第十話を終って...其の壱

Chapter 10 (Section 1)


 梅の花がほころぶ季節。
 普段ならまだ肌寒さを感じる時期であるが、今日は正午現在の気温が22度、四月中旬を思わせるような暖かさとなった。ここ銀座の帝都公園にも老若男女たくさんの市民が繰り出し、うららかな日の光を浴びてお昼休みの散歩を楽しんでいる。
 と、大きなござを小脇に抱えて、大神が向こうからやってきた。

大神:ええと、あのへんがいいかな。...ったく、先に場所取りしてこいとは、米田長官も相変わらず人使いが荒いよ、全く。

 第二次降魔戦争、いわゆる「サクラ大戦」はついにその幕を閉じた。とはいえ、大神やさくら達帝國華撃團の団員たちにゆっくりと休んでいられる暇はなかった。ミカサと共に「大和」に突っ込んだ帝國劇場のサルベージと再建、花組の公演再開に向けての準備に舞台稽古...てんてこまいの日々が続く。米田は米田で、帝都に天文学的な被害をもたらしたこの事態の残務処理と帝都復興に走り回る毎日であった。
 こうして、米田が「約束通り宴会じゃ、大宴会じゃあ!」と威勢よくのたまわった勝利の大宴会も延期、延期にならざるを得なかったのである。

 ...だが、本日は帝劇花組復活公演の初日。帝劇関係者一丸となって復興に励んだ結果、異例の早さで今日の復活公演が実現したのである。まだ随所に破壊のつめ跡が残る帝都にあって花組公演再開の明るいニュースは帝都中を駆けめぐり、今日は早朝から帝劇前に大勢の観客が詰めかけ長蛇の列を作った。おかげでモギリ役の大神は今日はもうくたくたであったが、
「おい、大神い! 今日こそは帝國華撃團の大勝利と、花組復活公演初日を祝ってどかーんと大大大宴会じゃあ! てめえ、もう客のキップもぎり終わったんなら一足先に行って場所とっといてくれや、頼んだぞ!」
とまあ、こういう米田のいいつけで、まだ花組団員が舞台に上がっているうちに大神ひとりここまでやってきたわけである。

 梅の木が並んだ公園の片隅に、ちょうどいい大きさの日溜まりがある。大神はそこで手に持った大きなござをばさりと広げ下に敷いた。今日は風がないからござが飛ぶ心配もない。とりあえず四隅におもしの石を置いておく。

大神:うん、これでよし、と。あとはみんなが来るのを待つだけだな。ああ、しかし、ほんといい天気だなあ...

 ござの上に寝ころび、行き過ぎる人々の楽しげな声を耳にしながら、大神はあの戦いの日々にしばし思いを馳せる。
 ...熾烈な戦いだった。
 大神たちが失ったものは、あまりにも大きかった。
 だが...
 (確かに我々の払った犠牲も大きかった。だが、俺達の守ろうとしたものは、そう、この人々の笑顔だ)
 人々の笑顔。帝都市民の変わりなき日常の生活。それこそがもっとも価値ある、かけがいのないものじゃないか。平和の戻った今、大神はそう確信するのだ。


 「大神さーん、大神さ〜んっ」
 ふと、聞き慣れた女の子の声が遠くから大神の耳に届く。起きあがって声のした方を見るに、大きな風呂敷包みを両手に抱えて椿がやってくる。

大神:つ、椿ちゃん!
椿:はあ、はあ、ご苦労さまです、大神さん。どっこいしょっと、ふー、重かったあ。お皿にコップに、あとお飲み物、先に持って来ちゃいました。
大神:でも、あれ、まだ公演中の時間じゃなかったっけ? 売店の方は大丈夫なの?
椿:あ、今日はアルバイトの茜ちゃんに任せてきちゃったんです。茜ちゃん、もう売店のお仕事もひとりでちゃんとできるようになりましたし、それに、大神さんひとりで待たせてるわけにもいかないでしょ?
大神:あ、ありがとう、椿ちゃん。そうか、茜ちゃんか。彼女も最近は売り子さんぶりがすっかり板に付いたって感じだね。最初は華撃團の出撃スロープにゴミ袋放り込んだりして大変だったけど。
椿:あ、あれは、あの出撃スロープをダスターシュートだなんて教えちゃったりしたからですよお。ごまかすにしてももう少しましな言い訳もあったのになあ。
大神:ははは、ほんとだ。...じゃ、みんな揃うまでにはもう少し時間がかかるか。
椿:そうですね、そろそろ公演も終わる頃だと思いますけど...まあ別に急ぐこともないですしね、ゆっくりしてましょう。...あ、おせんべい、食べます?
大神:あ、いや、別にいいよ、ありがとう.....しかしなあ、まさか椿ちゃんまで帝撃の戦闘員だったなんて、まさか想像もしなかったなあ。
椿:えへへ、そうでしょ?
大神:でもなあ、君たちとずっと一緒に働いていながら全然気づかなかったなんて。隊長のくせに、だめだな俺って。
椿:ごめんなさい、敵を欺くにはまず味方からって、米田長官もあやめさんも花組の皆さんには黙ってろって言われてたもんですから。訓練、けっこう大変だったんですよお。
大神:へええ。そのあたりの話、一度じっくりと聞いてみたいものだなあ。
椿:えーと、そうですね、時間もあることですし、この際ミカサが出来るまでのお話もあわせてしゃべっちゃいましょうか。
大神:お、いいねえ、ぜひお願いするよ。
椿:はい! じゃあ、こほん。『サクラ大戦 空中戦艦ミカサ竣工』のお話です。どうぞ!


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