ホロ車には直接照準用と間接照準用の2種類の照準器がある。
砲身の左側にあるのが直接照準用の照準器である。これは九七式57mm戦車砲の照準眼鏡を三八式15cm榴弾砲用に焦点鏡目盛を交換したもので、3,000mまで照準できる縦目盛と、左右各100milの方向目盛が刻まれていた。照準眼鏡は乁の字形の支持架で砲の搖架に取り付けられており、砲身の左右上下の動きに伴って動くので、照準眼鏡を見ながら照準を直接目標に合わせることが可能であった。
間接射撃を行う場合には車長用眼鏡を使用した。正面右側の窓にあるのが車長用眼鏡で、これは三八式15cm榴弾砲の照準眼鏡をそのまま使用していた。車長は車長用眼鏡を使用して照準点に照準が合うように、操縦手に指示して自走砲を誘導した。また、必要であれば砲手に命じて砲の方向を修正させた。ホロ車の砲は左右には僅かな角度でしか動かないため、これはチームワークが必要な難しい作業だった。
ホロ車の砲はなぜ左右に僅かな角度でしか動かないのか
開脚式の近代火砲では、小架以上が左右に大きく動くようになっている。ところが、旧式火砲の三八式15cm榴弾砲では方向回転軸が小架と搖架の間にあり、砲身はU字形の小架内側の狭い範囲でしか動かすことができない(下図参照)。これは、単脚式の三八式15cm榴弾砲では、砲身を左右に大きく振って発射すると砲車が転倒する危険があるためである。
自走砲のホロ車では転倒のおそれはないのだが、これを根本的に直そうとすると砲架を作りかえなければならない。急造自走砲のホロ車ではとてもそのようなことはできないので、小架の内側を削って動く範囲を僅かに広げるだけの改修にとどまった。