宇宙の騎士テッカマンブレード in SRW 3



 クワトロ・バジーナ大尉指揮する最終防衛ラインでも、戦闘が激化しつつあった。
 第二防衛ラインが健在であるにもかかわらず最終防衛ラインが攻撃されるのは、オービタルリングから最終防衛ライン付近に降下してくるラダム獣が少なくないことが第一。
 第二に、再編なった第二防衛ラインといえど、千を越えるラダム獣の全てを押しとどめることは物理的に不可能だからだ。
「フィリップ中尉、そちらの状況はどうか?」
 クワトロはラダム獣を狙撃しながら、ちょうど基地の反対側を守っている第二隊々長フィリップ・ヒューズ中尉を呼び出した。
 クワトロ機のビームショットライフルが放つ高出力のビ−ムはラダム獣の頭部を消滅させ、横転させた。さらに、接近してくる地上ラダム獣は腹部の拡散メガ粒子砲でまとめて撃滅する。これも第四世代モビルスーツの中でも最強クラスの攻撃力を誇るサザビーの力があってこそだ。
「クワトロ大尉ですか? 今んとこ問題はありませんよ。さすがに敵の数も多くなってきましたが、損傷機もありません。そちらは?」
 フィリップ・ヒューズはニュータイプではないが、腕は確かだ。なにしろDC戦争から生き残っている歴戦のMSパイロットなのだから。その上、部下の掌握も巧みで、戦場においては常に冷静に戦局を把握し、引き際を心得ている。エースパイロットは多いが、それをまとめる人物の少ないロンド・ベルにとって得難い人物だった。最も、普段の彼は陽気で上品とは言い難い冗談を好むただのおっさん(実際は、そんな年齢でもないのだが)にしか見えないが。
「あ、大尉だ! 大〜尉、元気〜」
「何をしてるんだ、姉さんは。敵がそっちに行ったぞ! 全く……」
 フィリップとクワトロが交信しているのに気が付いて、エルピー・プルとプルツーが割り込んできた。彼女たちはジュドーほどではないが、クワトロになついている。以前も、ミネバをけしかけて、無理矢理一緒に遊んだものだ。
 だが、彼女たちの愛らしさとは裏腹に、その的確な攻撃は次々とラダム獣を沈黙させていた。
「こぉら、何やってんだ、悪ガキども! とっとと戦いに集中しろ!」
「はぁ〜い」
「私はちゃんとやってるぞ」
「返事は“はい”か“了解”だって教えただろうが! ほら、ガッデスを援護しろ!」
 戦闘中の漫才顔負けのやり取りには、クワトロも苦笑を隠しきれない。
「こちらも今の所問題はない。ただ、敵がどの程度の戦力を投入してくるかがわからん。ペガスの改良が済むまでは敵をスペースナイツ基地に侵入させるわけにはいかん。そちらも用心してくれ」
「了解」
「プルとプルツーもだ。地上ではファンネルの性能は半減する。調子に乗っていると、痛い目にあうぞ」
 プル達の機体、キュベレイmk2――黒い機体がプル、赤い機体がプルツーだ−−はニュータイプ用に開発されており、サイコミュとそれによって遠隔操作が可能な小型ビーム砲“ファンネル”を装備している。
 これは簡単に言えば、ビーム砲を内蔵した小型の誘導ミサイルだ。しかも、推進用のスラスター以外に、アポジモーターを装備し、軌道を変更することもできる。このファンネルを十基から同時に遠隔操作し、全方位から攻撃する攻撃法−オールレンジアタック−はニュータイプにしか行えない高度な戦法だ。プルとプルツーはこれを十八番にしているのだ。
 無論、欠点もある。小型故にビームの出力が弱く、エネルギーCAPと推進剤の容量が少ないのだ。つまり、連続攻撃時間が短いということだ。それも宇宙での使用が前提だ。地上においては大気がビームを減衰し、重力はファンネルの動きを鈍化させる。
 この点がプル達に不利に働くだろうと、クワトロは懸念していた。無論、これは他のファンネル装備機――νガンダム、サザビー、ヤクトドーガ――にも言えることだが、基本武装がビームガンとサーベルしかない軽装のキュベレイが最も不利なのだ。しかも、ラダム獣は動きが鈍いが、その表皮はガンダリウムγよりも硬い。
「分かってるって、大尉」
 本当に分かっているのかどうか、プルは気楽に応えた。しかし、クワトロもいつまでもプル達にばかりかまってはいられなかった。
「大尉! ラダム獣が!!」
 防戦しているバーナード・ワイズマンのリック・ディアスとガラニア・ニャムヒーのバストールを後目に数体のラダム獣がスペースナイツ基地に侵入しようとしていた。
「やらせるかよ、ビッグブラスト!」 
「チィ、ファンネル!!」
 バーニィの声に応えてコン・バトラーとサザビーが突破しようとしていたラダム獣を攻撃する。
 コン・バトラーから発射された大型ミサイルが二、三匹をまとめて消滅し、サザビーのファンネルは生き残ったラダム獣の弱点である目を正確に攻撃し、その全てを行動不能にした。
「やれやれ、助かりました、大尉」
「安心するのは早いな。まだ、敵が撤退し…、何だ!?」
 クワトロの言葉を遮ったのは大きな地鳴りだった。さらに、地鳴りに続いて、大地自身が蠢き始めていた。
「じ、地震か?」
「こ、こんな時に!?」
「ち、違いますよ、豹馬さん。この辺りの活断層は、きゅ、休眠期のはずですから。し、自然の地震ではないはずです!」
「小助君、それは本当か?」
「はい。それにこの地震が起こっているのはせいぜい半径百メートルといったところですが、この揺れ方は震度4はあります。しかも、段々ひどくなっています。自然の地震にしては不自然過ぎます!」
 いち早く空中に難を逃れたコン・バトラーから、小助は各種の情報を収集、分析していた。
「何が起こっているというのだ……」
「小助君の情報は事実だ、大尉」
 クワトロの疑問に答えたのは誰あろう、スペースナイツチーフ、フリーマンであった。
「では?」
「自然のものでないのなら、人為的に起こっていると見るべきだろう。現在、こちらでも調査中だ」
 それまでコンソールと格闘していたミリーが、モニターに映し出された情報に目を見張った。
「チーフ! スペースナイツ基地、南南西約200メートル地点の地下にラダム獣と思われる生物を二体確認! で、でも……」
 フリーマンは一言も喋らず、目で先を促す。
   「そ、その大きさは全長約45メートル、全高約25メートル! 通常のラダム獣の約十倍、コン・バトラーに匹敵します!」
「なっ!?」
「……」
 フリーマンもクワトロも咄嗟に答えることが出来なかった。だが、この巨大ラダム獣二体がスペースナイツ基地にとって大きな脅威であることは間違いなかった。
「……おそらくエネルギーを異常吸収したか、異常成長したラダム獣なのだろう。これほどの大きさではないが、通常のそれより二回りほど大きなラダム獣の存在は確認されている」
 ラダム獣は人語を解するのか、それとも単なる偶然か。その時、二体の巨大ラダム獣が大音響と多量の土砂を伴って暗黒の地下から出現した。陽光降り注ぐ地上世界を廃墟と変えるために。
「いかん! あんな巨大なラダム獣が侵入したらスペースナイツ基地は保たん! 豹馬くん、コン・バトラーで一体を押さえてくれ!!」
「了解!!」
 コン・バトラーと巨大ラダム獣。両者が正面から激突した。その瞬間、再び大地が鳴動した。それだけ両者のパワーが凄まじいのだ。
 だが、当事者は組み合ったまま動かない。力は拮抗しているようだ。一機と一匹はがっちり組み合ったまま、ほとんど動かない。
 一体をコン・バトラーに任せて、クワトロは周囲を見回した。敵は一体ではないのだ。しかし、すでに最終防衛ラインを構成する他の機体――リック・ディアス、バストール、メタス、ドリルスペイザー――は他のラダム獣を防ぐので精一杯だ。いや、サザビーを投入しなければ防ぎきれるかどうか怪しい状況だ。
「やるしかないか!」
 残ったファンネルを全て射出して他の機体を援護し、サザビーで巨大ラダム獣を相手にする。
 時間を稼ぐしかない。
 赤い彗星とまで称された彼にも、この局面で出来ることはそれが精一杯だった。


「これで終わりよ!」
 黒い機体を倒すために集中した地球外生物を、これもまた地球外文明の所産である長砲がまとめて葬り去っていた。
 何とか生き残った数匹(?)も黒い機体とそれよりも一回りほど大きい機体が掃討する。
「ふう、やぁ〜っと終わったわね〜」
「さすがにあれだけの数を相手にするのは厳しかったわね」
 レミーとレッシィがそれぞれ疲労を口にする。
 累計300以上のラダム獣を一個小隊で倒したのだから無理もない。
「全員、無事か?」
 と、中には例外も存在する。
 ずっと囮としてラダム獣の中で大立ち回りを演じていた鉄也は疲労を全く感じさせない声で小隊全員の安否を問うていた。本来なら最も疲労しているはずの人間だ。
「あんたが無事なんだから、みんな無事の筈だ」
「全くだ。あんたホントに人間か?」
「ほんと、あんだけ戦ったのに怪我とかしてないわけ?」
「こっちは問題ない。アム、レッシィ、機体はどうだ? まだ動けるか?」
 すでに先の戦いでアムのエルガイムは片手片足を失っており、レッシィのヌーベルディザードもバスターランチャーを二回使用、全身から蒸気を噴きだしていた。
「残念だけど、ヌーベルディザードはもうだめだわ。エネルギー供給関係がかなりいかれてる。ちゃんとチューニングをしていないバスターを二回も使ったんだから仕方ないけど」
「こっちもだめ〜。スパイラルフローが動くだけでも奇跡みたいなもんよ。こりゃ、還ったらキャオが倒れるかもしんないわね」
 と、アムはいつもと変わらないお天気な事を言ってるが、彼女が言うほど状況は楽観的ではなかった。
 大破しているエルガイムで無理矢理、手動でリミッターを外してバスターを撃ったのだ。ジェネレーターが爆発しなかったのが不思議なぐらいだ。
「まともに動けるのはゴーショーグンとグレートだけってか。ま、それだけでも大したもんだけどな」
「一旦、ネェルアーガマに戻るか……」
 戦闘不能な機体を戦場に放置していくわけにはいかない。そう、鉄也が考えているところにセンサーが生命反応を探知したことに気が付いた。
「あれ、人がいる? 脱出した連中、ってことはないわね。民間人がいるわけはないし……」
 男女四人。すでに戦闘が終わっているとはいえ、ラダム獣の死体の転がる戦場を何の迷いもなく歩いてくる。
「一体何者だ? ……あれはDボゥイ!?」 「いや、違う! Dボゥイじゃない!! ということは奴ら、まさか!?」
 どんな困難な状況でも軽口を叩くことを忘れない。そう評され、自認しているグッドサンダーチームだったが、この時ばかりはそんな余裕はなかった。
「クックック、人間ごときがよくやるものだ。褒めてやろう。しかし! それもここまでだ!!」
 モニターに映し出される冷酷な笑いを浮かべた顔と外部音声が拾い上げた嘲笑まじりの声が、彼らが敵であることを告げていた。
 さらに、頼もしい味方の来援を告げるはずの言葉が彼らの口から発せられたとき、最大の敵が目前にいることを認識せざるを得なかった。
「「「「テックセッタァーーー!!!!」」」」
 最悪の敵と遭遇しながらも鉄也はやるべきことを忘れてはいなかった。ただ、冷静と言うよりも、自分たちに降りかかった不幸を他と分かちあいたかっただけかも知れないが。
「アムはネェルアーガマに、レッシィはスペースナイツ基地に連絡してくれ。“F−3エリアにおいてラダムテッカマン四体と遭遇せり”と」


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つづく

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