港町ゴリアテで、ゼノビア聖騎士ランスロット一行に出会ったデニムカチュアヴァイス。三人は、ランスロットたちの助けを借りて、ガルガスタンに捕らわれているロンウェー公爵の救出を目論む。だが、危険のともなう作戦に、カチュアは弟デニムを心配する。
 その姉妹の様子を見ていたヴァイスは・・・。

ヴァイス
「・・・あんまり、弟をあまやかすなよ。あいつだって男なんだ」

カチュア
「少し黙っていて。弟はあなたみたいに血の好きな男じゃないのよ」

ヴァイス
「戦いたくて戦ってるんじゃねぇや。犬死にしたくないだけだ、俺は」

カチュア
「あの人たちを当てにしてるくせに、偉そうな口をきかないで」

ヴァイス
「あいつらをここへ入れたのはカチュアじゃないか! 何を今更・・・」

カチュア
「利用できそうだから、おべっかを使ってるんじゃない。あなたみたいに、我を通すだけの能無しじゃないのよ、私は。少しは感謝なさいよ」

ヴァイス
「・・・ケッ。僧侶のくせに人をだましてもいいのかよ! やってらんねぇぜ」

カチュア
「・・・私は、もう誰にも死んでほしくないだけよ・・・」

 

カチュア・パウエル

 デニムとヴァイスの行動は若い。
 この会話の前に、デニムとヴァイスは、たった三人で暗黒騎士団の団長を襲撃しようとした。また、ヴァイスは、ロンウェー公爵の救出作戦においてランスロットたちの助力を断ろうとした。目的を達成せんとするならば、彼らの行動はすこぶる甘いと言わざるを得ない。
 いかんせん、16歳の若者である。思慮深い行動を求めるのも酷という者か。
 それ故、慎重論を唱える18歳のカチュアの存在が大きい。後に、デニムの決定が多くの人に影響するようになっていくと、それはなおさらである。もっとも、彼女が慎重論を唱える理由は、デニムが心配だからだ。
「私はあなたを失いたくないのよ。考えたくないけど、父さんはきっと、死んでるわ。私にはあなたしかいないの・・・」
「そう、この世に血を分けた肉親はあなただけ。たった二人しかいない姉弟なのよ。死なせたくない・・・」
 カチュアは、孤独を恐れている。だからこそ、デニムとともに危険なゲリラ活動に参加し、彼を守ろうとした。だが同時に、デニムを死なせたくないという理由で、戦いから逃げ出したいとも考えている。「肉親」というものに異常なまでの執着心を見せる。
 そのためには手段を選ばない。
「利用できそうだから、おべっかを使ってるんじゃない」
と、割り切ることができる。健気と言うことができようが、その後のヴァイスのカウンターパンチはあまりにも痛かった。
「・・・私は、もう誰にも死んでほしくないだけよ・・・」
 彼女の孤独への恐怖と自分への嫌悪が、このこぼれ出た呟きに収束されている。

お知らせ

 「カチュア愛好会」(仮称)について。
 どこかの国の歴史のように、不当に扱われている(ように思える)カチュアの言動をいろいろな角度から検証してみようというのが活動主旨です。だが、まだ会は発足されていまぜん。せめて「TUTORIAL」を完成させてから活動を開始しようと思っています。