■戦後初のロマンスカー |
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戦後の混乱期に区切りが見え始めた昭和26年。デハ10系による特急運転に代わるべくデビューしたのが5700系です。当時流行だったいわゆる「湘南顔」をモチーフに、しかし単なる“サルまね”で終わらせないのが東武鉄道。そのまま取り付ければ「タレ目」のように不格好に見える正面ガラスを、どこから見てもほぼ水平になるように工夫され、塗り分けも金太郎塗りを避け、全く異なった雰囲気になっています。
車内は当時まだ珍しかった蛍光灯を完全装備。夜、とびっきり明るい車内から、終着・浅草雷門駅の薄暗いホームに降りた乗客は、しばらく歩けなかったとか・・・。そしてズラリと並ぶ2人掛けのロマンスシート。日光・鬼怒川への増え続ける行楽客に対応するため、本格的な特急専用車の誕生です。 |
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■「ネコひげ」デビュー |
昭和26年11月、5700系6両でデビュー。A編成・B編成とに分けられ、A編成が流線型「ネコひげ」タイプ。B編成が貫通型となります。4連での運転時は、A編成を分割して間にB編成を挿入して組成され、運転時の編成美を考慮されたりもしました。
好評となった5700系特急は、増え続ける乗客に対応すべく、補助座席の設置などを行いますが、昭和28年3月、さらに3編成が増備されます。いずれも貫通型でB編成1本に、新たにC編成2本。このC編成とは、国内初となる直角カルダン駆動装置搭載台車とした車両でした。
全12両となった5700系。しかし安泰と思えた活躍も、わずか5年ほどで、怒濤の車両交代劇に引きずり込まれてしまいます。 |
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■時代の流れに翻弄される |
世は“デラックス化”の一途。蒸気運転だった国鉄日光線に新たなる対抗馬・キハ55形が・・・東武は1700系を昭和31年に就役させます。これにより余剰となった5700系は、A・B編成が側面に青帯を入れられ急行用に格下げされ、残るC編成は白帯を締めて1700系との併結運転に供されます。
しかし、試験段階の直角カルダン台車は具合が良くなく、1700系の増備によって特急運転から身を引きます。(1700系の登場で、今度は国鉄が151系「こだま」の派生形式とも言える157系(冷房準備車)を製作。日光線に投入します。そこで今度は東武が決定版となる1720系DRCを昭和36年に投入。完全冷房車・サロン・ビュッフェ装備車の登場に、国鉄は敗北を認め、“日光”から手を引くこととなります) |
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全車急行用となった5700系。編成組成や運用上の際の煩わしさを解消するため、昭和35年には特徴だったA編成の流線型を、他の編成と同様の貫通型へ改造。ここに「ネコひげ」は消滅します。(昭和36年以降、C編成の直角カルダン台車も電装解除され、クハと台車交換を行い、通常の吊り掛け式に変更。)
伊勢崎線の急行として活躍した5700系は、上毛電鉄の中央前橋まで足を延ばすこともありました。ところが昭和44年には急行用1800系がデビュー。これにより急行の座からも転落。以降は臨時快速や団体列車など、不定期運用に就き、運転がある度に沿線には大勢の撮影者がやって来ました。
21世紀を目前にした1990年。長年の活躍を讃え、鉄道友の会よりエバーグリーン賞が贈られます。国内でもあまり類を見ない受賞でした。しかし世の中は高級バブル期の真っ最中。新型特急「スペーシア」の投入に始まる怒濤の新型車導入により、冷房の無い、古臭い車両は、ついに活躍の場を無くします。 |
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■長かった18年〜休車・解体危機から奇跡の復活へ |
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引退後は全車が春日部検修区(現・南栗橋車両管理区春日部出張所)に集められ、1720系とともに休車扱いとされました。
動態保存や地方私鉄売却などの話も出ては消え、ほとんどの編成は、1720系とともに北館林荷扱い所へ送られ解体処分。5701F・5702Fのみがいつまでも残されました。(5703Fのみ熊谷市内のレストランに転用。また5703号の前頭部が製造元のアルナ工機へ引き取られます→会社解散により東武へ)
結局、5701Fが杉戸工場にて保存を前提とした保管がなされ、5702Fは解体されてしまいます。
そして今回、その5701号が、生まれた時とほぼ同等の姿となり、見事に甦ったのです! |
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編成別履歴 |
編成 |
新製 |
メーカー |
旧編成 |
台車交換 |
ALサッシ化 |
無線設置 |
廃車 |
A |
5700F |
1951.9 |
日本車両 |
− |
5801⇔700 |
− |
1987 |
1992.9 |
5701F |
1951.9 |
汽車会社 |
− |
5800⇔701 |
− |
1987 |
1995.3 |
B |
5702F |
1951.9 |
汽車/日車 |
5710F |
− |
− |
1987 |
1995.3 |
5703F |
1953.4 |
ナニワ工機 |
5711F |
− |
1967 |
1987 |
1992.10 |
C |
5704F |
1953.4 |
日本車輌 |
5720F |
5720⇔711 |
1968 |
− |
1992.10 |
5705F |
1953.4 |
汽車会社 |
5721F |
5721⇔710 |
1981 |
− |
1992.9 |
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