(これは『テッカマンブレード』第四十五話「真実の侵略者」におけるオメガの独白です。) 我々ラダムは、肉体を持たない脆く弱い知的生命体だ。それ故、我らは、自らの手で侵略活動を行うことが出来ない。そして、種としての繁殖が旺盛な我々は、一つの惑星に収まりきれなくなっていた。我々ラダムの旅は始まった。全宇宙に我々ラダムを繁殖させる旅が。そして、その一波とも言える我々は、長い旅の末に遂に見つけた。“人類”という格好の宿り木を。 我々の遭遇した地球人類。それは、ラダムにとって理想的な肉体であった。適度に進化した頭脳と行動的な肉体。彼らは、我々に興味を示し、ラダムの母なる母艦に乗り込み、そして、取り込まれていった。我らラダムの侵略システム、テックセットシステムに。 テックシステム。それは、我々ラダムがその「脆く弱い肉体」という致命的な欠陥を補い、体力的に勝る種族と戦えるように作られたシステムである。それは、ある一定以上の知的生物が接近すると自動的に発動する。システム内に取り込んだ生物から侵略すべき星の情報を引き出し、そして、我々の尖兵とすべく、ラダムの本能を植え込み、テッカマンへと肉体をフォーマットしていく、理想的なシステムなのだ。だが、この完璧なシステムから予想外の問題が起こった。 テッカマンへと肉体をフォーマットしていく複雑な調整段階が、ある外的要素により破られたのであった。それにより、不完全なテッカマン、すなわち“裏切り者”テッカマンブレードが生まれたのである。ブレードの裏切り。それは、こともあろうに父相羽孝三により起こされた。それは、我々ラダムにとって、大きな痛手となった。それにより、我々の地球侵略計画は、大きくつまずいた。不完全なはずのブレード、排除されたレイピアが我々に牙をむけたから。 それにより、ダガー、アックス、ランスという大切な仲間を失ってしまったが、こうして来るべき日を目前にした今、彼らの死は無駄ではなかった。彼らの死は栄光あるラダムの礎となったのだから。 我々の計画を妨害したのは、それだけではなかった。本来、ラダム母艦は、アルゴス号を取り込み、直接地球に向かうはずだった。だが、父孝三の妨害により、制御不能となり、月の裏側に不時着してしまった。 私は即座に計画を変更した。我々はまず、オービタルリングを襲撃し、前線基地とするとともに、無尽蔵にあるソーラーエネルギーを使い、ラダム獣を育てるプラントとしても使用した。 そんな我々の前に、人類は無力であった。裏切り者ブレードが現れるまでは…。我々はORSを足場に、地球侵略を着々と進行させた。我々の真の基地が月の裏側にあると知らず、地球人は数々の作戦を仕掛けてきた。だが、所詮は虫けら。我々ラダムの敵ではなかった。 成長したラダム獣はORSから地上を目指す。そして、地面に潜り込み、その姿を“ラダム樹”に変化させる。そして、開花したラダム樹は、人間を取り込み、素体状態のテッカマンを作り出す。ラダム樹の真の目的はテッカマンを培養する植物なのだ。ラダム樹に取り込まれた素体は、脳波は検出されるものの、それは生きる屍。だが、ここに、我々ラダムの生命体が入り込んだとき、それは“ラダム人”という新しい種となる。人類は、まだラダムの真の目的を知らない。後わずかで、その恐怖は形となり、人類の前に露呈されるであろう。だが、その時はもう遅いのだ。 |