マリア: | あら? すみれ。稽古はどうしたの? |
すみれ: | 今はさくらとアイリスの台詞合わせなので、私はお茶をしているところですの。マリアさんもいかが? |
マリア: | そうね。いただこうかしら。 |
すみれ: | どうぞ。 |
マリア: | うっ…これは…。 |
すみれ: | 味はいかが? マリアさんには懐かしいロシアン・ティーですわよ。 |
マリア: | ジャムを…。 |
すみれ: | もう、ジャムは入れてさしあげましたわ。このわたくしはどこの国のお紅茶でも入れることができましてよ。 |
マリア: | ジャムを舐めながら飲むのが本場でのчай с вареньем(チャイ・ス・ヴァレーニエム;ジャム付き紅茶)の飲み方なんだけど…。 |
すみれ: | げ。 |
ある日のサロンにて | |
織姫: | もー、やっぱり納得いかないでーす! |
レニ: | ……同感。 |
大神: | どうしたんだい、二人とも。何だかご機嫌ななめのようだけど。 |
織姫: | あっ、少尉さん! 聞いてくださーい! 少尉さん、お正月はわたしと一緒にパパとママに会ったですねー? |
レニ: | 僕は隊長と『初もうで』に出かけた。 |
大神: | あぁ、覚えているよ。 |
織姫: | そのとき黒鬼会が攻めてきたでーす。 |
大神: | そうそう。あのときは正月休み返上だったなあ。 |
織姫: | よーく思い出してみてくださーい。何であのとき、里帰りしてたチェリーさ……さくらさんやカンナさんが帝都にいたわたしたちより先に出撃できたですかー? |
大神: | えっ? そ、そりゃ翔鯨丸で迎えに行ったんじゃ……? |
レニ: | さくらは仙台、カンナは沖縄。正反対の方角にいる二人を迎えに行ってもまだ僕達より出撃が早いというのは不自然だ。隊長、翔鯨丸ってそんなに速いの? |
大神: | ……そう言われると引っかかるな。よし、翔鯨丸は風組の管轄だからかすみくん達のところへ聞きに行こう。 |
所変わって事務室 | |
かすみ: | あら、大神さん、それに織姫さんにレニ。何かご用ですか? |
大神: | ちょっと翔鯨丸について聞きたいことがあるんだけど。 |
由里: | そういうことならどんどん聞いて下さい、何でも答えちゃいますから。 |
大神: | ……じゃあ聞くけど、翔鯨丸はどのくらいまでスピードが出せるんだい? |
由里: | ちょっと待って下さいね(ガサゴソ)……あ、あった!翔鯨丸の仕様書。最高速度は、と…………そうですね、この仕様書によれば非武装積載時で76ノットということになってます。でも、これはあくまで‘仕様’ですから壊れるのを覚悟で飛ばせばもっとスピードは出ると思いますよ。 |
大神: | なるほど。1ノットは時速約1.85キロメートルだから…… |
レニ: | 翔鯨丸の最高速度、時速約140キロメートル。仮に東京-沖縄-仙台-東京と回った場合、航行距離はおよそ3700キロメートル。時間にしておよそ26.4時間。かえでさんが一日以上遅く僕達に出撃命令を出したのでもない限り、みんなが僕達より先に出撃するのは物理的に不可能だ。 |
大神: | うーん、どういうことだろう……かすみくん、由里くん、正月の戦闘でどうしてみんなは俺達より先に出撃できたんだ? 何か知っていれば教えてくれないか? |
かすみ: | え、えっと…… |
由里: | それは、その…… |
???: | フフフ……とうとうその疑問を抱いてしまったわね…… |
大神: | その声は……かえでさん! |
かえで: | 本当はシステムが完成してから教えるつもりだったのだけど……まあいいわ、ついていらっしゃい。 |
場面転換、中庭 | |
かえで: | これがその答えよ。 |
大神: | あの、かえでさん。この地面から生えている土管が何か……? |
かえで: | ただの土管じゃないわ。賢人機関から紹介されたイタリア人配管工の方に作っていただいた転移装置、その名も「ワープ◯ーン」。これはその端末よ。 |
大神: | 「◯あぷぞおん」?一体何ですか、それ? |
かえで: | 詳しい原理は私も知らないんだけど、入り口の土管から入るとどんなに離れていてもあっという間に出口の土管から出られるという、便利なものだそうよ。 |
織姫: | あ、あの、かえでさん。まさかそのイタリア人配管工って赤い服と緑の服のヒゲの兄弟じゃー……? |
かえで: | あら織姫、お知り合い? |
織姫: | !!……しっ、知りませーんっ!そんな人たち会ったこともないでーす!!……あ、わ、わたしそろそろシェスタするでーす! しつれ〜〜(タタタタタッ) |
大神: | 変な織姫くん。それはそうとかえでさん、この土管は一体どことつながってるんですか? |
かえで: | 一応、遠隔地である沖縄と仙台とは試験的につないでもらったんだけど…… |
大神: | 仙台!? と、いうことは……(妄想モードON) |
かえで: | ……まだ問題が…… |
大神: | (気丈にふるまってはいるが、旦那を亡くして心に傷を負っている若菜さん。そこへ現れてその傷を癒す俺。そして芽生える愛! いけるっ、これはいけるぞぉぉぉっっっ!!) |
かえで: | …………大神くん? 聞いてる? |
大神: | 待ってて下さい、若菜さん。今そちらへ行きますからっ!!とうっ! |
かえで: | ま、待ちなさい、大神くん! ……って遅かったわ… |
(大神): | ……ん? ……ブロックが宙に浮いてる……変な所だな、本当に仙台なのか? ……!……なんだありゃ? 目つきの悪いキノコやでっかいカメが……ん? こっちに来るつもりなのか? ちくしょう、来るな、来るなぁぁぁ! |
かえで: | あーあ、向こうからこっちへはつながっているけど、こっちからはつながってないからどこに出るか分からない、って言ったのに……。 |
レニ: | 隊長…………不様。 |
〈おまけ〉 | |
由里: | これは未確認情報なんですけど、何でも翔鯨丸に「ワープエンジン」って言うのが取り付けられてるという話もあるんです。 |
大神: | ワープエンジン? その「ワープ」ってのは何なんだい? |
カズミ: | じゃタカヤさん、ワープについて説明してもらえるかしら? |
ノリコ: | はーい、光よりも速く進む宇宙航法です! |
大神: | (あの……翔鯨丸は飛行船なんですけど……。) |
カズミ: | よくできました。で、正確な名称は? |
ノリコ: | え?え?え? あ、と、えーと、その……。 |
オオタ: | 見苦しいぞタカヤーーーーッ!!! |
ノリコ& カズミ: | コーチ! |
オオタ: | そんなことも分からんのか? バツだーーーーーっ!! |
ノリコ: | あああ〜〜〜(泣) |
オオタ: | アマノ、教えてやれ。 |
カズミ: | はい、正確に言うと「次元波動超弦励起縮退半径跳躍重力波超光速航法」略して「ワープ」です。 |
オオタ: | そのとおり! いいか、アマノ、タカヤ。人類の科学がどんなに進歩しても忘れてはならぬものが二つある。 |
ノリコ: | 「努力と根性」ですね! |
オオタ: | そうだ。タカヤ、おまえは書き取り100回でそれを見せてみろっ! |
ノリコ: | え〜〜っ、そんな〜〜〜。 |
カズミ: | それじゃ、また。バイバイ! |
大神: | ……何なんだ、一体……。 |
第十一話にて | |
加山: | 月組には月組なりの戦い方がある! |
大神: | しかし加山、降魔相手に生身というのはさすがに…… |
さくら: | そうですよ、無茶すぎます! |
加山: | ふっ、案ずるな大神。その目に焼きつけておくがいい、月組の戦い方を……いくぞっ! |
月組一同: | はっ! |
大神: | こっ、これが月組隊員……!? |
さくら: | ……まるっきり忍者ですね……。 |
隊員A: | くらえっ、マキビシ!! |
降魔: | ギャ〜〜〜ス! |
隊員B: | ふっふっふ、分身の術! |
降魔: | ギ?ギ? |
隊員C: | たぁっ!変移抜刀かすみ斬り!! |
降魔: | キ〜〜〜〜ッ! |
隊員D: | クリティカルヒット! |
こうまはくびをはねられた! | |
さくら: | ……加山さん、あそこの「全裸に覆面だけ」って格好の人は……? |
加山: | ああ、高レベルのニンジャは何も身につけない方がACが下がるからね。 |
さくら: | はあ?! |
隊員E: | か〜み〜か〜ぜ〜の〜じゅ〜つ〜!! |
ビュオオオオオオッ | |
隊員F: | 南〜〜無〜〜!! |
大神: | おおっ、孤延落からの飯綱落とし! |
降魔: | カァァァッ! |
隊員G: | くっ、こ、こいつ、手強い…………隊長、発砲許可を!! |
加山: | ……だめだ。 |
隊員G: | なぜなんです!このままではやられてしまいます! |
加山: | ふっ、何といっても、拳銃は最後の武器だからな! |
隊員G: | そ、そんなぁ〜〜!! |
大神: | ………………行こうか、さくらくん。 |
さくら: | ………………そうですね。 |
隊員A,B:こいつらには元ネタはありません。単に忍者っぽい行動をさせただけです。 隊員C:技の出どころは「ああっ女神さまっ」にでてくるニンジャマスター、幻惑の木霊です。さらにその元ネタとなるものがあるらしいのですが、そこまでは私も知りません。 隊員D:これは3D-RPGの傑作、ウィザードリィからです。ちなみにACは「アーマークラス」(防御点。低いほど良い)で、説明書によると普段着程度で10、-10ともなるとシャーマン戦車級(笑)らしいです。 隊員E:言わずと知れた(?)「さすがの猿飛」です。 隊員F:「バーチャファイター2,3」のカゲだったりします。 隊員G:たぶんこいつが一番分かりにくかったと思います。こいつはとんでもなく古い特撮番組の「忍者部隊月光」というやつで、私も以前「懐かし系」の番組で見た覚えがあるだけです。ですが、迷彩服に米兵風のヘルメット、そこに日本刀を背負って戦うといったキテレツな格好と「拳銃は最後の武器だ」というキてるセリフが妙に印象に残ってます。 もうお分かりでしょうが、「隠密諜報部隊・月組」の響きがこの「忍者部隊・月光」に似ていたとこからこの話を思いついた次第です。この話の元ネタが全部分かる方がいらっしゃれば、その方は相当な「ニンジャマニア」(^^;)でございましょう。 |
元ネタは、白土三平の「カムイ伝」ですね。アニメの「忍風カムイ外伝」で使われ
た、カムイの決め技の1つです。 オープニングでも使ってるので有名ですが・・。 腰の刀を鞘に収まった状態で背中に回し、相手から見えないようにして、身体を左右に 揺らしながら(変移) 相手に走り寄り、すれ違いざまに刀を逆手に抜いて(抜刀)、 斬りつけるという技です。 相手から見ると刀が右からくるか左からくるか判らないというのがミソなんですね。 ちなみに「飯綱落とし」も、もともとはカムイの技です。これもアニメのオープニング で出てきます。 うーん、こんなの別に忍者マニアでなくても、私たちの世代では常識だと思ってたんで すが・・。(笑) |