ラパス

(バハ・カリフォルニア)

ダイビング・ログ後編


9月5日
#5 エル・バホ
[31分/最大水深34.4b/透明度15b/水温28℃]
#6 エル・バホ
[29分/最大水深38.4b/透明度15b/水温28℃]

クジラを見たとあっては、行き帰りのクルージングも眼が離せない。
エル・バホまでは2時間半から3時間の距離というんだから、楽しみだ。
普通、そんな時間は退屈な苦痛そのもの、GWに那覇ステイでケラマ潜った時なんか寒いし揺れるし漁船だし…。
それを楽しいと思わせるのがコルテス海。

まずは、バンドウイルカのバウライド。
バハ・クエストの伊藤さんが、「あ、イルカ」とぼそっと言って、気が付いたのは2、3人。
船首まで行くと、3頭のイルカが舳先の下を先導するように泳いでる。
おもむろに1匹がジャンプ!
その後すぐどっかに行ってしまったので、集まった人たちはがっかり。
でも、みんなキャビンに帰らないで、デッキでウロウロ。
すると、伊藤さんが「マンタが跳んでる」って。
なわけないだろぉ!と叫んだ次の瞬間、我が目を疑った。
跳んでます。
しかも1匹や2匹ではありません。
おびただしい数の群れがあって、そこからピョンピョンとマンタ様が海面に跳ねています。
小さいですがあのイトマキはまさにマンタ様、トビエイじゃありません。
横の漁船はそのマンタ様を捕まえるために来ているとか。
ひぇ〜。

   これじゃよくわからんという人は画像をクリック!

エル・バホは以前から漁場として使われていた場所だから、魚影の濃さは保証付き。
外洋の浅瀬の根なので、ラ・レイーナやロス・イスロテスと違い、陸上に目印となるような島はない。
中央の根を挟んで南北に小さな根があり、その範囲は1本のダイビングでは回り切れない広さ。
懐中電灯のような水深測定器で、20mくらいの根のトップを探す。
たまに中層の大きなサカナに当たって、10mと測定されたりするあたりが、魚影の濃さを物語っている。

ところが1本目は大物不発。
パシフィッククレオールフィッシュが渦巻いていたが、それ以上に目に付いたのが各種クラゲ・プランクトン類。
スプリングだったので手足や頬、唇まで常にチクチク。

一緒に潜った女性が、ガイドのマウリシオについて、泳ぐのが速すぎるとか、あっち行ったりこっち行ったりしたから何も見れなくて疲れただけとか、そんな悪口ばかり言ってる。
他のチームも何も見れなかったみたい。
船上に漂うヤな雰囲気。

気を取り直して2本目、相変わらずの透明度の悪さ、プランクトンの多さ。
今回も何も出ないのかなぁとあきらめかけていた20分過ぎ、突然、冷水塊にあたる。
スーツに保護されていない皮膚全体に鳥肌が立つ。
この感触はそう、ラヤンラヤン以来だ。
あの時もこうして冷水塊にあって、ハンマーが現れたんだっけ。
なんて考えてたらみんな視界から消えた。
私よりちょっと深いところにいたマウリシオが指差す先に、ハンマーの大群が見える。
ひえー、そんな都合のいいことがあるのかよ!
もうダッシュでハンマーの方向へフィンを漕ぎ、接近。
ラヤンラヤンのよりスリムで、茶色いハンマーだ。
程なく離れていく大群を見送ると、自分が水深40m近くまで来ているのに気付き、ゆっくりと浮上していく。
必死にダッシュした際、5年間愛用したSプロのシュノーケルを落としてしまった。

船上ではハンマーの大群との出会いにみんな大ハシャギである。
そんな中、先ほどの女性は、遠くてビデオに撮れなかったことに腹を立てていた。
良く怒れるものだと感心したが、そのふくれっ面をも吹き飛ばした出来事。
ラパスへ向かう帰り道、現れたのはナガスクジラだ。

デッキで日光浴しながら「SOL」(メキシコNO.1ブランドのビール)を飲っていると、伊藤さんがつぶやくにしては大きな声で、「ん?でかいな。ナガスかもしれない」と言った。
ナガスクジラ。
シロナガスクジラに次ぐ地球上で2番目に大きな生物。
10mを超す巨体で、昨日のゴンドウクジラもでかかったけど、スケールが違う。
潮を吹く時の音の大きさも並みはずれている(気がする)。
コルテス海では夏場が目撃のピークらしいが、それでもめったに見れるもんじゃないって。
またもや惰性戦法で寄る。
大きい。
クジラってこれほど大きいとは思わなかった。
潮吹きする度に、クジラのいる周りの海水が渦巻き、波立つ。
黒光りするその背中には神々しさすら感じた。
最後に尾を高く上げて彼は深海へと潜っていった。


沖磯?いえ、ナガスクジラですって!

9月6日
#7 ロス・イスロテス
[48分/最大水深22.2b/透明度15b/水温29℃]
#8 ロス・イスロテス
[49分/最大水深19.8b/透明度15b/水温30℃]

ロス・イスロテス。
ラパスからボートで約2時間。
周囲約1qの切り立った孤島に、400頭に及ぶ野生のアシカの楽園がある。
アシカのコロニーというとガラパゴスを連想するが、ここにいるカリフォルニア・アシカとガラパゴスのガラパゴス・アシカは親戚らしい。
(厳密にいうとカリちゃんの亜種がガラちゃん)

チラッと横目でカメラ目線。

彼らは興味深そうにこちらの様子をうかがい、とにかくじゃれてくる。
チラッと横目で通り過ぎたとと思ったら、5メートルくらい先で反転して突進してくる。
目の前でまたくるっと向きを変えたり、われわれの周りをぐるぐる回ったり。
スクーバをつけているときはお客さん扱いだが、3点セットに変えるとグッとフレンドリーになる。
こちらがジャックナイフでもぐると2,3匹同時にダイブ。
水中でみんなででクルクル回って、一番早く上がるのはもちろん私。
でも彼らも一緒に浮かんできて、オウッオウッ。
どうせアシカと遊ぶならこちらのほうが100倍面白い。
が、ワンパターンな泳ぎをしたり、息を切らして水面でじっとしてたりすると、すぐ飽きられどこかへ行ってしまう。
この間がすごく寂しかったりするので、こちらは無理する。
で、今日は疲れた!ってことになる。

 恍惚の表情。

海棲哺乳類といえば癒し系のイルカに、神々しい系のクジラが主流ですが、犬系のアシカも断然オススメ。
しかも、ロス・イスロテスに行けば、100%アシカに会える。



#9 イスラ・バジェーナ
[35分/最大水深16.1b/透明度15b/水温29℃]

3本目はイスラ・バジェーナ。
英語ではWhale Island、日本語なら「鯨島」といったところか。
横から見ると、たしかにクジラの形をしている。
デカいゴンベと、固有種たくさんと、3ヶ所のケーブがあった。
鯨はいませんでした。


イスラバジェーナにて

9月7日
#10 エル・バホ
[28分/最大水深36.3b/透明度15b/水温30℃]
#11 エル・バホ
[31分/最大水深38.4b/透明度15b/水温29℃]

何も見えない海中でどうやって群れを探すのでしょう?
最終日、バハ・クエストのオーナー伊藤玄さんのガイディングには脱帽しました。
2本もぐってハンマー遭遇率100%。
エル・バホっていっても、どこにでもハンマーがいるわけではない。
むしろ、ハンマーに逢えなかったら・・・何なんだ!ってくらい何にもいない。(#5参照)
匂いか、音か、目がいいのか、それともただの勘か。
透明度が悪く、海面も海底も見えないところをただ流す。
辺りにはパシフィッククレオールフィッシュのごっつい群れのみ。
魚を掻き分けてただひたすら流す。
たまに弾丸マグロ系が通り過ぎるが、魚種は特定できない。
水深は30メートル前後と常に深い。
エントリーから20分、伊藤さんが「もうだめかなって思った」時、不意に冷水塊に包まれる。
ウェットの首の辺りから冷たい水が入り、背筋がゾクっとする。
眼下を通り過ぎる、十数匹の茶色い巨体。
ハンマーだ。

ほかのガイドさんで潜ったチームは外したっていうんだからたまらない。
船上に漂うイヤな雰囲気。
かわいそうな他のガイドさん。
2本目は、伊藤さんチームの後を追うガイドと、独自のルートで行くガイドさんに別れた。
独自のルートで行ったチームと、ガイドさんは帰りの船中で無言だった・・・

エル・バホの根はトップでも20メートル前後なので、海面には何もない。
が、どこから流れてきたのか、アシカがコルテス海を去る我々に手を振っていた。(ように見えた)
かわいすぎる。

 
ダイビングとアルコールは両立
しえなかったが、これこそ究極
の新しい関係ではないだろうか
(ロープは関係ありません)

アシカとのじゃれあい。
迫力のハンマー。
優雅なマンタ。
バハ・カリフォルニアは絶対オススメ、元本保証?です。

ところで、20世紀最後の年は、完全にリゾートダイバーだった。
しかも27タンクのうち5本、ハンマーと遭遇しており、「ハンマーヘッド・ミレニアム?」として私のダイビング史に刻まれることになるでしょう??