BSE

(Jan. 02. ,2002)

 狂牛病騒ぎが巷間をにぎわしており、収まる気配がないようです。
 私の周りでも、牛肉は食べない、という人が多い状態です。

 私はといえば、ほとんど気にしておらず、牛肉や牛タンを食べます。肉よりも内臓の方が危険、と言われているようですが、レバニラ定食を食べますし、川崎競馬場に行った時には、名物になっている牛モツ煮を食べます。

 狂牛病騒ぎが特徴的なのは、O157のように短期間で危険性が判明する、というところがなく、潜伏期がきわめて長いことにあると思います。しばらくはこの状態が続くのではないかと思われます。

 牛肉は危険、という風評は、多くの業種に影響を与えています。

 牛の生産者はもちろんのこと、肉屋さんのような販売業者、焼肉屋さんなどの飲食店や、さらには化粧品の製造など、さまざまな業種に影響が出ています。今後、これらの業種の業績が悪くなれば、これらの業種に資金を貸している金融業にも影響があるでしょうし、このパニックの与える社会的な影響は大きなものがあると思います。もちろん人ごとではなく、私自身にも影響があることは予想できます。

 このような現在の状態はどうすれば解消できるのでしょうか。

 情報が錯綜しているのが、全ての原因です。

 牛肉は安全です、イギリスでは牛の脳を日常的に食べてきたので患者が出ましたが脳と脊髄を食べなければ大丈夫です、と報道されていましたが、イギリスでは、感染している危険性があるということで牛が18万頭も焼却処分された、と報道されました。安全なら焼却の必要はないわけで、何らかの危険があるから焼却したと考えてしまうのが普通でしょう。

 クロイツフェルト・ヤコブ病の原因はBSEだが、患者数は今までにイギリスを中心に世界中で100人ちょっとしかいない、という報道がありました。しかしながら、硬膜の移植を受けてヤコブ病に罹患した患者さんは日本だけで何十人もいるわけです。また、イギリスに半年以上住んでいた人は献血をすることができません。患者が世界中で100人ちょっとしかいないのであれば、なぜ日本だけで、硬膜移植で罹患した患者さんが50人とか70人とかいるのでしょうか。しかもこれは判明しているだけで、実際には潜在的な数はもっと多いと言われています。数少ないクロイツフェルト・ヤコブ病に罹患した患者さんの硬膜だけをなぜか集中的に死後、移植用に摘出して、しかもそれが集中的に日本に輸出された、ということでもない限りありえないことです。普通に考えれば、患者さんは何万人もいる、と考えるのが普通でしょう。また、患者が100人ちょっとしかいないのであれば、輸血に注意する必要もないかと思われますがそうではありません。

 日本ではなく外国の牛なら安全か、という点についても、むしろ検査態勢がある日本の方が、検査態勢が整っていない途上国よりも安全という感じがします。

 今、大事なのは、正確な情報を流すことかと思います。

 先日、テレビで、肉牛の生産者の方が、インタビューで、「(日本国内でBSEに罹患したと判明したのは)3頭とも乳牛じゃないか、肉牛と乳牛じゃ(育て方が)全然違うんだよ。」と答えていました。

 日本でBSEに罹患した牛は3頭とも乳牛です。また、考えてみると、狂牛病にかかった牛、として資料映像で流れるイギリスの映像でも、足が立たなくなっている牛として映像が出るのは、私が見た限りでは全て乳牛です。

 こういったことからすると、そもそも乳牛以外は、牛は安全なのではないか、という気もします。

 牛には、周知のように、「和牛」と称される肉牛種と、ホルスタイン種のような乳牛種、それらの混合種(たしか「F1」と称されていると思います)の3種類がいるわけです。日本でBSEに罹患した牛は3頭とも乳牛です。もしイギリスでも同様であれば、そもそも和牛やF1はBSEに罹患している可能性はかなり低いこととなります。

 「今のこの時代だからこそ、牛肉を食べます」みたいなセリフを一般の人が話しているような全農のテレビコマーシャルを見たことがありますが、残念ながらあまり説得力がないような気がします。

 「BSE罹患の可能性があるのは乳牛だけ、和牛やF1は大丈夫」というコマーシャルならもっと説得力があるのではないかと思います。なぜそのようなコマーシャルが流れないのでしょうか。牛乳の生産者に気を遣って、ということなのかもしれませんが、そもそも牛乳については、「牛乳は安全」というのが一般の国民の認識するところで、特に牛乳についてパニックにはなっていないでしょうから、そのような宣伝をしても問題はないように思われます。

 私は、飛行機に乗れば墜落のおそれもあることを認識しながら乗っているわけですし、繁華街を夜中に歩く時も危険があることを認識しながら歩いているわけです。それと同様に、自分が食べている食材が、100パーセント、一点の曇りもないほど安全だ、とは考えておらず、一定の危険性があることを認識しながら、ただしその危険性はさほど大きいものではないと判断して食べています。いずれにせよ、この牛肉パニックが早くおさまることを望んでいます。