よく巷には
”人間の勝手で避妊や去勢をするなんて奢りだ”
とかいうようなことをおっしゃる方がいるのですが、犬に限らずペットと一緒に生活する以上は、「どう共存しあうか」とか「どう互いに責任を果たすか」根本的な問題はそういうことなんじゃないかなと私は思うわけです。

うちのぱるは生物学的には「雄」です。だから飼えない子犬が生まれる云々ということはありませんでしたが、でもそういうこと以前に雄であるが故にかなりやっかな問題がありました。

うちに来た当初のぱるは、これがまたとんでもなく扱いにくい犬でした。躾らしい躾もされていないから、まず家の中で阻喪をしまくる。その上、興奮が単純に性欲に結びついているようで、足なんかにサカられる位ならいいんですがすぐに行動のコントロールが効かなって少し怒られようものならぽーんとボルテージが上がってすごい勢いで部屋かけずり回って、そこらへんにあるクッションなどに八つ当たり散らして噛みつくし、それをやめさせようとすると、今度は人間様に向かって牙をむいて刃向かうんですから始末が悪い。 それはもう「やんちゃ」などというカワイイレベルではなく、まさに暴れん坊将軍。これじゃあ、躾し直そうとしてもままなりません。

初めて犬を飼う上にこんな言うこと聞かないパワー・アニマルな犬種を扱うなんて・・・・・・。例えば我が家の平均年齢がもう15、6歳ほど若ければもしかしたら頑張れたかもしれませんが、持ちこたえるには少々家全体の平均年齢が高めだったのと(!)とにかく、犬を飼うという経験が圧倒的に不足していたのです。 しかし、いったん引き取ってしまった以上お返しするわけにもいかないし、まさか保健所なんてとんでもないし。そうなるとヤツを暴走たらしめている「根源」を取り除いてやる、つまり去勢手術に踏み切ることがのが一緒にやっていくのに一番近道な方法なんじゃないのかなと、いささか短絡的ではありますが私は思ったのです。勿論去勢したからと言性格ががらりと変わる保証もありませんでしたが、理論上は攻撃性が激減して興奮してすぐにサカらなくなる分、躾はしやすくなるはずだと考えたのです。

丁度この時、近所に新しく獣医さんが開業し、ぱるは現在非常に!お世話になっているそのM先生のところへ通い始めていました。(余談だが、おまわりさんが”病気はないですよ”とか言ってた割には内臓の何とか言う値が高いわ、胸におできがあって、簡単だったが手術したりで出だしから病院通いで結構大変だった。)M先生という方は、開業間もない若い先生ということもあるのか、とても丁寧な診療をしていただける方だったので、私は先生に去勢手術を受けさせたい旨を母に相談して貰ったところ、
”全身麻酔の手術なので100%安全な手術という訳ではないですよ”
と言われてしまい、正直私は、TVでモンゴルの遊牧民の人達が、たいした設備もないところで馬の去勢をやっているのを見ていた麻酔してちょちょいと簡単にキン○マ取る位に思っていたので、それを聞いてちょっとひいてしまいました。これには当然父母も躊躇しました。(後で知ったが、犬猫などは体が小さいので麻酔の量の調節が結構難しいらしい。ショックで心臓が止まりかける事もあるそうです)が、これ以上ぱるの暴君ぶりに根気良く付き合うのもみんな限界だったので、ほんとに祈るような気持ちで思いきって手術に踏み切ったのですが幸い、大きな事故も起こらず経過も大変順調でした。

果たしてぱるの様子はどうなったかというと。・・・・・・これがまた見違えるほど大人しくなりました。自分の要求が通らないからといってすぐにキレるような真似はせず結果、根気良く言って聞かせればだんだんと阻喪もしなくなり(つまり、もよおしたら知らせるようになった。)ついには簡単な訓練にならちゃんと耳かたむけてついてくるようになったのです。そう、自慢じゃありませんが、我が家に来て”伏せ”が出来るようになったんです。〜もう大人なのにですよ!?これは感激でしたね。(←犬バカ(汗)

そんな訳でお蔭様で、あの嵐のような数週間が、幻だったのかと思えるくらいに今は愉快に過ごしております。もしかして去勢せずにもう少し頑張ってみても同じ結果だったのかもしれませんが、でもこれで良かったんだと思います。

とまあ、うちは雄犬でしたので問題といってもこんな程度ですが、でも雌犬を飼っているお宅の話は、もうちょっと複雑かとは思います。

雌の場合、発情期といっても生理が来るくらいで、目立って暴れるということもないみたいですから、ようは雄が来ないよう気を付けてさえいればいいということにはなりますが、……それでも不本意に身ごもってしまった場合は困りますよね。かといってただ本人達は動物の本能として生んだ子犬や子猫を、やっかいもの扱いしてしまうのって・・・・・・。(汗)

だからお互い、平穏無事に過ごすということには、
”繁殖をさせる予定のない犬はあらかじめ避妊と去勢をする”
ということも含まれるということではないかなと私は考えます。
ドイツなどの一部欧米国の考え方からいけば、この考え方は犬猫のオーナーとして最低限のマナーだそうです。特に犬は公園で放していても雄犬は雌犬を見ても向かっていくことはしないし、攻撃性が減ってコントロールも効きやすくなるからだそうです。

ただ、前述の通り危険がまったく無いわけではありません。ホストファミリーの中には病気でもない彼らのお腹にメスを入れて、命を危険にさらすことにどうしても抵抗がある、という方もいらっしゃるでしょうから、そういう方はとにかく徹底した管理で代替すれば良いと思います。何が何でもこうしなさい、とはきっと誰も言えませんし。ようは、所詮犬猫とはいえ一個の命を預かっているのだという、責任感の問題でしょう。

犬以外に例えば近所の野良猫が増えつづけて問題になっているという話も聞きますが、こちらは最近”地域猫”という考え方で民間団体が支援をしているところが出てきていますね。これは野良猫がその一代に限ってその地域で去勢や避妊手術をされた上で、天寿をまっとうするまで地域ぐるみで面倒をみるというネットワークです。これは無分別にエサを与えて数を増やし、結局は野良猫の存在に好意的でない人達とのトラブルになることを考えたら、かなり進歩的な共生方法だと思います。詳しくはこちら  

人間の都合で、生き物の生殖をコントロールする。確かに傲慢かもしれません。でもこうも言えるんですよね。そもそもがこっちの都合で、ここまで改良され愛玩されるようになってしまった犬猫は、もう人間とまるっきり関係のない場所で生きていくことは出来ないんです。そうしたらせめてできるだけお互いが平穏無事に過ごせるように考えなくてはいけないんだと。 ・・・・・・近代的な犬猫のオーナーとして歴史の浅い日本人ですが、ただただ愛玩するだけでなく、そろそろこういう考え方になっていかないといけないのではないかなと私はそう思います。


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