第53回全日本吹奏楽コンクール
平成17年10月2日(日)/名古屋国際会議場

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高校・後半の部

1
九州 福岡県 福岡工業大学附属城東高等学校 (指揮/屋比久勲)※休み明け24回目

4/アルプスの詩 (F.チェザリーニ)

予想通りの骨太なサウンド。例年普門館でさえ鳴りすぎかなと感じていましたが今年はよくホールにあった音量と、説得力のある表現・奏法でこの上ない出来の演奏になったと思います。当日のサンライズマーチの中では一番の出来だったと思います。自由曲はこのバンドにしては意外な選曲だったので、期待して聞きました。豊かなサウンドをもっての自在な表現が鮮やかでした。ホルンの見事さは特筆。ラストも圧巻でホールいっぱいに響き渡る城東サウンドに魅了させられました。99年以来6年ぶり11回目の金賞。久々の金賞ですね、おめでとうございます。


2
関西 兵庫県 兵庫県立明石南高等学校 (指揮/谷口昌弘) ※4年ぶり2回目

2/バレエ音楽「シンデレラ」より (S.プロコフィエフ/西山潔)

リズムやメロディが重く流れが悪くなってしまったのは残念。「春風」らしからぬ演奏になってしまい、ワクワクするような躍動感や推進力がほしいです。自由曲はどのパートもよく吹けているし、それなりの技術も持っていますが、やはりTuttiのサウンドに艶がないのが残念。どうもバンドそのものが響かない印象を受けました。

3
東関東 茨城県 常総学院高等学校 (指揮/本図智夫) ※2年連続13回目

3/ディオニソスの祭 (F.シュミット)

木管楽器がステージの最前列ギリギリまでせり出してセッティングしており、この時点でバンドが反響板内に収まっていなかったことが心配でした。マーチはもう出だしから音量キャパをオーバーという印象です。このバンドにしては珍しくというか耳を疑うようなバランスの悪さが露呈し残念でした。例年普門館で聞く分には、見事にコントロールされている印象がありましたが、今年はまるで糸の切れた凧のようです。ディオニソスにしても、各パートは高い技術で音を出しているにも関わらず、Tuttiがうるさく、サウンドにまとまりがありませんでした。底力は持っているバンドだと思うので、来年に期待したいですね。

4
東海 愛知県 愛知工業大学名電高等学校 (指揮/伊藤宏樹) ※休み明け30回目

1/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/佐藤正人)

非常に落ち着きのある美しいファンファーレでした。マーチも整然としており終始安定した演奏を聞かせてくれました。ダフニスも大変美しい「夜明け」でしたが、広がりのある幻想的な雰囲気を出すまでには至らずといった感じです。このホールで定期演奏会を開催しているとのことで、ステージでの音の出し方響かせ方は心得ているようですが、どこか無個性な印象でした。指揮者が交代しこれからの新しい名電サウンドに期待したいと思います。

5
四国 愛媛県 愛媛県立松山中央高等学校 (指揮/橋本加代子) ※2年ぶり3回目

1/交響詩「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 (R.シュトラウス/齋藤淳)

個々人の音の線が細いせいか、ファンファーレとしても安定感に欠けていたように思います。ホルンセクションは光っていました。自由曲は冒頭のアンサンブルは非常に美しかったです。ホルンソロも好演。細部までよく吹けているがTuttiサウンドに魅力が乏しい感じがしました。テクニカルな部分よりも、音に対する表情の付け方等に課題ありと思いました。

6
西関東 埼玉県 埼玉県立伊奈学園総合高等学校 (指揮/宇畑知樹)※3年連続9回目

2/パガニーニの主題による狂詩曲 (S.ラフマニノフ/森田一浩)

やわらかいサウンドで爽やかなマーチとなりました。このバンドは課題曲に対する突き詰め方が素晴らしいですね。単なる課題曲としてではなく、「楽曲を表現し魅了させる」ことにまでこだわっているように感じます。自由曲も見事にコントロールされたまとまりのある演奏を聞かせてくれました。弱奏になっても決して音楽が痩せず、流れを妨げることがないですね。ソリストも秀逸で花を沿え、感銘度の高い演奏となりました。3年連続金賞おめでとうございます。

7
東北 福島県 福島県立磐城高等学校 (指揮/根本直人) ※休み明け8回目

1/「交響三章」より 第1、第3楽章 (三善晃/根本直人)

まとまりという点ではもう一つといった感のファンファーレでした。マーチも比較的早めのテンポ設定で、落ち着きに欠け、アンサンブルにも安定感がありませんでした。自由曲では冒頭のアンサンブルは見事。各ソロも秀逸です。緊張感のある演奏ではありましたが、唐突なカットに逆に緊張感が途切れました。むしろ第三楽章をきちんと演奏したものを聴きたかったですね。

8
東京 東京都 東京都立片倉高等学校 (指揮/馬場正英) ※5年ぶり4回目

1/バレエ音楽「中国の不思議な役人」より (B.バルトーク/小澤俊朗)

ファンファーレはちょっと乱暴な印象を受けました。全体的にも荒削りな部分があり、マイナス印象のほうが先に立ってしまったように思います。自由曲では奏者の一体感は素晴らしいし、曲のもつ雰囲気もよく出ていたと思います。個々の技術はかなり高いものを持っているようですが、色んなところで小さいミスが目立ちました。非常に高いレベルのバンドが続く中、クオリティという点ではポイントを稼ぐことができなかったように思います。

9
中国 岡山県 明誠学院高等学校 (指揮/佐藤堯史) ※2年連続3回目

1/喜歌劇「メリーウィドウ」セレクション (F.レハール/鈴木英史)

豊かで温かいサウンドはこのバンドの財産ですね。ファンファーレも自信に満ちた音で美しく響き渡りました。安定感のある低音群に支えられ、バランスのよいマーチとなりました。この明誠の音で春風やサンライズマーチも聞いてみたいと思ったのは私だけでしょうか? 自由曲で、このサウンドがさらに魅力を増しました。バンド全体がよく歌えているし、中間部の打楽器アンサンブルも秀逸。曲が終わったあと、自然に歓声が沸き起こるような快演でした。金賞でも十分と思うバンドの一つです。

10
東北 秋田県 秋田県立秋田南高等学校 (指揮/阿部智博) ※2年連続23回目

1/交響曲第1番より (H.デュティユー/天野正道)

マーチは奇麗にまとまっていますが、こじんまりとしてしまい、この荘厳な雰囲気を出すには及びませんでした。どこか消極的な演奏という感じでもっと主張が欲しいですね。自由曲では一転し、非常に主張が見える演奏でした。安定感があり弱奏になっても音楽が停滞しないのは素晴らしいと思います。

11
東海 愛知県 安城学園高等学校 (指揮/吉見光三) ※2年連続8回目

2/喜歌劇「こうもり」セレクション (J.シュトラウスII世/鈴木英史)

期待通りの豊かで柔らかいサウンドが響きました。躍動感に溢れた若々しく爽やかなマーチです。トリオが特に秀逸で、ピッコロソロも大変美しく響いていました。自由曲でもバランスのとれたサウンドがさらに魅力を増しました。Tuttiが耳に心地よく、体が包み込まれるような安堵感すら覚えます。特にしなやかな木管セクションが素晴らしかったです。金賞いったと思いましたが…。

12
北陸 石川県 石川県立金沢桜丘高等学校 (指揮/斉藤忠直) ※初出場

2/歌劇「トゥーランドット」より (G.プッチーニ/石津谷治法)

初出場とは思えないほど堂々とした演奏でした。生き生きとしたエネルギーに満ち溢れたマーチでした。自由曲でも重厚なサウンドに加え、歌心のある表現力でスケールの大きい演奏でした。曲のよさも手伝ってか、大変感銘度の高い演奏になったと思います。個々人の技術も高く、クオリティが高いと思います。北陸に注目すべきバンドがまた増えましたね。

13
九州 鹿児島県 鹿児島県立松陽高等学校 (指揮/立石純也) ※2年連続4回目

1/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より 夜明け、全員の踊り (M.ラヴェル/中村俊哉)

音色の揃った華やかなファンファーレで見事な幕開けでした。よくアナリーゼされているようで構成のしっかりしたマーチです。中学・高校の部全てを通した中で、最高のパクス・ロマーナだったと思います。自由曲「ダフニス」では色彩感のある見事な「夜明け」でした。「全員の踊り」も若干乱れもありましたが、音楽の流れを損なうことなく見事な一体感を見せました。演奏が終わった直後、達成感や手ごたえを感じたのでしょうか、指揮者が小さく拳をにぎったように見えました。見事2年連続2回目の金賞受賞。これで高校の部も九州代表全てが金賞でした。3校が揃って金賞だったのは81年(嘉穂、福工大附属、中村女子)以来、24年ぶりの快挙です。

14
北海道 札幌地区 東海大学付属第四高等学校 (指揮/井田重芳)※2年連続25回目

2/バレエ音楽「ガイーヌ」より
序奏、友人たちの踊り、アイシェの孤独、剣の舞、収穫祭 (A.ハチャトゥリャン/中原達彦)

見事にコントロールされ、美しくまとまったオープニングでした。メロディの歌いこみが素晴らしく、躍動感のある良い課題曲だったと思います。自由曲は聞きなれた曲ですが、飽きさせない演奏でした。少々アドレナリンが出すぎかなと心配な部分もありましたが、音楽の勢いが素晴らしく12分間があっという間に過ぎてしまいました。収穫祭のラストのコードも素晴らしく、高校の大トリに相応しい演奏で締めくくってくれましたね。もっともっと聞いていたいと思わせるような魅力的なサウンドです。3年ぶり12回目の金賞おめでとうございます。




※出場回数には、招待演奏、特別演奏を含んでおりません。


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