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ポトチャリポラパ/コミック/2008年
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2008年/3月
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2008年/3月/31日
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「ミスミソウ」1巻 押切蓮介(ぶんか社)

・オゾマシイと思った。
・コワイマンガは昔から苦手で、積極的に避けてきました。それでもマンガを読んでいる内にいくつかはつかんでしまいます。そして、その中でも読まなければよかったなと思うくらいコワイ目に遭わされるマンガというのはいくつかあります。さらにその中には持っていたくないと思うようなマンガもあります。それはつまり「オゾマシイ」のです。
・本作は10年ぶり、あるいはもっとぶりくらいにそんな気持を思い出させてくれました。

・中学3年3学期。もう卒業となる、田舎に転校してきた少女がイジメに遭う話。第1回のラストにありましたが、イジメの末、少女の家は焼かれ、家族は死に絶えます。

・本作、最大の特徴は物語であることです。それだからこそ、「オゾマシイ」が「グロい」だったり「エグい」だったりしないですむ品が残るのです。

・すべてがボンヤリとしている舞台です。どこでもありそうでどこにもない田舎であり、中学校でありクラスです。あらゆるものがはっきりしてません。田舎の風景も、中学校も、主人公の家も、ほかのキャラも、あえてピントをずらしているかのような描写、断片的にチラリと映すような描写をしています。それはとても「物語」的です。そう、「むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがくらしていました〜」的な。作中にカンケイない設定まで精緻に作り上げている感じというより、その場でこしらえられた感があります。

・それはより恐怖をあおり、そして救いにもなるのです。それが物語のよさですよ。とくに恐怖モノはそれがないとイヤじゃないか。本当にあった話ってのはインパクトがあるけど、コワイとずっと残るじゃないか。夜にトイレにいけずおねしょするじゃないか。

・そんな物語で、暴力と、狂気だけがギラギラと輝いているのです。

・暴力はエスカレートしていくサマを丹念に描いてますが、狂気のほうは最初からあったような、蒸気のように湧き上がったような、あいまいさがあります。ただ、全てのキャラが狂気をはらんでます。というより、狂気を持ち合わせてない人から死んでいきます。たぶん、2巻以降、よりそれが明確になるんじゃないかとにらんでます。

・彼女は殺された家族の復讐のために自ら狂気に足を踏み込む。そして、さらなる惨劇が2巻以降予想されます。

・象徴的な場所がいじめポイントである裏山のゴミ溜めですね。ゴミと水ど泥がタールのようにたまっている池みたいなところ。このぬかるみの感じが本作における狂気を表しているような気がします。

・ビックリするくらいセリフが少ないマンガです。文字がないマンガです。そのことがよりあいまいな「物語」感を浮かび上がらせているような気がします。なおかつ映像的な情報も少ないです。田舎っぽい記号的な風景。最小限な「家」「学校」を表す描写。「引き算」のマンガなんですね。

・そして、その暴力と狂気の渦中にいる、主人公・春花の美しさといったらどうよ。ホラーは映画でもマンガでも「美しい女性」が必須科目だけど、またひとつ歴史に残るような美しさよ。それが1番コワイことかもしれない。

・終わってみてから評価を出したい気がします。そんなことは絶対ないでしょうが、できそこないの「バトルロワイヤル」的な展開にもできますし、そうなったときのシラケ具合は計り知れませんからね。
(17:57)

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「オトノハコ」岩岡ヒサエ(講談社)

・岩岡氏のマンガにわりに共通するテーマとして、「勇気をもって一歩踏み出す」ってのがあると思います。それは、同時発売の「土星マンション」のミツにしてもそうだし、「花ボーロ」「しろいくも」「ゆめの底」の面々もそうですね。

・本作、それがすごくわかりやすい部活動モノ。

・なじめない高校。どこからか聞こえる歌声が気になっている。それは合唱部のものだった。そして、主人公は「この歌が歌いたい」という気持で合唱部に入るのだった。


わたしは今
小さな音の箱を
開けたような
気がする



・なんて1話目の終わりにモノログってます。

・ということで、合唱マンガです。少ない面子ながら、「作り上げる」ヨロコビをラブやコメなんかを交えて全1巻、描かれております。

・アタリマエでいながらアタリマエじゃない、毎日の部活動をきっちり描いているところがまずもって岩岡ヒサエ節です。
・すごく丁寧に「合唱部は毎日こうやって練習している」ってこととか、全国的に同じ傾向な気がしますが、文化部がないがしろにされ、あちこち流浪しているサマなど、すごく丁寧に、かつ、飽きさせずに描いております。
・そしてそんな中、合唱の楽しみなんてのもビシッと。

・各キャラもそれぞれ立たせる場所が適切で、印象に残る「イイコ」ばかりだよな。部長をはじめ要所に「ヘン」なところがあるけど、基本、イイコばかりでねえ。「がんばれ」と素直にいいたくなる感じ。まあ、岩岡マンガのキャラは基本的にそういう方々が多いんですが。

・小さな音の箱がどうなったかは、めいめいが確認してみてください。

オススメ

[Amazon.co.jp: オトノハコ (KCデラックス): 岩岡 ヒサエ: 本]



(18:44)

2008年/3月/27日
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「萌え道」カラスヤサトシ(芳文社)

・安易かもしれないけど、カラスヤ氏は桜玉吉氏のあと丁寧に追いかけてきてますね。
・ということで、「アフタヌーン」の顔、カラスヤサトシ氏が他誌で連載していたものです。

・非4コマの、ルポマンガ。メイド喫茶などの萌え系のお店へ毎月取材にいくというもの。

・これが2005年から約2年間、毎月1店舗取材にいくことができるほどのバリエーションがあることにまずおどろく。おどろくというより衝撃。
・だいたいが取材ってことで、毎月同じような店ってのもダメだから、オモムキのちがったところにいくわけで、たとえば、正統派のメイド喫茶から、女性向けの執事喫茶やら、メイドさんと秋葉原で店外デートができるものとか、コスプレしている居酒屋とか、はてはコミケにもコスプレしていくんですけどね(両手両足に日本酒の空きパックはめてバッファローマンだって)。

・あとがき4コマでも描いておられましたが、すでに萌えを売りにしている店はある程度の固定ファンをつけてきっちりと定着されているのですね。富山にできたメイド喫茶はいつの間にかつぶれてましたが。

「アフタヌーン」でもおなじみの、「その視点の意味はなんだ?」と思うくらいの特殊なカラスヤセンスでもって、メイドさんの前で軽くすべって、そのときの困惑するサマや、漂うヘンな空気を描かせたら天下一品ですね。しかも、その空気を発生させるのが本人ですからね。そういった意味じゃ、エスかエムでいうとエスな性格なんだろうなと思う。

・マンガ家の樹るう氏と乙女ロードを歩くとき、たぶん、1番描いてほしくないであろう、「腐女子」連呼のときに、ホンモノが横に通って恥ずかしくそっぽを向いてるところとかきっちり「おもしろかったこと」としてマンガに残してますからね。

・カラスヤ氏はどこに向かうのだろう? このルポマンガがおもしろかったので余計にそう思いました。
・しかも、後半ほどスムーズになっていったんですよね。いいことではありますが、カラスヤ氏に関してはどうよ?とも思いました。なんか、特有のひっかかりみたいのが希薄になっているというか。

・あと、もうちょっとメイドさんをかわいく描いてあげたほうがよかったんじゃないかしら。そら、取材前はブログに書くけど、取材後は描きにくいわな。「あれがわたし!?」と思うよ。

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「しあわせももりんご」2巻 うさくん(FOX出版)

・最終巻。おしいなあ。もっともっと読みたかったんだが。

・本作で、うさくん氏を知り、その後、成年コミックがつくものも拝見しているのですが、エロの配合で考えると、本作が1番適当なんじゃないかと思われるのです。

・エロマンガとマンガとザックリ分けて考えると、ちょいちょいとお互いの国境を渡る作者がいます。
・それぞれ新天地だと才能を開花させている方、ダメで古巣に戻ったりする方いろいろなケースがあります。
・それは本人のエロ度、非エロ度、もっと大雑把でシビアな「才能」を見誤っているのではないかと考えるわけですよ。

・ま、うさくん氏は両方いけそうで、純粋におれの好みの問題で、本域のエロよりは、「しあわせももりんご」くらいに手加減している童貞の夢をバーニングさせている感じが最高かと思うのです。

・ランジェリータウン(町の名前)を舞台に、超エロガキの桃彦くんと、その幼馴染で貧乳が悩みでいろいろと凶暴なりんごさんと、マスコットのカッパのかっちゃんが活躍するエロバカギャグマンガです。
・くだらないことにかけては相当人後に落ちますので、くだらないものがキライな人は控えるが吉ですが、おっぱいやパンツやエッチなカワイイ女子(「子」に重きをおいてもいいよ)が好きな方は例外かもしれません。

[コミックHOLIC]

Webコミックということを忘れてました。1話目を読むことができますので一見に如かず。ご覧ください。

「めりこみ」ネタとか、学校の校長をいたぶるサドな女子生徒のいたぶり方のバリエーションとか、リンゴさんが好きなすぐに脱ぎたがるビジュアルアイドルとか、ギャグのオリジナリティも相当侮れないものがあります。2ちゃんねるの「おもしろい画像」みたいのにアップされるくらいです。

「成年コミック」に抵触しないラインでのエロネタもあさって方向っぷりもすばらしい。
女子部のコーチになる妄想を止められないスポーツ店の妄想なんかすごいよ。「ピンポン玉4個クチに含んだらレギュラー」だって女の子に含ませて「もう入らない」と苦しんでいたら、お茶碗を差し出し「ここに吐き出すんだ!」ってね。

・ということで、2巻で終了は残念すぎるので、少年画報社とか秋田書店あたりは「しあわせももりんご」ラインの連載をうさくん氏に依頼しましょう。

オススメ

[Amazon.co.jp: しあわせももりんご 2 (2) (FOX COMICS): うさくん: 本]




「恋愛ラボ」1巻 宮原るり(芳文社)

・最近流行ってますよね、百合。
・そうなるとなんでもそれにこじつけたがるってラベリングの癖がでてきて困りますが、本作を百合にするのはちょっとキャラに悪いんじゃないかなと思っています。
・そうジャンルに入れてしまうと崩れてしまうデリケートな女性同士の友情を描いていると思うからです。どっちがタチとかネコとかねえ、ちょっと下品じゃありませんか。ま、ツッコミとボケはあるんですけど。

・欠点がないといわれている女子中学校の美人生徒会長。だけど、恋に恋している感じ。男らしいと評判の隠れファンが多い子に、抱き枕相手にキスの練習をしているところをみられる。それから、誤解が誤解を生み、2人で恋愛の研究をすることになったのですという4コマ。

・いやまあ例のストーリー萌え系4コマね、やっぱヌルイなあと読んでいくうちにがっしりハマっていきました。

・1巻自体が壮大な前フリだったそうですが、1巻においても40pまでと、64pまで2段階の段階があり、その後が本題って感じがします。

・40pまでは、その生徒会長と恋愛指南役の2人がかけあい漫才をしている感じで過ぎていくのです。
・さりげなくハンカチを落としてそれを拾ってもらい親しくなるということを大マジメに練習したりするけど、本番では2人ガチガチに緊張して身を寄せ合っている姿で1回ごちそうさまです。

・40pからはメンバーが増えます。これまでいなかった生徒会役員が増えていきます。そして、64pからは本当の生徒会長が登場してやいのやいのやるわけです。

・そしてボクはエノがすきです。いや、いきなりすきなキャラを書くなんて気持ち悪すぎますね。

・その真の生徒会長の、主人公生徒会長に対するゆがみにゆがんだ乙女心が最高なのです。このキャラを眺められただけでも本作を読んでよかったとココロの底から思うことができるのです。だから、おれにとって本作の価値は64p以降です。

・いわゆる、いじわる役のコをこんな愛らしくかわいらしく描くのは反則じゃないかなと。

・姑息な手、卑怯な手、それらを実行するときのツメの甘さ、会計の適切なツッコミに泣きながら逆ギレするサマ。その会計とのほのかな友情。全体的なお子チャマな感じ、どれもみんなかわいいねえ。

「お前の父ちゃんランジェリー!」

・最後には屋上からメガホンで主人公に直接悪口ですよ。この自滅っぷりにほれぼれします。いや、まあ、この意味は今のところわからないんですが。

・でもって、最終的には5人ともみんなええ子やあって感動があって、壮大な前フリの1巻が終わりますが、この1巻だけでもおなかいっぱいの大満足です。

・ギャグ自体は「ああ」と軽く受け流す感じのいかにも女性のストーリー4コマな、潤滑油の域をでないもので、笑うってことはないし、むしろ、もうちょっと控えたほうがいいんじゃねえとくらいに思いますが、彼女らのキャラを立てた活躍やストーリー展開はすごくよろしかったです。

・もともと、純然たる1本4コマ完結のスタイルが好きなので、ストーリー4コマというジャンルは好きじゃないので、距離を置いていましたが、しばらく経たないうちにすごいことになってきたなあとオノレの勉強不足を恥じいる衝撃の1冊でした。

オススメ


[Amazon.co.jp: 恋愛ラボ 1 (1) (まんがタイムコミックス): 宮原 るり: 本]




2008年/3月/25日
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「侵略!イカ娘」1巻 安部真弘(秋田書店)

・人類侵略するためにイカ娘さんが海から現れましたけど、ノープランだったので、海の家でバイトをしてるという設定からはじまった「おかしな居候」タイプのギャグマンガでゲソ。

・本作、いろいろと作者のほうもノープランなところが多いみたいで、イカの頭みたいな帽子に髪の毛は触手で、イカ墨をクチから吐くことができるという特長のほかは、エラそうだけどヘタレというナマイキ系の居候キャラ。
・あとはもっとキャラというか設定がよくわからないけど、舞台が海の家なので1巻では季節はずっと夏のようです。

「完成度」というコトバは安易に使ってはダメだなと、読んだあと思いましたよ。だって、本作、これまでのつもりで完成度を語ろうとすると、がんばってがんばって「高くはない」としかいえないものですから。

・ただ、本作には抗えない魅力があります。そう、たぶん、多くのファンと同じ意見でしょうが、イカ娘がかわいいってことです。これが不可解なくらいなのです。

[Amazon.co.jp: ロボこみ 4 (4): やぎさわ 景一: 本]

・同じチャンピオンのヌル目のギャグといったらおれはこれを思い出します。完成度という点では相当高い傑作コミックだと思いますが、唯一負けているのが「かわいさ」ですね。

・イカ娘氏の描画というより、トータルな1キャラとしてすごく可愛さが突出してます。
・いわゆる「萌え絵」としての完成度としても、2ちゃんねるで安価で絵を描いている人程度かなと思ったりもするんですよね。いわゆるシンプルな意味での「上手い」ってことではないんですよね。たとえば、村田蓮爾氏のようなのではないです(彼の描いたイカ娘ってちょっとみてみたい)。むしろ、シンプルな描画ではあるのですね。似顔絵などは描きやすそうな。

・推測ですが、イカ娘がかわいいのはその「かわいさ」を錯覚しているからじゃないかと思うのです。

・ふと気がついたのは、海の家という舞台なのに、主要キャラは水着になったり等の露出のサービスがあまりにも少ないマンガであります。一応、イカ娘さんはワンピースの水着で泳ぐなんてシーンもありますが、それは全1巻にとってもわずかですし。背景の海水浴客のほうが露出しているくらいです。これはかなりな逆転現象です。

・これは「イカ娘」が「娘」だからなんですね。彼女はその立ち位置や性格からして、「ケロロ軍曹」のケロロだったり「キテレツ大百科」のコロ助なんですね。他キャラの彼女への扱いもそれに類してますし(一部ライフガードの人がちがいますが、それはドラえもんが恋に落ちる猫的なもんだわな)。

・つまり、少女としてのキャラと、マスコット的なキャラの「かわいい」のダブルパックが故の突出したかわいらしさなんですね。

・本作はエロや過激なギャグなど、その「カワイイ」を阻害する要因をなるべく取り去って、「カワイイ」のみに集中できる気がするんですよね。そう、エロは「カワイイ」のジャマになるんですよ。

・で、本作の「カワイイ」は「萌え」ともまたちがいますよね。「愛らしい」ってのが1番近いでしょうかね。イカ娘さんは愛らしいです。90pで栄子さんのトモダチの早苗さんがイカ娘さんを犬をかわいがるようにほおずりするという「ギャグ」がありますが、その感覚がもっとも近いように思えます。娘というよりペットというか、「のらみみ/原一雄」でいうところの「キャラ」の役割ではあるんですよね。

・それが萌えるドジっ子少女風に描かれているのがミソなんですね。視覚的かわいさと、マンガ全体での「キャラ」のかわいさで、ダブルでカワイイのに、中の空気のユルユルさにそうと気づかずにやられてしまい、すっかり洗脳されているという恐ろしいマンガなのです。あ、洗脳というより侵略か。

・と、たぶん、コジ付けもいいところの後付けのゴリ押し理論なんですけどね。

・ユルユルなマンガってのもウケたのかもしれません。実は最近とても少なくなってるタイプですよね。たとえば、前記の「ケロロ軍曹」にしても、かなり細かな設定がありますよ。本作、海の家の前に「海から来た」とだけいったイカ娘が1人立っているというところからはじまってますからね。細かいところが決まってないにも等しいユルさ。それが偶然のカワイイ配合を生み出した可能性も捨て切れませんがそれは2巻以降わかることでしょうね。

・あまり考えすぎるとロクなことにならないって、本作で教えられた気がします。案ずるより生むが易しですね。

・じゃあ、「イカちゃんのイカスミのみてえ!」とか。

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(21:19)

2008年/3月/22日
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「木造迷宮」アサミ・マート(徳間書店)

・売れない小説家が、住み込みの女中さんと暮らしているほのぼのショートマンガです。時代は昭和30年前後でしょうね。くわしくは書いてないです。

・朴念仁でヘタレだけどやさしい小説家が、やさしくも乙女でかいがいしく家事をする女中さんと、近づいたり離れたりして、もやもやする感じ。

・メイドマンガがあるなら女中マンガもあってもいいじゃないかって発想からはじまってるのかなと読みはじめは思ってましたが、なかなかにどうして、「三丁目の夕日」チックな時代のつつましい女性ってのがかなりヒットしてきます。

・トーンレスで細かくていねいに描かれた背景も昭和をよく再現してますが、それよりもその時代だからいたであろう女性の内面を描いている感じがステキです。

・それが理想でも、ウソでもいいんです。昭和の「いい女」ってこういうことだったよなと。それは平成の「いい女」とはちがいますよ。

・本作に登場する女中ヤイさんの奥ゆかしさや慎ましやかさのなんともいえないよさは「なつかしい」を通り越し、新鮮ですら思います。ま、アケスケに書かせてもらえば「その手があったか」と。

・たとえば、三つ指ついてお出迎えとか、小説で徹夜続きで眠いダンナさまに「せめてヒザマクラくらい」とか、ダンナさまといっしょに食事するなんて恐れ多いと思ったりね。

・ここいら、メイドさんがやってもちょっとおかしいとかあるもんねえ。やっぱり女中さんだからこそビシっとハマるんだよ。

・本作と「侵略!イカ娘/安部真弘」を読んでちょっと思ったこと。ここから本題です。

・エロと萌えのちがい。

・本作に登場する女中ヤイさんはひざの下まである割烹着に身を包んでおり、ビジュアル的なメリハリなどはすごく弱いです。露出しているところは顔。手と足のほんの先だけです。
・でも、上記のとおり、すごくいい感じです。萌えるわけです。

・エロと萌えというのはわりと同居しづらいものだなとは最近とみに思っております。本作のヤイさんにも萌えは感じますが、エロは感じない。

・当初、そういうシーンも用意してありましたが、それよりも捨て犬を飼ってもいいっていったときのヨロコブ顔とか、玄関先からいつまでも笑顔で手を振ってお見送りとかそういうところのほうがいいわけですよ。だんだんとエッチなのはなくなりました。

「イカ娘」のほうも、海の家が舞台で女子ばかり登場しているマンガにしてはビックリするくらい水着が少ないマンガです。

・ぎゅっといろいろ省略して結論づけると、つまり、「エロい」ということ以外で女性を賞賛するコトバとして「萌え」ができたのではないかなとふと思ったわけです。

・それは古来からあるベンリなコトバであったはずの「カワイイ」が、女性によってなんでもかんでも「カワイイ」になった時期とシンクロしてるんじゃないかなと思ったのです。
・小さいものならなんでも「カワイイ」で、ジジイもババアも「カワイイ」となったじゃないですか。そうなったとき、女性を賞賛するコトバとして「カワイイ」の意味はかなり損なわれ、ニュアンスはズレていくわけです。そこで新しいコトバを作る必要に迫られての「萌え」なのかなと思ったのです。

・ま、今や、「萌え」自体もかなり陳腐化してますけどね。

・それはそれとして、ヤイさんは萌えますね。メイドさんより女中さんのほうがいいなあと思ったりもしましたが、カバーをめくったら意見が変わりかけました。

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(18:13)

「みんなのきせき」1巻 内藤曜ノ介(講談社)

・久しぶりに「アフタヌーン」っぽいマンガを読んだなあという感想を。
・買わなくなって久しいのでそれが正しいのかよくわかりませんが、「アフタヌーン」発の新人ってのは何種類かいて、その中でも、サブカル、ニューウェーブ方面のカテゴリーに入る感じでしょうかね。黒田硫黄氏、小路 啓之氏、微妙なところでは、トニーたけざき氏、あさりよしとお氏あたり。そういうラインの方かなっと。

・飛行機事故がありました。神様が奇跡を起こして、3人だけ助けましたが、派遣された神様がドジっ子少女で、師匠が認知症入っていたので、助けられた3人はサルとカッパとブタが混じってしまったのです。そして、それを直すには「カミノニク」という「それなんて四魂のカケラ?」を集めなければならないのです。ということで、現代を舞台にした「西遊記」あるいは「犬夜叉」っぽいものがはじまるのでした。

・作者は「RADIO HEAD」って描いてましたよね。内容など忘れましたが、未完ということと、すごい話だったこと、絵がうまかったことなどあいまって、名前は記憶してましたので、本作を手にとってみたのですが、いろいろな意味でまろやかになった印象。ただ、それは過去の記憶と照らし合わせてますので確かではないです。

・ハッカイとゴクウがブラジル人。サゴジョウが日本のサッカー少女、そして、玄奘にあたるのがツインテールの幼女というメインキャラはそれぞれいい味出しており、サブキャラも味わい深いし、ゲストの「妖怪」もいい。

・今のところは舞台が日本で、あちこちに散った「カミノニク」を探し求めるたびにそのチームで旅をするというドタバタギャグになっております。
・ドジっ子神様がほぼ主人公で大活躍してまして、彼女のかわいさもなかなか侮れません。

・全体的に漂うふざけたノリを受け入れられるかどうかがポイントですかね。ただ、ふざけすぎというワケでもないが、あちこちでちょっとだけ空回ってる気がした。軽スベリっていうかな。そこいらをどうとるか。

・サブカルっぽい絵のわりにギャグやセンスが王道なんですよね。いかにもサブカルなギャグは希薄。オタク受けするネタも。つまり王道なんですよ。爆発してアフロになったりする感じ?

・そこいら、大友克洋氏に似てる。大友氏はオタクが好みそうなネタって実はほとんど使ってなかったもんね。黒田硫黄氏もそうか。でも、2人ともサブカルやニューウェーブのエライ人になってる。そういう発信側にいようとしてるのかしらね。 ・もうちょっといろいろと突き抜けてもいいかなと思いました。まだ、いろいろと読者にコビ売っているまでいわないけど、気遣いがあるようにおみうけしました。もうちょっとはシュミに走ってもいいんじゃないかなと。そこいらで加減してるから、ほんのちょっと軽スベリしてるのかなーと思った。

・おれは気に入りました。ちゃんと終わらせて、それを読むことができるといいなと思いました。2巻も大期待してます。

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(18:25)

「HUNTERxHUNTER」25巻 冨樫義博(集英社)

・長いお休みから復帰してからのHxHです。

・考えてみればありえないプレッシャーの中での再開なワケですよね。日本で1番売れているマンガ雑誌においてかなりな期間、そう、ギャグになるくらいの長い間、穴を開けておいて、「再開する」ということがニュースになるくらいの話題の中の再開です。

・そいで、まあ、そのあらゆる意味でたくさんの「期待」に応えることができている25巻だったとは思います。

・ついに「終わり」がはじまったというオモムキでしょうか。ゴンたちが戦い始めた。サブタイトルが「突入」というのは本当そのとおりです。

・そして、その間にも、様々なサプライズを用意しつつ展開してます。
・ものすげえシンプルな感想として「ごちゃごちゃしてる」とは思いました。
・それでも、そこらかしこでビシッと決めシーンを用意してるのはすごい。ごちゃごちゃしつつも読者の緊張感を損なわせないところは、残念ながら「ONE PEACE」を筆頭に多くのマンガではみかけられない抜きん出ていながらも卓越した技術だと思います。グダグダ感は微塵もないですね。

・と、本作、25巻でもっとも強く思ったのは、「この方式はいい」ということです。そう、単行本が出るタイミングですね。これからどんどんこのシステムをマネしていくといいんじゃないか。

・週刊連載のペースで単行本1巻分まで連載する。そして休載し、次の原稿を書き溜めておく。そして1巻発売と同時に連載再開。もちろん、雑誌では1巻のつづきから。そして、また単行本1冊分の掲載の後、休載。

・今、ビッグネームだけそれをやってますが、新人にもいきなり週刊連載でムリをさせぶっ壊してしまうより、こうやって、単行本1冊づつ動くってメンバーをいくつかでローテーションでまわしたほうが、長持ちするし、いいものを描くことができるんじゃないかな。コミック1冊で1エピソードってほうが、あとあと、文庫化とか、コンビニコミックのときもベンリだろ。

・たとえるなら充電池みたいなもんか。充電してる間にスペアの電池を使うってことよ。
・ペースでいうと、今「ONEPEACE」がだいたい1年で4冊って感じだそうだから、1年2冊を目標にすればいいのか。10週連載、20週休み、10週連載で1年コミック2冊だろ。

・もちろん、休まないでできる人は休まないでもいいですよ。たとえば、「こち亀」などの1話完結の話を描く人とか。

・金のこととか、生活とか、いろいろと難しいところはあると思いますが、いいものはできると思いますけどね。あとあとまでに売れるようなアイテムを作ったほうが出版社もトクじゃねえかなと思ったりしますが。

・それを証明するためにもHxHはよりいっそうがんばってほしいもんだなと思います。

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(18:26)

2008年/3月/21日
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「ネムルバカ」石黒正数(徳間書店)

「それでも町は廻っている」の作者による最新作。

・大学女子寮に住む2人。先輩はミュージシャンになることを夢みては、ルームメイトの後輩とグダグダしてます。

・イマドキの大学生gdgdストーリーかと思いきや、後半、ストーリーが展開してうまく着地して全1巻となっております。

・1番思ったのは大学生が登場しているってこと。先ほどひきあいに出した「それ町」は高校生が出演してます。あと小学生と。

「それ町」の歩鳥さんのような、コウハイはでもそのビジュアルや容姿、そして中身も、大学生のそれになっています。「それ町」のほうもしかり。これ、できている人ってすごく少ないなと、本作を読んで逆に思いました。 ・それこそ、このごろ話題になっているロリータ関連商品の、「小学生にみえるけど成人」じゃないけど、そのビジュアルや中身で、年齢をきちんと描くことができているマンガ家って少ないぞ。
・んまあ、必要がないマンガには描かなくてもいいんだけど、本作にとって、このぬるま湯な学生ライフはすごく必要なところだから、ちゃんと大学生にみえる必要はある。
・ついでにいうなら、「それ町」も高校生であるべきだとは思う。歩鳥さんとか幼すぎるキライもあるけどね。それは「女子高生にしては幼い」ってキャラになっている。


ぬるま湯に頭まで浸かったような、でも当人にはそれなりに切実だったりもする<大学生>という不思議な時間ーー。


・カバー裏の文章ですがね。大学生という人生における特殊な時間ってありますし、本作はすごくよく描いてます。描いてますというより、思い出しました。

・飲んで騒いで、夢みたいなこととシビアな現実の話をいったりきたりして、結局、ゲロ吐いて家で寝ているわけです。

・石黒氏の資質といいますか作風といいますか、随所に「あそび」を感じられるのです。この場合の「あそび」というのは、自動車のハンドルの「あそび」って意味の「あそび」ね。まわしてもタイヤに作用しない可動範囲ですか。
・それは重要なのか、そうじゃないのか判断しにくいエピソードというかネタが、作品全体をつらぬくテーマだったり、重要な小道具だったりするのですね。

・たとえば、田口のクルマのナビ、コウハイの寿司が食べられないエピソード、田口のトモダチのイヤホン、田口にふられるコウハイの独白など、カンケイあるのかないのか微妙なところが多い。それは重要な伏線を見破られないためのカモフラージュでもあり、ギャグでもあり、って「あそび」なんですよね。それらと本作のタイトルのエピソードが同じところにならんでいるかのようにみえるものね。

・その作風は「それ町」でも、以前の短編集でも散見されますが、本作がその「あそび」が実はかなり精緻に練り上げられたモノってことがわかります。

・その「あそび」はまた、日々無為に過ぎていく、金がない、おもしろいことのない、期待もないけど、不安もボンヤリしていてよくみえないって大学生活にすごくマッチしてはいます。

・そして、最終2話でgdgdはなくなります。ま、想像つくだろうから軽くネタバラシすると、彼女がメジャーデビューするって展開です。 ・それは終わるための終わりですが、終わってみると、そこらかしこにあった伏線がキレイにつながって回収されていることを知るのです。タイトルの意味も、「ああなるほど」とわかるのです。

・随所にアオイしクサイ。大学生はわかったようなことをいうぶん、実は高校生までより、余計にアオくてクサイってところありますよね。
・これを石黒氏はどういう思いで描いたのかとか、いわゆるモノを作っているヒトにはどのように映ったのかと考えるとおもしろい。

・いろいろと残る作品です。

オススメ

[Amazon.co.jp: ネムルバカ (リュウコミックス): 石黒 正数: 本]



(19:28)

2008年/3月/16日
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「暴れん坊少納言2」かかし朝浩(ワニブックス)

・2巻です。前巻は巻数表示がなかったので、人気につき続行といったカタチだったのでしょうか。

・かの有名な「枕草子」の作者清少納言の活躍を描いたマンガでございます。

・ポイントは2次元の女性キャラパターンを史実の人物に溶け込ませていることかしら。いわゆる萌えキャラのそれ。
・それぞれにマンガやアニメではおなじみの「設定」が溶かしこまれており親しみやすい。といっても、パロディとか明確なモデル元がいるわけではなく、「ツンデレ」とか、「おっとり」とか、「不思議ちゃん」とか、そういう感じ。

・1巻はあまりピンとこなかった。おれがこれまでかかし氏に求めていたものとちがうのと、それに端を発しいろいろと読み違えていたのかもしれない。
・これまでのかかし氏の作品にあるアナーキーさやエロはかなりなイキオイで封印されている。とくにエロ。少年ジャンプに連載できるほどにまで封印されている。これに物足りなさを感じた。これは正直、今でも少し感じている。本作ならではのノリは生まれてきてますが。
・あとは、上記の説明にある、歴史上の人物を、萌えマンガキャラにあてはめるという歴史アレンジが少し安くみえたんですよね。それはとにもかくにも「風雲児たち/みなもと太郎」を読んでしまっていたからかもしれないし、あのころはかなり深く心酔しておりまして邪道に映ったんですよね。

・そういう自己反省を棚に上げつつ進行します。

・と、2巻はすごくよくなった。

1巻より断然おもしろくなった最大の要因は、紫式部の活躍によるところが大きいかと。これにより、各キャラの立場がより明確になりました。つまり、キャラが立ったわけです。「萌え」を使うマンガにおいて、キャラが起つというのは、すなわち、「パックマン」でいうとパワーエサを食べた状態、「スーパーマリオ」でいうとスターをとったのといっしょですよ。無敵です。

・つーか、ま、紫式部が気に入ったわけですねおれは。

・ちょっと不思議ちゃんで、なんでも小説のネタにして、なおかつ、アタマの回転がよくて、ヒトスジナワでいかない頑固さがあってって、直情径行で猪突猛進の清少納言のライバルとしては申し分ない設定です。なによりかわいいし。
・藤原道長の娘で「鬼姫」と呼ばれるゴスロリ風味の少女のお守り役として、紫式部こと藤原香子が登場して、清少納言と仕えている定子との対決って図式になるわけですよ。

・で、2巻最後の「古式すごろく」対決でそれはスパークするわけです。「カイジ」ばりのすごろく勝負は2巻の終わりを飾る最大の「見せ場」になってます。

「古式すごろく」という大多数の読者がはじめて目にするゲームを紹介し、攻略し、裏ワザ的なウルトラCをも、それぞれのキャラに織り込んで、なおかつドガチャカな展開にするというミゴトさ。

・そいでもって、その前には、清少納言が、その前には紫式部が、それぞれ「萌え」な話を挿入して、感情移入をうながしてますし、そういうところも達者だよなあと思う。

・あと、キャラ付けの一環としてのそれぞれのオリジナルな十二単もおもしろいですね。

・史実とのシンクロ具合がどうってのはよくわかりませんが、そこいらもうまいこと組み込んでいるんだろうなということはわかります。

・ということで1巻のときに「小さくまとまっている」などと書いたことをあやまりたい。それほどにおもしろい2巻でした。

・描き下ろしの歴史教室4コマもおもしろいです。

[Amazon.co.jp: 暴れん坊少納言(2) [ガムコミックスプラス] (ガムコミックスプラス): かかし 朝浩: 本]

(10:39)

「眼鏡なカノジョ」TOBI(フレックスコミックス/ソフトバンククリエイティブ)

・眼鏡をかけた少女による、「BOYS BE…」な話。1話読みきりで全8話。

[Yahoo!コミック]

・IEでしかみることができない(FireFoxだとダメ)なWebコミック連載です。「ヒャッコ」とかもやってますね。

・本作は、カワイイ女の子+眼鏡って完全に割り切っているところがスゴイ。ほかに要素はないといってもいいくらい。

・カワイイ女の子が出てくるマンガなら他にもアホほどあるし、描画でもっとも大事なのはカワイイ女子を描くことができるスキルだと常々思っております。その点ではすごく合格点です。「萌え死ぬ〜」です。

・ポイントは眼鏡をかなり執拗にからめていることですね。全8話、眼鏡の「お見立て」はダテ眼鏡でおなじみの時東ぁみさんが担当しておりますし、各話、眼鏡の特性を活かしたところがポイントになっております。

・眼鏡をはずしたがる彼氏、アイドルが変装のため、眼鏡がなくてみえない恐怖、眼鏡屋の娘にホレたから眼鏡を買う、眼鏡で顔がよくわからない、眼鏡は欠ける、眼鏡は曇る。

・これらにカワイイ女子を融合させて化学反応をしたら大爆発したのが本作というわけだよ。

「こんな女いねえよ」感が強い、二次元に住まうファンタジーな女子が現実へのリンクを果たしたのが眼鏡って点がすごく新鮮。

・ジャストアタマの中だけでできた女性ってんは、実はあまり萌えないんですよね。でも、逆に三次すぎるのもダメ。だから、二次をベースに三次をいかに注入するかが腕のみせどころだと思うのですよ。その橋渡しを果たしているのが本作では眼鏡ということです。そういった意味でかなり強力なアイテムとして他に類をみないくらいメガネを使用してきます。

・そういった意味じゃ、すごく機能的というか機械的というか、そういうところすら感じます。「メガネをつかって萌えさせよう」という企画先行というかね。まあ、あとがき描き下ろしに連載裏話マンガがありますけどさ。

・それはでもすばらしい企画だったなとは思います。

・余談。一見逆説的になりますが、エロマンガは、非エロのものより萌えが減るのです。なぜなら、エロシーンは現実にかなり即してますからね。現実的なモノをいろいろと描くわけですし。そこにファンタジーを注入しすぎると、エロくなくなるという致命的な現象が起こりますからね。だから、エロで萌えるのはすごくデリケートなバランスの上に立っているということがいえます。本作、そういった意味じゃ超非エロです。

・ま、理屈はこのくらいにして、あとは萌え死ぬことにしましょうよ。

・本作に登場する8人の女子はいちいち「チクショーかわいいなあおい」と叫びたくなる方ばかりです。でいて、「眼鏡」以外のポイントが薄いのはすげえなと思います。たとえば、巨乳とかそういうカラダ的な特徴は薄い。

・とくにすげえのは5話かな。いわゆる牛乳瓶の底なメガネを最初から最後まではずさないんですよ。つまり、目がみえない。目を描いてない。それで上記の「チクショー〜」が有効ですからね。

・ま、個人的に「嫁」認定は、メガネが曇るほど赤面症のあがり症の千秋さんかね。ドストレートのツンデレがすばらしいです。

「こんな女いねえよ」と思いつつも夢想せずにいられない男子向けファンタジーとしてすばらしい1冊かと思います。

オススメ

[Amazon.co.jp: 眼鏡なカノジョ (Flex Comix): TOBI: 本]

2008年/3月/14日
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「STAY-ああ 今年の夏も何もなかったわ-」西 炯子(小学館)

・ここしばらくは、わりといいマンガに出会えてますが、なかでも相当高い位置につけているマンガが、2003年発売で、ブックオフで105円で買った本作だったりしますのよ。

・九州のイナカの女子高演劇部5人それぞれの夏物語を連作短編形式で。

・この設定のカンペキさ。何度読んでも(そう、未読コミックがけっこうあるのに3回読み直してます)この設定の神がかっていることに舌をまきます。

・夏休みだから、それぞれ1人1人の「読みきり」の思い出が存在する。文化部だから、運動部とちがい、たまにしか集まらない。
・そいで、1人1人のキャラが徐々にからみだして、6話目で5話目の主人公さんの後日談兼オールスターキャストになるという構成。

・えーと、だから、ドラクエ4パターンよ。最近DSでもでたからわかるでしょ。

・この設定と構成力だけでもすばらしいことに、きっちり立ったキャラが乗っており、全体的にほんのりコメディタッチになっているのですよ。たとえるなら明太高菜マヨネーズ牛丼といったオモムキです。それでいて「全然くどくな〜い」プラスです。

・身長172cmでその男前フェイスのために女子にキャーキャーいわれるコの苦悩「STAY」。ここだけ男ナシ。

・恋焦がれているアイドルが所属している東京の劇団をみに上京するメガネ少女。実はひそかに劇団の入団テストも受けようとしている。そんなとき、コンビニでそのアイドルと出会う「STAR」

・そうとは知らずにデートをしてしまう。そこで「オカズ」の話をする劇団の脚本担当のコの「LETTER」

・幼馴染2人とかわした「カッパをみつけたほうと結婚する」という約束が10年経って果たされる「WATER」

・演劇部部長と顧問の先生の愛が育まれていく「ANSWER」

・そのつづき「ああ今年の夏も何もなかったわ」

・くわ、今、タイトル書いていってわかったけど、タイトルもつながっているのね。韻をふんでいて、表題作からはじまってサブタイトルで終わってるよ。

・各エピソードがまた、徐々に「男女のコトワリ」になっていくのがすごいね。
「女女」「アイドル」「はじめてのデート」「ドリカム状態」「先生と生徒」ってね。

・ほかに、物語の終わりに別の演劇部員、次の回の主人公がさりげなくからんできたりするんですよ。しかも姿を現さないんだよねえ。ここいらのさりげなさ。

・演劇部というのも密接にからんできてるんですよね。小道具として、テーマとして。その5人が表現できるものとはなんだ?的な。ま、演劇練習シーンとかほぼないんですが、逆にそれがよかったり。

・細かいところの配慮も万全で、5人そろって演劇のビデオをみるシーンなんか、それぞれのキャラ付けがひとコマで表現できてるんだよな。5者5様の感動をちゃんと描き分けておられる。

・後口さわやかっす。みんなカワイイし、みんな女子高生として地に足つけている。なんつーか、スーパー女子高とか、逆に幼すぎるだろって感じはなくて、年齢相応の「小娘感」がちゃんとある。ほら、山王さんみたいなエロ方面に達観したようにみえるキャラは「どこが高校生?」と思ったりもするじゃないですか。

・んまあ、田舎の女子高生っぽくちょっとウブ目なのでしょうか。ま、山王さんは「監禁とアナル」をテーマにした自作エロ小説をオカズにしてるそうですが。

[Amazon.co.jp: STAY Vol.1: 柳生みゆ.通山愛里.長谷部瞳.浜田麻希.仲村瑠璃亜.小野明日香.小林且弥.倉貫匡宏.橋本じゅん,古田亘: DVD]
[Amazon.co.jp: STAY Vol.2: 柳生みゆ.通山愛里.長谷部瞳.浜田麻希.仲村瑠璃亜.小野明日香.小林且弥.倉貫匡宏.橋本じゅん,古田亘: DVD]

・こんなよくできたの絶対に映像化すべきだろと思ったらありました。なんだかすごくナットクしつつもこれは絶対に原作のよさを活かしてないよなあと直感した。みてないからなんともいえませんが。

・本作、裏のテーマかもしれないけど、「田舎の夏」の雰囲気が描かれているのが最高だったりします。切れ切れに挿入される背景の「夏」と「田舎」がたまらない。夕方とか星空とかも。田舎の夏のダルな空気がちゃんと漂ってるなあと。

・ということでイマサラすぎてもうしわけないですが、「1冊」のおもしろい本として強力にオススメしますよ。

[Amazon.co.jp: STAYああ今年の夏も何もなかったわ (プチフラワービッグコミックス): 西 炯子: 本]
(19:13)

2008年/3月/9日
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「学園夢探偵獏」鹿島麻耶(講談社)

・まず、カバー裏の「学園エロミステリアス・コメディ」やらオビの「エロ不思議」によって買ったものによる感想であること。そして最大の不満もそこであること。「そんなにエロくねえ!」って。

・絶世の美女、獏さんは、学校で夢分析をして夢探偵といわれてます。その獏さんと極度の人嫌いの男と出会う。毎夜みる男の悪夢を分析しているうちに話は思わぬ方向に流れていく。

・マンガというより、ミステリーのシリーズモノのような1話でございました。このコンビで2作目以降にも持っていけそうな感じ。それをみこんでいろいろな要素や設定を盛り込んでるのでしょうが、1巻で終わるとして評価するなら、残念ながら多くはノイズにもつながってますね。

・主人公の獏さんのかもし出すエキセントリックでミステリアスなところはねらいとしてはよくわかりますし、魅力的なところも多いんですがつかめきれない。


なんかイメージがコロコロ変わる人だなぁ…


・いみじくも、主人公が獏さんをみてそう思ってます。それらも込みで魅力的だったら無問題ですが、そういう風にばかりは思えなかった。

・彼女の行動や言動にはちゃんとした法則性はあるし、設定に忠実に動いているのでしょうが、それらを読者の立場としてナットクすることはできなかった。あともっとサービスカットがほしかった。「エロ」を担当すべきは彼女なワケだからもっとエロ方面の動きや設定を強化すべきだと思った。
・そして、最高に逆説的ですが1話目はじまって早々にオッパイがポロリはダメだとも思った。もっとじらせよ。

・で、主人公になる読者の「目」になる少年がまたいろいろとある人で、そこいらがちょっとややこしいことになっていた。率直に煩雑と思った。

・そう、いろいろと「濃い」んですよね。これが作者の最大の個性だと思う。長所にも短所にもつながる個性。

・1話目が顕著な気がする。とくに導入部。いろいろとインパクトのあるシーンが全開で続き、読んでいてガチャガチャしていてよくわからない。それでいて、ギャグやエロやアクションなどが盛り込まれていて、それぞれを把握するのに時間がかかるし、何回か読み返したよ。しかも、1話目だけじゃわからない伏線も盛りだくさんだし。

・くわえて、いろいろな画法や手法にこっておられてます。そして残念なことにそのすべてがストライクとはいえません。いろいろなことをやっておられる分、ストライクじゃないところが多くなるのも必然ではありますがね。

・ただ、濃度が高いままグーンと最後までいくので、読後の満足感は高いね。それこそ、前記のとおり、人気ミステリーシリーズの栄えある1冊目みたいな。

・総じて、いろいろと惜しいと。セリフを発さない生徒をちゃんとたくさん描いている学園マンガを読んだのは、最近では「まじもじるるも」と本作くらいだもんね。

・しみじみ思います。「抜く」技術ってのも必要なんだなと。スキマにギュウギュウに「オモシロ」を詰め込むと、「すごくおもしろい」にはならないってことですね。

・いい感じに抜けた次回作を期待してます。あと別の意味の抜けるところも次回に盛り込まれるとうれしいですが、そこのところは苦手そうなので多くは望みません。

「男の人って愛をいくつも持っているのねパンチ」がツボでした。

[Amazon.co.jp: 学園夢探偵獏 (アフタヌーンKC): 鹿島 麻耶: 本]

(17:24)

2008年/3月/8日
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「電撃テンジカーズ」1巻 古賀亮一(メディアワークス)

・なぜ、ギャグマンガ家は1度は「西遊記」ネタを書くのだろう?という書き出しを考えてましたが、西遊記ネタを使ってないギャグマンガ家も多いですね失礼。

・古賀亮一氏における西遊記ギャグです。

・あとがきによると今回は今までやってこなかったことをやってみようとして、いろいろと書き出されておりますが、おれ的に1番大きかったのは、すごく「動いている」ことでしょうかね。

・古賀ギャグのキモはコトバのギャグだとは思います。たとえば、アニメにもなった「ニニンがシノブ伝」における音速丸のセリフまわしはいちいち目頭が熱くなるほどの感動モノです。今は思い出せないんですが。

・本作でもそれは健在ですが、それよりも、「西遊記」として旅をしてますし、道中、妖怪との戦いなどもありますし、設定なんかもこってるし、動きのギャグも多いね。それこそ、「ロリコンフェニックス」1巻 松林悟(富士見書房/角川グループパブリッシング)ばりのドタバタが繰り広げられてます。おれの見立てだとこの作品に少なからずの影響を受けていると。影響を受けている作品に逆影響されてるのではないか。

・天竺を目指す、途中妖怪を退治する、ゴクウ、三蔵、ハッカイ、サゴジョウがいるなんてお約束はそのままでして、その分、いろいろな展開が可能なのかもしれませんね。金角銀角や牛魔王とかおなじみのゲスト妖怪も登場しますしね。

・で、独自の設定は、ネットRPGのように、大勢の三蔵ご一行が天竺を目指しているというもので、本作でも三蔵が2人登場する。メガネ巨乳とオッサンでバカ。

・1話で場面が変わるってのもなにげに画期的だし、そういった意味でいろいろな冒険されているけど、クオリティは保ってます。いつもの古賀節ってところがすごい。さすがベテラン。

・ただ、本作もそうだし、他の近作でもそうだけど、どんどんキャラに「萌え」が消えているような気がします。大河連載の「ゲノム」のエルエルさんなんかが顕著ですが、今も昔もそういうシーンはほとんどないのに初期はなんか知らんけどエッチな感じがしたんだよねえ。
・それが致命的ということはないのでかまわないのですが、ちょっとだけ惜しいかな。

・あと、動きが顕著になると、作者のギャグルーツに田村信氏があるのでは?と思ったりもしました。太郎の動きや奇声にそれを色濃く感じました。「できんボーイ」の田村信氏ですよ。

・ということで、金角銀角姉妹がステキでしたね。ひょうたんをとられたからバイトで食っているところとか。

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(18:34)

「美咲ヶ丘ite」1巻 戸田誠二(小学館)

・たぶん、最初の単行本であろう「生きるススメ」以来。
・そして、やや失礼にあたるかもしれないけど、メジャー第1弾といったオモムキがあったので久しぶりに買ってみようと思った。

・東京の美咲ヶ丘という架空の町を舞台に、そこで暮らす方々のオムニバス読みきりドラマ。全6話。

「生きるススメ」では、インディーズというか、もともとのWebマンガのノリで、ページ数や題材もいろいろなものがありました。ショートショートにも達してないスケッチのようなものとか、SF的なものもありました。
・本作はそこいらの部分、「ちゃんとしてる」と思いました。起承転結の起伏があり、あくまで市井の人々の日常に起こったドラマという風にしてます。全部シングルカットできるクオリティといいますかね。メジャーデビューってことにひっかけたかっただけかもしれないですがね。

・息子のためにつきそいでいったのにいつの間にか自分がボクシングジムに通うことになった妻「ボクシングママ」

・歌手を目指して上京する女性「スター」

・ゲーム制作の夢があきらめられずに婚約者に内緒で2つの仕事をかけもつ男「人生ゲーム」

・プロポーズしてきた部下をことわったOLさんの「臆病者」

・本作、2文字のキーワードで語ることができます。それは「ベタ」。

・さて、全6話の1話だけネタバラシさせてもらおうかな。ちょっとだけ深く入りこんでサンプルとして話をさせてもらいますよ。

「マイライフ・ウィズ・ア・ドッグ」
・大家さんに内緒でライカ犬といっしょに暮らしているフリーター女性。
・同じバイト先の男性と仲がよくなって、どんどんと家に帰らなくなったり、バイトをサボりがちになる。
・以前も、同じことでいろいろなものを無くした経歴を持つ。心機一転のために犬を飼ったのに、犬を自分と同じ悲しい思いをさせてしまったと反省する。そして男と別れる。

・本作では、日常に潜む「ベタ」が描かれてます。ベタなわかりやすいあやまちを彼女はまた犯してしまう。そして、男もまた犯してしまう。男もそういったことで地元にいられなくなり引越しをしていたのでした。

・ただ、彼女は前回とちがい、犬がいたので踏みとどまることができた、また無くさずに済んだ、と、どこか寓話的でもありますが、悪循環のベタループから抜け出すことができた。

・本作はそういった意味で、ベタに陥りがちなところ、流されてしまいそうなところから一歩踏み出す尊さを描いている。それは本当に小さな一歩かもしれないけど、尊い一歩です。アームストロング船長かよ。(参照: [ニール・アームストロング - Wikipedia])

・他の作品でもそうです。ボクシングをはじめたいと夫にワガママをいう妻。挫折しそうになる歌手への道をあきらめない女性。ゲームを作りたいと婚約者に告げる男。人の顔色を伺う人生だったので恋愛に対して臆病になっているOLさん。

・ちょっと語弊があるかもしれないけど、そのベタなところをベタに描いてます。もうちょっと洗練したり、さらりと描くこともできそうな気がするし、変わった設定を滑り込ますことでベタからワンクッションおくことなども可能でしょう。さらには、誇張してもっと感動を増すように描くことも可能ですが、あえてベタをベタとして描いてます。

「ベタ」というコトバのチョイスが不味かったでしょうかね。「ありがち」とか「よくある」とかそういったニュアンスの「ベタ」です。

「また、ベタなこといいだしたなあ」ってツッコミのときのベタね。

・ベタだからコワイんですよ。ベタの繰り返しに乗っていたほうがラクだし安全ですが、勇気をもって「NO」と一歩踏みだす。その「あがき」に感動が生じるのです。それは泣けるほどわかりやすいものじゃないです。なぜならベタから出ようとあがいているところだから。
・そしてその「ベタ」は、いわゆる物語におけるベタじゃなくて、現実のベタに即してるから。


平凡という奇跡


・オビにはこうあります。この奇跡は、あくまで静かにそうと気づかれずに発生してます。ベタの中にまみれて。

・似ている人がいそうでいなそうな、不思議な絵もまたこの世界を強調してますね。市井の人を描くのに長けた絵かと。マンガ的でありながらすごくリアルね。絶世の美男美女を描くのは難しいんだろうなとは思いますが。

・個人的には「オムライスはいらない」がすきですね。お菓子を食べたがる小学生の話。で、ヨソの家でもらったりするのね。これ、なんだかしんどいときがあるのよ。そういった感じがすごくわかったわ。そして、小学生は「漢」だったね。モテるね。

「スキエンティア」というSFも連載しているそうで、そっちのほうも楽しみですね。

[Amazon.co.jp: 美咲ヶ丘ite 1 (1) (IKKI COMICS): 戸田 誠二: 本]

(18:36)

2008年/3月/7日
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「まじもじるるも」1巻 渡辺航(講談社)

・魔法少女るるもといっしょに住むことになったエロガキのシバキくん。魔法を使えるチケットを手に持ってるけど、使うと自分の寿命が縮まる。そういった設定を胸にあとはドタバタ学園生活を楽しんでくれたまえ。

・作者は「電車男」のコミカライズをしていたなあということと、「コミックバンチ」で連載していた「ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。」を1巻買って、2巻以降を買いそびれたという情報をもってます。もっとひらたくいうとコミック1冊くらいの知識しかないということです。

・本作は、「ちょっと昔」なのが特長なのかもしれません。
・居候ができるってタイプのマンガからしてちょっとオールドスタイルです。最近のトレンドはちがう環境に主人公がいってはじまるのが多い気がします。
・それでいて、エロが関与するマンガだと、登場人物は主人公以外女性というハーレム状態が多い気がしますが、本作、ちゃんとした男女共学ですので目立つキャラから地味なキャラまで、クラスメイトも盛りだくさんです。 ・くわえて家族も登場。

・背景などもすごく丁寧に描いてあります。こういうわりとアタリマエのことが目につくのは逆に、最近のエロコメをはじめとするマンガのほうがおかしな状況にあるってことでもあるんですよね。とくに背景描写ってのは大きいかもしれません。渡辺氏はすごく律儀に背景を描いてらっしゃいますね。

・たとえば先日読んだ「ロッテのおもちゃ/葉賀ユイ」などは、かなり前記の例にあてはまりません。同列に扱うのもちょっとちがうと思いますが参考までに。

・それでいて無口無表情の魔法少女るるもと、「うる星やつら」の諸星あたるチックな主人公というそれぞれのキャラ設定もその2人の組み合わせも昨今では少ないかもしれない。

・エロコメ的ではありますが、その推進力は弱い気がします。一応毎回その手のシーンは用意してはありますが、最初のころのアカラサマ具合から、徐々に薄らいでいきました。

・それよりも、るるもちゃんの無口でありながらもけなげなところとか、主人公のバカでエロだけどいいやつっぷりに目がいくという、なんつーか、内面というか、1人の人間として「いいやつ」「好き」という感情が芽生えてくる。それは「萌え」じゃない気がする。

・これが1番の「ちょっと昔」かもしれない。こういうとなんだけど、わりと最近のマンガはパーツで好きになるキャラを決めているというかね。 ・巨乳だからいいとか、ツンデレだからとか、そういうんじゃなくてもっと包括的な個人というかね。ま、るるもさんはロリだからいいのかもしれませんが。

・長所にも短所にもつながりやすいところでは、ふり幅が狭いこと。これは前記の1冊読んだ「華咲探偵事務所」でも思ったところです。
・魔法少女がいて、エロガキがいて、学園生活というと、前記のとおり「うる星やつら」的なハチャメチャなドタバタを想像しますが、そこいらは思ったよりはじけてないなとは思いました。これも最初のほうこそ、飛行船が落ちたりあったのですが徐々に地味になっていきます。
・あと、意図的とは思われますが、個性的なほかのキャラをもうひとつからませずに、主人公とるるもを前面に出している感じは、とくに問題はないんですが、もったいないかなと。それは2巻以降アレなのか。

・ま、そんなこんなありますが、「クリスマスバージョンッ」にガイーンとやられてしまう1巻だったのです。

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(19:22)

2008年/3月/6日
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「ロッテのおもちゃ」1巻 葉賀ユイ(メディアワークス)

・コミック新作予定表で、なぜかタイトルに惹かれ、検索し、お試しを読んで、おもしろそうなので購入。サイトがある出版社は立ち読み機能をもっと利用すべきだと思った。

・別の世界の王女様のハーレムの一員として地球の男が再就職するというお話。エロコメというジャンルに入れるには多少苦しいところがあるかもしれない。でも、まあ、エロコメになるなあ。

・王女様のロッテは小学4年生くらい? 主人公の娘と同級生で、男嫌い。跡継ぎの子を授かるためのハーレムであるが、汚い行為はしたくないので、女ばかりの城にとじこもっていたのです。
・だから、伝説の「地球の男」を連れてきたら、そいつの子種を宿ってやってもいいという、「かぐや姫」チックなわがままをいったところ、ラッキーにも地球への道が1千年ぶりに開き、はいコンニチハということになったのです。で、不承不承彼を相手とすることに決めましたと。

・女ばかりの設定で、「チビッコ&ワガママ姫&ツンデレ」に、「巨乳&メイド&エルフ耳」「メガネ&策士&執事&オデコ」「戦士&貧乳&がさつ」などとRPGなファンタジー世界でのキャラもいい感じに取り揃えており、おとなしくてたよりなさそうだけど何かありそうで、なおかつ巨根の主人公とロッテさんを軸に控えめなドタバタで品よく展開していきますが、もう1度いいます。本作はエロコメです。

・なぜか、下半身裸というネタでのエロアプローチが多い。「めんどくさい」という理由でパンツをはかなかったり、粗忽で、下を履いていないことを忘れて人前に出たり、「罰」として裸エプロンだったり、パンツが破れてノーパンだったりとかね。前はさすがに隠れますが、おしりはバンバンでてきます。この下ネタの感じが不思議ですね。エロへのアプローチが特殊な感じがします。「ノーパン」ネタというのは本作に限らず最近多いように思われますが、ノーパンなのが笑いのオチになっているのです。「ノーパン」の定義が不思議。ノーパンだからって笑えないし。何回ノーパンノーパン書いてるんや。

・異世界ネタがあまり活きてないし、描かれてないことと、展開のテンポがユルいのは難点です。2巻ではよくなるといいですね。

・しかし、ロッテさんが10歳くらいって設定からして、大人の判断として、最後まで、すなわち夜伽をするという展開にいくわけはないんですよね。主人公のムスメもいつの間にか城にいることになってるし。町田ひらくとかみかりんのマンガじゃねえんだし成年コミックじゃねえからそういう鬼畜展開は望めないし。ということは、どういった方向に話が展開していくのかなとは思います。主人公の過去とか、娘が生まれた経緯(主人公が12歳のときのコだそうだし)とかが軸になるのかね。

・あと読んだ人向けに私信。やっぱエフィのミルクティーは飲みたいよね。

[Amazon.co.jp: ロッテのおもちゃ! 1 (1) (電撃コミックス): 葉賀 ユイ: 本]

(19:30)

2008年/3月/4日
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「レオナEXPLOSION」琴義弓介(少年画報社)

・3姉妹のいる喫茶店に居候することになったモト幼馴染の主人公。3人ともボインボインになっておりましたが、主人公の同級生で3女のレオナはオッパイを触られると格闘技が強くなるという体質の持ち主でした。あと、おっぱいおっぱい。

・前作(少年画報社においては)「ナエガユル」の地震時パニックアクションからうって変わってスチャラカおっぱいマンガになりましたが大正解ですね。作者自身もあとがきでおっしゃるとおり、やはりおっぱい描いてナンボの作風ですしね。「触乳」なんてタイトルの成年コミックも出してますからね。もう熟れすぎて木から落ちそうになるくらい実ったおっぱいがあちこちでポロリってます。
・氏の描く女体は、重力にかなり忠実で、デッサンというか、かなりその手の資料をあたっておられ、勉強熱心が反映されているようにおみうけします。アルリーなパイオツがリーポロなワケよ。

・ストーリーは破綻まくりですが、アクションもエロを盛り込むことにかけては全話気合入りまくりです。女の子も3姉妹を筆頭にかわいいです。よって「他になにがいる?」状態ではありますね。


・キャットファイトがお好きかどうかはサダカではないのですが、その女体のたしかな存在感はアクションシーンにも活きており、毎回あるファイトシーンも、エロシーン同様に華のある派手なものになっております。

・そういったなんもかんも含めてとくにすばらしかったのが8話目。
・話は語るほどないんですが、後半、延々と長女が着替えるのを主人公がのぞいているというシーン。「こんなことしてていいのか」と一応主人公は葛藤したフリをしつつも着替えを見続けるという。クライマックスは見開きでおっぱいのアップという。で、オッパイみたからって、急に話を進行させて、しかもページ数が足りなくて次号につづくという。

・いちおうそのものずばりのシーンまであるのですが、女体美を讃歌の方で、着替えとか、下着シーンとか、そういうのが多いのがまたなんつーかオノレの欲望に忠実でヨロシイすね。

・成年コミック全開のもいいですが、このレベルで抑えているバカエロコメみたいのも定期的に読みたいところです。

・オッパイ以外の存在感、とくに男性キャラなどの魅力を描くことができたらもっといいと思いました。

[Amazon.co.jp: レオナEXPLOSION (ヤングキングコミックス): 琴義 弓介: 本]

(18:07)

2008年/3月/3日
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「くらしのいずみ」谷川史子(少年画報社)

・11月22日みたいなマンガだなと思った。
・たいしたネタじゃないからサラリと流すと、「いい夫婦の日」ってことでね。本作は「夫婦」しばりの1話完結のオムニバス読みきりマンガ集です。

・作者は少女マンガの方で活躍されている方で、おれははじめてお目にかかります。

・全6話からなるシリーズと、独立した短編として発表されたものも夫婦ものでした。

「いいひと」キャラ図鑑といったオモムキがありますね。少なくとも主役キャラはすべて「いいひと」ね。カギカッコ付なのは、ちょっと自信がないから。

・謎の行動が多い妻に「俺のこと好きなの?」と尋ねる染井さん家。
・水泳のインストラクターの妻から、プラネタリウムで働く夫を横恋慕する小嶋さん家。
・担任と姉が結婚することになった高橋さん家。
・その担任が若いときの矢野さん家ではすでに妻は鬼籍ではじまったりする。
・島岡さん家は、仮面夫婦だったりする。
・冬木さん家は、ダンナが起きたら妻が書おきを残して実家に帰っていたよ。

・と、いろいろな境遇の夫婦が登場しますが「いいひと」でくくることは可能と思います。それぞれがそれぞれを思いやり、愛しているのですよ。それら、激情の怒涛の体液交換みたいなのではなく、やわらかい感じ。
・たとえるなら「ET」という映画の人差し指を合わせる例のやつ。あんなほのかな感じがしますね。

・それでいて確実に感動まで案内してくれます。そこいらのタクミなストーリーテラーっぷり。

・染井さん家の妻の謎の行動や、ガサツな体育会系妻にホレたワケを話す小嶋さんとか、姉と担任の仲を認める瞬間の弟とかねえ。

・絵柄は少女マンガ家さんの白い系の絵です。さっぱりしてきゃしゃでやわらかな誰にも好かれる絵柄です。その絵柄のまんまの内容ではあります。カメラがひいたときのSDの絵がサイコーにすきです。

・ポイントはコミック表紙とタイトルにあると思います。少なくともおれのポイントはそこです。
・タイトルと表紙のレトロな質感と、中のほんわかしてながらもシャープで現代的な絵のギャップがおもしろいなと思った。個人的にタイトルと表紙の絵柄と、そのわりにオビの石田敦子氏の紹介とのちがいに「はて?」と思っていたからです。そこで興味を惹かれました。

・しかし、あとがきマンガで、青年誌に描くから「おいろけ」が必要と思ってらしたのがいいですね。この絵での「おいろけ」って逆にすごくみてみたいなと思ったり。もしかして、少女マンガ期にあるのかしらね。

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(19:25)


・[
ケージバン]