「地球をとりまく巨大衛星軌道基地“オービタル・リング・システム”。 それは地上と外宇宙を結ぶポートターミナルであり、また惑星進出への玄関でもあった。 このオービタル・リング内には大型宇宙船の発着ポートの他、工業、住居、軍事施設など、人類が生きるためのあらゆる施設が整っており、まさに小国家と言えるほどの規模を誇っていた。 また地上に伸びる機動エレベーターが各地に点在し、宇宙船を使うことなくオービタル・リングへの移動が可能であった。 この完成により、地球の工業、商業の中心は宇宙へと移動し、地上におけるやっかいな環境問題も無くなっていた。 だが、そんな人類繁栄は突然の異星人襲撃によって破られた。 時に連合地球暦192年。 地上に封じ込められた人類にオービタル・リングからの攻撃を防ぐ方法はなかった。 大地はえぐられ、都市は崩壊し、地球は徐々に荒廃していったのである。 地球は滅亡への道を歩みだしていたのだ。 そんな時だった、彼が現れたのは……」 この文章は第一次ラダム戦役時、初代スペースナイツ司令ハインリッヒ・フォン・フリーマンが激務の合間に記した手記の一節である。 今にして思えば、これが全ての始まりと言えるのかもしれない。 だが、この時から10年以上の時が過ぎた現在においてすら、スペースナイツ等ラダム研究諸機関の努力にも関わらず、テッカマンやラダムの謎の多くはいまだ解明されていない。 このレポートは、それらに先駆けてラダムの謎を解き明かそうというわけではない。 これからも続くであろうラダムとの戦いにおいて、わずかでもスペースナイツの――人類の助けになれば幸いである。 連合地球歴2XX年12月15日 ロン・チャン |