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サクラ大百科 第七巻

Volume 7

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6/6 収録


渾身の書き下ろし投稿作品
・帝国歌劇団は花組以外にも 
存在するの?

まさるな蒼紫さんのご執筆


大神:・・・さくらくん、俺、今まで気にも留めなかったんだけど・・・。
さくら:ど、どうしたんですか、大神さん? 深刻そうな顔して・・・。
大神:俺はこの一年間、ずっと花組のキップをもぎり続けてきた・・・ていうか、花組以外の公演のキップをもぎったことが一度もないんだ!
さくら:お、大神さん?
大神:騒ぐんだ・・・モギリの血が・・・。もっといろんなキップをもぎりたい・・・他の組のキップは無いのかって。
さくら:・・・・・。
大神:どうしてだ!? なんで米田支配人は、俺に他の組のモギリをやらせてくれないんだ!? 俺はモギリとして、そんなに信用されてないのか・・・?
紅蘭:それはちがうで、大神はん!
さくら:こ、紅蘭?
紅蘭:この帝劇には、そもそも花組しかおらへん。それは花組一の古株、マリアはんも認めてはる紛れもない事実や!
マリア:紅蘭の言う通りです、隊長。隊長もその事はご存じのはずでは?
大神:あ、ああ、知っていたさ・・・。でも、せめて、 《この帝劇でも他の組の公演は行われている。だからいつの日かそのキップをもぎれる日が必ずやって来る・・・》 と自分に言い聞かせでもしなければ、このどうしようもない衝動を抑える事ができなかったんだ・・・。
さくら:大神さん・・・。
大神:第一、他の組が無いんだったら「帝国歌劇団・花組」なんて、いちいち分類しなくても「帝国歌劇団」でよさそうなもんじゃないか!
すみれ:問題はそこですわ。
マリア:すみれ!
すみれ:わざわざ、わたくし達の事を花組と呼ぶからには、他の組も存在するはず・・・・・でも帝劇には花組しか存在しない・・・と、なれば答えは一つ。
紅蘭:そうか! 帝劇以外の劇場で公演をしとるっちゅうわけやな!
すみれ:そういう事ですわ。
さくら:じゃあ、そこに行けば、大神さんの欲求不満も解消されるんですね・・・あっ、でも、どうやってその場所を見つけるんですか? 帝都だけでも数え切れないくらいの劇場があるんですよ。
すみれ:それについては心配ご無用。もうすぐカンナさんがいい物を持ってきてくださいますわ・・・ほら来た。
カンナ:よぉ、すみれ、みんな!
すみれ:カンナさん、例の物は?
カンナ:おう、借りてきたぜ。支配人にしては結構あっさりしてたな。これだろ? 「帝国華撃団・系譜」。
大神:華撃団? 歌劇団の間違いじゃないのか?
カンナ:そうだぜ、あたいもそいつが気になってたんだ。どういうつもりだよ、すみれ?
すみれ:おーっほっほっほっほっほ、これだから庶民と言うものは・・・頭の回転が遅くていやなのですわ。
カンナ:な、なんだとぉ!?
紅蘭:まぁまぁ、カンナはん、ここは抑えて。で、すみれはん、一体どういう事ですのん?
すみれ:よろしいですわ。教えて差し上げましょう。花組以外の歌劇団は、そもそもその存在自体があやふや・・・そんなものの資料など、いくら探しても見付かるはずがありませんわ。だから・・・
マリア:それならば、その所在が比較的はっきりしている華撃団の方からアプローチしてみようと言うわけね。
すみれ:さすがはマリアさんですわね。どこぞのデカ女とは頭の構造からして違いますわ。
カンナ:・・・けっ、言ってろバカ。おら、隊長、何ボサッとしてんだ! てめえの為にやってんだろ。さっさと調べろよ・・・ほらっ!
大神:あ、ああ、ごめん。え・・・と・・・・・・?
さくら:どうしたんですか、大神さん? ・・・あら、この本、外国の言葉で書かれてるわ。それも見たこともない・・・。
紅蘭:いいや、これは外国語ちゃうで。暗号や。大神はん、士官学校で習わらへんかったんですのん?
大神:い、いや、確かに暗号についても少しは学んだけど、あくまで基本的な事だけだし・・・実際に解読したことは1度もないんだ。
紅蘭:はぁ、情けないなぁ・・・あんた、ほんまに首席やったんか?
大神:・・・・・。
すみれ:それにしても、これではお手上げですわ。まったく米田のクソジジィ・・・どうせ読めないと分かっていたから、簡単に渡したのですわね。
マリア:私が読めるわよ。
大神:・・・え?
紅蘭:ほんまか、マリアはん!?
マリア:ええ。昔、ロシアにいた頃よくやったから・・・。でも、これはかなり複雑な暗号の様ね。私でも、何とか読めるのは各組の名称とその見出しぐらい・・・。
すみれ:それで十分ですわ。マリアさん、さすがに花組の元隊長だけありますわね。
大神:・・・・・。
さくら:じ、じゃあマリアさん、早速お願いできますか? まずは風組あたりから・・・。
紅蘭:ちょい待ち! 風組の事ならウチがよう知っとる。あそこの隊員は、いつもは花やしきの従業員として働いとるはずやから、劇団の可能性はないで。
カンナ:そうか・・・じゃあ、次は月組ってとこか?
マリア:月組ね。え・・・と・・・隠密行動部隊・月組。主な任務は偵察、情報収集、敵地への潜入、ほか・・・平時は帝撃施設の管理、整備、清掃等を行っている 。
すみれ:これはハズレですわね。それじゃあ、夢組はどうかしら?
マリア:霊能部隊・夢組。主な任務は霊視による戦況分析、予知・過去視による戦術サポート。平時はお祓いやお清め、お守りの発行等を行っている・・・これも違う様ね。すると残るのは・・・。
大神:雪組か!
マリア:主な任務は、豪雨、強風、積雪など、通常の部隊が行動不能となる局面において作戦を遂行すること。その結成は花組よりも新しく、東北に拠点を置いている・・・これだわ!
さくら:劇団の可能性があるのは、ここだけみたいですね。
カンナ:でもよぉ、モギリをするためだけに行くには、東北はちょっと遠すぎやしねえか? これでも一応、花組の隊長なんだからよ。
大神:一応・・・。
すみれ:心配ご無用。わたくし達には心づよぉい味方がおりますわ。今は自室でお昼寝をしている、そう・・・。
6人:アイリス!!

  ドタドタドタドタドタ・・・バタンッ!

アイリス:うぅーん、どうしたの? いきなり入ってきて・・・アイリス、まだ眠たいんだよぉ。
カンナ:わりぃな、アイリス。隊長がどうしてもおめぇに頼みがあるって言うからよ。
アイリス:えーっ、お兄ちゃんが!? なになに? アイリス、お兄ちゃんのためだったら、なんだってやるよ!
大神:実は・・・アイリスの力で俺の体を瞬間移動させてほしいんだ。
マリア:ちょっと待って下さい、隊長。よく考えてみると、いくらアイリスの力が強力とは言え、何百キロものテレポートは無理があるのではないでしょうか?
大神:そう言えばそうだな・・・。
紅蘭:それについては、ウチにまかしときぃ! こんな事もあろうかと、かねてから製作中やった「ちょうやくくん」が、ついこないだ完成したばかりなんや。実験代わりにちょうどええで!
一同:・・・・・。
紅蘭:な、なんや、その疑惑の眼差しは!?  ちょうやくくんはアイリスの頭に被せる事によって、その力を何百倍にも引き上げ、距離・方向とも完璧に制御できると言う超優れモンなんや! しかも、神武のためにウチが開発した「複合型霊子動力増幅器」を使用、改造した装置やから信頼性も抜群なんやで!
さくら:紅蘭の数少ない成功品・・・じゃあ、信用してもいいんじゃないですか、大神さん?
大神:そ、そうだな。神武のあの時の活躍も、紅蘭の発明あってこそのものだったし・・・。
紅蘭:よっしゃ! ほんなら早速、準備にとりかかるで! ほらアイリス。ボーっとしとらんとこっち来いや! あ、あと、マリアはんもちょっと手伝ってもらえまへんか?
マリア:ええ、いいわよ。
大神:あ、でも・・・。
カンナ:何だよ、隊長。男だろ? いい加減、腹を決めるんだな。
大神:い、いや、そうじゃなくて・・・。
すみれ:そうじゃないもクソもありませんわ。まったく・・・一体、誰の為にこんな苦労をしてると思ってるんですの?
大神:別に、すみれくんに頼んだ覚えは・・・ブツブツ。
マリア:隊長、すみれの言う通りですよ。それに、花組の隊長がそんな優柔不断でどうするんですか?
さくら:がんばって、大神さん!
大神:うん、がんばる・・・じゃなくて! さくらくん、俺の話を聞いてく・・・。
紅蘭:よっしゃあ! 準備完了や! 行っけー、アイリス!!
大神:ちょっ、待っっ・・・!!!!!
アイリス:えーい!!!

  ピンピロリン

紅蘭:おしっ! 成功や!
さくら:あの・・・大神さん、涙目で何かうったえかけてたみたいなんですけど・・・。
紅蘭:だぁいじょうぶやって。ちょうやくくんも煙さえ吹いとらんし、目標地点にバッチリ到着したはずや!
アイリス:ねえねえ、紅蘭。お兄ちゃん、どこに飛んでったの?
紅蘭:そうか、アイリスにはまだ言っとらんかったな。東北や。
アイリス:東北の・・・どこ?
紅蘭:どこってそら、この地図で適当に・・・あ・・・。
すみれ:紅蘭、あなたまさか・・・。
カンナ:マリアに続きを読んでもらって、雪組の劇場の場所を特定できたんじゃねぇのかよ!?
マリア:い、いえ、私は・・・。
紅蘭:マ、マリアはんには、アイリスの髪を束ねてもらっただけや。ちょうやくくんはサイズが小さいさかい、あのブワブワの髪の毛が邪魔で・・・。
さくら:じゃあ、大神さんは・・・。
紅蘭:・・・・・。
すみれ:・・・・・。
マリア:・・・・・。
アイリス:・・・・・。
カンナ:・・・・・。
一同:やってもうた・・・。

 ちょうやくくんは、紅蘭の言う通り大成功だった。大神の体は、紅蘭のセットした地点に寸分違わず運ばれたのである。
 それから3日後・・・新潟県のとある雪山の中腹で、かろうじて大神は発見された。彼は5日経ってようやく意識を回復したが、その後、その時の恐ろしい体験が彼の口から語られる事は、決して無かったという・・・。

<終>  

 宝塚がそうであるように、帝国歌劇団にも当然複数の組があってしかるべきだと思うのですが。ところが本編中には全く出てきませんよね。花組の特訓中は大帝国劇場も全休になってしまっていたようですし、花組にあわせて他の組も公演を中止して訓練に専念していたのか、あるいはこのお話のように普段から外部で公演しているのかもしれません。それにしても...モギリ道一筋の大神くん、命がいくつあっても足りないね(^^;

 なお今回はまさるな蒼紫さんがすべてをご執筆下さいました。素晴らしい力作のご投稿、まことに、誠にありがとうございますうっ!!m(_ _)m 読者の皆さん、ここまで完成度の高い本作品に臆することなく、ネタだけでもかまいませんから私にご教授をぜひお願い致します。



 PS:6月9日放送「サクラ大戦帝撃通信局fromお台場」サクラ通信のコーナーにおいて、すみれさんがまさにこの疑問「帝国歌劇団は花組以外にないの?」というリスナーからの質問に答えていました。要約すると「現在大帝国劇場において公演を行っているのは花組のみですわ。でも演劇以外なら花組の他にも組は存在するので、そのうち他の組の公演が見られるかもしれませんわね」とのことです。まさに本作品と合致。すばらしい先見の明です、まさるな蒼紫さん! 最近オフィシャルにはしてやられてばっかりでしたからねぇ、久々の勝利です(何が)。



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