゃないですか。

・本作も「コミックボンボン」に連載されているという範囲内でのトビ具合が心地いいです。シュールも下ネタもパロディもふり幅をかなりわきまえておりながら、そのスキマを穿つようにして、なおかつ予想を超えた美味いところをついてきます。「コピー魔人形」なんかのシュールと下ネタとナンセンスはかなりのものだと思います。

・次ページの1コマ目で落とすってパターンが多いのは、野中英次氏の「クロマティ高校」からスピンオフした「メカ沢くん」を描いていたこととカンケイあるんでしょうかね。野中氏も次ページ1コマ落としをよくやってますし。

・楽しかったです。作者の次回作もすごく期待してます。
(18:09) *「この「コミック」は参考になりましたか? はい / いいえ」(amazonにリンクしてます)

「どきどき魔女神判!」1巻 八神健(秋田書店)

・誠心誠意、全力で、悪フザケているという感想を持ちました。

・たぶん、ネットほど、現場では話題になっている感じがなかった。現物をあまりみかけなかった、ニンテンドーDSのエロなゲームのコミカライズです。「2」が出るそうですけどね。

・で、コミカライズってるのが、「ななか6/17」の八神健氏ですよ。
・つい先日、ブックオフで「ななか」をそろいで買ったのは、本作を楽しむべしとの神の思し召しかと。

・ゲームのほうはプレイしてないのでどうなのか比較はできませんことを前もってお断り。

・天使ルルといっしょに街のどこかにいるというゴッドマージョを探すというあらすじです。そいで、毎回、少女とくんずほぐれつするという感じのアレです。エロ区分でいうと、「少年誌エロ」でしょうかね。裸はあるけど乳首はナシ。タッチはあるけどそれ以上はナシ。

・最近のそういう少年誌エロというか、非成年コミックのエロにくわしいわけじゃないんですが、おれが詳しかったころ、すなわち、エロマンガを読むほどじゃないけど少年誌のエロを受け入れるようなときにはたくさんあったものを思い出します。
・思い返すと源流は永井豪氏にあるのかと思ったりしました。とくに「けっこう仮面」などは、本作と似たスタンスじゃないかな。パロディあり、毎回ゲスト女性がエライ目に遭ってエロい目に遭うなど。

・パロディたっぷり、お色気たっぷりで、グイグイ突き進んでますね。
・本作のテンションは「昭和」を感じさせたりもします。もちろん、パロの基本は最近ですが、構造やノリ、エロのサジ加減などが。

・ポイントはそれをアノ八神健がやっているということですね。
「ななか6/17」において、主人公ななかがハマっている魔女っ子アニメの設定の細かさからいって、そういうのが好きそうなことが伺えますが、それを「全開」にしてもいいってところでのヨロコビをすごく感じます。たとえるなら、山下達郎氏が全編カバーアルバムを作るって決めたときのような。

・好き勝手やれるからって好き勝手やるような人じゃないことは存じ上げておりまして、それはあまり心配してませんでした。むしろ、暴走具合をみるよりいかに読者のために配慮してセーブしてるかって加減に感心しました。

・たとえば、細かいパロディネタは、読み飛ばしても大丈夫にして、ザックリしたパロディは万人にわかるベタなものに設定しているとかね。
・具体例をだすなら1話目。「ロデオホーキ」で魔女神判をします。ロデオホーキはいわずとしれた電器屋によくあるロデオボーイのギャグですよね。でも、それを出すときはドラえもんの手になっていたり、その前に「超天使ヨーヨー」など「コン・バトラー」なダジャレなど忍び込ませてます。しかも、それらはスルーしやすくしてます。読み飛ばしても話は通じます。
・元ネタを知らないとオモシロさが激減するようなものはやっぱつまんねえですもんね。「知ってれば少し上乗せして楽しい」ってあたりが1番だとは思います。でも、そのディティールをしゃぶりつくしたくなるのもまた人情ではあります。
・そう考えたら、途中でかぶるワックスの缶にあった「秋山印」ってのもなにか意味があるのかしら?とか考えたりもするのですね。

・ま、それらの節制も、回を重ねるごとにパロの濃度が高くなりすぎて、あまり節制してるようにみえなくなってくるのですがね。4話のゲームネタ、5話のボーイズラブネタなんかすごいことになってます。

・もうひとつ思ったのは、絵ですかね。もともと絵でガーンとくるタイプではないんですが、前作になるのかしら?「ふたばの教室」に比べてもサッパリしてきている気がします。
・ ここいらもネタがエロでパロな分、くどさを抑えているのかね。
・あるいは、マンガ家が全員抱えている持病であるところの「キャリアを重ねるにつれ絵から脂が抜けていく病」なのかしら?と思ったり。


いま仕事が楽しいです。


・なんてあとがき解説マンガに書いてありました。楽しんで描いたものを楽しんで読むことができる。シアワセなことではありますね。
(20:31)
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2008年/1月/18日
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「相原コージ実験ギャグ短編集」相原コージ(双葉社)

・ギャグマンガとロックは似ていると思った。
・こんなティーンエイジャーみたいな書き出しどう?
・相原コージ氏のあちこちで書いた実験的な内容のギャグを集めた作品集です。(加筆:これ、以前に出した「なにがおもしろいの?」ってコミックの再編集版らしいです。そういやけっこう見覚えあるわけだ)

・ある時期にいたギャグマンガ家はけっこうな割合で「実験」に手を出しています。メジャーどころでいうなら秋本治氏、赤塚不二夫氏から、吾妻ひでお氏、とり・みき氏に、いがらしみきお氏、いしかわじゅん氏、いしいひさいち氏と、まあ、そうそうたるメンバーのみならず「実験」に手を出しておられます。

・フリーロックとか、ノイズとか、セッションとか、そういうものかなと思うのです。思うサマに音を出してみる。そういう感じで実験ギャグを描くというか。この場合、ギャグが入ってないと文学とか高尚になってしまうのでギャグは必須なのです。

・実験ギャグのほうはそういった欲望のおもむくままということはかえって少なく、表現が先鋭的になった末に浮かび上がってくるようなものではないかと思うのです。ずっと「笑い」について考えるとそうなってくることは想像はつきます。笑いに対する免疫ができてきて、「なにがおかしい」ってサジ加減がわからなくなる。いや、わからなくなるというより、上限と下限を計るためにやるというべきか。


ギャグって破壊だからね。どんどん壊してゆく。
あらゆるものを破壊してきたギャグは、
行き着くところまで行ってしまい、
とうとう破壊すべき対象さえなくしてしまった。


・こうオビにあります。なるほど、その衝動にしたがった作品群があります。

・最大の問題として、実験ギャグは、マンガ全体の表現の広がりなどで、存在する意義はありますが、それに金を出す意味ってあるの?と思ってしまうのです。

・個人差はあると思いますし、教養やなれや知識なんてのもカンケイしてきますが、一般的に先鋭的なのは笑えません。シュールとかムリして笑ってるやついるだろって。

・んでも、そういうのを好む時期ってのが読むほうにもあるのよ。それも自分内のギャグのふり幅をみるために必要なことだと思う。「笑えない」ギャグを必要とするときはあるんだよ。
・必要な時期は個人差はあるから一概にいえないけど、ひとついえるのは、おれはもう完全にないね。卒業でも、もともとなかったでもいいけど、今はないなと。あと、けっこうキャリアの最初期からやっておられましたが、相原コージ氏の「実験」とはもともとセンスが合わなかった。

・そう、実験やシュールだと好みってのが如実に表れるのよね。不思議な現象ではあります。おれはもともと相原氏のシュール方面のセンスは合いませんでした。本作はその「たしかめ」みたいな気持で購入したのです。ああ、やっぱり合わないなと。その確認はできましたので金を損したとは思いません。

・そして読んでわかったのは、ギャグとしてのおもしろさというより、相原氏のマンガの上手さですね。けっこう長いスパンに描かれたものを集めたものですが、絵自体もそうですが、そのギャグのみせ方や、練りこみ方、あと、ブレのない一貫したセンスなどには、感服いたしましたよ。

・個人的には終電車、座っている自分の前にいる酔っ払ったオヤジが今にもゲロを吐きそうな恐怖と戦うホラーマンガ「ゾンゲリア」
・構成が秀逸な「全裸女子格闘技」
・ネコを飼うエッセイコミック「The King of Petネコ」

・この3本が好きかな。スラップスティックものや、擬人化擬態化ネタは上手いけど好きじゃない。

・わかりやすい「実験」してますので、そういうのが読んでみたいムキにはよろしいんじゃないかと。
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2008年/1月/17日
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「この世界の片隅に」上巻 こうの史代(双葉社)

・こうの史代最新作です。麻生久美子&田中麗奈出演の映画「夕凪の街 桜の国」の作者の最新作ですよ。巻末にDVD発売の案内がありましたよ。

・マンガ雑誌を講読しなくなりけっこうな月日が経ってます。読む時間がないからです。だから、完全なコミック派で、本作が現在どういう展開になっているのか知りません。だけど、それを知るのが恐ろしいような気がします。

・ときは昭和19年。戦時中の広島で生まれ育った漁師(ノリを作ってる)の娘・すずは軍艦を作っているところで有名な呉に嫁ぐ。そこでの暮らしぶりを描いた「コメディ」。
・そう、コメディのはずなんですが、なにぶん戦時中。なにぶん広島。なにぶん「夕凪の街〜」の作者ってことで、上巻ではコメディだったのが下巻ではどうなるんだろうか。すずをはじめとして家族の面々は無事じゃろかと、下巻に対してドキドキしてしまうのですね。

・本編に入るまで、すずの幼少時代の短編があり、嫁いだ先での本編と、相変わらず丁寧に「粋を凝らした」なんてコトバを使いたくなるような作風や画風を変えた、バラエティ豊かな作品が続きます。

・おつかいの途中でヒトサライに捕まるってファンタジーめいた「冬の記憶」
・兄と妹と引き潮の海をわたる、炭っぽい、クレパスっぽい、画風の「大潮の頃」
・すずのボーイミーツガールを描いた、クライマックスの後半4Pが圧巻の「波のうさぎ」

・で、本編がはじまってからも、同じですね。「第4回」なんてのはミュージカルになってますし。

・ノスタルジーとかそういう評価はしたくないのです。だって、その時代には生まれてないんだし。ただ、いかなる時代であれ、どのような状況であれ、人々は笑ったり怒ったり悲しんだりして過ごしているのだということは本作を読んでいて強く伝わってきます。

・嫁いだ日から家事をし、朝起きて共同の井戸から水をくみ、配給当番なるものがあり、近所のつきあいもし、会合だと寒いのでよりそって手をすりあわせたり。そういう日々の動きがそこでみてきてスケッチしてきたかのように描いてあるのですね。だからこそ、上記のようなアタリマエのことを思ったりするのです。

・山の上にある嫁ぎ先の段々畑から夫婦で眺める戦艦大和(呉で作られたからね)って絵は、その後のことを知っていても美しいシーンであります。

・戦時中の野草の調理やら、「楠公飯」のレシピなんてのもある。そこいらは「さんさん録」や「長い道」を思い出したりと、舞台を戦時中に移したほがらかマンガのように思えるけど、問題は「この先」なんだよな。

・やっぱり、こうの作品における「ギャグ」は重要ですね。あらためて本作でそれを思いました。この話の展開、悲劇に描くのはわりかしカンタンです。それをたのしく描いているあたりが真骨頂なんですね。
・それは、「夕凪の〜」が顕著です。映画版にはその要素が抜け落ちていて、逆に原作のギャグ部を際立たせていました。それは潤滑であり、救いでもあるのです。
・これはは手塚治虫氏が発明したものかもしれませんね。個人的には手塚治虫氏の最大の功績だと思います。こうの氏もそれを濃厚に受け継いでおられると。ちなみに尾田栄一郎氏なんかもそうじゃないか。それぞれセンスの差とかあるけど。

・とまれ、はやいとこ、下巻を読んでこのドキドキを鎮めたい。
(17:35)
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2008年/1月/12日
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「のらみみ」5巻 原一雄(小学館)

・アニメがはじまっての5巻です。どうせ小学館なら「団地ともお」のほうを先にしてほしかったけど、本作もおもしろいからいいか。

・当初は、やはりアニメ化決定とか、アニメ放映になると、作者のモチベーションも上がり、やっぱり作品の質もあがるのだろうか。すごいおもしろかった。って展開でここに書こうかなと思っていたのです。

・ところが4巻を読む機会があった(ゴミためのような自分の部屋の目につくところに4巻があったってことなんですが)ので、読んでみるとこれが5巻に負けず劣らずおもしろい。
・そう、つまり、「のらみみ」はずっとおもしろいのです。ついでにいうならそれ以前の「麦わらドリル」という短編集もおもしろい。すなわち、原一雄氏はずっとおもしろい。

・これはつまり、「アニメ放映」ということで、おれのほうが色眼鏡がかかっていたんですね。「アニメになる=それはおもしろいから」という外部の評価やフィルターをアテにしていたということです。

・ナジミの書店によると、アニメ化するとアカラサマにちがうらしく、おれしか買ってなかった「らき☆すた」なんてのも、ここでは放映してないにも関わらず、全巻平積みで並べてあるし、アニメやコミックのみならず、大河ドラマがはじまればその原作本。話題のベストセラー。ベタにそういうのは並んでいきます。そして売れていきます。
・なんとなれば、キッズステーションとかのアニメ専門チャンネルで再放送されたものの原作コミックをくれって問い合わせも激増するそうです。すなわち、アニメ化は金になります。そして金になるってことはつまりそれなりの金もかけているということです。たくさんのスタッフも動きます。そのプロジェクトのコアになる原作として選ばれるというのはスゴイことではあるんですよね。

・でも、まあ、それが必ずしもおれにおもしろいということではないのにいつの間にか「アニメ化」の魔力に惑わされていた自分を発見してしまったのでした。

・さて「のらみみ」です。

・小学生のお子さんのいる家庭に居候するキャラクターがいる世界での話。1巻を読んだときからネタがつづくのか?と訝しがってましたが5巻になりました。そして相変わらずおもしろいです。

・5巻では、「魔女っ娘メリィーちゃん」が秀逸。男の子の家に魔女キャラが居候します。でも、小6ともなると、やはりませてきて、お姉さんタイプの魔女っ子が風呂上りにバスタオル1枚だったりにドキドキしたり、「男のくせに魔女っ娘キャラだって」とバカにされたりするんで隠したりするんですよね。そして別れのときが近づきます。キャラは小学生までと決められているから。
・小学生卒業で別れって設定は抜群ですし、実際、いくつもの名作がありますが、それらにヒケをとらない屈指の名作。キャラとしての別れのほかに初恋だったりとか、いろいろな感情が渦巻いてますからね。そして、ラストのセリフな。胸が痛いよ。

・そのほか、掲示板を設置するキャラの話とか、わりにその世界を深めるというか、掘り下げる話が多かったね。

・アニメ化おめでとうございます。おもしろかったです。
(18:14)
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2008年/1月/10日
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「ささめきこと」1巻 いけだたかし(メディアファクトリー)

・百合って流行るのでしょうかね。「BL」が「BL」になったらグーンと加速したみたいに「百合」が「百合」になり、認知度が高まるとグーンときている感触があります。

・ということで百合マンガです。

・優等生の主人公は親友をトモダチとしてではなく好き。そして、そのトモダチも女性を好きになる人だった。ただし相手は主人公ではない。
・という設定の百合ラブストーリーです。

・このマンガがおもしろいのは、百合にもBLにも漂う「耽美」という味付けがなく、「ドタバタ」が混ぜてあることです。唐辛子が混ぜてある辛いアイスクリームみたいなもの。

・ポイントはそのアイスがめっぽう美味いってことです。

・タイトルの「ささめきこと」のささめくってのは「ひそひそ話す」とか「ひそかに噂する」なんて意味で、だれにでも内緒にしておきたいことはあるなんて意味で、実際に、主人公の秘めた想いは伝わらないんですが、まわりには駄々漏れでね。
・最初は、しっとりしてるかと思ったら、後半、百合のカップルやら女装少年が加わり、けっこうすちゃらかしてくるんですよ。そしていわゆる「あずまんがー」な感じで楽しくなるという。

・ときおりグッとくるシーンがあるので、「あずまんが〜」とかなどより受けは広くないんですが、楽しさの質は似てます。というより、「あずまんが大王」において、アノ子らがまったく男っ気がなく女同士でツルんでいるのより、百合同士が集まっているってほうが説得力はありますね。
・しかも、取り合ったりグジュグジュにただれている成年コミック的な展開ではないしね。「親友」からもう1歩踏み込んだ感じか。

・たとえば、いつかするだろうからって「キスの練習しよう」と親友にいわれて親友とのウルトラマンのお面ごしのキスのシーンとかいいですね。

・女子を好きな人で作った「女子部(学校非公認)」での料理会とか、スキがないからモテないとのアドバイスでドジっ子を目指す主人公とかもいいよ。

・ということで、さわやかな、ラブでコメな百合マンガでした。すごくおもしろかったです。
(18:14)
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2008年/1月/8日
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「かむろば村へ」1巻 いがらしみきお(小学館)

・たぶん東北あたりの山間にある小さな村。人口500人未満。そこに青年が1人で引っ越してくる。銀行員で金をみるのがイヤになり、金を使わない自給自足の生活に憧れて。
・そういうことから端を発する、田舎の物語。

・ヒトクセありそうな村民を巻き込んだり巻き込まれたりしながら、物語がつむがれていきます。けして、スローライフでも、のんびりでも、ほのぼのでもない物語。

・今も、いがらし氏は宮城県在住なのかわかりませんが、とにかく、田舎の人々のコミュニケーションってのがすばらしくよく描かれています。どれくらしすばらしいかというと、リアル田舎在住のおれが吐き気を催すほど。そして、そのコミュニケーションで、「金を使わないで生きる」という青年のワガママがなんとなく通るんですよね。

・この甘ったれの20代後半っぽい青年。彼の目線で物語が進行し、彼が結果的にトラブルメーカーとなっていって、おかしなことになっていきます。

・世話焼きで謎が多い村長を中心にいろいろな人に世話を焼かれ、迷惑をかけている感じにムカムカしてきますが、それは多かれ少なかれ田舎のシステムのひとつでもあるんだよなと思ったり。そういうところがリアルなんだよねえ。好意が押し付けられる分、主張を反らされる。そして、村の一員として溶け込まされる。


田舎ってあなたの思っているのとはちがうわよ


・村長の奥さんのセリフです。この世話焼きの感じやモノをくれたりの感じがすごく「あるある」。

・絵も「SINK」あたりからのリアルな頭身の精密な描きこみでして、どこをとっても一筋縄でいかない感じでいながら、いろいろな方向に話が流れが動きながら展開する。

・リアル「ぼのぼの」というとそういう感じはあるかもしれない。「ぼのぼの」って性格を研究してる博士やらによると、性格分類の全種類のキャラが登場するそうです。本作も実にいろいろな人が登場します。男色家の村長。その村長の美人妻。神様。村長のもと愛人の男。村長の子どもを生んだ温泉のオカミ。不思議な能力を持つその子どもなどなど。

・そうな、「ぼのぼの」も田舎ライフを擬人化したものと考えると、これまで「ぼのぼの」が通らなかった、セックスと金の問題に踏み入ってるのも特長なのかもしれない。

・主人公の青年が、村長の美人妻が家に入ったときにずっと尻をみているってシーンがなんだかナマナマしかった。あとで、ツツモタセ的な話もあるし、たしかに、田舎で1人暮らしする男の性生活ってのは考えてしまうよな。
・あと金の問題と。田舎だと金がなくても暮らせるのか?ってあたりが発想の原点なのかしらね。

・田舎描写のリアリティと、各キャラの存在感。そして物語自体の先行き不透明な感じで、全然そんなことはないんですが、なぜか「ツインピークス」を思い出してしまいます。デビッドリンチ監督のテレビドラマですね。

・しかし、本作、はじめていがらしみきお氏のキャラでエロを感じたなあ。前記の妻の人のお尻(ジーパン履いてるけどね)描写なんですが。
(17:55)

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「ガンジョリ いがらしみきおモダンホラー傑作選」いがらしみきお(小学館)

・なぜに小学館よりホラー?と謎が多いタイトルでしたが、「スピリッツ」とかに単発的に書いておられたのですね。あと、スクウエアエニックスからの「忍ペン まん丸」なんかは小学館漫画賞を受賞されておられますし、知らない仲ではないのですね。

・全4編収録です。
・東北版「悪魔のいけにえ」の「ガンジョリ」
・ホラーというより、特撮的な、巨大大仏(たぶん仙台にあるのがモデルだろう)が東京まで歩いていく「観音哀歌」
・自分はたくさんの細胞からできているから大丈夫と、崩壊している家庭をみている小学生の「みんなサイボー」
・その落語のテープを聴いたらもれなく笑いながら死んでいく「ゆうた」

・すごくバラエティに富んだ4編。どれも同じような話はなく、どれも完成度はすごく高いです。ただ、すべて実写映画化したほうが効果的じゃないかと思う作品が多いです。いがらし氏自身の作品解説でもそのように書いておられます。

・本作で共通してるのは、まったくギャグがないことでしょうか。ずっとそのキャリアのほとんどを「笑い」に費やしてきたいがらし氏が「トクイ」とされるギャグをまったく入れてないことです。それは前の長編ホラー「SINK」でもそうでしたが、本作のほうがなぜかそのことがより異様に感じられます。というか、そのことが1番コワイかもしれない。

・あと、実写的というのは、ちゃんと劇場版や長編映画として成立するいろいろな要素が組み込まれているからです。とくに表題作の「ガンジョリ」がそうですがアクションや見せ場なども豊富です。マンガならではの実験的なものはありません。マンガのホラーに収まらない汎用性がある話ばかりです。

・そうか、そういうことでいうと「SINK」はマンガだから成立しているところがまだありましたね。だからこその違和感か。すなわち、映画、Jホラーってえの? それをコミカライズしたかの感触があるのよね。

・いがらし氏はどこにいくのだろう。ずっとそのキャリアを全力疾走されているような感触。
(18:51)
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2008年/1月/2日
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「デュアルジャスティス」1巻 竹山祐右(幻冬舎コミックス)

・化け物がいる世界。そして、正義の味方もいる。しかも2人も。
・ということで、宇宙警察と美少女天使という2つの正義のヒーローと悪の化身がいる世界です。テレビ朝日の日曜日朝8:00と8:30が同時にはじまっているのです。つまり「デュアルジャスティス」と。

・2つのヒーローはお互いに素性を知られてはいけなくて同じ高校の同級生。おしとやかなお嬢様生徒会長が美少女天使で、ケンカっ早い不良が宇宙警察。お互いにお互いを知らないままに正義の味方稼業が続いています。

・なんつーか、ショートギャグの設定みたいです。実際、作者の8ページの短編に肉付けして1本に昇華したものです。

・それっぽい設定にキャラでいて、パロディにとどまらず「独自」を生み出そうとする工夫。それでいて、正義の味方モノのネタのお約束というか、2人の正義の味方が同じ現場に居合わせたときに生じるギャグとかおもしろいですね。

・壁に激突して鼻血が出て、ティッシュを鼻につめている美少女天使なんてなかなかないですよね。

・不良のオチコボレに、お嬢様で生徒会長ってことで、お互い反目していますがヒーローに変身しても反目しているって設定がおもしろいですね。不良なのに品行方正のガチガチ頭の宇宙警察になり、お嬢様はかなり羽目をはずす派手な美少女天使になるって、おたがいに普段抑圧されている性格が変身することで全開になり、その結果、真逆になってなお反目しあうんですよ。

・相変わらず描画を中心に丁寧です。その安定性ゆえにややもすれば古い感じがするのも相変わらずですが、今回、生徒会長キャラがとくにはっちゃけているし、ギャグ寄りになっているので、もうひとつの特徴である地味ってのは相当払拭されてます。会長ったらみんなに派手な活躍をみられ賞賛されることに快楽で身悶えているんだもんね(エロ度はないけどさ)。


「時代の空気は読まない。」


・このオビのコピーを考えた人はかなりうまいです。本書を端的にあらわしてます。今、正義のヒーローが舞台を現代にして悪と戦うという設定を変化球抑え目で展開するには空気を読まない覚悟は必要ではありますね。

・ということで、シリアスでもギャグでもヒーロー変身アクションものとして優秀な作品ですよ。2巻でさらに震える展開だったら謹んでオススメを出させていただきたい、そう思いました。
(17:55)

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「スクぱ!」1巻 いけだじゅん(幻冬舎コミックス)

・えーと、「ヒャッコ/カトウハルアキ」がもっとも近いかな。「あずまんが大王/あずまきよひこ」とか、女子高生が学校生活をエンジョイしているショートコメディコミックス。タイトルは「School Park!」の略なんでしょうかね。

[ポトチャリポラパ/コミック/2007年5月/「ヒャッコ」1巻 カトウハルアキ]

・天木青空と書いて「あまぎそら」と読む女の子とそのトモダチが遊んでいるマンガです。この「遊び」がポイントです。それこそタイトルにかかってくるのですが、学校で公園のように遊ぶワケです(いや自信ないけど)。

・1話目、学校内を舞台として、テニスのラケットとボールでゴルフをしてます。キモは生徒がたくさんいる中でやっているということで、他の生徒たちが絶妙な障害物になることですか。

・3話目はスリッパで卓球。スリッパを愛する兄弟に決闘を申し込まれるのですね。

・で、4話目では走り高飛びの練習、5話目はプール開き前の掃除と、レギュラーキャラが増えつつ、随所でギャグをはさみつつ、学校生活が描かれていくわけです。基本は「遊」です。でも、勉強したりとかいろいろな学校生活が描かれてます。これが最近の放課後専門とか、学校という舞台を「いろいろな女の子が一同に会するベンリな場所」って扱いにしているマンガとはちがいますね。

・特長はそういうわけですごくしっかりしてることでしょうか。とりわけ描画。本業はイラストレーターらしいようです。作者のサイトにCGイラストテクニック集なんて作品のアナウンスがあります。

・話作りのほうも、各キャラの性格付けなんかも、すべてがっしりしてます。堅牢ともうしましょうか。それが長所であり短所であり。

・ひきあいに出した「ヒャッコ」なんかはその逆方位にあり、描画も、ネタも、キャラも、不安定なところがあったりします。だからこそ、次になにが出てくるかわからないスリリングなところがありますが、本作はそういうのも含めて安心なデキになってますね。どう読んでも、ちゃんと「楽しい」という名前の駅に連れていってもらえる感。レールの上感というか。

・まちがってもらっちゃ困るのは、だから、「つまらない」ってことじゃないんですよ。両方おもしろいです。でも、そのおもしろさの質がちがうってことですよ。

・こう不思議なことに、そういう作家が最新のガジェットを用いてもイマイチ新しい感じにならないのはなんだろう? キャラの1人がゲームマニアで、Wiiで遊んだりしてるけど、あまり新しいって感じがしない。

・随所に「昔なつかしい」ってくらいのニオイを感じ取れるのです。センスの問題ですかね。なにか理由があるような気もするんですが。

・そこがいいんだね。書いていてそういう結論になりました。1回のページ数が長いからか、場面転換が多くて、なおかつ、話が延々とつながっているので、全体的にしっとりしているんですね。「しっとり」って表現が正しいかどうかわかりませんが。

・すごく安定したテンポです。実は場面転換って難しいんですよね。そのつど、景色とか描き直さないといけないし。そういうことをしてもテンポを一定にしているってのは地力があるからこそなんでしょう。

「女の子がカワイイ」ってのは、最近じゃデフォルトで、売り文句としては弱いんですが、各キャラが楽しそうにしている度合い、とくに「学校」を楽しんでいるという感じはぬきんでていいですね。今しみじみ考えるに、学校ってのは特殊な場所で、特殊な時期で、それだからこそすごく楽しい場所でいてもいいはずなんですよ。

・あ、そうか。今、ちょっとわかった。青空さんを中心に、各部活にちょっかいだしたり、いろいろなところに顔を出しているって感じが古いんだな。「ハリスの旋風」じゃないですか。「奇面組」じゃないですか。

・万人に楽しいと思われます。水着姿とかそういうところもちゃんとありますし。

・あ、そうか2。各キャラはカワイイけど、「ヒャッコ」とか「バンブーブレード」みたいに、「おれはこの子が好き!」ってお気に入りがいないな。総じてみんな愛しい娘を眺めているイメージ。そうか、端的な弱点が判明した。「萌えない」。そうかそうか。ちょっと弱点だね、これは。

・しかし、幻冬舎コミックというか、WEBマンガの「MANGA」ってところに描いている方はみんなアシスタント歴が長そうなベテランな感じがしますね。
(20:25)
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