人のものを勝手に見るのはやめようね。
確かにラベルには「遼」と書いてあった。
 日付け入り。いつも思うのだがマメマメしくキチンと整頓されているラベルが貼ってあるビデオを入れたはずなんだが、画面に見入りながら、秀と当麻は当惑した。
 いつものとおり勝手に押しかけ、何気にテーブルを見れば、無造作に置いてあったビデオを見れば「遼」とラベリングされていたので、好奇心全開でセット再生と迷うことなく実行したが、この画面は!何処が遼なんだろうか?
 暗っぽい画面の脇にはどこか人を脅かすように「怪奇!○○○」とか書いてあり、それを助長させるようなおどろおどろしいBGMが鳴っている。
 この時期一気に増える怪奇特集とかいうやつ?
 二人して首を傾げた。
「間違えて上書きしたとか?」
 秀が言った。
「あいつに限って、遼関係のものそんなドジな事するか?」
 いやするはずがない。きっぱりと、無言でお互い顔を見合わせて頷きあった。
「君たち」
 冷ややかな声が二人に降った。
 当然、二人は硬直して、恐る恐る伸を見た。眉が顰められていた。それでも、秀と当麻の前にはお茶のセットが並んだあたり声ほどは怒っていないということのようだ。まあ何にせよ、こんな無造作に置きっぱなしだった事を顔には出さないが反省をしている事だろう。
 気が付けばふたりが、懲りもせずにちょっかい出さないはずもない。
「あのさ、これって?何処が遼?」
 画面は暗闇を写し、廃墟が如何にも居ますとばかりにそそり立っている。
 そのBGMに煽られたように聞き返した秀の口調もそれっぽい。
 伸の顔が何に呆れたのか苦笑に歪んだ。
「それ、遼が仕事で撮影したものだよ」
 ガバと二人そろって画面を見た。まだ煽るように音楽が鳴り響き、スタジオの進行役たちが、悲鳴を上げていた。
 もっとも、画面は確かにおどろおどろしく廃墟が映っているが。別段、何か映っているとは言えない場面だった。
「へ〜、こういう仕事もしてるんだ」
 秀が言った。遼が撮ったと思うと興味も湧く。
「もしかして、お前、遼が仕事で撮影したやつ全部エアーチェックしてるのか」
 そっちのほうが恐ろしい、とでも言わんばかりの口調で当麻が訊ねた。は、そういえばと秀も恐ろしい考えになって伸を見た。
「あたりまえじゃない」
 きっぱり、言い切ってにっこりといやどちらかと言えばニヤリと伸は笑った。
 じゃあ、あの綺麗に並んでいるビデオの類って全部そう…。
 今、映っている画面よりもそちらの方が怖いと秀と当麻は背筋が寒くなった。
 

一応、うちの真田さん設定としてテレビカメラマンなので、伸は絶対に遼の目から見た画像は欲しかろうと常々思っていたので、こんな話しに…そううちの毛利さんただの公認ストーカー。伸ファンに怒られそうだ。でもこんなものだと思わないかい?

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