第48回全日本吹奏楽コンクール
平成12年9月29日(金)/普門館

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高校・後半の部
1
北陸/福井県  県立武生東高等学校 (植田 薫) ※2年連続9回目
銅賞

3/管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」 (M.ラヴェル/天野正道)

全体の流れは作為的な部分もなく、スムーズな音楽運びだったと思います。ただし、Trpがバランスを崩しバンド全体の響きを損なう箇所がいくつかみられました。ちょっと力み過ぎでしょうか。しかし、「課題曲をこういうふうに表現したいのだ!」という主張の感じられる演奏でした。自由曲「ラ・ヴァルス」では一転、非常に躍動感ある演奏で好演だったと思います。

2
東関東/茨城県  常総学院高等学校 (本図智夫) ※お休みから復活9回目
銀賞

3/交響詩「ドン・ファン」より (R.シュトラウス/本図智夫)

技術・表現ともに本当に上手です。課題曲では各ソロも非常に情感があり、全体を通しても素晴らしい演奏でした。自由曲は先生自らのアレンジ。Trpもバルブからロータリーに持ち替え、音色の変化も楽しめました。しかし特筆すべきは木管セクションの弦のような響きですね。艶のある音色は絶品ですね。午前の伊奈学園とはまた違ったシュトラウスを聞かせてくれました。オーボエ、ホルンのソロ等も音色、表現ともに一級品。惜しくも金賞を逃しましたが、常総の過去の演奏の中でもかなりの出来だったと思います。結果発表後、座席から動けなくなっていた生徒さん、先輩たちから受け継いできた伝統は今年もしっかり常総サウンドとして響いていましたよ。


3
中国/岡山県  就実高等学校 (熱田昭夫) ※2年ぶり13回目
銀賞

3/キャンディード組曲より (L.バーンスタイン/C.グランドマン)

女子高バンドの中ではパイオニア的存在の就実。中国支部の顔ですね。復活は個人的に嬉しく思いました。課題曲、上手だと思うのですが、ちょっと平凡な演奏に終わってしまったかもしれません。キャンディードでは見事なイングリッシュホルンのソロなど聞かせどころもあって好演でした。

4
東関東/千葉県  市立柏高等学校 (石田修一) ※お休みから復活14回目
銀賞

1/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲 (Z.コダーイ/森田一浩)

軽快なリズム、自然な音楽の流れ、流石と思わせる課題曲でした。Tuttiでサウンドのまとまりも素晴らしいし、何より一つの「楽曲」として十分聞かせる演奏だったと思います。自由曲も然り。くじゃくのフルートとピッコロのソロは素晴らしかったです。こちらも金賞でも良いくらい素敵な素敵な演奏でした。

5
東海/愛知県  安城学園高等学校 吉見光三)  ※2年連続5回目
銀賞

2/バレエ音楽「ライモンダ」より (A.グラズノフ/鈴木英史)

共学になったそうで、男子生徒も数名見受けられましたね。かっこいいユニフォームをまとっての出場でした。課題曲では導入部とソロやソリの部分で安定感を欠いた感じがしますが、全体を通しては良い演奏でした。自由曲「ライモンダ」では珍しい部分を持ってきましたね。ハープのソロ、非常に美しく素敵でした。(会場全体が息を飲んでハープソロに注目。) Tuttiでの響きが柔らかく安堵感を与えるとでも表現したら良いのでしょうか、サウンドが違うのですね。バレエの優雅さ、美しさ、楽しさが十分に伝わってきて金賞に値する演奏だったと思います。

6
九州/福岡県  県立城南高等学校 (西嶋克豊)  3年連続3回目(3出)
銅賞

3/ディオニソスの祭り (F.シュミット)

全体的に力み過ぎの感がある演奏でした。その力みからか、音楽の流れにもたつき、荒さなどが見られたように思います。クラの音色がカタイ感じがしました。自由曲もやはり曲全体を通してスムーズ感に欠け、ところどころでバンド全体が乱れるシーンがありました。結果として雑然とした印象が残ってしまったことが残念でした。

7
北海道/札幌  東海大学第四高等学校 (井田重芳) ※お休みから復活21回目
金賞

2/歌劇「ヘンデルとグレーテル」より 夕べの祈り、パントマイム (E.フンパーディンク/中原達彦)

今年の課題曲2は冒頭のTrpが危なっかしく聞こえる団体が多かったように思いますが、東海大四は違いました!非常に安定し素晴らしい出だしとなりました。それに続く全体のサウンドも大らかで豊か。終始落ち着いたテンポ設定で余裕のある演奏だったと思います。続く自由曲では更にこのバンドの力を惜しみなく発揮してくれたようです。とにかく楽器から出てくる音色が豊かです。たっぷりと息を使い、陶酔するような歌い方には感動モノです。Trpセクション素晴らしかったですよ。

8
関西/京都府  洛南高等学校 (宮本輝紀) ※2年連続10回目
銀賞

3/交響詩「ドン・ファン」より (R.シュトラウス/M.ハインズレー)

超個性的な課題曲。最初は「?」って思いましたが、「こういう解釈もありか?」とも・・・。 好みが大きく分かれるところですが洛南らしくて良かったです。ただ全体を通しては「やり過ぎ」の感が拭えませんでした。。ビクターのCDには課題曲は収録されませんので、興味ある人はカスタム版のMDやCD-Rを購入してみましょう。 自由曲はなかなかの好演でした。伊奈学園、常総学院、洛南、それぞれ異なったアプローチは楽しく聞くことができました。また毎年名物の楽器持ち替えですが、確認できた範囲では、TrbFlBs.ClPerTrbHarpTrbEuphObFlHarpB.SaxS.Sax弦バスPerです。今回はハープをバンドの中央(1番Trbの前)にセッティングしていましたが、明らかに持ち替えのためのセッティングですもんね。(笑) 持替えは視覚的には面白いのですが、こうまで頻繁に行われ、演奏中に奏者があっちへこっちへと移動する場面は何か落ち着きが無い感じもしました。

9
東京/東京都  都立片倉高等学校 (馬場正英) ※3年連続3回目(3出)
銅賞

3/「この地球を神と崇める」より II, III (K.フサ)

毎年、意欲的に吹奏楽のオリジナル現代曲を取り上げている姿勢は素晴らしいと思います。サウンドを聞いた感じで受ける印象が、「カタイ」「ちょっとうるさい」「荒い」といったイメージです。テクニカルな部分では十分なのですが。自由曲はメッセージ性のあるこの難曲をよく演奏していました。カットはうまく考えられていましたが、全曲を通して聞いてみたくなりました。

10
東北/秋田県  県立新屋高等学校 高野豊昭) ※お休みから復活10回目
銀賞

3/「交響三章」より 第3楽章 (三善 晃)

鮮やかなブレザーが普門館の黒いステージに映えていました。冷静沈着な課題曲で、新屋らしいクレバーな演奏でしたね。 自由曲はこの日唯一の邦人作品で私自身も大好きな曲です。難しい曲ですが緊張感と開放感をうまく表現できた演奏でした。特に静動、緩急のコントラストが見事だったと思います。

11
東海/静岡県 東海大学付属翔洋高等学校 (榊原 達) ※お休みから復活17回目
金賞

3/世の終わりへの行進 (V.ネリベル)

各パートが安定していてソロも好演でした。全体的にはちょっとサウンドがカタめの印象です。自由曲は初めて聞きましたが、まさにネリベル!という感じの曲で興味深く聞くことができました。ネリベルサウンドが随所に見られ、ネリベルファンにはタマラない曲ですね。お休みからの復活を見事金賞で飾りました。翔洋の新しい歴史を作ってくださいね。

12
四国/愛媛県  県立松山中央高等学校 (藤原大征) ※初出場
銅賞

4/組曲「ヴァレンシアの寡婦」より (A.ハチャトゥリャン/仲田 守)

素直な音で若々しいサウンドはこの課題曲に合っていたように思います。導入部の金管セクションは丁寧で美しい演奏でした。各ソロは緊張気味で不安定でしたが、特に凝ったことをしない素直なアプローチには好感が持てました。自由曲も「若さ」「勢い」が感じられる好演でしたが、細部に渡っての詰めの甘さなどが露呈。初出場ですから無理もないと思いますが・・・。初の全国大会・普門館を楽しめたでしょうか!

13
九州/福岡県  福岡第一高等学校 (清水万敬) ※3年ぶり5回目
金賞

3/バレエ音楽「赤いけしの花」より  (R.グリエール/仲田守)

良く鳴るバンドですが、多少荒削りですね。しかし、音楽にドライブ感があり、前へ前へという意識がよく感じられていて快演だったと思います。2曲通して音楽に勢いのある気持ち良い演奏だったな、という印象でした。出場5回目で念願の金賞受賞、本当におめでとうございます。

14
西関東/埼玉県  春日部共栄高等学校 (都賀城太郎) ※初出場
金賞

1/交響詩「ローマの祭り」より I. チルチェンセス IV.主顕祭(O.レスピーギ/磯崎敦博)

本日のトリ。西関東でずっと涙を飲んできた春日部共栄の悲願の普門館。課題曲は明るい音色と軽快なリズム感。ソロも丁寧で良い音してますね。圧巻は自由曲でした。ちょっと急ぎ過ぎのチルチェンセスでしたが、Trp3人の上手側でのバンダは安定感ばっちりで見事でした。続く主顕祭も多少早めのテンポ設定でしたが細部に渡ってよく練習されていますね。終曲に向かっての勢いは素晴らしいものがあり、最後の音が鳴った瞬間、「ブラボー!」の歓声でホールがいっぱいになりました。見事、初出場で金賞受賞おめでとうございます。

【後半の部を聞いて・・・】
金賞4、銀賞6、銅賞4という結果ですが、金賞の4団体は東海大四(北海道)、春日部共栄(西関東)、東海大翔洋(東海)、福岡第一(九州)と、4支部でわける形になりましたね。TBT的私見ですが、決して前半の部に比べてレベルが低かったわけではなく、常総学院、市立柏、安城学園なども金賞でも良いと思いました。あきらかに前半後半で審査基準が違うんじゃないか?と思わせるような結果だと思いましたし、前半後半トータルで審査していたら?という疑問が多い結果だったと思いました。(ま、あくまでも結果論ですが・・・) しかしながら、金賞バンドのことよりも「常総学院の銀賞」の話題のほうが大きかった後半の部でしたね。(笑)
 
【全体を通して・・・】
コンクール開催前から3つの有名バンドが「ドンファン」を演奏するとか、、西関東の埼玉四強ローテーションを破って新鋭バンドが登場するとか話題満載の高校の部でした。蓋をあけてみると、やはりどこのバンドも個性を持った素晴らしい演奏であり、聴衆それぞれがいろんな思いを持ったコンクールだったと思います。前半後半通しての金賞は、北海道1、西関東2、東関東1、東京1、東海1、北陸1、関西1、中国1、九州1 とかなりばらけました。各支部の実力の差が無くなってきているということでしょう。来年が非常に楽しみになりました。

ちなみに管理人は「今年は気合を入れて聞くぞ!」と思い、始発電車で普門館に向かいました。到着したのは午前6:30で、既に30人ほどが並んでいましたが私の経験上こんなに前のほうに並ぶことができたのは初めてです。やはり金曜日の平日開催ということもあり、例年に比べると開場待ちの行列は少なかったように思います。有給休暇を取った甲斐がありました。(笑)