第53回全日本吹奏楽コンクール
平成17年10月2日(日)/名古屋国際会議場

Back

Next



高校・前半の部

1
東北 福島県 福島県立湯本高等学校 (指揮/藤林二三夫) ※3年連続3回目

1/管弦楽のための協奏曲より 第4、第5楽章 (B.バルトーク/森田一浩)

落ち着きのある整然としたファンファーレでした。各パートがうまく交通整理されスコアが見えるようです。重厚な響きもよく出ていてマーチの曲想をうまく表現できていました。自由曲では緩急のつけ方が上手で、アンサンブル力にも長けた演奏でした。終曲でもクラリネットパートの早いパッセージがよく吹けていて素晴らしかったです。クリアなサウンドでよく鳴るバンドですが、Tuttiでもうるさくなくホールによく響かせていました。銅賞というのはちょっと厳しいと思いましたね。


2
中国 広島県 鈴峯女子高等学校 (指揮/宇根岡俊二) ※3年連続7回目

3/シンフォニエッタ 〜水都のスケッチ〜 (J.ヴァン=デル=ロースト)

指揮の先生は足を怪我されていたのでしょうか、指揮椅子に座られての指揮でした。スッキリとしたシャープなサウンドでしたが、なんとなくブレンド感に欠けたサウンドでした。マーチは軽快で細かいリズムもよくとらえており好演でした。自由曲冒頭での打楽器セクションはうまいアンサンブルで聞かせました。フルートのソロも秀逸。個人的には中低音がもっと充実すると良いなと感じました。

3
北海道 北見地区 北海道遠軽高等学校 (指揮/今井成実) ※2年連続7回目

1/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 (R.シュトラウス/斎藤淳)

ファンファーレには若干の乱れが残念。アインザッツやピッチ云々というよりも個々の奏者の音色の統一があれば解決できるように思います。全体的にもタンギングやアタックが荒い箇所が見受けられ、全体的にはエンジンがかからないまま終わってしまったようです。自由曲でのホルンソロは好演。課題曲に比べるとしなやかなアンサンブルが垣間見えましたが、やはり表現がおとなしくこじんまりとしてしまったのが残念。

4
四国 愛媛県 愛媛県立伊予高等学校 (指揮/高橋貞道) ※2年連続15回目

1/青い水平線 (F.チェザリーニ)

ファンファーレは豊かに響いていましたが、ユニゾンであるが故にもっと透明感がほしいと思います。マーチでは勇壮な雰囲気がよく表現できていましたが、どこか優等生的な演奏で個性が感じられないのが残念。クラッシュシンバルが印象的で素晴らしかったです。自由曲ではよく研究されていたようで、奥行きのあるスケールの大きい演奏で、特にラストにむかう一体感は見事でした。

5
東関東 千葉県 習志野市立習志野高等学校 (指揮/石津谷治法)※2年連続21回目

4/「シンフォニエッタ」より (L.ヤナーチェク/石津谷治法)

個々の音色の質の高さが伺えるようで、豊かで艶のあるサウンドでした。メロディ(歌)を大切にしたマーチという感じでした。マーチのメロディに歌詞を付けているのでしょうか、休みの奏者などがメロディに合わせて歌を歌っているように見えたのですが。後半のホルンの対旋律を全面にアピールする表現は他の団体には見られない習志野ならではの演奏で秀逸でした。自由曲でも変わらず柔らかいサウンドに加え、アンサンブルのしなやかさが群を抜いています。オーボエ、ピッコロが特に美しかったのが印象的。ラストはTrp全員がスタンドプレイ、Trb奏者はバスTrpに、Euph奏者はワーグナーチューバに持ち替えるなどサウンドがさらに多彩になりました。2年連続18回目の金賞受賞です。

6
西関東 埼玉県 春日部共栄高等学校 (指揮/都賀城太郎) ※2年連続3回目

1/三つのジャポニスム (真島俊夫)

煌びやかなファンファーレでした。マーチに入っても流れが素晴らしく、前半の部では群を抜いて安定感がありました。自由曲は一転、雰囲気をかえ、美しく雅なサウンドになりました。よくアナリーゼされており、曲想をうまく押さえた好演です。個人的には「雪の川」の部分がもっと聞きたいなと思いましたね。「祭り」では、Euph奏者とCb奏者がステージ上手奥にセットされた巨大な桶胴太鼓を叩きバンドのボルテージをうまくあげています。細かい動きもよく練習されているようで、自信に満ち溢れたゆるぎない音楽への姿勢が演奏によく表れています。完成度も高いですが、それ以上に感銘度の高い名演でした。5年ぶり2回目の金賞受賞です。

7
東海 長野県 長野県松本美須々ヶ丘高等学校 (指揮/山岸明) ※3年連続3回目

4/交響曲第5番より 第2、第4楽章 (M.アーノルド/瀬尾宗利)

大変クリアで透明感のあるサウンドでした。小細工のない正攻法なマーチだったと思いますが、やはりマーチの躍動感やドライブ感がもっとあれば、、と感じます。自由曲では、透明感のあるサウンドがよくマッチしており素晴らしい仕上がりだったと思います。2楽章のフルートも好演。優美で甘美な雰囲気も良く出ており、何よりも豊かな表現力は素晴らしいと思います。4楽章冒頭のTrpソロも秀逸。強奏になっても決して破綻せず終始安定感がありました。個人的には非常に好きな演奏で、金賞でも十分と思った演奏です。

8
中国 岡山県 おかやま山陽高等学校 (指揮/松本壮史) ※休み明け4回目

2/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/仲田守)

本日最初の課題曲2。単純な構成のマーチだけにバンドの実力がそのまま出てしまう曲だと思います。表情の付け方が上手く流れのよい演奏でした。木管金管の高音〜中音はわりと少なめで、木管低音がとても多彩で充実している編成ですね。自由曲では、シンフォニックなサウンドで立体的な演奏でした。一つ一つの音に丁寧に気持ちがこめられているようです。Trb2本のソリは見事。技術的には大変高いものをもっているバンドですが、強豪ぞろいの前半の部において、何か一つアピールするものが欠けていたような気がします。

9
北陸 福井県 福井県立武生東高等学校 (指揮/植田薫) ※2年ぶり12回目

3/コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディー (P.ウィリアムズ/S.ネスティコ)

課題曲では生き生きとした雰囲気は良く出ていたと思いますが、何か雑然とした感は否めず、まとまりという意味では今一歩という感じでした。自由曲では一転、この曲をこんなにも楽しげに演奏できるということに、羨望の思いがしました。曲のもつパワー・エネルギーに助けられた部分は大きく、奏法やハーモニー等どこかしら消化不良なところがあったのは残念。しかし各ソロ、ソリとも堂々と「魅せる」演奏を貫いており、聴衆の心にも響いていたと思います。銅賞ではありましたが、ステージ上の51名にとっては至福の時だったのでないでしょうか。何よりも終わった後の指揮者の笑顔が素敵でした。

10
西関東 埼玉県 埼玉栄高等学校 (指揮/大滝実) ※休み明け16回目

4/狂詩曲「ショパン・エチュード」 (宍倉晃)

冒頭は大変充実したサウンドで期待したのですが、第一テーマに入った途端、珍しくクラリネット群の音が固めでブレンドせず、異質な雰囲気を感じました。自由曲は大変面白い曲でした。いわゆるショパンのピアノ曲のフレーズをコラージュしたものですが、速いパッセージも難なく吹きこなせているのは流石ですね。しかし、どこかそこから湧き上がる「音楽的」なものという感じはなく、どこか技術に頼っただけの演奏という印象を受けました。新分野の開拓という点では大きい意味をもつ選曲ではありましたが、やはりピアノ曲を吹奏楽でやる限界を感じてしまったのも事実です。

11
東関東 千葉県 柏市立柏高等学校 (指揮/石田修一) ※2年連続18回目

3/ウインドオーケストラのためのムーヴメントII. "サバンナ" (石原忠興)

課題曲3というのは本当に難しいですね。この実力バンドをもってしてもどこか雑然とした印象が強く、アンサンブルにも乱れが見られました。自由曲は「サバンナ」という副題が示すとおり、アフリカのサバンナを題材にしている曲であるため、多彩な効果音がふんだんに入っていました。いろんな野生動物の鳴き声や、現地の民族の宗教的な儀式や踊りのパフォーマンスを織り交ぜての演奏は、コンクールであることを忘れさせてくれましたが、やはりどこか「やりすぎ」の印象のほうが強く残りました。もちろんこのバンドはパフォーマンスのみに走っているわけではないのですがそれを差し引いても今回の演奏は逆にマイナスイメージのほうが先行してしまったと思います。

12
関西 大阪府 大阪府立淀川工業高等学校 (指揮/丸谷明夫) ※3年連続28回目

2/大阪俗謡による幻想曲 (大栗裕)

なんの迷いもない、ゆるぎない音楽がそこにありました。作為的なことは一切なく、真っ向からマーチを演奏してくれました。まさに王道という感じです。自由曲。十八番とはこのことを言うのでしょうね、、という感想につきます。毎年淀川工業の演奏は素晴らしいのですが、俗謡を演奏するときは、どこか神がかり的な雰囲気が会場を包みこみます。ピッコロ、オーボエのソロも見事。終曲に向かうにつれ、自分の体が前にのめりこむように気持ちも高揚してくるほど引き込まれました。最後の音が消えた瞬間、大歓声がホールに響いたことは言うまでもありません。前半の部、まさにグランプリといって良いでしょう。3年連続金賞で、同バンド20回目の金賞となりました。

13
九州 福岡県 精華女子高等学校 (指揮/藤重佳久) ※3年連続12回目

1/ルイ・ブージョワーの讃歌による変奏曲 (C.スミス)

安定感のある素晴らしいファンファーレが鳴り響き、重厚で骨太なサウンドが曲によくマッチしています。自由曲も華やかなオープニングでスタート。続くコラールは歌いこみも十分で感動的。Trp、Hrnセクションのレベルが高いですね。Trp2名のソリは非常に難しいのですが丁寧に演奏されていてブラボーです。2曲通して奏者全員のまとまり感が素晴らしかったです。ここ2年ほどは後一歩金賞に及ばずという悔しい思いをしていたと思いますが、今年は見事10年ぶり3回目の金賞で飾ることができました。おめでとうございます。

14
関西 京都府 洛南高等学校 (指揮/宮本輝紀) ※3年連続14回目

1/交響曲第1番「ギルガメッシュ」より (B.アッペルモント)

冒頭のファンファーレは抑えすぎといった感じで、やはりこの曲の幕開けはもっと華々しく演奏してほしいと思います。恒例となった楽器の持ち替えも健在で、今年もいろんな持ち替えが見れましたが、やはりそこが原因とは思いたくないものの安定感や音楽の流れが良くなかったです。しかし、近年の同バンドにしては技術だけでなく表現力にも幅がでてきたと思います。指揮者は今年で最後ということを伺いましたが、終わった後の声援や、表彰式での指揮者賞贈呈での温かい拍手など、同氏の人柄を表す一面が見れて私も幸せでした。

15
東京 東京都 東海大学付属高輪台高等学校 (指揮/畠田貴生) ※2年ぶり3回目

1/楽劇「サロメ」より 七つのヴェールの踊り (R.シュトラウス/M.ハインズレー)

明るいファンファーレで素晴らしかったです。マーチに入っても安定感のある低音&打楽器でしたが、もう少し推進力もほしかった気がします。しかし重厚なサウンドがこの曲によく合っており秀逸でした。サロメは都大会よりも更によくなっていましたね。Ob、Flのソロも秀逸です。非常に表現力が豊かであり、音楽にも余裕が感じられました。2年ぶり3回目の金賞。これで「でれば金賞」を更新、東京代表としても4年連続金賞となりました。

※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


Back

Next