テレビ2

(Oct. 16 ,2002)

 このトシになって、両親に感謝していることはいろいろあります。

 その中の1つが、子供のころ、テレビをあまり見させなかったことです。

 例えば、私が中学2年生のころから、ガンダムというアニメをやっていたようですが、一度も見たことはありませんし、3年B組金八先生とかをみんな見ていましたが私は見たことがありませんでした。中学3年か高校1年のころ、MANZAIブームというのがあったようですが、このころに漫才を見たことはありませんでした。

 当時は非常に不満でした。何でみんなテレビを見ているのに自分は見られないんだ、と思っていました。テレビが見られないので、例えば中学の時に何をしていたかというと、海外からの短波放送のラジオ(日本語放送ですが)を聞いていました。

 子供時代の習慣は大人になってからも続きます。大学に入っても、その後も、現在も、テレビの視聴時間はかなり少ないと思います。去年の12月ぐらいに英語の勉強をするためにCNNとかを入れたため、その関係でテレビを見ることは増えましたが、地上波のテレビといえば、ニュースと、スポーツ中継、あとは爆笑問題の番組ぐらいしか見ません。

 現在発売中のAERA(朝日新聞社)で、『超早期教育で子供「肥満脳」』、という記事を読みました。この記事の中で、テレビ、ビデオ、フラッシュカードなどが子供の脳に与える影響について書かれています。

 関満博先生(一橋大教授)の「現場主義の知的財産法」(ちくま新書)の中で、

 この25年ほどの間、基本的にテレビを見ていない。年間でせいぜい数時間程度であろう。

との記述があります(56ページ)。

 山形浩生氏の「新教養主義宣言」(晶文社)の中で、科学技術に対する好奇心をどのように養うか、という文脈の中で、

 どんな人も育つ過程で、何らかの好奇心は持つんだろう。でもそれを維持させるには(テレビを見せないことと)そういう好奇心で動いているほかの人に接触させるぐらいしかないのかも。

との記載があります(185ページ)。

 私が大学を卒業したのは平成元年。いわゆるバブル入社組です。私の周りでは、バブルの崩壊に伴って仕事面でかなり苦労している人が大勢います。私が特に仕事面で苦労とかがない理由の1つは、関先生ほどではないものの、テレビの視聴時間が少なく、その分の時間を何かほかのことに使っていたからかな、と思います。

 テレビに不満があるのが、必要な情報は伝えない代わりに、不要なことばかりやっている、というのがあります。

 バリ島で、外国人向けディスコを狙った爆発事件がありました。日本人の犠牲者も出たようです。今になって、9月11日前後に、危険な情報があったとしてジャカルタの米国大使館が閉鎖されていた、ということが報道されています。インドネシアがしばらくの間危険だ、ということをもし日本のテレビが伝えていたら、日本人犠牲者は出なかったのではないでしょうか。

 このような日本のテレビの現状というのも、テレビ局に責任があるというよりも、視聴者に責任があるのでしょう。どうでもいい番組の方が視聴率が上がるからテレビ局はそういう番組ばかり流すのだと思います。

 これからの時代、今まで以上に競争社会になるのでしょう。その中で生活していくために必要なのは、幼少期からテレビやビデオを見ない生活を送ることなのかもしれません。その意味で私は両親に感謝しています。