なお近代史の新史実として、朝鮮戦争の国連決議でなぜソ連が派兵に反対しなかったのかが明らかになりました。ソ連代表は拒否権を行使せずに単に退場したのです。これは長く謎とされていましたが、2008年韓国の研究者が、東欧の文献を調べた結果、スターリンが米国に朝鮮戦争に出兵させてアジアに釘付けにし、その間手薄になる欧州で勢力を進出させる戦略であったことが、当時のスターリンと東欧指導者の会談記録からわかりました。これはまさに北朝鮮を使った支那事変と同じ世界的な陽動戦略であり、スターリンにとって支那事変が独ソ戦に備えた大陽動作戦であったという本書の分析を支援するものと思います。あらためてスターリンの謀略のスケールの大きさとワンパターンに納得します。ただし今度は歴史の展開は自身の急死という陰謀の大家も予想できない事件で彼の思惑は外れました。実はここに日本再軍備の機会があったことは本書で明らかにしたとおりです。朝鮮戦争がベトナム戦争のように続いていたら日本の対応も警察予備隊でとどまっていたか不明です。 |