・レビル奪還作戦
第一次奪還作戦
陸軍特殊部隊による奪還作戦（一月二二日〜二四日）
難民船を用い、負傷兵の後送に偽装してサイド３に侵入したところ、発見され、二四日の
午前中までに全滅した。
第二次奪還作戦
連邦軍情報局執行部隊による奪還作戦（一月二五日〜三一日）
第一段階（一月二六日〜一月二九日）
作戦目的：公国軍警備部隊に対する牽制・陽動
指揮官：ステファン・リーヴィス少佐
二六日〇〇〇〇時 ：ジャブロー出発
二九日〇六三八時 ：サイド６着
三〇日〇四〇五時 ：作戦開始
三〇日〇四一五時 ：作戦完了撤収
第二段階（一月三一日）
作戦目的：レビル中将奪還
指揮官：ファン・ヤンパン中佐
一〇〇〇時 ：南極講和会議本会議開始
一〇〇五時 ：『アルファ１』・『アルファ２』・『ベータ１』離陸。
一一一〇時 ：本会議、一時休憩
一一一一時 ：オデッサ・ケープタウン両基地において、クーデター警報
一一一二時 ：『ベータ１』ＥＭＰジャミング実施。
：公国軍艦隊警戒命令発令
：連邦軍対応レベル上昇予備命令発令
：『メイジャイ２』交信途絶
：哨戒中の『アキレス３』に偵察命令
：『アルファ１』・『アルファ２』加速開始。
一一一六時 ：『アルファ１』・『アルファ２』、『ロメオ１』を捕捉。
一一二一時 ：連邦軍対応レベル上昇命令発令
一一二二時 ：オデッサ基地クーデター鎮圧報告
一一二三時 ：『メイジャイ２』ミノフスキー粒子散布。
三二：高度３００：『アルファ２』、『ロメオ１』に接舷
五四：高度２３０：『アルファ２』、『ロメオ１』に接舷
一一二四時〇〇：高度２００：『アルファ１』突入準備開始
〇六：高度１７０：『アルファ１』突入開始
一三： ：Ｓ２カーゴベイエリア、操縦室側ドア到着
一七： ：Ｓ２廊下突入
一九： ：Ｓ２操縦室前到着
二一： ：『アルファ２』操縦室ドア解錠失敗
二二： ：Ｓ２操縦員控え室制圧
二三： ：開扉装置設置完了
Ｓ１、居住モジュール突入。レビル中将確保
二四： ：Ｓ２操縦室突入、制圧
二五： ：Ｓ２、『アルファ２』との接続開始
二七：高度０７０：Ｓ２任務完了
『アルファ２』疑似人格プログラム実行
この小説では、電離層内部の通信途絶圏を高度七〇〜三〇〇キロメートルと設定してい
る。この圏内の場合、無線通信が不可能というわけである。なお、作戦圏内ではミノフス
キー粒子を散布していない。散布した場合、連邦軍が何らかの作戦を行っていることが露
見してしまうからである。ただし、『アルファ１』・『アルファ２』の加速段階では『ベ
ータ１』がＥＭＰジャミングを、『メイジャイ２』がミノフスキー粒子の散布をそれぞれ
行って『アルファ１』・『アルファ２』を支援している。この支援作戦の欺瞞として、オ
デッサ・ケープタウン両基地のクーデター未遂事件を演出したのである。
この作戦は通常の軍の指揮系統をほとんど無視し、最高軍司令官である連邦最高行政会
議議長の直接命令で行っているため、ジャブローの連邦軍統合司令部にも充分な情報の提
供を行わなかった。事前に作戦の全容を知らされていたのは司令官のカーン大将だけであ
る。『メイジャイ２』は空軍機なので、一応空軍の首脳クラスにも通知が行った。南極の
交渉団の方に対してもほぼ同様で、作戦の大要だけでも知らされていたのは事実上の交渉
団長であるヤング事務次官だけである。指揮系統を無視した命令は軍組織を混乱させかね
ない。このあたりについて、カーン大将などはかなり強固に苦言を呈したらしい。結局押
し切られた形になったが。結果オーライということで「英断」扱いされたこの決断だが、
失敗すれば散々非難されたであろうことは想像に難くない……といいたいところだが、こ
の点については明確な判断があった。つまり、この作戦を失敗した場合、どのみち連邦も
連邦議長の彼も破滅するしかなかったのだ。
なお作戦後、作戦の実行に当たった情報局執行部隊の存在を欺瞞するため、作戦を実施
したのは「軍の特殊部隊（ウソではない）」として、実際には作戦に失敗した陸軍の特殊
部隊の成果であることを強く示唆する発表を行った。
作者コメント：ひどい話だ。
概念図
低軌道からレビル中将を乗せたコムサイの進入を監視していた公国軍艦隊だが、『アル
ファ１』・『アルファ２』の接近を察知できなかった。
これはこの二機がＥＭＰジャミングとミノフスキー粒子の隠れ蓑を使ったからだが、通
常ならば警戒要因となるこうしたＥＣＭ手段を看過していたのは、これらがオデッサ・ケ
ープタウン両基地におけるクーデター騒ぎと結びつけて考えられていたからである。
伏線としては公国軍が入手していた連邦内部のクーデター発生確率に関する報告書（た
だし、その情報の内容は正確である）と、サイド６に対する陽動攻撃がある。
コムサイの速度はおおよそ毎秒三・五から四キロメートル程度に設定した。この数字は
ちょっと遅めかもしれない。つまり、毎秒四キロメートルで時速に換算すると毎時一万五
千キロメートル。この高度の音速を調べていないが、マッハ二〇というほどではないはず。
一方、『アルファ１』・『アルファ２』は毎秒一〇キロメートルと、脱出速度寸前まで
加速したのち、ほぼ自由落下状態でコムサイの進路および速度にあわせている。コムサイ
のコースはほぼ完全に分かっているので、まあ不可能ではないだろう。
・ミノフスキー粒子編
この世界におけるＳＦ的設定の双璧をなすミノフスキー粒子（以下Ｍ粒子）について、
細かい説明を行ってもおもしろくないので（しかし、レファレンスって、こういうつまら
ん話をする場所じゃないのか、という気もするが。なお、双璧のもう一方はいうまでもな
くニュータイプ理論である）、ここではざっと流し……たいが、特に第二章ではミノフス
キー粒子を散布したり核爆発を起こしたりと、あの手この手の電波妨害（ＥＣＭ）が登場
する。核爆発による電波妨害（ＥＭＰジャミング）はまあともかく、ミノフスキー粒子を
使うとなると、結局ミノフスキー粒子とはなんぞやという話になってしまうのだな、これ
が。というわけでミノフスキー粒子について、ちょっくら整理しようということだ。
ミノフスキー粒子の効果というものは、要するにある周波数の電磁波（つまりマイクロ
波や超長波などのいわゆる電波。毒電波は多分トラップされない）をトラップされる（闇
の向こうに消えてしまう）のだと理解していただきたい。どういうわけか、同じ電磁波の
可視光線・Ｘ線・ガンマ線（あと赤外線もだな）などは消え去らない。闇の向こうに消え
たら（エネルギー保存の法則的に）まずいんじゃないか、と思うあなたはお立ち会い。ち
ゃんと消えた分だけ特定の波長の電磁波としてお帰りなされる。よかったネ、じゃなく、
こいつが電子機器に悪さをする（本編第二章でも活躍した核磁気パルス（ＥＭＰ）現象に
似てなくもない）。集積回路を「焼いて」しまうのだ。このおかげでいろいろな現象が発
生するが、特に厄介なのは次の三つである。
其の一：電波索敵（レーダー）が使えない
其の二：無線通信が使えない
其の三：保護されていない電子機器がおバカになる
其の一については、これはもう仕方がない。レーダーでダメなら、Ｍ粒子にトラップさ
れない別の電磁波を用いた索敵方法を選択するしかない。となればさて、レーダー以外の
センサーに何があるか？
現代においては、アイボールＭｋ�儀織札鵐機爾鬚呂犬瓩箸垢覲銅錣慮�学系センサーが
最も揃っている。特にアイボール型センサー（アメリカ軍の命名による）は、各種の機器
で機能向上を図ることもできるという優れもので、信頼性も極めて高い。となれば公国軍
が有視界戦闘を前提とした兵器体系を構築したことも納得できようというものである。こ
れが取り扱うのは可視光線と呼ばれる周波数の電磁波のみだが、他に近いものとして赤外
線などが挙げられる。また、センサーの分解能（簡単にいえば遠くの細かいものを正確に
観る能力。視力の良い人は悪い人よりも分解能が優れている）を向上させる光学望遠鏡な
どの手段も揃っている。
こうした光学系センサーがほとんど全てのように思われるが、実際にはそんなことはな
い。聴音機（ソナー）を使用した索敵は対潜水艦戦（ＡＳＷ）以外にも使われているし、
『０８小隊』では大活躍だった。他に『ガサラキ』とかでも使っていたのが記憶に新しい。
地磁気の変動を利用したセンサーは対潜水艦戦（ＡＳＷ）では定番である。第二章で出て
きたニュートリノセンサーに至っては地球の裏側の物体をチェックする能力があるという
ＳＦ兵器である（ちなみに、現代の技術レベルでは、太陽をとらえる程度のことでも恐ろ
しく巨大な水槽（カミオカンデ）が必要である）。まあ、要するにレーダーや目玉以外の
センサーも使えなくはないということである。
其の二として挙げた無線通信の阻害についてはかなり深刻である。軍事にとどまらず、
現代の技術体系は通信技術に大きく依存している。Ｍ粒子の存在と、コロニー落着による
海洋ケーブル網の破壊は、この前提を大きく揺らすものである。他の通信手段に何がある
か。
短距離有線通信網（電話回線とか有線放送とか。当然国際通信は不可能）、可視光線に
よる通信（レーザー通信・発光信号・手旗信号・狼煙（のろし）など）、物理的手段によ
る通信（伝令・伝書バトなど）……なんか、書いていて我ながらバカっぽくなった。しか
し、これが現実だ。要するに、長距離通信は絶望的に難しくなったということだ。このあ
たり鉄砲玉や戦車の話ではないのでなんか理解しにくいが、近代戦では通信の重要度はお
そろしく高い。
例を挙げて簡単に説明してみよう。敵が攻めてくる。敵規模は一個グループで四単位。
味方の規模は十単位としておく。想定される侵攻方向は三方向としておこう。同程度の単
位をぶつけると阻止が可能、それを越える単位をぶつけると勝利できるとする。
さて、まず通信が使えないというシチュエーションで考えてみよう。敵を阻止するため
には最低四単位必要である。敵の侵攻方向は三方向のどれか。とするならば十二単位の味
方が必要になる。しかし、十単位しかない。二単位足りない。つまり、確実な防御は不可
能という結論になる。
次に、通信可能なシチュエーションで考えてみよう。この場合、一単位ずつ偵察に出し
ておけばいい。敵を発見したら通信させて、残る七単位で迎え撃てば簡単に勝てる。
まあ、簡単にいえばこういうことだ。戦場に投入できる戦力の効率が増すということだ
が、通信を使えない状況と比べてみれば、単純に戦力が数倍したのと同じことになる。
Ｍ粒子環境下にあっては、この前提は全て成立しなくなる。あるいは非常に効率が悪く
なる。特に長距離通信の分野においてはそうだ。電波の発信者と受信者との間で高濃度の
Ｍ粒子が存在すると通信が行えなくなるため、遠距離になるほど無線通信が成立しにくく
なる。制宙権を奪われた連邦軍にとって衛星通信の信頼性は暴落したため、また海洋間の
ケーブル通信もコロニー落としの余波で壊滅したため、全てダメになっている。その結果、
連邦軍は有り余る戦力を持ちながら、公国軍に好き放題にもてあそばれたのだ。公国軍の
方は、制宙権を確保していたことから、衛星通信を連邦軍よりはマシなレベルで使えたは
ずである。つまり戦力の集中を行いやすかったはずである。このあたり、映像ではほとん
ど描写されていなかったが、実のところミサイルがどうのこうのいう以上に深刻だったは
ずだ。
其の三として挙げた電子機器に対する破壊効果は、あまり深刻ではないと思われる。い
や、無視していいという意味ではないが。要するにＭ粒子あるところに電磁波は付き物だ
ということであり、それに対する防護装置は存在する（でなきゃ石器時代に戻ってしまう
ゆえ）という以上、あと問題になるのはコストだけである。打ちっ放し（スタンドアロー
ン）のミサイルが板野マジックよろしく飛び交うというヴィジュアル的な面での豪勢さは
ないが、どうしてもというのなら保護装置コミでミサイルを造ればいい。数の必要な局面
では無誘導兵器を使っていればよし。どうせ索敵能力はほとんど有視界レベルなんだし。
通信能力もほとんどなくなってるし。ホーミングさせたけりゃ赤外線ホーミングで充分。
慣性飛行／終末アクティブレーザーホーミングなんてもったいないわ。ぜいたくは敵よ。
まあ毒にも薬にもなる（ちょっと毒毒っぽいが）Ｍ粒子だが、対処できない魔法の力と
いうワケでもないのだってことですな。
こういう話をさらに煮詰めたいという奇特なお方は、Ｍ粒子を用いた物理学のコーナー
へどうぞ。もう、小難しい話はこの程度にしてくれぇ、というご意見はもっともなので、
そういう方は次の記事を読まないほうが吉でしょう。悲しいことに、立場上作者はそうい
う具合にはいかないらしい。
ミノフスキー物理学
くそ、やっぱここまで踏みこまにゃならんか。俺は面倒が嫌いなんだ(爆)。
まずはミノフスキー粒子（以下Ｍ粒子）を定義しよう。一般に、Ｍ粒子とは質量がほと
んどゼロの、正か負に帯電した粒子のことだそうである。『機動戦士ガンダムＲＰＧ』に
よると、ミノフスキー物理学は、宇宙を形作る粒子を光子とＭ粒子の二つに統一し、仮想
粒子たるＭ粒子はこの次元においては相転移した空間にしか存在しないとした。で、この
「相転移した空間（Ｍ空間）」は、ある一定以上のエネルギー（Ｍ空間敷居値）を補給さ
れる限り維持されるのである。
なんのことやら手前どもにはさっぱりな話だが、要するに、エネルギーの虫食いみたい
な空間が発生し、エネルギーの補給が止まるとその空間は消えるということである。
だからどうだというのか？
効用� В誘�間はこの次元に存在するが、そのためにはエネルギーを要求する。つまり、
核融合反応をこの空間で囲ってしまうと、核融合反応によって生起するプラズマはＭ空間
が存在する空間を越えない。また、何らかの理由でプラズマの封じ込めに失敗したとして
も、この次元から転移していくＭ空間がプラズマのエネルギーごと縮退するため、ほとん
どエネルギーが漏れない。これがミノフスキー／イヨネンコ型核融合炉の原理である。
効用�◆В誘�間(a)の縮退は、別のＭ空間(b)を使用することにより制御が可能であり、こ
れを利用してＭ空間(a)の持つエネルギーを通常空間に放出することが可能である。この
ことは効用�，能劼戮殖誘�間によるエネルギーの封じ込めと同じ原理を使用している。こ
れがメガ粒子砲の原理である。
効用��：Ｍ空間がエネルギーの補給を失って縮退するとき、通常空間に相対性理論のシュ
バルツシルト解と似た「穴」を残す。って、そりゃブラックホールのことだぞ、おい。い
えいえご安心を。この「穴」に落ちるのは、Ｍ粒子のエネルギーに対応する一部の波長の
電磁波だけである。ただし、その「一部の波長の電磁波」に、マイクロ波から超長波など
の電波通信に使われる波長の電磁波が含まれることが問題になる。これのおかげで無線通
信が不可能になるのだ。
効用�ぁА峽蝓廚僕遒舛拭淵肇薀奪廚気譴拭謀甜�波は、Ｍ粒子のエネルギー準位に相当す
る波長の電磁波を放出する。おそらく、これはエネルギー保存の法則に従ってのことだろ
う。この電磁波の送り主はＭ粒子の存在する仮想空間からだ。だからどうなのかというと、
Ｍ粒子の存在する空間においては、電磁波に弱い機器があろうとお構いなく電磁波を放出
するので、電子機器にとってはたまらない。つまり、Ｍ粒子を遮断する装備を持たない電
子機器は、電磁波によって機能を喪失してしまうのである。効用��の無線通信妨害と併せ
て即物的に考えると、ミサイルのような電波誘導兵器はほとんど能無しである。
効用�ァВ洋鎧劼鯱�続的に放出すると（つまりＭ空間を連続的に生成すると）、Ｍ粒子同
士に発生する斥力（反発力）により、Ｍ粒子の立方格子が形成される（これをＩフィール
ドと呼ぶ）。これを連続して続けることにより、こうして得られる一種の「場」を利用し
て浮力を得ることが出来る。つまり、ミノフスキークラフトのことである。『ガンダムＲ
ＰＧ』には「Ｍ粒子は地球の重力に強く引きつけられ、地上に濃密なＭ空間を形成する」
とあるが、Ｍ粒子というのは「ほとんど質量を持たない（微妙な表現だ）」ので、この説
明はおかしい。少なくとも説明不十分だ（ホバークラフトじゃないんだから）。ここでは
やはり、Ｍ粒子の生成速度から説明した方がいいだろう。単位空間あたりのＭ粒子密度が
上昇すると、斥力が発生して浮力となる。Ｍ粒子は相互に支え合うので、大質量によって
単位空間あたりのＭ粒子密度が上昇するとそれだけ斥力が増し、浮力も上昇する、と考え
るべきではないのか。なお、Ｍ粒子の斥力を局限まで高めると、高エネルギーを持ったＭ
粒子をも押し返すようになる。いわゆるＩフィールドによるバリアーはこれを指す。
と、こういうわけでガンダム世界の魔法の七割ぐらいはこれで説明が付くというもので
ある（あとの二割はサイコミュ技術だ。最後の一割はザビ家にまつわる各種の謎）。とこ
ろで、『ガンダムＲＰＧ』にはＭ粒子の寿命を２．５×１０６秒としているが、これは１
０の六乗倍のことではないのか？しかし、それだと一月近く寿命が続くことになり、それ
はそれでかなりデンヂャラスである。このあたりも謎だ。私見では斥力が原因でパッと拡
散してしまって、ほとんど無害なものになるのではないかと思うのだが。
しかし、この話って、理解できました？ 手前どもにはなんのことやらさっぱり。高等
物理学の素養が必要っぽいですね。「なんだ、貴様その程度で音を上げているのか」とい
うコーチ向けの御仁は、ご自分で論理体型を再構築してみるというのも楽しいかもしれま
せんな。その折りには手前めもご相伴をお預かりいたしたく……「ならぬわ町人」へへぇ、
「うぬは拙者を侮辱する気か」とんでもないことで御座います……（以下省略）。
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