大神: | お、そろそろ準備完了かい? |
さくら: | あ、大神さん。 |
すみれ: | ええ、すぐにでも始められますわよ。 |
大神: | そうか。いやー、すき焼きなんて久しぶりだなあ。楽しみだね。 |
さくら: | ふふふ、そうですね、なんだかわくわくしてきました! |
すみれ: | まあ、たまにはこういう庶民らしいのも悪くありませんわね。 |
織姫: | 少尉さーん、アイリスたち連れてきましたー。Oh、これが例の「こたつでなべ」でーすねー? |
アイリス: | わーい、レニ、たのしみだねー。 |
レニ: | ……そうだね。 |
大神: | うーん、もうちょっとこたつ、真ん中に移動したほうがいいな。みんな手伝って。 |
レニ: | 了解。 |
大神: | それじゃ、いくぞ。せーのっ! |
一同: | 勝利のポーズ、決めっ! |
大神: | ってそうじゃなくて!こたつを動かすの! |
さくら: | す、すいません、つい条件反射で……。 |
織姫: | 少尉さんのかけ声が悪いんでーす。 |
大神: | わかったよ。それじゃ、いち、にいのさん。 ……うん、こんなもんだな。 |
紅蘭: | おこんばんわ〜紅奴どす〜。すんまへんなあ、準備手伝わんと。 |
アイリス: | あー、紅蘭ずるいんだー。 |
紅蘭: | すまんなあ、アイリス、これで許したって。かえではんからの差し入れや。 |
すみれ: | かえでさんから?なんでございましょ? |
紅蘭: | コロッケやて。なんでも実家のお母はんの作らはったもんらしいで。 |
さくら: | ふ、ふーん。かえでさんのお母様、コロッケが得意なのかしら? |
紅蘭: | さあ。 あれ?マリアはんとカンナはんは? |
大神: | ああ、ちょっと買い出しに行ってもらってるんだ。そうすぐ帰ってくるんじゃないかな。 |
紅蘭: | なんやぁ、ぐずぐずしとったら、さき食べてまうで。 |
アイリス: | そうだよねー。カンナが入るとどんどんたべられちゃうしー。 |
レニ: | 先手必勝。 |
すみれ: | まったくですわね。 |
織姫: | わたーしたちイタリアンは食べるのが遅いんでーす。一方的に不利でーす。 |
大神: | ま、まあ、もうちょっと待とうよ。 (わいわいがやがや) |
扉の外 | |
カンナ: | おっ、やってるやってる。 よっしゃマリア、さっきのネタ合わせどおりにいくぞ! |
マリア: | ほ、本当にあれをやるの? |
カンナ: | なんだよ今さら。ほらいくぞ! |
バタン! | |
さくら: | あ、カンナさんとマリ… |
カンナ: | 花組・年長組、とうじょーう! |
マリア: | ……と、とうじょーう…… |
一同: | …………(あんぐり)。 |
カンナ: | おいおいマリア、なんだよそのタイミングは。ほらハズしちまったじゃねえか。 |
織姫: | ……タイミングの問題じゃないと思いまーす…… |
カンナ: | こういうもんはタイミングと勢いだ!なあ紅蘭! |
紅蘭: | そ、そやねー。 |
マリア: | ごめんなさい。私よくわからなくて… |
さくら: | と、とにかくマリアさんもカンナさんもご苦労様でした。さ、どうぞ座ってください。 |
カンナ: | おお、わりいな、待たせちまって。じゃ、はじめようぜ。 |
マリア: | はい、みんなグラスはいきわたった? じゃ隊長、乾杯を。 |
大神: | 今夜はロシア風に…… |
マリア: | や、やめてください隊長。 |
大神: | そうかい? じゃ、みんな一年お疲れ様でした! かんぱーい! |
一同: | かんぱーい! |
カンナ: | さあ、食おうぜみんな! |
すみれ: | ちょっとお待ちなさいなカンナさん。あなたのペースで食べられてはみんなが食いっぱぐれます。制限をつけさせて頂きますわ。 |
織姫: | 賛成でーす! |
カンナ: | な、なんだよ。どういうんだ? |
すみれ: | あなた、左手でおはしをお使いなさいな、それで少しは遅くなるでしょ。 |
カンナ: | う、まあいいぜ。やったろうじゃないか!……ぬっ、よっ、はっ!……と、とれない……。 |
アイリス: | あれー?カンナも「りょーとー(もごっ)。 |
大神: | (アイリス!その話をむしかえすのはやめてくれ!) |
さくら: | ? 何してるんです大神さん? |
大神: | い、いやなんでもないよ。 |
マリア: | しかしこれだけの人数がいるとすき焼きはつらいわね、鍋が遠くて…… |
さくら: | あ、あたしとってあげますよ。なにがいいですか? |
マリア: | じゃあ、そこの肉とえのき、お願いできる? |
すみれ: | さくらさん、わたくしにはお豆腐とおしらたきを……。 |
カンナ: | けっ、なんだそのおしらたきってのは。こちとらおめえのせいでろくに食えねえんだぞ。 |
さくら: | ふ、ふたりともケンカしないでくださいね。アイリスたちは? |
アイリス: | アイリスもおにくぅ〜。 |
レニ: | ボクは……ネギ。 |
さくら: | はいはい、お肉とネギね。 |
紅蘭: | ……むう……流したか……。 |
さくら: | ? なんのこと、紅蘭? |
紅蘭: | いやなんでも。おっ、かえではんのコロッケうまいなあ〜。 |
すみれ: | ほんとにおいしゅうございますわ〜。 |
織姫: | ぐらっちぇ! |
アイリス: | そうだ!お兄ちゃんこれのむぅ?パパがおくってくれたの! |
大神: | お、なんだいこれ? |
アイリス: | んーとねー、シャンパーン!アイリスの田舎の「じざけ」だよー! |
大神: | ……なんか、シャンパンが地酒って違和感あるけど、ありがたくいただくよ。なんていうシャンパンかな…… |
アイリス: | えっとねー、「くりゅぐ」って書いてあるー! |
大神: | ク、クリュグ!? (そ、そういえばアイリスの実家は大富豪。くっそーブルジョワめ。花組財政難の時、援助もしてくれなかったくせに……) |
紅蘭: | せや、さくらはん、ウチらもハタチになったことやし、ちょっとだけ飲もか? |
さくら: | そ、そうね。それじゃちょっとだけ……。 |
大神: | じゃあ、ついであげるよ。ビールでいいね? |
さくら: | あ、ありがとうございます、大神さん。(ぽっ) |
紅蘭: | へへへ、おおきに、大神はん。 |
すみれ: | (ムッ)少尉〜、わたくしにもついでくださいな〜。 |
マリア: | ちょっと待ちなさいすみれ、あなたはさくらよりひとつ年下のはずよ。 |
カンナ: | そうだぞ、そうは見えねえけど。 |
すみれ: | よっ、よけいなお世話ですわ。 ふふふーん、べつによろしいですわよ〜。あなたがたとちがって、わたくしはまだティーンエイジャー、ぴっちぴちなのですわ〜。 |
マリア: | もう一度言ってごらんなさい。(ちゃかっ) |
すみれ: | わわわ、わたくしはまだけつの青いひよっこなのですわ〜! |
アイリス: | わーい、じゃあすみれも花組・年少組だね〜! |
すみれ: | ……それもいやですわ。 |
織姫: | いーえ、強制的に加入していただきまーす。 |
紅蘭: | (ごくごくごく)ぷはーっ、この一杯のために生きとんなぁ〜! |
織姫: | あなーたはオヤジですか、紅蘭。 |
レニ: | ……ちょっと待って、紅蘭の生年月日は1906年3月3日。20才になるのは来年の3月のはずだよ。 |
マリア: | そ、そういえば……紅蘭、グラスをよこしなさい。 |
紅蘭: | (ちっ、ばれたか)いやぁ、あれ、そやったっけ?てっきりさくらはんと同い年やと……。 |
織姫: | まったく油断も隙もありませーん。 |
大神: | って言いつつその手に持ってるのはなんだ織姫くん! |
織姫: | きゃははは、なーに言ってるですか少尉さーん!わたーしたちイタリアンにとってはワインなんて水も同然でーす! |
大神: | だめだよ織姫くん……ってもう半分以上あけてるじゃないか。ああっ、レニ!それビールじゃないか! |
レニ: | ボクはドイツ人。ビールなんか水だ。 |
大神: | だめだって!そのグラス、こっちに…… |
さくら: | あははははははは!大神さーん、なんだか楽しいですねー! |
大神: | (ギ、ギクッ)そ、そうだねさくらくん。(よ、酔ってるのかな?) |
さくら: | あたし、うたっちゃおっかな〜! |
大神: | (げ。やっぱり酔ってる。こ、これはまずい展開だ。俺の霊力が「この場は退け」とささやいているっ。) あっ、アイロンかけっぱなしだったかも!見てこなくちゃ! |
さくら: | ……大神さん、どこ行くんです。まさかあたしの歌が聞けないっていうんですか? |
大神: | い、いやだなあさくらくん、どこにも行かないよ、ずっとそばにいるさ……(とほほ)。 |
さくら: | うふふふ、ですよねー。 ねー大神さん、あたしうたっちゃおっかな〜。(じいぃぃぃぃっ!) |
大神: | う、うわあ、さくらくん、君の歌、是が非でも聞きたいなぁ! |
さくら: | うふふー、でしょー? はいはーい!1番、真宮寺さくら、歌いまーす! |
紅蘭: | さくらはん、よう言うた!ウチはその言葉待っとったんや!こんなこともあろうかと用意しておいた「ばんそうくん改の改」で…… |
マリア: | カンナ。 |
カンナ: | おう。(がしっ) |
紅蘭: | な、なにするんやカンナはん!はなしなはれ!……ああっ、そないなとこつかんだらあかん! |
カンナ: | まあまあ紅蘭、「ばんそうくん」はいいからこっち来て老酒でも飲めって。 |
大神: | 飲ましてどうする。 |
紅蘭: | 「ばんそうくん改の改」やぁ〜!昨日徹夜したんやぁ〜! |
マリア: | はいはい。 ……さあ、さくらいいわよ。 |
さくら: | はーい!それじゃいきまーす! ♪あさのひか〜りがぁ〜やわらかくなぁってぇ〜 そとの、くうきが、やさしくかぁわあってぇ〜 |
アイリス: | さっくら〜! |
さくら: | ♪ゆきどけみぃーちを かたをすぼめてあ〜るくぅ わたしはな〜にを〜してたでしょおぉかぁぁ〜 |
一同: | ??? |
さくら: | ♪ときのながれぇにみをまぁかせぇ〜 |
一同: | ちょっとまてい! |
さくら: | な、なんですか? |
大神: | なんという危険な真似を……。 |
マリア: | ただでさえ歌詞の引用はあぶないというのに……。 |
織姫: | これ以上はだめでーす。ジシュキセイでーす。 |
さくら: | え〜!せっかく気持ちよく歌ってたのに……。 じゃ、そうだわ!マリアさん歌ってください! |
マリア: | え、わ、私?そ、そんな。 |
さくら: | ええ、あたしマリアさんの持ち歌好きなんですよぉ。あの最後のほうが「青雲のテーマ」に似てるやつ! |
マリア: | ……さくら、世の中には言っていいことと悪いことがあるのよ。 |
さくら: | え〜、だめなんですか〜? ふーんだ、いいもーん。飲もっと。 |
大神: | さ、さくらくん、ほどほどにしとこうね。 |
さくら: | えへへー。大神さん、あたしの心配してくれるんですか。うれしっ! |
大神: | え、まあ、その…… |
さくら: | うふふー。大神さん、いーっぱいワカメ食べて、あたしと青葉城おさんぽしましょうねー。 |
大神: | も、もちろんだよさくらくん。(いまだにワカメと青葉城の関連性がわからない……。) |
さくら: | それから宇都宮でぎょーざ、たべましょうねー。やくそくですよぉ。 |
大神: | (……わからん) |
マリア: | ……青雲……。 |
アイリス: | きゃはっ、おにいちゃーん、これおいしいねー! |
大神: | なんだいアイリス……ってそれさっきのシャンパンじゃないか!だめだって! |
アイリス: | これアイリスのだもーん!ヒック! |
大神: | だめっ、そんなの飲んでるとおっきくなれないぞ! |
レニ: | 隊長はボクが発育不良だっていうんだね……ひどいよ……やっぱり隊長は胸もおしりもぼーんっていうのが好きなんだね…… |
大神: | ビール片手に何言ってるんだレニ! |
すみれ: | おーひょっひょっひょ、ひょうでふわよねえひょうい〜。やっふぁり、ぼーん!がよろひいでふわよねー! |
大神: | あ、でてこないと思ったらこっそり飲んでたなすみれくん! |
織姫: | ふみれはん、そこどくでーふ!あなーたの発育はもうおわりでーふ!少尉はーん、ひょうらいへいのあるわたひを選ぶでーふ! |
大神: | お、織姫くんまで……ふたりともまとわりつかないでくれ! そ、そうだ!カンナ!ちょっとこのふたりひきはがしてくれ! |
カンナ: | だーはっはっは!この老酒ってけっこういけるなあ紅蘭! |
紅蘭: | ひゃーっひゃっひゃっ!せーやろー?カンナはんの泡盛もおいしいわぁー! |
カンナ: | うーれしいこと言ってくれるなあ、こうらーん!きーもちいいぜぇ!なーんかこう力がわきあがってくるってのかぁ? |
紅蘭: | おうっ、カンナはん、あんたは虎や!虎になるんや! |
カンナ: | おおっ、あたいは虎だ! そーれ、三進転掌!(どごぉっ!) |
紅蘭: | ひゃーっひゃっひゃっ!ええぞぉータイガー! |
大神: | み、見なかったことにしよう……。 |
織姫: | きゃははは!たのしいでーふ! |
すみれ: | ひっく!りりひいでふわよ〜ひょうい〜。 |
アイリス: | うふふっ、ゆめのせかいでいやしてあげるぅ。 |
レニ: | えあすて、ちゅばいて、ちゅるっちゅ、えあすて、ちゅばいて、ちゅるっちゅ…… |
紅蘭: | うわははは!えーかんじやでェ! |
カンナ: | おらァ!おらおらァ! |
さくら: | どんどんいきましゅ! |
大神: | だ、誰かなんとかしてくれ、この酔っぱらい集団…… そ、そうだ、マリアがいた! マリア!マリア! |
マリア: | ……どうせ私の曲は「青雲のテーマ」よ……。 |
大神: | ……マ、マリア? |
マリア: | (ぐびぐびぐび) あ゛? |
大神: | (げっ、あ、あれはひょっとしてウオッカ!?) |
マリア: | ひっく!たいちょーう! あなたはどうおもってるんです!? やっぱり「青雲」ですか!? |
大神: | い、いや、そ、そんなことはないよ、うん。 |
マリア: | ほんっとーですか?!ほんっとにほんっとーですか?! |
大神: | も、もちろんだよ、うん。「青雲」なわけないじゃないか! |
マリア: | う〜、そんなうまいこと言って、じつはまさか「毎日香」なんじゃないでしょうね!? |
大神: | ままま、毎日香?! |
マリア: | ……やっぱり隊長は「毎日香」が好きなんですね……「青雲」より「毎日香」なんですね…… |
大神: | ちょっ、マ、マリア? |
マリア: | 私より「毎日香」なんですね?!「毎日香」をとるんですね?!そうに決まってる! うわあああああ! |
大神: | い、いやそんなことはないよマリア、「毎日香」より君の方が大事だ!決まってるじゃないか! |
マリア: | …………。 …………! |
大神: | マ、マリア? |
マリア: | う゛。 |
大神: | おどわーっ! ま、まずい状況なのかマリア? 深刻なのか? たのむ、もうちょっとこらえてくれ! ど、どどどうしよう、そうだトイレだ、あれ?トイレはどこだっけ…… |
さくら: | あーっ、大神しゃんとマリアしゃん、二人でどこいくんでしゅかぁ〜! |
織姫: | つーしょっとになろーなんへ、ゆるへまへーん! |
アイリス: | お兄ちゃんはアイリスのぉ〜! |
すみれ: | ひょーっひょっひょっ、にぎゃしませんことよぉ〜。 |
レニ: | きどーりょくを、うば、うばおう……。 |
紅蘭: | いけーっ、タイガー、大神はんをつかまえるんやぁー! |
カンナ: | うおうっ、あたいは獲物を狩る虎だぜーっ! |
マリア: | う゛。 |
大神: | うわああああ!はなしてくれええええ!もーやだとちぎにかえるうううう! |
| |
……花組の夜はふけていく…… |