われ笑う、ゆえにわれあり

土屋賢二

 この本は、非常にたくさんの効能があります。列挙してみましょう。

1 笑える。
 とにかく笑えます。ですので買って読んでみてください。買わないとおもしろくありません。すくなくともこの本の著者はおもしろくないでしょう(印税が入りません)。買ってまで読んで、笑えなかった方。心配はありません。ご自分の好きなお笑い芸人のコントビデオをテレビに映してください。そのテレビを見ながら、本を読めば笑えるはずです。ちなみに、テレビと本への視線の集中度は84対16にします。難しいですが、笑いたいのなら、これくらいの努力を惜しんではいけません。

2 ためになる。
 この本は、縦書きの文章というものは、上から下へ、右から左へ読むことを実践を通して教えてくれます。そして、このホームページで、横書きの文章の読み方を皆さんは学びました。このページとこの本があれば、日本語で書かれた文章はほとんど読めるようになります。 

3 タバコがやめられる。
 意外にお思いでしょうが、事実です。まず、この本にタバコで火をつけます。次に、カーテンに燃え移らせ家を火事にします。そうすれば、普通の人はやめられるでしょう。それでもやめられない人は、同じ方法で他人の家を燃やします。その後、交番に行き、お巡りさんに「タバコをやめたいんですけど」と相談します。忘れてはならないのは、その前に「私が火をつけました」と言うことです。親切なお巡りさんは、必ずやあなたをタバコのないところへ連れていってくれます。しかも近所で注目の的になれるという特典もついてきます。いや、ほんとにすごい本です。

4 お金儲けができる。
 この本を買ってください。次に、友人や知人のところへ行きます。できるだけ、弱そうな人のところへ行った方が、万一の時を考えるとあなたにとっていいでしょう。あとは簡単。その人にナイフを突きつけて「これを〇〇円で買え」と言うだけです。金額は1円以上ならあなたの自由です。もし、ナイフが手に入らないという人は、日本刀や拳銃でもかまいません。

5 女性は嬉しい。男性も嬉しい。
 こういう本は珍しいですね。女性を褒めて褒めて褒めまくってます。この作者は、よほど女性に愛情があるのでしょう。ただ、その愛情が強すぎて、感情がひっくり返り、強く強く女性を憎悪しているのが、もっともすばらしい──いえ、唯一残念なところです。

6 日本は平和だなぁ、と実感できる。
 このような本が出版されてるんですから。

 解説は、漫画家の柴門ふみさんが書いてます。それを読むために買っても、著者はかなり喜ぶのではないでしょうか(印税が入りますから)。極論、買ってくれさえすれば読む必要はない、と言えなくもないです。
 ──このような文章より、100倍笑えて、ひねくれて、ふざけた文章が満載の本です。
 文春文庫。448円。
『われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う』『人間は笑う葦である』も発売中。