大神: | う〜ん、そう言えば由里くんが帽子をぬいだとこって見たことないなあ。風組の戦闘服姿のときにもかぶってるし、煉瓦亭での食事のときもかぶったまんまだったな。 |
かすみ: | ええ、私も見たことありません。前大戦のとき、私たちもアルバムに載せてくださるとかで、おそろいの白の水着になったことがあるんですが…… |
椿: | ああ、そうそう!水着撮影だっていうのに由里さん、帽子かぶってたんですよね。 |
大神: | そりゃハンパじゃないなあ。着替えの時もぬがないのかい? |
かすみ: | 由里の帽子はつばのないタイプですから。かぶったままでも着替えられるようですよ。 |
大神: | それにしたってなあ。こいつはなんか秘密がありそうだぞ。 |
椿: | ええっ、一体どんな? |
大神: | う。そ、そいつはよくわからないけど。 |
かすみ: | ……論理的に考えてみましょう。まず、なぜぬがないのか、ですね。「ぬげない」のか、「ぬぎたくない」のか。 |
大神: | 「ぬいでもすごい」のか。 |
椿: | 大神さん、そんなこと言ってると軟派ゲージあがりますよ。それにネタが古いです。 |
大神: | 椿ちゃん、ツッコミきついな。 |
かすみ: | 「ぬげない」場合、どんなケースが考えられます? |
大神: | かすみくん、淡々と進めるね。 うーん、実はあれは帽子じゃなくて寄生生物で、由里くんの頭に貼り付いているとか? |
かすみ: | あるいは帽子に見えて、由里は単にああいう頭である、とか。 |
椿: | ありえますね。 |
大神: | ……ツッコンでくれよ…… |
かすみ: | 可能性の話ですから。 じゃあ、次は「ぬぎたくない」場合ですね。 |
椿: | それはやっぱり、由里さんの頭に何か問題があるってことですか? |
大神: | 語弊のある言い方だな。まあ、一番考えられるのは帽子の下に見事なカッパハゲがある、ってなところだろうなあ。 |
椿: | 可能性高いですねー。あ、由里さん実はものすごいトンガリ頭なのかもしれませんよ。そこに帽子をかぶせてある、と。 |
大神: | おお、なるほど。 ……あとはあのへんからこうビヨーンとチューリップが生えてたりするとか。 |
かすみ: | どうせならユリの花のほうがしっくりきます。 |
大神: | ……やっぱりツッコンでくれないんだね……。 |
椿: | 大神さんのボケがしょうもなさすぎるんです。 |
大神: | 椿ちゃんのツッコミは情け容赦ないし……(しくしく) |
かすみ: | あとは……ぬぐとマイナスなんじゃなくて、かぶっているとプラスになるっていうケースかしら? |
椿: | ? どういう意味ですか? |
かすみ: | たとえば、何かのおまじないかなんかで、かぶっていると願い事がかなうとか。 |
大神: | ああ、なるほど。かぶってた方がいいことがあるってことか。 |
椿: | それはあまり考えてみませんでしたねー。 |
・ ・ ・ | |
由里: | (おっ、少し近づいてきたようね……しかしかすみさんも椿も言いたいこと言ってくれてるわね〜。) |
紅蘭: | どや、由里はん、バージョンアップ後の感じは? |
由里: | しーっ、静かにして紅蘭。いまちょうど大神さんたちが、あたしのこの帽子について色々詮索してるとこなのよ。 |
紅蘭: | へーっ、奇遇やなあ。どや、バレそうか? |
由里: | うーん、だいじょぶじゃない? |
紅蘭: | ふっふっふ。まさか由里はんの帽子が小型高性能無線機になっとるとは思わへんやろな。ウチ苦心の傑作や。 |
由里: | 試しに置いてきた送信機から、大神さんたちの会話がバッチリ届いてる。うーん、いい感度だわ。 |
紅蘭: | イヤホンはイヤリングに、アンテナは髪の中にしこんどくっちゅういつものやり方でOKやな。 |
由里: | OKよ。やっぱこの髪型が一番電波受信感度がいいわねー。 |
紅蘭: | パラボナ効果っちゅうやつやな。ほいのほいのほいっと……よっしゃ調整バッチリや! |
由里: | ありがと! |
紅蘭: | ふっふっふ、これで今まで以上に、いつでもどこでもすばやく情報がキャッチできるなあ。 |
由里: | キネマトロン技術の応用、見事に成功ね、紅蘭。 |
紅蘭: | ふはははは!今までのラヂヲ受信にくわえ、無線受信のパワーアップ!これで伝声管に耳をかたむける日々ともおさらばやな、由里はん! |
由里: | ええ! |
紅蘭: | さらに! |
由里: | え゛? |
紅蘭: | 今回は特別に「あゆむくん」機能をお付けしましたぁ! |
由里: | あ、あゆむくん?な、なんなのそれ? |
紅蘭: | ? 何をびくびくしとんねん。 |
由里: | (ほ、本人に自覚がないところが恐いわ……) |
紅蘭: | 休日はいつもレコードを聞いているあなた! 好きな音楽にいつも囲まれていたいあなた! そんなあなたにぴったりなのがこの商品「あゆむくん」! 内蔵された小型蓄音機により、いつでもどこでも好きな音楽が聞ける優れもんですぅ〜! |
由里: | す、すごいわねー。で、あのその…… |
紅蘭: | ついに成功した「ばんそうくん」メカ小型化の威力をみよ!それポチッとな! |
♪ あさくさからぎん〜ざ〜へ〜 | |
由里: | ばばば、ばんそうくん!? それって蒸気バスを破壊したあの…… |
♪ メ〜トロでい(ちかっ) ぼうん! | |
由里: | ……けほっ、けほっ、こ、これはかの「まことくん」状態……。この役目は大神さんのはずなのに……(バタッ)。 |
紅蘭: | あれ、おっかしいなあ? クリスマスん時は「ばんそうくん改」うまくいったのに……小型化の過程でなんか無理が生じたかな? |
由里: | …………。 |
紅蘭: | 由里はん、いつまで倒れとんねん。その程度で参っとっては話にならんで。ほら次いってみよう次! |
由里: | ……あ、あんたといっしょにしないで…… |
由里: | あ大神さん! いま蓄音盤をかけようと思ってたとこだったんですよ。ご一緒にいかがですか? |
大神LIPS: | 「ああ、ぜひ聞かせてもらうよ」 |
由里: | はいっ! じゃ、ヘッドホンをあたしの帽子にさしてくださいねっ。 д ←ここ (^o^) |
大神: | あの時はすっかり世話になっちゃったね、さくらくん。 |
さくら: | いやだ、お世話だなんて、あたし… 大神さんと一つ屋根の下で暮らせるなんて、ほんと、夢のような毎日でした…(うっとり) |
紅蘭: | はいはい、ごちそーさま。(くそー、ヒロインに決まったらもうやりたい放題やなー) さてさて、そんなおふたりに鋭ぉ〜いツッコミのご質問が来とります。 |
大神: | えっ、お、俺たちにかい? |
紅蘭: | はいな。えーと、大神はんがさくらはんちに泊まらはった次の朝、やけど。覚えとるか? |
大神: | 次の朝、っていうと… 俺が目を覚ますと、台所の方からいい香りがしてて… |
さくら: | そうです、あたしがお母様から教わったおみおつけ、作ってたんですよっ。きゃーっ! |
紅蘭: | そう、問題はそれやがな、それ。 さくらはん、お正月やというのに… おせちはどないした? |
さくら: | ぎく。 |
大神: | お、おせちかい…?? |
紅蘭: | そうや。日本中どこの地方でも、お正月はおせち料理のはずや。そやから正月三が日に、朝ご飯なんか作るわけあらへん。 |
大神: | い、いや、でもさ。仙台は旧暦の新年を祝うから、おせちじゃないとか、ほら… |
紅蘭: | うちらの中国やあるまいし。だいいち若菜はんが「あけましておめでとう」ゆうとるやないかい。 |
大神: | いや、だけど、真宮寺家は旧家だからやっぱりおせちは旧暦で作るとかさ、ほら、その… |
紅蘭: | ははーあ? なーんか、あやしーなー。 |
大神: | そ、そんなことないよ。話題にでてこなかっただけで、ちゃーんと豪勢なおせちもあったよ、な、さくらくん… |
さくら: | 大神さん… もう、いいんです。 |
大神: | さ、さくらくん… |
さくら: | ・・・う゛ぇーっ、どーせおいん家は田舎だーっ。東北本線の夜行さ乗っで、軽便列車さ乗っで、木炭バスさ乗っで、べこ車さ乗っで、それから峠8つ越えでぇ… 東京から4日かかるど田舎だぁっ。うちに着いたころにゃおせちもなくなってるだぁ。うえ゛え゛え゛え゛ーっ! |
・・・・・・・ | |
紅蘭: | 大神はん… さいしょっから翔鯨丸で行ったほうが、早かったんやないの。 |
大神: | ああ。次からは、そうさせてもらうよ… |