Volume 9
6/28〜7/2 収録
『放神記書伝』
・マリアは以前から読んでいたのに
どうして大神は降魔が出るまで
読まなかったの?
関雅弘さんのご執筆
紅蘭: | 大神はん、ちょっと込み入った質問なんやけどええかな。 |
大神: | ああ、別にかまわないよ。 |
紅蘭: | 大神はんは、『放神記書伝』を降魔が現れてから読んだんやけど、マリアはんは大神はんが来る前に読んでたんやなあ。これってもしかして、マリアはんの方が大神はんよりも上に見られていたってことになるんやないやろうか。 |
大神: | ………。 |
紅蘭: | あ、大神はん、ひょっとして今の質問、気に障ってもうたんか。 |
大神: | ………。 |
紅蘭: | 大神はん、かんにんや。ウチ悪気があったわけやないんやで。 |
大神: | ………『放神記書伝』ってなんだったっけ。思い出せないんだけれど。 |
紅蘭: | だあぁ。大神はん、ホンマに思い出せんのかいな。本当は痛い所を聞かれて忘れたふりしているんとちゃうんか。 |
大神: | いや、別にそういう訳じゃないんだけど…。 |
マリア: | あら、隊長に紅蘭。二人で何を話しているの。 |
紅蘭: | あ、マリアはん。ちょうどいい所に来よった。実はこれこれこうなんや。 |
マリア: | ああ、それは隊長のせいじゃないわ。そうね、それを説明するには帝国華撃団の歴史に触れなければならないわね。 |
紅蘭: | なんや、長い話になりそうやなあ。 |
マリア: | そもそも、帝国華撃団が結成されたのは、対降魔のためだったわよね。私が隊長になった時にはそれが目的だったから、私はあやめさんに教えてもらいながら『放神記書伝』を読んだ、という訳ね。ところが、その後に黒之巣会が登場したことによって、華撃団の役目は対黒之巣会ということになったの。黒之巣会が最大の敵と考えたのは今から考えれば致命的な判断ミスだったということになるけれど。 |
紅蘭: | まあ、あの時はしかたなかったやろうな。 |
マリア: | 大神さんが隊長としてやってきたのは、華撃団の役目が対黒之巣会ということになった後だったわ。だから降魔についてのことが書かれている『放神記書伝』は今は読む必要はない。あやめさんはそう判断した、という訳よ。 |
紅蘭: | なんやそうやったんか。大神はん、よかったなあ。これで忘れたなんてごまかす必要もなくなったで。 |
大神: | いや、俺は別にごまかした訳じゃなくて、本当にそういった本が登場していたということをすっかり忘れていたんだ。だって、あの本って、マリアのシャワーシーンを見るための役割ぐらいしかなかったじゃないか。 |
マリア: | パールク・ヴィチノーイ!! |
マリアの必殺技に吹き飛ばされながら、「またこのパターンのオチなのか〜」と作者に向かって心の中で絶叫する大神であった。
まさるな蒼紫さんのご執筆
大神: | かすみくん、ちょっと俺の愚痴を聞いてくれるかい? |
かすみ: | えっ、急にどうされたんですか、大神さん? |
大神: | いいから聞いてくれ。俺はさ・・・去年の正月、降魔が初めて姿を現した時、奴等に光武を全滅させられて、それで米田支配人に言われたんだ。 |
由里: | え、なになに!? なんて言われたんですか? |
大神: | げ、由里くん・・・まあ、いいか。そう、こう言われたんだ。「このままなら、お前は専業モギリに降格だ!」 |
かすみ: | ・・・・・。 |
大神: | どっちにしろ・・・俺は専業モギリになってしまう運命だったんだな・・・(遠い目) |
由里: | (か、かけてあげる言葉が見付からないわ。) |
三人: | ・・・・・。 |
バタン! | |
椿: | 大神さん!! |
大神: | はいっ! ・・・な、なんだ、椿ちゃんか。いきなり飛び込んでくるからビックリしたよ。 |
椿: | てへっ、ごめんなさい。でも、すごいニュースが入ってきたんですよ。なんと! 花組に新しいメンバーがやってくるらしいんです。 |
大神: | そ、それは本当か、椿ちゃん!? |
椿: | ええ。支配人室の前を通ったとき、長官が電話で話しているのを聞いちゃったんです。 |
かすみ: | 椿、盗み聞きはよくないわよ。 |
椿: | でもぉー。 |
大神: | まあまあ、かすみくん。この際、そんな細かい事はどうでもいいじゃないか。それより椿ちゃん、どういうメンバーか詳しい事は分かるかい? |
椿: | えっと・・・男の人と女の人が一人ずつで、どっちも外人。あっ、それと、元星組のひとだって言ってましたよ。 |
大神: | 星組? 聞いたことないな・・・かすみくん、知ってるかい? |
かすみ: | いいえ、あたしは・・・でも、由里なら何か知っているかもしれませんね、由里? |
椿: | 由里さんなら、さっきから自分の鞄をゴソゴソやってますけど。 |
大神: | 由里くん、何してるんだい? |
由里: | これ、これを探してたんですよ。 |
大神: | 由里の特ダネ雑記帳・・・な、なんだい、それ? |
由里: | あたしが集めた、古今東西様々な情報を書き付けたメモ帳です。星組について知りたいんでしょ? ありますよ、とっておきの情報が・・・ふふふふふ☆ |
椿: | (お、大神さん、由里さんの目、こわい・・・) |
大神: | (た、耐えるんだ椿ちゃん。ここで由里くんの機嫌を損ねたらまずい・・・かすみくんも、いいね?) |
かすみ: | (わ、分かりました。) |
由里: | 三人で、何こそこそ話してるんですか? |
大神: | い、いや、何でもないんだ。な、かすみくん? |
かすみ: | え、ええ。それより由里、早くその「とっておきの情報」って言うの、教えてくれない? |
由里: | なんか怪しいなぁ・・・まあ、いいけど。で、星組についてなんですけど、えへんっ、それを語るには、まず降魔の生態から話さなければいけません。 |
椿: | 降魔の生態・・・ですか? |
由里: | そう。降魔は、どうしてかは分からないけど、日本の中で、この帝都に集中して現れる傾向があるのよ。だからこそ、花組をはじめとする帝国華撃団のほとんどの組は、帝都に常駐している・・・。 |
大神: | ほとんど、と言うと、そうじゃない組もあるんだね? |
由里: | ええ。雪組がそうだという噂がありますし、星組もまた、帝都に存在しない組なんです。 |
かすみ: | 由里が話した事が本当だとすると、どうして星組は帝都に置かれないのかしら? 降魔は帝都に集中するんでしょう? |
由里: | かすみ。集中するとは言ったけど、全部とは言ってないでしょ?全国的にも、少数ながら降魔の出現は確認されているの。それに降魔じゃなくても、黒之巣会のように、降魔とは異質の脅威が出てくるかもしれない・・・。 |
椿: | それを討伐するのが、星組の役目なんですね。かっこいい! |
由里: | その通りよ。とはいっても帝都のように危機的状況になるのは希だから、星組は全国津々浦々、悪の出現を聞きつけては、その拠点を移動させているの。平時は旅の芸人一座としてね。 |
かすみ: | じゃあ、もしかして風組の役割は・・・。 |
由里: | さすが、かすみ。勘がいいわね! 輸送空挺部隊としての風組の役割は、なにも花組を翔鯨丸で運ぶだけじゃない。むしろ、星組の拠点移動に際するさまざまな武器類の輸送こそ、風組本来の任務なのよ。 |
大神: | そうだったのか・・・でも、そんな重要な役割を持った組から隊員を引き抜いたりして、平気なのかな? |
由里: | 分からないんですか、大神さん? この帝都にさえ、ここ一年、何の事件も起きてないんですよ。星組が出向かなきゃならないような事件が起こるはずないじゃないですか。それに・・・。 |
大神: | それに? |
由里: | 帝都には今、新たな影が忍び寄ってきてるらしいんです。その名は黒鬼会・・・。 |
大神: | な、なんだってっ!? 由里くん、それは本当か? そ、その黒鬼会の目的は何なんだ? 帝都壊滅か? それとも・・・。 |
由里: | ああっ、もう! ちょっと待ってください、大神さん。あたしもこの件についてはまだ詳しくは知らないんです。ただの噂かもしれませんし・・・。いずれ、はっきりとした事が分かったら、きちんとお知らせしますから。 |
大神: | そ、そうか・・・じゃあ、よろしく頼むよ、由里くん。 |
椿: | でも由里さん、やっぱりすごいですねぇ。星組なんてあたし、聞いたこともなかったのに・・・。どうやって、そんな詳しいこと知ったんですか? |
由里: | そうねぇ、情報源は決して明かさないのが、あたしの主義なんだけど・・・いいわ、今日だけ特別に教えてあげる。これは、福岡に里帰りした花屋敷の友達が・・・。 |
大神: | 偶然、星組が戦っているところを見たんだね? |
由里: | え!? い、いえ・・・その友達が、里のお兄さんが・・・。 |
椿: | 見たのを聞いたんですね! |
由里: | じゃ、なくて・・・そのお兄さんが、そのまた友達の弟の知り合いから・・・・ |
椿: | ・・・・・。 |
かすみ: | ・・・それって・・・一般的にデマって言うんじゃないの? |
由里: | そ、そんな事ないわよ! だって、その友達は信頼できる情報だって・・・。 |
大神: | じゃあ聞くけど・・・どうして、由里くんの友達のお兄さんの友達の弟の知り合いに、それが星組だって分かるんだ? 帝撃そのものだって秘密部隊なのに。 |
由里: | そ、それは・・・。 |
椿: | そうですよぉ。由里さん、嘘はいけませんよ、嘘は! |
由里: | ・・・・・。 |
かすみ: | まったく・・・真面目に聞いて損しちゃったわね。 |
由里: | ・・・・・。 |
大神: | 由里くん、どうせ話すんなら、もっと信憑性のある話を・・・いいっ!? |
由里: | くすん・・・もう、いいもん。大神さんなんか・・・だいっっっっきらい!! |
かすみ: | あっ、由里! ・・・行っちゃったわ。 |
椿: | お、大神さん、いーけないんだぁいけないんだぁ! 女の子を泣かしちゃうなんて最低ですよぉ! |
大神: | ち、ちょっと待て、俺が悪いのか? 君達だって、随分はやしたててたじゃないか!? |
椿: | ・・・あっ! あたしまだ売店のお仕事が残ってたんだ。それじゃあ、これで失礼しますね! |
かすみ: | ちょっと椿! ・・・そ、そうだわ。私も今日中に、納入業者さんのところにお金を納めに行かないと・・・じゃあそういうことで、後はよろしくお願いしますね、大神さん。 |
大神: | か、かすみくんまで・・・そうなのか? 俺が全部悪いのか? ・・・な、なんだか、本当に俺のせいの様な気が・・・由里くん、待ってくれぇー! 俺が悪かったぁー!?
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