第53回全日本吹奏楽コンクール
平成17年10月23日(日) /大阪国際会議場

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一般の部

※ 一部、山内氏、金井氏の両氏にレポート協力をお願いしました。

1
中国 広島県 祇園ウインドアンサンブル (指揮/大咲司朗) ※初出場

5/交響詩「ローマの松」より (O.レスピーギ/木村吉宏)

課題曲は込み入った構成の曲をよく整理できていましたが、Tuttiでの強奏時にサウンドが濁ってしまうのが残念でした。音楽の流れが悪い部分が見られ、停滞気味のまま曲が終わってしまったようです。自由曲はよくまとまっていました。強奏 になってもうるさくなく心地よいサウンドを聞かせてくれましたが、更に立体的に色彩豊かな表現が加わると良かったなと思います。


2
東海 静岡県 浜松交響吹奏楽団 (指揮/浅田享) ※2年連続8回目

5/交響組曲「ガイア」より 
      「地球の歴史に於ける全ての戦争犠牲者に捧げる」、「地球誕生から文明創世まで」 (天野正道)

非常に厚みのあるサウンドで、迫力のある演奏でした。強奏時のTrpが硬く直線的で違和感を感じましたが、全体的にはまとまった好演でした。自由曲でも卓越したアンサンブルと表現力を発揮できており、「聴かせどころ」をちゃんと「聴かせて魅了させる」ところは流石だと思います。金管セクションに荒さも見られましたが、全体的には破綻することなく最後のフィナーレまで持っていくのは素晴らしかったです。強いて言えば、コントラバスにもう少しヴィブラートが欲しかったですね。昨年の雪辱を果たし、4年ぶり5回目の金賞受賞となりました。おめでとうございます。


3
東京 東京都 東京正人吹奏楽団 (指揮/鈴木正人) ※4年ぶり2回目

1/幻想交響曲より V. サバトの夜の夢 (H.ベルリオーズ/鈴木正人)

そつなく無難にまとめた課題曲でした。都大会よりも洗練された演奏だったと思います。たまにリズムが崩れるのが残念で、ちょっと集中力に欠けた感がありましたね。自由曲は非常に重厚なサウンドで安定感のある演奏を聞かせましたが、木管セクションにもっと色彩感がほしいと思います。オーソドックスな選曲を堅実にまとめあげた演奏でしたが、個性派揃いの一般部門では印象が薄かったですね。もっと積極的で冒険的な要素が加わってもいいかなと感じました。


4
西関東 埼玉県 アンサンブルリベルテ吹奏楽団 (指揮/福本信太郎)※休明け11回目

5/ストコフスキーの鐘 (M.ドァティ)

課題曲はこの難しい曲をきれいにスッキリまとめていたのは流石。立体的でコントラストの効いた仕上がりだったと思います。自由曲では管楽器を囲むような打楽器群に興味を持ちましたね。緻密なアンサンブルと各演奏者の自信に満ちた演奏、そしてセッティングによる立体感もあってスケールの大きなものとなりました。雛壇にセットされたカリヨンベルが殆ど聞こえなく、上手下手にセットされたチャイムばかり聞こえていたのは残念。しかしながら、アマチュアでここまでのレベルを維持し、本番で100%発揮するというのは素晴らしいですね。2年連続8回目の金賞受賞、おめでとうございます。


5
九州 鹿児島県 J.S.B.吹奏楽団 (指揮/東久照) ※2年ぶり5回目

1/交響組曲第10番「BR II」より (天野正道)

冒頭のファンファーレはTrp,Trbとも各パート1人ずつが演奏しており、スッキリとクリアな仕上がりになっていました。マレット選択ミスか意図的なものかは不明ですが、ティンパニーのソロが全く聞こえてこなかったのが残念。タッカのリズムや3連符の細かい部分の乱れが目立ち、音楽の流れを止めていたように感じました。自由曲は丁寧な演奏で好演でした。非常にしなやかなアンサンブルでコーラスも効果的でした。オーボエのソロは秀逸。全体的にはもっと抑揚やコントラストがつけられると良かったかもしれません。


6
北海道 北見地区 北見吹奏楽団 (指揮/松田彰光) ※5年ぶり2回目

2/ローザのための楽章 (M.キャンプハウス)

70〜80人編成のバンドが揃う中、50人を切る編成のバンドでした。明るくすっきりしたサウンドでバランスも良かったと思います。非常に爽やかなマーチでしたが、ピッコロはもっとソリスティックな演奏がほしいと思いました。自由曲も非常に丁寧な作りが印象的で、強奏になっても破綻することなく、大きいホールであることを特に意識しない自然体の演奏だったと思います。全体的にはメリハリに欠け、平板な作りになってしまったようです。


7
四国 高知県 鏡野吹奏楽団 (指揮/弘田靖明) ※休み明け15回目

2/管弦楽組曲「第六の幸運をもたらす宿」より (M.アーノルド/瀬尾宗利)

オープニングがいま一つ決まらないままスタートしてしまいました。マーチもリズムが若干重く、軽快さに欠けていたように思います。全体的なサウンドは重厚な響きがしていましたし、トリオのしなやかさは素晴らしいと思いました。自由曲はコンクールでは十分知られた曲ですが、シンフォニックなサウンドで大人の演奏を聞かせてくれました。前半部分は緊張感のあるアンサンブルでしたが、中盤以降、音楽作りが平板な印象となったような気がします。


8
関西 大阪府 創価学会関西吹奏楽団 (指揮/伊勢敏之) ※2年連続11回目

1/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/小澤俊朗)

見事に揃ったファンファーレに続き、マーチに入る前の木管セクションのサウンドが実に素晴らしかったです。お手本のような課題曲でスコアが浮かぶようです。特に中盤以降の集中力の高さは特筆もので、細部にわたる緻密なアンサンブルを聞かせてくれました。バルトークはどこまで「濃い」演奏になるかと期待していましたが、むしろクールで品の良い雰囲気の仕上がりでした。木管サウンドの豊かさは随一、クラリネットソロ、トロンボーンソリも実に秀逸で、終曲に向かっての一体感には圧倒されました。2年連続10回目の金賞、おめでとうございます。


9
東北 秋田県 大曲吹奏楽団 (指揮/小塚類) ※4年ぶり10回目

1/青い水平線 (F.チェザリーニ)

大変個性的なファンファーレ。小塚節を期待させるようなスタートでした。マーチも比較的速めのテンポで、細部にいろいろな工夫を凝らした課題曲でした。若干作りすぎといった印象もありましたが、これもまた個性でしょう。自由曲は掌握しきった感のある音楽運びで、小塚ワールド全開。情景描写が素晴らしく、立体的で色彩豊かな演奏でしたね。この曲の魅力を十分に表現してくれたと思います。10回目の出場を8年ぶり4回目の金賞で飾りました。おめでとうございます。


10
関西 兵庫県 宝塚市吹奏楽団 (指揮/渡辺秀之) ※3年ぶり3回目

1/シダス (T.ドス)

堂々たるファンファーレでスタートし、構成のしっかりした安定感抜群の課題曲でした。過去に何回か聞いた宝塚市吹の印象とは異なり、かなり骨太なサウンドだったように感じました。自由曲も自信に満ち溢れた演奏で素晴らしかったです。非常にしなやかなアンサンブルの木管セクションと音色の鮮やかな金管セクション、気配りの聞いた打楽器群による色彩豊かな演奏に仕上がっていたと思います。終曲部の盛り上がりは実に見事でした。初の金賞受賞、そして2年連続の関西W金賞となりました。おめでとうございます。


11
東北 秋田県 秋田吹奏楽団 (指揮/佐藤正人) ※2年連続7回目

5/エクスピエィション  (天野正道)

難しい課題曲がよく整理されています。各セクションがよく聞こえており、Tuttiでも輪郭のあるクリアなサウンドを響かせていました。指揮者の的確な指示によく応えていたと思います。自由曲でもバンドの集中力が素晴らしく、一体感が抜群にありました。張り詰めたような緊張感をうまく表現できており、聴衆を秋田吹の世界に引き込みました。打楽器アンサンブルの部分も見事に決まっており、中盤から終曲にかけてのたたみ掛けるような勢いには圧倒されました。惜しくも銀賞でしたが、感銘度の高い演奏だったと思います。


12
東関東 千葉県 土気シビックウインドオーケストラ(指揮/加養浩幸) ※2年連続8回目

1/交響曲第3番より (J.バーンズ)

ファンファーレはこのバンドにしては珍しく乱れがありましたが、骨太なサウンドで重厚なマーチとなりました。各楽器の歌い方がここまで揃っているのは素晴らしいですね。自由曲でも大変美しいアンサンブルを聞かせてくれました。特に1曲目でのしなやかな表現力は目を見張るものがあります。イングリッシュホルンも秀逸です。ゆっくりしたテンポの中にも脈々と流れる音楽は感動的です。最後の曲ではホルンが精彩を欠いたのが残念でしたが、色彩感のある仕上がりとなっていました。個人的には金賞でも十分と感じた演奏の一つです。


13
北陸 石川県 百萬石ウィンドオーケストラ (指揮/安嶋俊晴) ※2年ぶり6回目

2/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/仲田守)

軽快でドライブ感のある良いマーチだったと思います。特に奇をてらったような小細工もなく正攻法な演奏に好感が持てました。バルトークは個々人がよく吹けていますし合奏体としても十分まとまりがありました。しかし、これだけ個性的なバンドが揃った一般の部においては、平凡な演奏という印象を拭えなかったように思います。百萬石WOの個性を光らせるような何かがほしいと感じました。


14
東関東 神奈川県 相模原市民吹奏楽団 (指揮/福本信太郎) ※初出場

5/相授譚〜相模原民話傳説「大猫ばやし」による〜 (長生淳)

赤いブレザーが鮮やかでステージに良く映えていました。課題曲は難しい曲を演奏しました…という印象で、表現にもっと積極性がほしいと思います。初出場の緊張のせいでしょうか、どこかエンジンがかからない演奏だったように思います。自由曲では委嘱作品ということもあり、伸び伸びとしていました。題名からはもっと日本的な「和」の雰囲気を想像していたのですが、意外にもポップな感じの曲で楽しめました。さすがは激戦地区の代表ということで、それなりの実力を備えているバンドだと思います。今後も東関東の代表争いに加わってくることを期待したいですね。


15
西関東 埼玉県 川越奏和奏友会吹奏楽団 (指揮/佐藤正人) ※休み明け7回目

5/枯木のある風景 (飯島俊成)

難しい課題曲ですが、難しいと感じさせないのは高い技術力を備えているからでしょう。大変緻密な演奏で素晴らしかったと思います。よくアナリーゼされているようで、指揮者の要求に奏者が確実に応えた好演でした。自由曲でも高い集中力で独特の世界を表現しています。非常に安定感のあるサウンドで、繊細さも力強さも自在に巧み表現できるバンドだと思います。特に木管セクションの素晴らしさは特筆ものでしょう。TBTは金賞いったと思いましたが、この演奏でも金賞に届かなかったというのは厳しいですね。


16
九州 佐賀県 佐賀市民吹奏楽団 (指揮/南里隆弘) ※2年連続10回目

5/マリアの七つの悲しみ (樽屋雅徳)

一見無機質な音の羅列になりがちな課題曲ですが、柔らかいサウンドと綿密なアンサンブルで上手にまとめていたと思います。若干音楽が流れすぎで、キレがほしいと思いましたが…。自由曲ではバンドの本領発揮。色彩豊かで奥行きのある演奏でした。特に旋律の歌い方が巧みで素晴らしいですし、Tuttiでの響きの豊かさは金賞バンドにもひけを取らないと思います。残念ながら九州からの初金賞はお預けとなりましたが、今年のコンクール・大トリに相応しい名演となりました。


※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


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