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-警察署-(入り口) | |
警察署の入り口には警備の警官が二人立っていた。 | |
警官A: | あやしいやつ、止まれ! |
大神: | あの〜・・・ |
警官B: | だまれ、何だそのいでたちは? |
警官A: | ここは警察だ、大道芸人は入っちゃいかん。 |
警官B: | いや、この格好は吟遊詩人だろう? |
警官A: | まてまて、巴里は芸術の都だ、新手のパフォーマンスかも? |
警官B: | 妙な楽器みたいな機械をもっている。 |
警官A: | ホントだ、じつにあやしい・・服装もあやしい。 |
大神: | いえ、自分はけっしてあやしい者ではありません。少し警察署の中に入れてほしいのですが・・・・。
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警官B: | たわけ!自分からあやしい者でないというあやしくない者がいるわけないだろう。
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警官A: | そーゆー者ほど必ずあやしいんだ!!「水戸黄門」でもニンジャみたいなのが言ってたぞ。
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大神: | (また「水戸黄門」かい!はやってるのか最近?言い回しも時代劇っぽいし、そりゃあ日本で水戸黄門知らない国民はいないだろうけど、巴里だろここ?)
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そこで大神は一計を案じた。 | |
大神: | じつは自分は以前(の戦いで)車をこわしてしまいまして・・・(怪人の攻撃だけど)やもうえなかったとはいえ責任を感じています。教会でザンゲ
しても(エリカ君だから)救われなかったのでここへ来ました・・・。
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警官A: | それはまことか? |
警官B: | 正直なやつ、じつにアッパレだ。 |
警官A: | 自首するというなら話はべつだ・・・さあ入りなさい。 |
警官B: | うむ、ではこのまままっすぐに行って正面2階の受付でその旨を話すんだ・・・キミはきっと恩赦されるだろう。
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大神: | ありがとうございます、あなたたちが動いているのを初めて見ました。ではでは・・・
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この「うっかり八兵衛」のような、話をスピーディに運ぶ門番・・・・じゃなかった警官たちによって大神は警察署にすんなりと入れたのである。 | |
警官A: | ・・・・おれたち本編じゃただの背景画だぞ、ビットマップだぞ、ピクトだぞ、(※1)
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警官B: | でもやっとセリフが言えたなあ(うるうる・・) |
警官A: | 時代錯誤で地域錯誤だったけどなあ(うるうる・・) |
警官A、B: | よかったよかった。 |
お互いをたたえ涙する警官をあとに大神はいそいそと中へ入ると、計測器のスイッチをONにした。 | |
大神: | (あとはどうやって捜すかだ、警察署に知りあいでもいればいいんだが・・・・・・・・・・いたなあ、そういえば)
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-警察署内-(受付) | |
受付のフロアは多数の職員が働いている大きなオフィスの端にあった。奥では蒸気タイプや蒸気電話の音がたえまなく響いている。 | |
受付嬢: | パリ市警へようこそ(^^)!駐金、罰金、反則金の納付はA番窓口へどうぞ!
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大神: | (なんだか椿ちゃんを思い出すなあ・・・)えーと、あのエビヤン・・エビヤン警部はいますでしょうか?シャノワールの大神、といえばわかります。
とりついでいただけませんか?
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受付嬢: | ジム・エビヤン警部ですね・・・・少々お待ちください。ジーコロ、ジーコロ・・(ダイヤル式内線をかける)
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大神: | (警察署といっても広いな、署員も多いし、見つかるかな?) |
受付嬢: | ・・・・はい、わかりました(カシャ)・・・えーシャノワールの大神さま、エビヤン警部はただいまパトロール中です。お昼までには戻るそうですので
後ろでおかけになってお待ちください。
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大神は言われるがまま後ろにあった待合室のソファーみたいな椅子に座った。計測器を自分の方へ向けないよう慎重に。 さきほどからスイッチはONにしてあるが反応はない。このフロアには霊力者はいない ようだ・・・と、そこへ・・・・ | |
エビヤン警部: | はあはあ・・・いや〜誰が待ってるかと思ったら大神くんかあ。「シャノワールの・・・」と聞いたとこでサフィールさんかと思ってとんできちゃっ
たよ(^^)
(以下エビヤン)
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大神: | エビヤン警部、パトロール中にすみません。 |
エビヤン: | なあにかまわんさ、パトロールと言ってもちょっとサンテ刑務所によってきただけなんだ。
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大神: | (ギクッ!)サ、サンテ刑務所ですか?いったいどうして。 |
エビヤン: | ロベリアの様子を見とこうかと思ってね・・・・・でも所長のモーリスが許可してくれなかった。危ないってね・・・。
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大神: | (ホッ・・・) |
エビヤン: | しかしロベリアには警察内でも妙なうわさがあるんだ・・・。いわく国家機密扱いになったとか?超法規的措置がとられただとか?
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大神: | (ギクッ、ギクッ!)そ、それはおおげさですね(^^; |
エビヤン: | どうもサンテ刑務所に今いるかどうかも不明確なんだ、でも脱走したという話も聞かないし、ひょっとしたら別の場所に移送されたかな?
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大神: | (ヒヤヒヤ・・・) |
エビヤン: | まあ「巴里の悪魔」と恐れられたあのロベリアだ、国家規模の扱いになったとしても不思議じゃない。警察というのは犯人を逮捕
するまでが大きな仕事だからね。あとは法の手、国家の手にゆだねられる
のさ。ロベリアは懲役1000年だから少なくとも終身刑か極刑は
まぬがれえないだろう。
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大神: | ・・・そうでしょうね。 |
エビヤン: | それで、今日はいったい何の用で来たのかね?大神くん。 |
大神: | そうでした。エビヤン警部、実はロベリア逮捕のときに・・・・・ |
アナウンス: | ピンポンポンポーン・・・・ミディ(正午)までトラントスゴンド(30秒)です。作業中の方は手を休め、蒸気演算機をお使いの方は
保存をしてください(とうとつにアナウンスが聞こえた)
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大神: | な、なんですかこの放送は? |
エビヤン: | やあ、もうすぐお昼だね。うちの警察署はね・・・・・・ |
言ってるうちにフロアの奥のほうから照明がつぎつぎに消えてゆく。バシン、ぷしゅう〜・・・・・・蒸気機器の音が止まりフロア全体が暗くなった、窓 からの光だけである。 職員はいつものことだとでもいうように伸びをし、席を立って各々出ていった。 | |
エビヤン: | ・・・・・こうやって昼になると蒸気が強制的に止まるんだ。 |
大神: | はあ・・。 |
エビヤン: | 蒸気エネルギー節約のためだよ。今年の夏は蒸気不足らしいからね、役所がそっせんして実施してるんだ。
なかなか評判もいいんだよ、ちょっと落ち着くじゃないか(^^)
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暗く静かになったフロアでエビヤン警部はソファーにもたれてつぶやいた。 ぴーーんーーぴゅぴゅーきゅーんんんんん・・・・・・(その時うなりをあげる計測器) | |
エビヤン: | な、なんだこの音は?? |
大神: | 反応した!・・・どこだ、誰に反応してるんだ? |
きーーんきーーきゅーんんんんん・・・ かなり大きな反応である。計測器は窓に向いていた、その外は警察署の中庭である。 大神は計測器をもって窓に近づこうとした・・・・。 | |
エビヤン: | その機械の音かね大神くん、止めてくれ、頭がいたくなる。 |
大神: | 警部、ロベリアはいったいどうやって捕まえたのですか?何か特別な方法で・・・・。
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エビヤン: | ・・・何だって大神く・・・・・ |
ドカーンンン・・グワシャッ・・びりびりびり・・・・ 突然、中庭で大きな爆発音が轟き!署内がびりびりと揺れた。窓ガラスが割れ、天井 から破片がぱらぱらとふってくる。 | |
大神: | うわっつ!!!(とっさに腕で顔をおおい破片を防いだがソファーのところまでふきとばされる大神)
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エビヤン: | ・・・・大丈夫かね大神くん! |
大神: | だ、大丈夫です警部。爆風にとばされただけです、ケガはありません。 |
エビヤン: | どうしたんだいったい・・・・・この爆発は何なんだ? |
ウーガ、ウーガ、ウーガ・・・・・・(サイレンが鳴る) | |
アナウンス: | 緊急警報、緊急警報・・・・・署内中庭で爆発発生!!大破!西側錬に火災発生・・・・署員は全員部署に集合してください。
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エビヤン: | くそっ・・なんてこった。 |
アナウンス: | ・・・襲撃の可能性あり・・・武器所持のアサインがでました。一二:○六機動隊に出動命令発令・・・ 署員は全員部署ごとに集合してください・・・・・くり返します・・・ ・・・。 |
大神: | ・・・こ、これは(大神はイヤな予感がした) |
エビヤン: | 大神くん聞いてのとうりだ、わたしは部署に戻る。きみは急いで避難するんだ。
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そう言うと警部は懐の拳銃をたしかめとび出していった。大神は壊れた窓から外を見る。中庭には大きな穴があいており、警官たちがわらわら と集まってきていた。 ふと、大神はその先に、向かい側の屋根の上に視線を凝らした・・・・・・・・・人 影のようなものがキラリと光る。鏡か、もしくはメガネのような物 の反射光だと思った。そして見た! | |
大神: | (あれは・・・・・・)大神もしゃにむにとび出す・・・・その後ろすがたに気づいた人影があった。フロア
にはゴツい霊力計測器だけが残されていた。
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-警察署-(中庭) | |
エビヤン: | 戦闘準備急げ!警察署が襲撃されるとは前代未聞、じつに大胆な犯行だ! |
警官C: | 警部!つい先ほどサンテ刑務所のモーリス所長より連絡がありました。 |
エビヤン: | なに?! |
警官C: | 読み上げます・・・・『先刻のロベリアの件について:特別囚人ロベリア・カルリーニは政府の命令によりサンテ刑務所より移送された。
移送先は不明。だが、ここ(サンテ刑務所)より危険、かつ厳しい場所で罪
をつぐなうことになったと思われる。』・・・以上です。
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エビヤン: | そんなばかな・・・刑務所より、終身刑や極刑より、厳しく危険な場所っていったいどこだ?
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「それは怪人と命がけで戦う巴里華撃団に入ることです警部・・・・」と大神だったら心の中で答えるだろうが、今の警部には知るよしもない。 エビヤンは思った・・・もしロベリアが移送途中で逃げ出したら・・・・警察に復讐 しようと思ったら・・・・ゾクッと悪寒がはしった。 | |
警官D: | あそこだ!屋根の上に誰かいるぞ!! |
ヒュン、ヒュン・・(手榴弾が飛んでくる)・・・ドガーンンンン | |
エビヤン: | 応射しろー!(叫ぶエビヤン) |
-警察署-(西側屋根) | |
ロベリア: | ククククク・・・・かかってこい!!もっとかかってこい、サツども・・・・。
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ボワッ、ゴワワワワワワ〜〜(煙突のカゲから炎を放射するロベリア) | |
ロベリア: | 燃えろ、燃えろ!みいんな燃えちまえ・・・・アーッハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
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パン、パパン・・・ズキューン・・・ダララララララ・・・・(発砲する警官隊) | |
ふっ、ぬるいぜ!!(ロベリアは建物の裏手に飛び降りた) | |
-警察署-(裏手) | |
スタッ・・・(着地) | |
ロベリア: | バカどもが・・・いつまでも上にいるかよ。 |
大神: | やめるんだ、ロベリア!! |
ロベリア: | (ハッ!と気づいて振り向く) |
そこに大神がいた、こちらをにらんでいる・・・・ロベリアも立ち上がってにらみかえす。裏手の道で向かい合う大神とロベリア。 | |
ロベリア: | よう・・・隊長、なんであんたがこんなとこにいるんだ? |
大神: | それはこっちのセリフだ!ロベリア、警察署を襲うとはどういうつもりだ。俺たちといっしょに巴里を守る華撃団に入ったんじゃないのか!
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ロベリア: | へえ、そうかい?あたしは巴里を守る・・・・だなんて言ったっけ?グラン・マと減刑の契約は交わしたがね。ふふん、、、。
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大神: | キミの敵は巴里を滅ぼそうとする怪人のはずだ、警察じゃないだろう。 |
ロベリア: | ちがうね、これは怪人との戦いじゃなくあたし自身の問題さ、警察にはかりがあるんでね、、、、。
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大神: | だからといって警察署を襲うのか? |
ロベリア: | 契約だから巴里華撃団の一員としてあたしも怪人とは戦うさ、ボーナスももらえるしな。だがあたしはあたしだ、自分の魂まで華撃団にささげたわけじゃな
い。 これはあたしの怪盗としての復讐なんだ、盗賊のけじめなんだよ、邪魔は してほしくないね。 |
ゆらゆらとロベリアの手に霊力が集まる・・・・ゆらいで見えるのは高温の気体が炎を発生させようとしているからだ。 | |
大神: | それならオレは隊長として言う、勝手な行動はゆるさん!力づくでも止める、シャノワールにつれて帰る!!!
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ロベリア: | クククク、いいね、力づくってのも悪くないぜ・・・・・・・ただし、あんたにできるものならな!
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バオッ!!(ロベリアから炎がほとばしる) 大神は間一髪、後方に跳び炎をはずす。つづけて二発三発とロベリアから矢のごとく 炎が放たれる。かわす大神。 | |
大神: | やめろロベリア、きみは華撃団の仲間だ! |
ロベリア: | どうした、力づくで止めるんだろ? |
バオッ、バオッ、ボウウウウウウ・・・・・・・ | |
大神: | できれば仲間とは戦いたくない・・・。 |
ロベリア: | そんな甘ちゃんでよくいままで生き残ってこれたな・・・・・バカだからか?
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大神: | 人を信じ、自分を信じなければ相手からも信頼されないからだ。 |
ロベリア: | だまれ!他人を信じ、罠にはめられ命をおとしたやつは過去にもこの街にもおおぜいいるだろうが!!
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大神: | それでも俺は信じつづける!だますよりだまされる方がましだ! |
ロベリア: | それが甘いって言うんだよ!! |
大神: | ・・・・しかたない・・・(そばに落ちていた木の棒を拾う大神) |
ロベリア: | そんな棒きれで炎に勝てると思うのか?ほんとのバカだな。 |
大神: | いくぞ、ロベリア・・・はあっ!(フェッシングのように半身片手で突きを出す大神)
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ボワッ!(ロベリアの炎が棒をからめとるように覆う) | |
ロベリア: | なっ・・・? |
ロベリアが気づいたとき大神は棒をすでに持っていなかった、手放していた。その刹那!大神のもう片方の手に握られた棒がロベリアの 胴を襲う・・・・・・ | |
ガシャ-----(間一髪!ロベリアは自分の鎖で大神の剣(棒)をからめて防ぐ)ギリギリと鎖で棒を吊るし上げようとするロベリア。顔の高さでこらえてる大神。近 接する二人。 | |
大神: | 俺が二刀流だって知ってるだろロベリア・・・・・。 |
ロベリア: | そうだったな、すっかり忘れてたぜ・・・隊長。 |
ぐぐぐ・・・とやや押されぎみのロベリア、パワーでは男の大神の方が優勢か? | |
大神: | 棒は2本拾ったんだけどな、ホントに目が悪いのか? |
ロベリア: | ぬかせ!あたしも両手がふさがってても炎は出せるんだ・・・・知ってるだろ。
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大神: | そうだったか? |
「ぴーーーーーいいいいいい・・・・」きゃああああ・・止めてえ・・・・! そのとき大音響とともにすべてをぶち壊す神の使いが現れた・・・・ エリカだった・・・なぜかエリカが大神の持ってた計測器を持って走っている。 | |
エリカ: | いや〜ん、大神さーんこれ止まらないんですー(><)なんとかしてくださあーい・・・あいたあ(つまずくエリカ)
コロンコロン・・・・
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大神: | うわっ、エ、エリカくん? |
ロベリア: | なにぃ、エリカだとお(エリカと聞いて動揺するロベリア) |
エリカ: | わたしも止めてえ! |
がった〜んゴロゴロゴロ・・・・(エリカ、2人にヒット。3人とも転がる) | |
ロベリア: | わっ、バカッ、、手榴弾が・・・・・ポテン・・・ころころ・・・
気づくと、レバーと安全ピンがはずれてる・・・・・
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大神: | だー〜逃げろおぉ |
ドドーンンン・・ パラパラパラ・・・、地面につっぷして破片をやり過ごす3人。 | |
ロベリア: | ゴホッ、ゴホッ、、酷でえ・・・。 |
大神: | 大丈夫か?二人とも・・・・(痛たた・・)なんでエリカくんがここに・・・・?
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エリカ: | あ〜ん(><)来るつもりはなかったんですけどお、シャノワール出たらさっそくおまわりさんに"じゅうとうほうしょじ違反"とかで捕まっちゃって
ここへ連れてこられたら爆発で、メチャクチャのドサクサの中、大神さんを
見つけたら機械を置いてどっか行っちゃうのでいそいで持って追い
かけたら迷っちゃって急に鳴りだして止まらなくなっちゃたんですう。
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エリカの言ってることはメチャクチャなのだが大神はなんとなくわかった。 | |
エリカ: | お二人こそ何で警察署で遊んでるんですかあ、そんなにくっついて・・・・エリカぷんぷんですう(>3<)
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ロベリア: | なに言ってるんだおまえは。 |
大神: | それより警官が・・・今の爆発でやってくる。ひとまずここは逃げ・・・くっ・・・・(立ち上がれない大神)
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エリカ: | たいへん大神さん!ケガしてるじゃないですか。 |
ロベリア: | おまえのせいだろ。 |
エリカ: | ごめんなさい(うるうる・・)すぐに回復してあげます。 |
ロベリア: | できるのか・・・? |
エリカ: | それならまかせてください。エリカ今なら気合十分100%です。ぜ〜んぶやっちゃいます。
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ロベリア: | ・・・・・・・・・・・・・・ |
エリカ: | いきますよー(^^)(やわらかな光に包まれるエリカ) |
エリカ: | "〜数多なる奇跡の光よ・・・・かたちあるものを元の姿に・・・傷つきたる者に生きる息吹を・・・とどけ心に・・・サクレ・デ・リュミエール・・・"
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エリカを中心に、光が警察署のほとんどを覆ってゆく・・・・。 | |
エビヤン: | な、なんだ?この光は・・・犯人は、どこへいった? |
・・・・光が消えたとき・・・そこはすべて元どうりになっていた。中庭の穴も・・、ガラスも・・、火事も・・、今しがたの爆発も・・ 何もなかったかのように。いつもの昼どきの警察署がそこにはあるだけだった。 エビヤン警部も警官隊も、みな魔法にかかったような顔をして立ち尽くしている・・ ・・。 | |
アナウンス: | まもなく、お昼休みが終わります・・・・・蒸気力回復。職員の方は持ち場へ戻りましょう・・・(中庭にアナウンスがシュールに響く)
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-小高い丘の上-(高台) | |
大神: | ハアハアハア・・・ここで・・・休もう・・ロベリア・・・(またまた息が上がってる大神)
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ロベリア: | なんだ隊長、もうバテたのか? |
大神: | あたりまえだろう、キミは計測器だけだがオレはエリカくんを背負ってるんだぞ。(はあ、ふう・・)
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ロベリア: | クッ、クッ、クッ、・・・隊員思いのいい隊長じゃないか。それともエリカだったら重いか?
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エリカ: | にゃんですってえ・・・・ムニャ、ムニャ・・・・スースー。 |
エリカは大神の背中で息をたて眠りこんでいた。 必殺(回復)技を放ったあと「エリカやりましたあ!でももうふらふらでーす。あとはよろしく大神さん(^^)」ぱたん・・・・くーくー・・・。 ・・といきなり倒れてしまったのだ。ほおっておくわけにもいかないので大神はエリ カを背負い、ロベリアと協力して警察署をぬけだしたのだった。 そしてロベリアと大神とエリカは街が見渡せる高台でベンチに腰をおろす。エリカは 大神のひざまくらで寝てる、グリシーヌやコクリコが知ったら羨ましがるだろう。 | |
ロベリア: | エリカのせいで警察署つぶしがおじゃんになっちまった・・・・。 |
大神: | 光武なしであの技使ったからね、倒れるわけだよ。もうやる気はなくなったかいロベリア?
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ロベリア: | さあな?また気がむいたら襲うかもな。今回は失敗だよ、なにもやってないことになっちまった。(それに・・・あたしは何で警察署襲撃を思いたったんだっ
け?)
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大神: | でも一度は襲ったんだ、これで気はすんだろう? |
ロベリア: | ふんっ!(大神にそっぽを向きエリカを見る)・・・・まったく幸せそうに寝てやがる、こいつに悩みなんてあるのか。
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大神: | ロベリアはエリカくんが苦手みたいだね。 |
ロベリア: | ばかなこと言うな、あたしに苦手なものなんてないよ。 |
大神: | はは・・・エリカくんはこういうコなんだよ。だけど、子供の頃はいろいろと悲しい思いをしたみたいだよ・・・あの力のせいで・・・。
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ロベリア: | ・・・・・・・・・・・・・・・。 |
大神: | きみも同じだろう?・・・ロベリア。 |
ロベリア: | ふんっ・・・・。 |
大神はそれ以上なにも言わなかった。説教くさいことを言うのでもなく、何があったかを聞くのでもなく・・・・・ただぼんやりと街をながめながら言ったのだ。 それはロベリアにとって心地よいものに思えた。いままで"悪魔"だとか"化け物" だとか・・・およそ人間らしからぬ誹謗をうけ、実際に超常の力を持って いた彼女は、自分は本当に"人間"ではないのだと、"悪魔"なのではないか・・・ と思い込んでいた・・・。でも巴里華撃団では皆そんなやつらばかりだ。 あたしにはそう見える。グリシーヌのような気にいらない女もいれば、エリカみたく 慕ってくる女もいる、コクリコみたいなガキまでいやがる。 隊長は隊長で戦闘以外は強いんだか弱いんだかわからない・・・・「優柔不断の正義 バカ」・・・・だ。 だけど・・・普通の、人の社会というのはこんなふうなものじゃないのか? 華撃団の中では霊力持っているのが普通だ。他は変わってるわけではない。 グラン・マやメルやシーは霊力はもってないが、見せても別に驚きはしない、恐れもしない、なぜならそれが普通の風景だから・・・・。 ロベリアがはじめて出会う"普通"なことは彼女にとって"異常"なことだった。 | |
ロベリア: | (仲間って・・・・そういうものなのか???) |
大神: | なあロベリア、ひとつ聞きたいんだけど・・・(いきなり大神が言った) |
ロベリア: | なんだよ隊長、やぶからぼうに? |
大神: | ・・・・以前なんで警察に捕まったんだ?どうやって捕まえられたんだ? |
ロベリア: | はあ? |
大神: | 笑うなよ、もともとそれが知りたくて警察署に行ったんだから? |
大神はことのなりゆきを朝から話した・・・・。 | |
ロベリア: | アッハッハッハッ・・・・それでこんな機械もって警察署なんかでうろうろしてやがったのか・・・・アッーハッハッハッ
|
大神: | 笑うなって言っただろ、けっこういい推理だと思ったんだ・・・・見つけられなかったけど。あの大きな反応は、ロベリア、きみに対してだろ。
|
ロベリア: | ハハハハそうだろうな、でもいくらさがしてもムダだと思うぜ。 |
大神: | なぜ? |
ロベリア: | あたしが捕まったのはな・・・・・ちょいと耳をかしな・・・(大神に耳打ちする)
|
大神: | ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
ロベリア: | ・・・・と言うわけだ。(※2) |
大神: | そ、そんな事があったのか。 |
ロベリア: | まあ捕まってもすぐに脱獄するつもりだったんだが、あの特別牢獄は予想外だったな、手回しのいいこった・・・・わかったかい、隊長。
|
大神: | ああ、よーくわかったよ。 |
ロベリア: | ギブ・アンド・テイクだ。今度はあたしがあんたに聞きたい・・・・。 |
大神: | 何だいロベリア? |
ロベリア: | もし、もしも・・・あたしが向こう側(敵側)にいっちまってたらあんたはどうしてた・・・?
|
大神: | な、何を言ってるんだ! |
ロベリア: | 華撃団じゃなく、怪人側にいたら?ってことさ。 |
大神: | ・・・・・・・・・・・・ |
ロベリア: | どうしてあたしをスカウトしたんだ? |
大神: | ・・・・・・・・・・・・ |
ロベリア: | あたしはまじめに聞いてるんだ、だまってないでまじめに答えろ! |
大神: | そんなこと・・・・。 |
ロベリア: | あんたが、相手で殺したいって思うのはどんなときだ、どんなやつだ・・・・
|
大神: | ・・・・オレの敵は・・・帝都でもパリでも、そこに住む人々、生活する人々をふくめて無にかえそう・・・とするやつら、かな。
|
ロベリア: | ? |
大神: | 巴里は、帝都(東京)より歴史が長い・・・・・ゆえにこの街にいる魑魅魍魎や怨念はとてつもなく深く、複雑だと思う・・・。 この街で新しい華撃団をつくることなんてできるのだろうかって、最初は正 直思ったよ・・・。 だから巴里華撃団隊長として戦力が欲しかった、怪人じゃなければ、光武で 戦えるなら、どんな人間でも欲しかった・・・。 |
ロベリア: | だから極悪人のあたしでも欲しかっった、というわけか? |
大神: | ああ・・始めはね・・・。 |
ロベリア: | ふっ!まあそんなことだろうとは思ったよ。 |
大神: | でもすぐに本当の悪人とは思えなくなった・・・。 |
ロベリア: | 何だと? |
大神: | ロベリア・・・きみは普通とちょっと意味がちがうけどパリが好きだろ・・・だいじな商売の場所だし、縄張りだし、盗むもののある街だ。
戦うスリルがある街でもあるだろう。
|
ロベリア: | ・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
大神: | この巴里が破壊されたら、なくなってしまったら、そういった場所も消えてしまうんだ・・・
だから巴里を守るんだ。動機はどうあれ「守る」というその点においてはき
みもオレも同じだろう。
|
ロベリア: | 詭弁に聞こえるな? |
大神: | ・・・ロベリア、きみに隠し事は通じないだろう、だから正直に言う・・・ オレは自分のために戦っている。きみが自分の力は自分のために使う・・と言ってた ように、 グラン・マがコクリコに自分のために戦いな、と言ったように。オレもまた 自分の正義のために戦っているんだ・・・。 「他人のため」とか「みんなのため」と か聞こえのいい 理由じゃあない。何をもって正義というのかはよくわからないけど、正義の ため、と思って戦うと霊力(ちから)が発揮できるし、正義を守ることが人々を護る ことだと 思って軍人にもなったんだ。今でもその信念は変わらないよ。 |
そう言ってロベリアを見る大神の目には一点の曇りもなかった。本気なのである! | |
ロベリア: | (こいつは・・・バカだ、ホントのバカだ・・・・でも・・・・・) |
大神: | きみは・・・オレを殺したいのかい? |
ロベリア: | さあ、どうだかな?ただあたしのジャマをするなら、覚悟しとくんだな。 |
大神: | どう思おうとかまわない。・・・でも・・・もし、仲間を裏切ったときは・・・巴里に仇なす者になったならば・・・・
|
ロベリア: | なったならば・・・・? |
大神: | 斬る!・・・この大神一郎、最大奥儀をもって斬り滅ぼしてあげよう。 |
ロベリア: | ふっ、隊長・・・・いいぜ、あんたの今の顔・・・・ぞくぞくするぜ(惚れちゃうくらいにな)
|
大神: | でも・・・そんなことは永久にない、と信じるよ。 |
大神はまたぼんやりと街をながめながら言ったのだった。 | |
いつの間にか日はかたむき、夕刻が近づいていた。二人は何も喋らなかったが、それは平和な時間だった、安心できる時間だった。 傍らではエリカがスヤスヤと寝ている。ロベリアはふと、自分も居眠りしてみようか ?という誘惑にかられた。 しかしそれはあまりにも自分には似つかわしくないので、立ち上がった・・・・。 | |
ロベリア: | さてっ・・・・と、休憩もとれたしもう大丈夫みたいだな。 |
大神: | 行くのか?ロベリア。 |
ロベリア: | ああ、もうすぐ夜だろ・・・夜はあたしの時間さ。この変な機械も置いてくぜ、おっと計測器だったな。
|
大神: | ロベリア、こっちを向いてくれないか。 |
ロベリア: | ・・・ん? |
大神: | へえ、青いバラなんてあるんだ・・・。 |
大神はロベリアの服についてる花を見て言った。 | |
ロベリア: | ああこれか・・(そういえばあたしは売人リスト捜してたんだっけ。) |
大神: | 花のことはわからないけど・・・似合うよロベリア、服とよく合っている。 |
突然言われてキョトンとするロベリア・・・でもすぐに表情もどって。 | |
ロベリア: | ・・・・ふっ、おせじが上手だな隊長。 |
大神: | いや、ほんとにそう思っただけだけど。 |
ロベリア: | まあいいさ。・・・あたしは先に帰るからな・・・・エリカを頼んだぜ。 |
大神: | ああ、まかせてくれ。 |
ロベリア: | メルシー、ムッシュオオガミ・・・・ |
大神: | ん?なにか言ったかい、ロベリア。 |
ロベリア: | 何でもないよ・・・じゃあな! |
(似合うよロベリア・・・似合うよ・・)ロベリアの心にはなぜか大神の言葉がリフレインしていた。 | |
ロベリア: | ふっ、ったく・・・女ってやつは・・・・(あんたに殺されるならいいぜ・・・大神一郎)
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タッ・・とロベリアは高台から眼下の建物が並ぶ空間へ跳び出した・・・・・・そして音もなく屋根に着地すると、振り返る・・・ | |
ロベリア: | (よろしくな、隊長!) |
そのとき大神は一瞬ロベリアが敬礼したようにも見えた、しかし髪を掻きあげただけかもしれなかった。 屋根の合い間に消えてゆくロベリア・・・まさに怪盗そのものだった。 「いや・・・」疑問をふりはらうように大神は首を振る。-------夕刻の空に早々と 月が出ていた、満月だった。 | |
エリカ: | ・・う・・うーん・・・おふぁようございます、大神さん。 |
大神: | エリカくん・・気がついたんだね。でも今は夕方だよ。 |
エリカ: | (キョロキョロと見回す)あれえ、わたしどうしちゃったんですか、ここはどこですか?
|
大神: | いいんだよ、もう・・・・・・。 |
エリカ: | う〜ん、そうですかあ。 |
大神: | さあ、シャノワールへ帰還しよう、今夜もいそがしいぞ! |
エリカ: | はい、大神さん(^^)エリカがんばっちゃいまーす。 |
二人は颯爽と仕事場へ向かうのだった。 | |
-大神の部屋- | |
窓際に月の光を受け一本の青い薔薇が花瓶にさしてある。 誰もいないその部屋で、花はひっそりと部屋の主(あるじ)の帰りを待っていた。 花瓶の首には贈り物であるのか赤いリボンが結ばれていた。 あまり荷物や色味のないこの部屋においては、ことさらその青は輝いて見えた。 凛と立つその花は、何かの決意をあらわしているかのようでもあった・・・・・。 | |
終わり | |
どうだい?あたしのダンスは・・・・・・(色っぽいロベリア、う〜ん?) |