第56回全日本吹奏楽コンクール 平成20年10月26日(日) /大阪国際会議場 |
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一般の部 |
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1 | 東北 宮城県 名取交響吹奏楽団 (指揮/近藤久敦) ※2年ぶり14回目 | |
5/プラトン洞窟からの脱出 (S.メリロ) | ||
非常に落ち着きのあるサウンドですね。課題曲は良くアナリーゼされており、奏者が自分の役割を確実に果たしたという印象で、奇をてらうことのない正攻法な演奏でした。自由曲は技術的に難易度の高い曲ではありませんが、音楽性の高さが素晴らしかったと思います。多少不安定な箇所もあっても、それ以上にスケールの大きい説得力のある音楽に魅了されました。4年ぶり3回目の金賞受賞。一般部門でのプログラム1番・金賞は7年ぶりです。 | ||
2 | 関西 兵庫県 尼崎市吹奏楽団 (指揮/辻井清幸) ※2年連続25回目 | |
3/吹奏楽のための「北海変奏曲」 (伊藤康英) | ||
毎回弱奏の上手さが光る楽団です。バンドのサウンドとしてはこの課題曲に良くマッチしていました。今回はサウンドに艶がなく、表現も平板だったように思います。自由曲は安定感のある演奏で、ソツのないものでしたが、やはり表情が乏しく平板な作りになったのが残念。この曲へのエネルギーというものが感じられませんでした。この楽団の魅力を発揮できる自由曲ではなかったように感じました。 | ||
3 | 東京 東京都 リヴィエール吹奏楽団 (指揮/佐川聖二) ※2年連続2回目 | |
1/エスティロ・デ・エスパーニャ・ポルケ? (天野正道) | ||
大編成らしく大変重厚なサウンドでのオープニングでした。第一マーチでのトランペットの旋律は残念ながら重く聞こえていました。この課題曲は大編成バンドには難曲と思われますが、全体的にもサウンドが分散気味で、ピリッとしないまま終わってしまったようです。自由曲は流暢でノリの良い大人の演奏でした。躍動感や色彩感に溢れており課題曲とは違うバンドかと思うほど生き生きとした音楽を聞かせてくれたと思います。 | ||
4 | 北海道 札幌地区 ウインドアンサンブル・ドゥ・ノール (指揮/仲田 守) ※3年連続6回目 | |
5/「パロディ組曲」より スイート・ドリームス (S.ブライアント) | ||
課題曲は一つ一つの音符を確実に音にした丁寧な演奏でした。冷静な音楽運びではありましたが、表情が一本調子であり、もっと自由自在な色付けがほしかったと感じました。自由曲は初めて聞きましたが変化に富んだ面白い曲です。ホルストの第一組曲のフレーズがちりばめられていて、一つの楽曲として大変興味深いものでした。ダイナミクスレンジの広いサウンドには艶があり、多様な表情には大変魅せられました。 | ||
5 | 九州 鹿児島県 松陽高校OB吹奏楽団「緑」 (指揮/眞邉省至) ※3年連続4回目 | |
4/パガニーニの主題による狂詩曲 (S.ラフマニノフ/森田一浩) | ||
課題曲は大変透明感のあるサウンドが見事。期待通りの素晴らしい木管セクションです。金管のサウンドにも品があり、Tuttiも見事。丁寧な奏法と、美しいフレーズの処理がこの曲の魅力を高めていました。ソロも秀逸です。自由曲も丁寧な作りでバンドのカラーによく合っていたと思います。中間部の緩やかな部分のサウンドは甘美であり優雅でしたし、ソロ群も立派。一般でこういった音楽性を持ったバンドは貴重だと思います。 | ||
6 | 東関東 神奈川県 相模原市民吹奏楽団 (指揮/福本信太郎) ※2年連続3回目 | |
3/ライフ・ヴァリエーションズ 〜生命と愛の歌〜 (鈴木英史) | ||
課題曲の冒頭は伸びやかで表情豊かなピッコロとバスクラでした。比較的早めのテンポ設定で、この曲のもつ重厚な雰囲気が多少損なわれたように聞こえましたが、このあたりは好みでしょうか。自由曲も高い技術と思いましたが、バンドのサウンドにクリアさが欠け、各セクションの動きなどが不明瞭でした。ホールとの相性かもしれませんがどこか聞かせどころが明確でなく、そこを探っているうちに終わってしまったように思いました。 | ||
7 | 九州 佐賀県 佐賀市民吹奏楽団 (指揮/南里隆弘) ※2年連続12回目 | |
5/歌劇「ラ・ボエーム」より (G.プッチーニ/樽屋雅徳) | ||
強奏になっても破綻することなく理性的なサウンドでした。各セクションの力に穴がなく非常にバランスの良い演奏だったと思いました。標準的な演奏ではありますが、欲を言えばバンドの個性が感じられないとも思います。自由曲では豊かで立体的なサウンドでスケールの大きい音楽でしたが、やはりどこか型にはまった演奏で面白みに欠けていたと思います。このバンドには編曲作品よりも吹奏楽のオリジナル曲のほうが合っていると思うのですが…。 | ||
8 | 四国 高知県 鏡野吹奏楽団 (指揮/弘田靖明) ※2年連続17回目 | |
5/吹奏楽のための交響的印象「海響」 (和田薫) | ||
ピッチが悪くTuttiの響きが濁ってしまいました。課題曲は歯車の噛み合わせない部分が多々見受けられ、クオリティの低いものとなってしまったようです。自由曲は勢いのある演奏でしたがサウンドが安定しません。打楽器群と管楽器群がうまくブレンドしないまま曲が進行していき、ちぐはぐになっていたのが残念。そんな中でソロ群は美しい表情を見せてくれました。特にピッコロソロは秀逸。後半部の速い部分は「和」のリズムが感じられず浮き足立ったままラストに突入してしまいました。この曲の荒々しさや野性味溢れる雰囲気を醸し出すにはもう一歩と感じました。 |
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9 | 中国 岡山県 倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニー (指揮/佐藤道郎) ※2年ぶり10回目 | |
2/交響組曲「寄港地」より II.チュニス〜ネフタ、III.ヴァレンシア (J.イベール/P.デュポン) | ||
軽快で爽快なマーチでした。大編成特有のバタバタしたところもなく、よくまとまった演奏だったと思います。木管セクションのサウンドは柔らかで艶もあり素晴らしいです。自由曲、第2楽章でのオーボエは見事。第3楽章は大変色彩鮮やかで、雄大な演奏。サウンドとしてはどちらかといえばレトロな雰囲気で、昨今の金賞受賞バンドによくあるクリアでキレのあるサウンドとは対極にありますが、これはこれで倉敷GHの個性だと思います。銅賞ではありましたが、個人的には好きな演奏でした。 | ||
10 | 西関東 埼玉県 ソールリジェール吹奏楽団 (指揮/瀬尾宗利) ※8年ぶり2回目 | |
2/「交響曲第4番」作品71より 第1・第3・第4楽章 (M.アーノルド/瀬尾宗利) | ||
非常に抜けのよい明るいサウンドのバンドです。各セクションのレベルは高くそれでいて力の抜けた余裕のある課題曲でした。トリオの響きは特に美しく甘美でした。美しいサウンドは自由曲でより本領発揮となりました。よく整理されていて大人の演奏だったと思います。楽器の発音が大変明瞭で鮮明で、ここまでキレイに揃うものかと感心させられました。オーボエのソロも秀逸。常連の2団体のお休みに変わっての出場ですが、「金賞を狙いにいく演奏」というよりも「コンクールを楽しむ演奏」といった雰囲気です。初の金賞受賞となりました。 | ||
11 | 北陸 福井県 ウィンドアンサンブル・ソレイユ (指揮/奥山泰三) ※初出場 | |
3/ポストカード (F.ティケリ) |
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40数名は本日の最小編成。編成を生かしたスッキリとしたサウンド。大ホールに気後れすることなく良く音も出ており、個々のレベルも安定している実に明瞭な演奏でした。力任せな演奏をするのではなく、個々の奏者が同じベクトルで演奏するだけで音楽はまとまるのだという見本のようでした。自由曲は更に奏者の腕の見せ所といったところ。同じフレーズが繰り返されたり変容したりと面白い曲でしたが、決め所や曲の頂点が不明確でメリハリに欠けました。最後まで同じような雰囲気で終わってしまったのが残念。北陸代表の連続銅賞は4年でストップです。 | ||
12 | 西関東 埼玉県 伊奈学園OB吹奏楽団 (指揮/宇畑知樹) ※4年ぶり3回目 | |
5/歌劇「トゥーランドット」より (G.プッチーニ /後藤洋) | ||
クリアですっきりとしたサウンドです。各セクションとも高い技術を見せた課題曲でしたが、キレというか鋭さがもっとほしいと感じました。美しく仕上がっていますが、この曲のもつ荒々しさや野性味といった部分までも綺麗にまとめすぎてしまったような演奏でした。この美しく洗練されたサウンドは自由曲のほうで発揮されたように思います。大人のトゥーランドットでしたね。個々の奏者がどう表現したいのか意思をもって演奏されていたと思います。非常にしなやかな木管を中心としたスケールの大きい音楽を聞かせてくれました。 |
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13 | 東関東 千葉県 土気シビックウインドオーケストラ (指揮/加養浩幸) ※3出休み明け10回目 | |
3/カントゥス・ソナーレ (鈴木英史) | ||
本日の白眉。全部門通じて一番感銘を受けたセリオーソでした。音楽の流れは秀逸であり一つ一つの音、フレーズにしっかりエネルギーが感じられます。 Tuttiでの重厚で安定感のあるサウンドがホールに満ちていく様は大編成ならではの醍醐味でしょうか。一歩間違えば退屈な曲に聞こえてしまうこの課題曲を実に新鮮に聞かせてくれました。自由曲はスケールの大きい圧巻の演奏でした。強奏での重厚感や弱奏での陶酔感を感じるサウンドが曲の中で多様な表情で魅了してくれます。まさに息を呑むとはこのことであり、吹奏楽の響きが こんなにも美しいということを再認識させてくれる秀演でした。 | ||
14 | 東北 秋田県 秋田吹奏楽団 (指揮/佐藤正人) ※2年連続9回目 | |
1/沈黙の地球(ほし)〜レイチェル・カーソンに捧ぐ (阿部勇一) |
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明るく爽快なマーチでした。第一マーチでのトランペットの旋律がもう一つエンジンが かからず心配しましたが、トリオ以降尻上がりに良くなっていったと思います。自由曲はメッセージ性の強い曲であり、いわゆる現代音楽の構成ですが委嘱作品らしく流暢で手馴れた演奏という印象を受けました。この手の曲は流石に上手だと思います。課題曲とのカップリングも良く金賞でも十分かと感じたバンドの一つです。 | ||
15 | 東海 愛知県 創価中部サウンド吹奏楽団 (指揮/多戸幾久三) ※9年ぶり2回目 | |
2/「幻想交響曲」より V. サバトの夜の夢 (H.ベルリオーズ/R.M.ロジャーズ) | ||
骨太なサウンドで軽快なマーチでしたが、表現が平板で味付けがもう少しあっても良いかなと思いました。自由曲も骨太なサウンドでの熱演でしたが、課題曲と自由曲でバンドの色が変わらないのが残念。こちらも表現が平板で、さくさく音楽が進んでしまったように思います。曲の中での重心・頂点が見えないのが惜しまれるところです。金管セクションの重厚なサウンドは素晴らしく、特にラストのコードは小気味良くホールに響き渡りました。 | ||
16 | 関西 滋賀県 大津シンフォニックバンド (指揮/森島洋一) ※3年連続10回目 | |
5/鳥のマントラ/萬歳楽 (鈴木英史) | ||
重厚でどっしりとしたサウンドで、強奏でも決して破綻しないのは流石。複雑に絡み合うフレーズもよく聞こえてきて、今大会の中で最も完成度の高い「火の断章」ではなかったでしょうか。自由曲は独特の世界を圧巻の演奏で披露。重厚なサウンドと立体的な構成で、荘厳な雰囲気や神秘的な雰囲気など緩急メリハリのある演奏でした。委嘱作品らしくしっかりアナリーゼされ曲を掌握されているようです。もはやアマチュアの域を超えているとも思える出来ではなかったでしょうか。今大会大トリを見事な演奏で締めくくり、2年連続8回目の金賞です。 |