宇宙の騎士テッカマンブレード in SRW 4



「まじいな……」
 本隊であるクワトロ隊が窮地に陥っている頃、基地の反対側を担当しているフィリップ隊も尋常ではない数のラダム獣に攻撃されていた。
「おら、サマナ! 砲撃が手ぬるいぞ、もっと集中しろ!!」
「やってますよ!!」
 フィリップの叱咤に反応したのかどうか、後方からの砲撃がより一層の激しさを増した。対艦用の大型ミサイルの直撃で、数体のラダム獣が吹き飛ぶ。
 スーパーロボットもなく、数が少ないフィリップ隊には後方支援部隊が配置されていた。ガンタンク、ガンキャノン、G・キャノン、GM3で構成されたこの部隊は、どれも最新鋭とは言い難い機だが、後方で味方を支援する分には十分な戦力だ。
 しかし、こんな部隊を編成できるのも、混成部隊であるロンド・ベルならではと言えるだろう。現在の連邦軍は再編の途上であり、主力MSとして採用されたジェガンはGMの流れを汲む汎用型である。支援型MSによる支援部隊の編成など望むべくもない。
 
「な、なに? すごく嫌な感じがする……」
「私も強い力の気配を感じる……」
 キュベレイで攻撃を続けていたプル姉妹の動きが一瞬止まる。その隙をラダム獣が見逃すはずがなかった。
 正面に展開していたラダム獣は突進しながら粘質性の糸を連続して吐きかけ、上空からは飛行ラダム獣が一撃離脱の体当たりを仕掛けてくる。
「しまった!!」
「キャア!?」
 一瞬のタイムラグがあったものの、二人は虎の子のファンネルを全機射出、さらにビームガン、ビームサーベルで応戦するが、ラダム獣はその体力と数に任せた物量戦でプル達を一方的に押しまくった。
 異変に気付いたのは水の魔装機神ガッデスを駆るテュティだったが、彼女もフィリップ機と共に多数のラダム獣と対峙しており、到底援護できる状態ではなかった。
「プル、プルツー!! フレキ、ゲリ、プル達をお願い!」
 それでも、二体のファミリアをキュベレイの援護に回す。
 魔装機神操者の無意識より生み出されたファミリアは自律型小型攻撃機“ハイファミリア”と融合することにより、ある程度自己の判断で行動することが出来る。
「邪魔よ! ハイドロプレッシャーーー!!」
 正面に群がるラダム獣の群には水の精霊の力を宿した衝撃波を叩き付ける。
 直撃を受けた五〜六体が消滅し、倍以上のラダム獣が弾き飛ばされる。
「こいつはおまけだ!」
 ジェガンも手持ちのハンドグレネードの全てをラダム獣に叩き付ける。
 巻きおこる炎と爆風がラダム獣に襲いかかり、ラダム獣の連続攻撃も途絶える。
「全機下がれ! サマナ、弾幕を張れ! 一旦体勢を立て直す!!」
「了解です。ビルギット、ビーチャ、モンド、攻撃開始! 奴らを近づけさせないで!!」
「了解」
「全く人使いが荒いんだからな、たまらないぜ」
「でも、ビーチャ。プル達やテュッティさんをやらせるわけにはいかないだろ? やるしかないって」
「分かってるけど、このガンキャノン使いづらいんだよ! コクピットはリニアシートじゃないしな!!」
「そっちはまだましだろ、こっちはガンタンクなんだから……」
「ごちゃごちゃ言ってないで攻撃しやがれ、クソガキ共! 俺達を殺す気か!!」
 それまで、キュベレイが敵と接近しすぎていたため、攻撃を控えていたサマナ隊が持てる火力の全てを解放した。
「ごめ〜ん、テュッティ、フィリップのおっちゃん」
「助かった」
「二人とも、無事で良かったわ」
 火力の集中とサマナ隊の援護によって、前線の四機はやっと一息つけるようになった。
「おっちゃんはよせ。で、何があったんだ?」
 見た目は幼いが、プル姉妹は優秀なニュータイプである。それに加えて、前大戦にも参加しており戦闘経験も少なくない。
 そんな彼女たちが一瞬とはいえ、隙だらけとなったのだ。その意味に気が付かないほど、フィリップは鈍くはない。
「うん。急にすごく嫌な感じがしたんだ」
「かなり強力なプレッシャーだった……」
 睡眠学習のせいか、戦闘に際してはほとんど物怖じしないプル達が心なしか青ざめている。
「おい、それってまさか……」
「そう、まるでブレードと始めて会った時みたいな感じだった……」

「テッカマンランス!」
「テッカマンアックス!」
「テッカマンソード!」
「テッカマンエビル!」
 人間から異形の騎士へと四人は変身した。変身後の大きさは通常の人間より二回りほど大きいだけで、MSと比べると十分の一程度でしかない。だが、その能力は人間はもとより、MSでさえも比較の対象にならないことを鉄也達は知っていた。
「あれが、テッカマン…………」
「たった一人で軍のMS大隊を壊滅させ、反応弾の直撃にも耐える文字通りの化け物ね」
「あいつらが、それも四体が相手じゃ、私たちでもさすがにヤバイわね」
「俺は敵に後ろは見せないのが信条なんだがな、今回ばかりは例外にしたくなってきたぜ」
「同感だ」
 消しても消しても消えない不安から、普段以上に彼らの口は軽くなっていた。が、それもやむを得ないだろう。百戦錬磨の彼らと言えど、これほどの窮地に陥ったことは数えるほどしかない。もし生き残ることが出来たのなら、これが最悪のケースとして彼らの記憶に残ることになるだろう。
「アムとレッシィは出来る限り死んだふりをしてろ。フロッサーで脱出しても的になるだけだ。グレートとゴーショーグンは時間稼ぎだ。ブレードか他の連中が来るまで奴らを釘付けにする」
「さらっと言うな、さらっと。それが一番難しいんだろーが」
 現在の状況がどれほど困難か知らないわけではないだろうに、剣鉄也は先ほどと変わらない口調で命令を下した。
「無理でもやるしかない」
「……仰る通り」
「反論の余地なし、ね」
 行動不能の二機のヘビーメタルをかばうように、二体のスーパーロボットは身構えた。
「ふん、涙を誘う光景だな。仲間のために命を懸けるか……。だが、我々の敵は裏切り者ブレードとレイピアのみ! 貴様らの相手など、こやつらで十分だ!!」
「なんだとっ!?」
 まさにその瞬間。オービタルリングを発したラダム獣が続々とスペースナイツ基地周辺にその姿を現していた。
 
「チーフ! 剣小隊から緊急連絡!! 敵テッカマンが出現しました!!」
 ミリーの報告−ほとんど悲鳴だったが−がスペースナイツ基地の司令室に響く。
 瞬間、司令室を静寂が支配した。
 十分に予想し、心の準備をしてはいても、魔人出現の事実を受け止めるには多少の時間が必要だった。
「敵のテッカマンは何体だ?」
 司令室の止まった時を動かしたのは、スペースナイツ司令フリーマンだった。
 トレードマークのサングラスをかけたまま、微動だにせず、ミリーに反問する。
「て、敵のテッカマンは……、エ、エビル以外に三体! 全部で四体ですっ!!」
「チーフ! オービタルリングよりラダム獣の降下を確認! 詳細は不明ですが、五〇〇体以上はいます! 敵の降下ポイントは、……スペースナイツ基地です!!」
 すでに今までの戦いで投入されたラダム獣の数は、これまでで最大の戦いとなったジャブロー攻防戦を大幅に上回っていることが確認されている。それに加えてテッカマン四体の出現。
 まさに最悪の状況だった。テッカマンレイピアこと相羽ミユキからラダムの内情について情報提供がなされた時から予想されたとはいえ、その展開の速さと投入された戦力は異常といえる。
 多数をもって少数を撃つ。戦略の常道であるが、それを現実に行える者は少ない。
 そういう意味では、ラダム側の指揮官テッカマンオメガは一流の軍略家といえよう。その能力が本来の相羽ケンゴのものか、それともラダムによってもたらされたものなのか。
「ミリー、ソルテッカマン一号機、二号機に発進命令を。最終防衛ラインを固めさせろ。ネェルアーガマ、ゴラオン、グラン・ガラン各艦に通信を」
 しかし、フリーマンは動揺を全く見せずに−少なくとも表面上は−、命令を下す。
「ラ、ラーサ! バルザックさん、ノアルさん、出撃を! 最終防衛ラインを固めてください!!」
 ロンドベル各艦への通信は、ミノフスキー粒子がほとんど散布されていないので−ラダム獣に対してはほとんど意味がないから−、戦闘中とは思えないほど、容易に繋がった。
「緊急事態が発生しました」
 なんの前置きもせず、ただ淡々と状況を説明するフリーマン。
「ラダムテッカマン四体の出現を確認、現在、剣小隊が交戦中です。さらにオービタル・リングよりラダム獣がこちらに向かって降下中です。その数は約五〇〇」
「遂にやってきましたか……」
「チーフ、ヌーベルディザードからの映像が入りました! 各艦に転送します!」

 もはや、目前の敵を一顧だにせず、宿敵を求めて移動しようとしたその時、テッカマンエビルは反射的に後方に飛び退いた。
 直後、その目前を黒い塊が高速回転しながら通り過ぎる。
「なにっ!」
「このまま貴様らを行かせるかっ!!」
「なんだと!? ガハッ!!」
 予想だにしなかった攻撃を受け、一瞬動きの止まったランスがグレートのニーインパルスキックを受けて空高く吹き飛ばされる。左腕のドリルプレッシャーパンチを放つと同時に急上昇したのだ。
 しかし、鉄也はすでにランスを見てはいなかった。ランスの左後方にいたソード−完全に動きが止まっている−に先の勢いそのままに、後回し蹴り−バックスピンキック−を見舞う。
「キャアァーーーッ!!」
 スピードと重さが十分に乗ったグレートの蹴りによって、ソードは大地に叩き付けられた。
 エビルは動けなかった。目前の光景が彼の理解を越えていたから。たった一体の地球製ロボット如きに二体のテッカマンが為すすべもなく攻撃されるなど、彼の、いや、ラダムの常識では考えられることではなかった。
 そんな無防備なエビルを鉄也が見逃すはずがない。
 キックで得た遠心力をそのまま利用して、一瞬で抜きはなったマジンガーブレードで斬りかかる。
「甘いぜ! もらったっ!!」
 ガキィィ!!!
「シンヤ坊!!」
 エビルを襲う斬撃を防いだテッカマンアックス、いや、師の厳しい声が、エビル−シンヤを正気に戻した。
 その目に映ったのは自身よりも遙かに大きな剣をランサーで防いでいるアックスの後ろ姿だった。
「ゴダード……」
 渾身の一撃を防がれたグレートは息つく暇もなく斬撃を繰り出し、アックスの動きを封じる。
「先ほどの礼だ、受け取れ!!」
 しかし、アックスの背後から飛び出したエビルが十字型に変形させたランサーを至近距離からグレートに投げつける。
 正確にコクピット目掛けて飛んでくるランサーをなんとかブレードで防ぐが、がら空きになった胴体にアックスの一撃が炸裂する。
 あまりの威力にグレートの左脇腹の装甲は大きく裂け、錐揉み状態で墜落する。
「やりやがったな!」
 叫びながらもグレートの姿勢制御に成功した鉄也は、再び上昇しながらネーブルミサイルを連射した。
 連射されたネーブルミサイルのほとんどが命中し、至近弾となっていた。エビルとアックスがミサイルをかわそうとはしなかったからだ。そう、テッカマンにはその程度の攻撃では傷すら付かないから、回避する必要などないのだ。
 しかし、鉄也は気にもしなかった。本番はこれからなのだ。
「行くぜ! ブレストバーン!!」
「こいつはどうだ! ゴーフラッシャー!!」
 今度はかわす間もない。グレートとゴーショーグンから放たれた熱線と光線がアックスとエビルを直撃した。先のミサイルの時以上の爆発が起こる。
「やったわ!」
「にしても、威力が落ちてるぜ。やっぱこんだけ連発するときついねえ……」
「油断しないで! 奴らまだ生きてるわ!!」
 行動不能だが、索敵能力が死んでいないヌーベルディザードから、レッシィが注意を促す。
 その声とほぼ同時に爆煙の中から飛び出したアックスがグレートに斬りかかった。ブレストバーンとゴーフラッシャーの直撃を受けたにもかかわらず、だ。
「ハァーハッハッハ、その程度で我らをやれると思ったか! クズどもめが!!」
「この野郎っ!」
 油断はしていなかった鉄也だったが、今の一刀はブレードで防ぐので精一杯だった。しかし、あまりの衝撃に超合金ニューZ製の長剣が折れ飛んだ。
「ちっ、なんて野郎だ、ブレストバーン!!」
 アックスの二の太刀を折れた剣でしのぎながら、胸部放熱版から熱線を放射して牽制する。
「フン、人の身でやりおるわ。だが、いつまで保つかな!?」
 ブレストバーンをかわしたアックスが攻撃を再開した。そのサイズの小ささと速力を生かした一撃離脱を繰り返しグレートに浴びせ続ける。それに対して、グレートは急旋回、急速上昇などを織り交ぜた回避運動でその攻撃をかわしながら、果敢に反撃していた。
 両者はぶつかり、もつれあいながらも、戦い続けていた。
 こうなるととゴーショーグンも後方からの援護は不可能になった。的であるアックスよりも援護の対象であるグレートの方が大きく、当たりやすいのだ。しかも、地上では降下したラダム獣がスペースナイツ基地に向かって移動しつつあった。もはや、アックス一体にかまっている場合ではなかった。
「ねえ、レッシィ。なんかおかしくない?」
大破し、行動不能になったエルガイムからスパイラルフローで脱出し、ヌーベルディザードのレッシィと合流したアムがモニターを見ながらつぶやいた。
「なにがおかしいっていうのよ? そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。いくら鉄也がタフだからって、あんな戦い方してたらそんなに保たないわ! レミー達もラダム獣の相手で手一杯だし……。ったくもー、なんでこんな時に戦えないのよ!!」
 味方に不利な戦局にありながら、戦闘できない焦り、苛立ちがレッシィの冷静さを奪っていた。
「しょーがないでしょ、エルガイムもディザードも動けないんだから。それより敵のテッカマンの動きよ。あのアックス、って奴はさっきの攻撃を喰らってもぴんぴんしてたのに、エビルの動きがないのっておかしくない? さっきグレートにやられた連中だって、仮にもテッカマンなんでしょ? あの程度でやられたりしないと思わない?」
「えっ!?」
 こんな時だけ妙に鋭いアムの言葉にレッシィがフリーズする。
 しかし、それも一瞬。再起動したレッシィはエビル、ランス、ソードの各テッカマンの索敵を開始した。
「しまったっ! みんな残りの敵テッカマンがスペースナイツ基地に向かっているわ!! 奴は囮よ!!」



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第四話あとがき

続く

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