サクラ2第八話。
太正維新軍決起直後、赤坂にて。
鬼王: | 京極様。魔神器のうちの二つ、剣と鏡は見事に回収いたしました・・・。 |
京極: | ご苦労、鬼王。これで華撃団も、破邪の力も怖るるに足らん。ふふふふふ。 |
鬼王: | しかし京極様、珠のほうは大神らに持ち去られてしまったようですが・・・。 |
京極: | 構わぬ。そもそも私は魔神器の力など、利用するつもりはさらさらないのだ。 この陰陽師の力さえあれば、すべて事は足りるのだからな。何という才能、何という力・・・ さすがは私だ! ぬぁーっはっはっはっはっは!! |
鬼王: | ・・・そうですか。それではこの二つは、私が早々に処分いたしましょう。万が一、華撃団に取り返されてしまっては厄介ですからな。 |
京極: | 「「「「「待てぇーーーーい!!!」」」」」 |
鬼王: | ビクッ |
京極: | ならん! ならんならんならんならんならんならんーーーっ!!! |
鬼王: | な、なぜですか・・・京極様。こんなもの、必要ないとたった今・・・。 |
京極: | それは・・・それはな・・・うちのご先祖様が丹精込めて造り上げた・・・匠の業の結晶だったのだーーー!! 実は。 |
・・・・・。 | |
鬼王: | そ、それは・・・。 |
京極: | いわばそれは、わが家の家宝・・・いや、天(ピー)家の奴等に取り上げられてしまってたから、形見と呼んだほうが良いか・・・。これを(ピー)皇家から取り戻すのも、実は私の悲願だったのだ。 |
鬼王: | は、初耳ですな・・・それは。で、どうして取り上げられたの・・・。 |
京極: | 皆まで言うな、鬼王。人が生きていくために必要なものと言えば・・・あらかた察しがつくであろう。 |
鬼王: | ・・・借金のかたですな・・・お気の毒に。しかし、どうして天(ピー)家が借金の取り立てなどを・・・。 |
・・・・・。 | |
京極: | 大人の事情だ。(キッパリ) |
鬼王: | 複雑ですな。(納得) |
その後、大神に魔神器を全て奪われてしまった鬼王が、金剛に管理職の座を奪われかけたことは、あまり知られていない。しかし直後、大神が魔神器を破壊するという暴挙に出たため京極の怒りの矛先は、大神と華撃団へ変更・・・危うく鬼王は、左遷を免れたのであった。
ちゃんちゃん!
前夜三巻。
真宮寺一馬、最期の時。
一馬: | 母上・・・。 |
桂: | ・・・・・。 |
一馬: | 若菜・・・。 |
若菜: | あなた・・・。 |
一馬: | 権爺・・・。 |
権爺: | 一馬様・・・。 |
一馬: | ・・・さくら・・・。 |
さくら: | ・・・お・・父・・・さま・・・。 |
一馬: | (みんな・・・さようなら・・・。) |
一馬: | それでは・・・・・よ、米・・・!? |
米田: | 一馬・・・。(ビシッ) |
一馬: | い、いや・・・敬礼されても・・・ちょっと。米田中将、真宮寺家の墓は、真宮寺の家の者以外、見てはならないことに・・・。 |
米田: | ああ・・・知ってるぜ。 |
一馬: | ・・・へ? |
米田: | 心配するな・・・一馬。”後のことは”俺に任せろ。 |
一馬: | あ、後のことって・・・・ちょ・・・まさ・・・! |
若菜: | あなた・・・若菜は幸せになります。 |
一馬: | お、お前まで・・・子どもの前で・・・い、いや、それよりも何で、よりにもよって、こんな・・・・・ぐぅ、意識が ・・・・・さくら・・・・・お前・・・・お前はどうなんだ・・・・・?(TT) |
さくら: | お父さま・・・・・さくらは、強く生きます。 |
一馬: | い、いや、早すぎるだろ、そのセリフ・・・・・・・・・・・・・・・はっ? だ、 だめだ・・・・・・・もう・・・・・・・・・。 |
ガシィイイイイイイン | |
権爺: | 墓の下石は閉じましたな・・・・一馬様。成仏してくだされ。 |
米田: | これで。俺たちの間に障害はなくなった・・・。 |
若菜: | 米田様・・・。 |
さくら: | なんか・・・・大人ってヘン。 |
やがて、この時の無念を引きずった一馬の魂は、京極の前に陥落。鬼王として復活するに
至ったのでした。
ちゃんちゃん!
土蜘蛛: | 銀座の一等地でのうのう暮らしてやがる華撃団の連中にひきかえ、あたいたちゃこんな穴蔵で来る日も来る日も… あーあ、いやになるねぇ。 |
金剛: | まったくだぜ。なんで俺たちゃこんなジメジメした穴ん中で毎日じっとしてなきゃならねえんだっ! |
火車: | クックックッ。漆黒の闇のキャンバスに描き出す炎の芸術。この私にとっては格好の場所ですねぇ。 |
金剛: | か、火車てめぇ何こんなとこでサボってやがる! おめえ今日風呂焚き当番だろうがっ。 |
火車: | クックックッ、紅蓮火輪双を使えば風呂焚きなぞ一瞬で済むのです。実用性を兼ねそなえた素晴らしき必殺技… フッ、またつまらぬものを燃してしまった。 |
金剛: | 言ってろバカ。第一俺たち、これだけ京極さまのもとで働いてるのに給料ひとつもらったことねえぞ。 |
土蜘蛛: | そうだよっ! そもそも事業主ってのはねぇ、雇用者に賃金はらって、厚生年金加入して、健康保険証も配らなきゃなんないんだよっ。なのにうちときたらなーんにもありゃしない。 |
木喰: | フォッフォッフォ。わしは老人医療じゃからそんなもんいらんがの。ほれ、都バスもタダじゃ。 |
金剛: | じじぃは黙ってろっ。もう俺はがまんならねぇぞ、ちきしょう労働環境改善ーっ!! |
京極: | うるさい、うるさい貴様らっ! 労働環境なんて口きくくらいなら少しは働け! 月一回一人づつ出かけて戦闘してくるだけのくせに給料給料とほざきよって! |
水狐: | そうよ、あたしなんて出向で毎日毎日帝劇通いのOLよ。ちょっとはこの勤勉さを見習ってほしいワ。 |
土蜘蛛: | けっ、モギリのマッサージに熱海旅行付きのご身分のくせして文句たれてんじゃないよっ。 |
水狐: | あ〜ら、これはあたしの美貌ゆえのや・く・と・く。くやしかったらあたしみたいな色白美人になってごらんなさーい。おしえてあげよっか? UVケア。 |
鬼王: | 京極様。 |
土蜘蛛: | よけいなお世話だよっ! だいたい帝劇に潜入するんなら花の名前にでもすりゃいいのに影山サキなんてバレバレのネーミングに黒スーツでさ。ったくそれでスパイのつもりかねぇ。 |
鬼王: | 京極様。 |
水狐: | あ〜らそれってね・た・み? あたしの妖しい魅力にモギリさんもクラクラなのよ〜。あんたなんて性懲りもなく何度も何度も戦闘でしゃばっちゃってさー、しつこい女だって帝撃の人たちにも嫌われてるワ、あーいやだ。 |
土蜘蛛: | 何いってんだい、そっちこそ分身の術でだらだら必殺技ムービー見せつけてさ、Aボタンキャンセルも効かないってんであんたがしつこい攻撃ランキング第一位だよ。あーおめでとー。 |
水狐: | むきーーーーっ!! きょ、きょうという今日は許さないワっ!! |
土蜘蛛: | どっからでもかかってきなー。こちとらあんたの両手両足おさえてもまだ腕二本あまってんだ。 |
鬼王: | 京極様っ!!! |
京極: | おお、鬼王か。いやすまぬ、この二人の掛け合いが黒鬼会唯一の見世物であるからな、つい見とれておった。 |
鬼王: | 京極様。先ほど妙な輩どもがうろついておりましたので詰問したところ、何やら生活向上物品を訪問販売するなどと怪しい文言を申しておりました。近づけぬが吉かと存じますが… |
京極: | まあそう言うな、面白そうではないか。どうも穴蔵の中は娯楽が乏しくていかん。苦しゅうない、通せ。 |
笑瓶: | 副社長! きょうはえらいまたずいぶん変わったとこに来ましたなぁっ。 |
浜田: | ええか芸能人というのはアイドルだけとちゃうっ。こういう悪役と呼ばれるヨゴレをこなす人間もおるからこそ芸能社会がなりたつんや。われわれ生活向上委員会もそこんとこを忘れたらいかん。 |
笑瓶: | さっすが副社長! 目のつけどころがちゃいますなあ! |
京極: | …さっさと話をはじめんか。 |
浜田: | まあまあそう急がんでええがな。それにしてもまーなんともジメジメしたとこに住んどんなーおまえら。 |
笑瓶: | 副社長っ、お客さま、おきゃくさまっ! い、いや〜〜、こういう湿度のある部屋がインフルエンザ対策にはええらしいですなー。いや〜お客さんようわかってらっしゃるっ。 |
ボカッ。 | |
笑瓶: | いたっ! なにしまんねんな副社長っ。 |
浜田: | アホかおのれは! 人が商売はじめようとしとる横から茶々いれんなや。 |
笑瓶: | と、いうことは副社長、まず最初の商品はっ? |
浜田: | 水とりぞうさん一年分や。 |
京極: | …何だそれは。 |
浜田: | 水とりぞうさん知らんのかいな。これ封切って押入れにいれとけば湿気ぐんぐん吸い込んでくれる便利なやつや。 |
笑瓶: | 副社長! 今日はえらいマトモなもんを持ってきましたなぁ! |
浜田: | あたりまえやっ。我々は客の生活環境の向上を真っ剣にっ、考えとるんやぞ。ただこの穴蔵えらいでかいからなー、一年分どばっといっぺんに封切ろか。ほら、はよやれ。 |
笑瓶: | えっ! わしが全部封切るんですかいな副社長! |
京極: | おいこら。まだ買うなどとは一言もいっておらんぞ。 |
浜田: | 買え。ほらクーリングオフされんうちにはよ破いてまえ。それと買い置きもおいとかなな、おーいあと十年分もってこーい。 |
笑瓶: | ちぇー、副社長人使いあらいなあほんま… |
ベリ ベリ ベリ… | |
浜田: | それとやなあ、だいいちこの穴蔵に窓の一個もないんがそもそも間違いや。日もあたらんとこおったらクラゲみたいになってまうぞ。 |
京極: | うむ… それはわしも心配しておったところだ。日光に当たらねば栄養素の吸収に障害が出ると聞く。 |
浜田: | ようわかっとるやないか。そこで今日はもう一個ええもん持ってきてやったぞ。強力日焼けマシーン! |
笑瓶: | おお! 副社長きょうはえらいマトモなもんばっかり出てきますなあ! |
浜田: | やかましい。これ一台あればお客さんもすぐにかっこよう日焼けできまっせ。健康増進かつ褐色の肌でちまたのコギャルらに大受け! |
京極: | おおっ! |
笑瓶: | そやけど副社長、最近は鈴木その子のおかげで美白ブーム復活ちゅう話が… |
ドカッ。 | |
笑瓶: | あいたっ! またどつくんですかいな副社長! |
浜田: | ちょっとはだまっとかんかいっ! ちうわけでこれも買うとけ、な。月賦も可や。 |
金剛: | おーい、この水とりぞうさん、また中がいっぱいになってるぞー。 |
土蜘蛛: | またかい? こまったねぇ、あたしが昨日新しいのに取り替えたばっかりなのに… 第一ここの湿気がひどすぎるのさ。あっ、買い置きが切れてるっ! |
鬼王: | 京極様、帝都電力から今月の電気代が来ておりますが… なんともすごい額です… やはりあの太陽灯、ものすごい電気喰いらしく… |
水狐: | うえ゛え゛え゛え゛え゛っ! なんとかしてよぉ京極さまぁ、あたしの、あたしの真っ白なお肌がぁぁぁっ! |
京極: | ううむむ…こんなに経費がかかるものだとは思わなかったな… すまんな水狐。おまえの出向で帝劇から入る給料がわが会の唯一の現金収入なのだ。今月も頼むぞ。 |
水狐: | 冗談でしょーっ? 変装用のお洋服とかお化粧とかであたしも必要経費かかってるんだからー。こっちにまで回すお金ぜんぜんないワよっ。 |
鬼王: | 京極様。陸軍の予算を融通することは、万が一の機密漏洩を警戒してかなわぬことはわかります。ならせめて、京極様の陸軍大臣としての給金だけでも、こちらに廻して頂きたく… |
京極: | ならん! それはならんのだ! なにしろ、私の給料はヨメさんがすべて取り仕切っておる。わしの財布にあるのは雀の涙の小遣いだけだ。 |
金剛: | うおーっ! おれこんな会やめてぇーーーっ!! |