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ポトチャリポラパ/ミュージック/2003年
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ミュージック/2003年/9月
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2002年/9月/15日
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「LIVING/LOVING」カーネーション(CTCR-14261)

・カーネーションの新作アルバム。キャリア10年、通算11枚目。「天国と地獄」時に確立し、不動かと思っていたメンバーから、2人脱退し、3人で作り上げたアルバム。
・先行し3枚出した完全限定のシングルを聞いた限りじゃ、おれはあんまり期待していなかったんだ。

・なんでかよくわからんけど、アーティストって長くやっていると、「シンプルなのがいい」とかいいますよね。あと、「3ピースサイコー!」っての。ベース、ギター、ドラムで3ピースですか。おれはそういうのが気に入らない派ではあるんですね。だから、カーネーションもそういう方向にいくんだなあとガッカリしていたのですよ。

・あと、シンプル路線なら、すでに直江政広氏のソロや、カーネーション名義でも「ムサシノep」なんてのがあるし。なんとなく見えていたんですね。そして、シングルもそういう流れにいるなと、あまりマジメに聞いてはいなかった。ただ、3枚目に出た「OOH! BABY」はスバラシイとは思っていたが。

・そういう凝り固まった偏見を本作1曲目「やるせなく果てしなく」が木っ端微塵に吹き飛ばした。
・前記の、ベース、ギター、ドラムにグロッケンというシンプルな構造のソウルフレイヴァー満点の屈指の名曲。
・そして、前記のシングルも加えての11曲、文句あるかとばかりのラインナップが続く。

・カーネーションとして、1音楽家として、ここにおれは立ってるという強烈な意思表示を感じる。それは、商売としてのカーネーション、創作としてのカーネーション、情熱として、キャリア、そして、1人の音楽ファン、ロックファン、そして、3人になったという不利、すべてを背負い、なおかつ地に足をつけて踏ん張っている。そんな力強さを感じる。それが如実に音として反映されてる。「どうだ!」という声が聞こえてきそうだ。

・もともと、詞も曲も、男前のボーカルも完成されており、その延長としての箱庭ポップスというのがカーネーションの立ち位置みたいなところがあったのだが、その箱庭ポップスという枠をとっぱらい、荒地でもおれらが立てば「カーネーション」とばかりの力強さがある。

・その決意表明は直江氏のみならず、ベースの太田氏、ドラムの矢部氏からも感じられる。力強いグルーブがガッチリ支えてる。実際音数が少なくなったからということもあるが、これほどリズム隊が立ってるカーネーションってのもはじめてかもしれないなあ。

・って、そういうストイックな「ロック」を想像されても困るので、ゲストも呼び多彩な音数を誇る曲もある。ただ、3人の音が立ってる。

・そこにあるのはただ誠実で良質な音のみ。そんな感じですかね。

・カーネーションってアレだろ?って知ったぶりする人にこそ聞いて欲しい傑作となりました。あんたの思ってるカーネーションとはちがうぞ絶対。

・この最小コンボでのソウルアプローチのロックってのは、カーネーションで頂点を迎えたんじゃないかな?たぶんに、こういうアプローチってのは最近妙に動きとしてあるけどさ、ちょっと前ならウルフルズ、スクービードゥとか。

・これだけへヴィローテーションで聞いても飽きない。最近は1回しか聞かないCDがヤマのようにあるというのに。


LOVERS&SISTERS
いろんなことがあるよ
今は気にしないで
目の前にいる人と
何かの約束をしよう


「LOVERS&SISTERS」

・この曲は、脱退した2人へのエール、自分らへのエール、そしてリスナーへの決意表明なのかな。

オススメ
(16:53:36)

2002年/9月/5日
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「MOTHER 1+2 オリジナルサウンドトラック」(TOCT-25125)

・任天堂ゲームボーイアドバンスの「MOTHER 1+2」のサウンドトラックです。こういう細かいことも書くのが売りの親切サイトです。よろしく。

・もともと、このゲームはFCとSFCで出たものをカップリングして移植したものです。制作が糸井重里氏ということで、かなり話題になりましたし、その出来のよさからさらに話題にはなりました。売上にダイレクトに結びつくものでもなかったようですが。多くの人の記憶に残るいいゲームでした。

・さて、音楽も話題になりました。糸井氏と旧知の間柄であるムーンライダーズの鈴木慶一氏が担当です。

・こう、有名人がゲームを手がけるというのはわりに延々と続く慣習で、すでにジャンルといってもいいくらいなものがあります。その多くは、名前を貸してるだけというものから、ちょっとしたかかわりでしたが、「MOTHER」に関しては「丁稚の気分で」くらいに、糸井氏が入れ込んでいたのも、いつまでも輝きを失わない名作になった所以なのかもしれません。

・そして、音楽も実はそうだったのです。たぶん、かなり多くの音楽家がゲーム音楽に携わっています。でも、鈴木慶一氏は任天堂の田中宏和氏と合宿みたいなノリでいっしょにレコードを聞くというところから練りこんでいったのです。田中氏は田中氏で、ファミコンの音源でギターのチョーキング(テクのひとつですね)を再現して、そのすごさをわかってもらえる人がいないと嘆いていたことで、この2人によるミラクルが炸裂したのが「MOTHER」であり「MOTHER2」だったりするのです。

・FC版「MOTHER」もSFC版「MOTHER2」もそれぞれサントラは発売されました。ムーンライダーズファンは、メンバーのクレジットがついてるなら、しば漬けでも買うような人が多いですからね(含むおれ)。

・このFC版は、ボーカルを収録した、歌モノとしてよみがえりました。これを聞いて、当時、一時休止中だったムーンライダーズのメンバーの1人が鈴木慶一氏に「これはソロアルバムを作ったも同じだからムーンライダーズを復活しよう」と進言しにきたくらいのデキです。有名外国アーティストを多用して、贅沢なポップスアルバムとして評価は高いです。

・いっぽう、SFC版のほうは、SFCの音源のまんまというイメージがあり、当時はガッカリしたものです。

・「ゲーム音楽」という本質をこの2枚はかなりわかりやすく表わしてると思うのですよ。ああ、もっと正確に書かないとダメだな。「ゲーム音楽を商品化する」ですね。
・つまり、ゲーム内で使われている音楽をサントラとして商品とする場合、FC版かSFC版になるんですね。「音楽」にしてしまうのか、「音楽」とみなしてそのまま使うか。

・そりゃ、ゲーム音楽にしても音楽であるからして、いかようにも流用可能だし、ゲーム機から流れるそのまんまも、立派な音楽ですよ。しかも、今だと、メディアがCDだのDVDであるからして、理屈では世の中に流れているすべての音をゲーム音楽として使えるし、実際使われている。

・で、やっと本作の話ができる。本作はその流れに1石を投じた、変り種になるのです。

・これ、おれも最初カンチガイしてましたが、前記のサントラを集めたベストじゃないんですよ?ゲーム自体はそういう2in1な方式でありますが、本作はバリバリの新録です。

・ちょうど位置的には、「1」のアレンジと「2」のそのまんまの中間に位置する形です。だから、「1+2」の「+」になるわけですね。よくわかりませんが。

・「1」と「2」のゲーム内の音をサマザマな楽器を使って再現しているインストアルバムになってます。
・そして、ここで死ぬほど重要なことは、その姿勢です。

・本作は、EXPOというユニットのメンバーであり、自身も数多くゲーム音楽を手がけて(「玉繭物語」とか、「びっくりマウス」とか)いらっしゃる、松前公高氏が、インスタントシトロンの片岡知子氏、元ハイポジで栗コーダーカルテット等幅広い活躍をされている近藤研二氏の協力を経て、作りあげたものです。当然のごとく、糸井重里氏や鈴木慶一氏もスーパーバイザーとして参加されてますし、プロデューサーは田中宏和氏です。

・姿勢といいました。本作はその原版であるゲーム内の音楽に最大限のリスペクトを持って、その音を再現しようとしてるのです。FCの3音しか出せない不自由な状況で生み出された音を、今のテクノロジーや、生楽器の芳醇な音を使ってリッチに飾り立てようという従来の方法論じゃなく、そのFCから流れ、プレイヤーが感じた「空気」を再現しよう。そして、それをどのオーディオ装置で聞いても遜色ないものにしようとの思いが非常に強く感じられます。

・だから、あるいは完コピということがいえるかもしれません。

・基本的には、シンセやコンピュータを多用してる、インストという見方ができるんでしょうが、「MOTHER」を遊んだ人には必ずや「!」って思うものがあると確信してます。

・そして、そのシンセやコンピュータを多用しているインストとしてみたとしても、これが生音重視なので(けっこう生音多いです)いいですよ。たぶん、近いうちに、テレビのバラエティやワイドショーでドカドカ使われると思います。だって、キャッチーでさわやかだもん。

・「1」のボーカル抜きのアレンジバージョンも、「2」のアレンジバージョンも実ははじめてのものなのですね。「1」と「2」のサントラだと、「1」がよかったのですが、本作「1+2」で聞くことのできる「2」のアレンジバージョンがかなりいいです。「1」の「pollyanna」のイントロを再現しつつ、ちがう曲になる、「タイムボカン」シリーズにおけるところの、「それゆけガイコッツ」と「天才ドロンボー」くらいのちがい(だれがどれだけわかるというのか?)最初の街である「オネットのテーマ」の片岡知子バージョンがすばらしい。インスタントシトロンの音だなあ。ギターの音色がまた。つづく近藤氏による「ツーソンのテーマ」もいい。「ビコーズアイラブユー」という曲は、まんま栗コーダーカルテットですよ。「あずまんが大王」ののアニメサントラのファンも大OK。
・もちろん、松前氏もいい仕事をされてます。

・2の最後のクレジットロールでかかる曲。「スマイル アンド ティアーズ」。
・この曲は、糸井氏による歌詞もあり、「大人達の半分も生きてはいないけれど  思い出の数ならばリュックに一杯さ」という感じの。
・これ、「2」のサントラのとき、誰かが歌ったバージョンあるのかな?と思ったけど、今になって、「これを歌うのは、このゲームを終えたすべてのプレイヤーであり、誰かが歌ったのを聞くべきではない」ということに本作「1+2」を聞いて気づきました。当然、「1+2」も、肉声は鈴木慶一氏の「I miss you」だけです。しかも、かなり完成された、このまま浜崎あゆみが歌ってもおかしくないくらいピシっと作ったものです。

・そんなこんなでMOTHERについてたくさん考えさせてくれるサントラです。当然、思い出にもたっぷり浸れます。まあ、GBA版買えよ!って話なんですが。ぼくはもう大人なのでRPGに費やす時間はないんだ。「3」はやるけどさ。

オススメ
(17:43:02)


sukekyo@violet.plala.or.jpケージバン