日本野球界の現状と問題点 M.D.さんの卒論より (2)
第1章 「現在の日本野球界の組織」
第1節 プロ野球界の組織
日本野球界の最高峰にあるプロ野球を統括するのは社団法人1)である
「日本野球機構」である。組織的には「日本野球機構」と、選手会等からな
る「日本プロフェッショナル野球組合」の2つの組織からなっているが、実
質的には同一のものとみなしてもよい。日本野球機構はセントラル・リーグ
パシフィック・リーグの両リーグと所属の12球団(セ・リーグは中日・読
売・横浜・ヤクルト・広島東洋・阪神、パ・リーグは福岡ダイエー・西武・
オリックス・ロッテ・日本ハム・大阪近鉄)で組織される。
日本野球機構は最高責任者をコミッショナーとし(現在は川島廣守コミッ
ショナー)プロ野球界全体の発展を目的としている。コミッショナーはオー
ナー会議(社団法人の理事でもある)の中の選挙によって決定する。多くの
重要な議案についても、同様にオーナー会議の議決が必要となるので、実際
はコミッショナー自体の権限は大きなものではなく、実質的にはオーナー会
議が最高議決機関といえる。コミッショナーの職務をたすけるためにコミッ
ショナー事務局があり、事務局は庶務事項を扱う。機構主催のオールスター
戦と日本シリーズのほかには12球団から年額7千万円ずつ拠出される会費な
どが日本野球機構の収入源である。社団法人のため次年度に余剰金を繰り越
すことができない。他にも多くの委員会があり、様々な問題について年間を
通じて検討している(例・規則委員会、国際関係委員会等)。委員会は球団
の代表者(オーナーとは限らない)や専門家によって構成されている。
これとは別に、各リーグがある。セントラル野球連盟、パシフィック野球連
盟は各連盟会長が最高責任者で、これもリーグのオーナーの選挙によって決
定される。それぞれ現在セ・リーグは高原須美子会長、パ・リーグは原野和
夫会長が務める。連盟は所属球団の他に審判部、記録部、事務局から構成さ
れる。
第2節 アマチュア野球界の組織
プロ野球とは全く組織を別にしてアマチュア球界がある。アマチュア球界
は大きく分けて、社会人野球と学生野球に分けられる。そして社会人野球を
統括するのが「財団法人2」・日本野球連盟(JABA)」で、学生野球を
統括するのが「財団法人・日本学生野球協会(所属団体は全日本大学野球連
盟及び日本高等学校野球連盟)」ある。今まで国際試合にはこの社会人、学
生の混成チームが日本代表として派遣されてきたが、これを受け持ってきた
のが「全日本アマチュア野球連盟(BFJ)」である。
全日本アマチュア野球連盟は、野球競技がバルセロナ・オリンピックから
正式種目に加えられた事を受け、日本野球連盟及び日本学生野球協会によっ
て平成2年に構成された。
日本野球連盟の沿革については、昭和24年に「社会人野球の健全なる普及
及び発達並びに会員相互の親睦を図る」3)との旗印の下に、全国9地区連
盟とし、342の加盟チームをもって日本野球社会人野球協会として発足し
た。日本社会人野球協会は発足と同時に国際舞台に進出する足がかりをつく
った。その後、昭和50年代に入り、国際交流が一段と高まったり、ロサンゼ
ルス・オリンピックで野球が公開種目となったりする動きの中、社会人野球
の呼称では支障があったため,昭和60年に「日本野球連盟」と改称した。
加えて国内事業においても、より広い範囲で野球の普及発展を図るため会員
の資格要件を社会人野球のみに限定せず、日本学生野球協会加盟団体所属の
ものを除く大学及び定時制高等学校(18歳以上)在籍者も対象にした。平成
2年には財団法人・日本野球連盟となり、現在に至っている。この間、国内
事業としては、全国都市対抗野球大会をはじめ、全国各地域で野球大会を開
催、野球技術や審判技術向上のための講習会も実施した。あわせて少年野球
の育成などにも努めてきた。ちなみに平成11年度の日本野球連盟のスローガ
ンは「プロ・アマ交流みんなで勝ち取れナンバー1」4)を掲げ、プロ・ア
マの交流を促進している。社会人野球においては、近年の社会の不況にあお
りを受け、企業スポーツから撤退を決定する企業も多く、野球もその例外で
はないことから、チームの絶対数や活動規模の減少などが大きな問題となっ
てきている。
学生野球は、高校野球と大学野球からなり日本学生野球協会は「財団法人・
日本高等学校野球連盟」「財団法人・全日本大学野球連盟」からなる。1946
年12月の日本学生野球協会の設立により「日本学生野球憲章」が制定され、
フェアの精神やアマチュアイズムを、また勤勉、明朗強靭な情意、強健な身
体など学生野球の理念が定められている。日本学生野球協会は学生野球の健
全な発達を目的とし、その事業内容は学生野球の振興指導及び所属団体に対
する監督、学生野球に対する調査、その他この法人の目的達成に必要な事項
に及ぶ。 日本高等学校野球連盟には傘下に47都道府県高等学校野球連盟があり、また
全日本大学野球連盟には各地方の26大学野球連盟がある。
日本高等学校野球連盟の目的は高等学校野球の健全な発達を図ることであり
、その事業内容は高校野球の振興指導及び加盟団体に対する監督、高校野球
の調査・研究、高校野球の開催及び協力、高校野球選手・部員の健康管理の
ためのスポーツ医科学の調査・研究、一般アマチュアスポーツ団体との協力
・提携に及ぶ。
第3節 アマからプロへ『ドラフト』
野球の場合、現在の制度ではアマチュア球界からプロ球界にプレーヤーと
して進むには毎年11月に行われるドラフト会議(選択会議)に指名されなけ
ればならない。ドラフトの目的は「戦力の均等化」5)と「球団財政の正常
化」6)である。ドラフト制導入以前の新人補強は、時期だけが規定された
自由獲得競争だったため、新人選手争奪戦は加熱し、費用(契約金、スカウ
ティング費用、人件費)も高騰する一方だった。このため一部の球団を除い
て多くの球団が財政的な危機を迎え、特定の球団だけが有力新人選手を集め
やすく、ペナントレースの醍醐味が失われかけた。こうした背景から、「新
人選手プール案」(新人選手をいったん機構にプールし、その中から平等に
各球団に選手を分配する)をもとに、討議を重ね1965年7月26日に「ドラフ
ト制採用」が正式決定された。同年11月7日に「第一回選択会議」が開催さ
れた。
ドラフトにおいて選択可能な選手の条件は、日本の学校に在学中の場合翌
年3月に卒業見込みの選手で、大学生の場合は4年間在学しないといけない。
社会人の場合は日本野球連盟に登録後2年を超えた選手で、中学・高校卒業
の選手の場合は3年を超えた選手でないとならない。外国のプロ野球に所属
・あるいは所属したことのある選手の場合は10月23日までにコミッショナー
に通知し、全球団に通告された選手でないとならない。
選択不可能な選手は、日本の学校に在学していたが当年の4月以降に中途
退学した選手である。加えて日本野球連盟に所属するチームから投手1名を
超えて指名してはならない。ただし、チーム及び日本野球連盟が承認した場
合はこの限りではない。
近年では「指定枠採用選手」の採用がドラフトに取り入れられている。い
わゆる「逆指名選手」である。指定枠採用選手はドラフト会議の第一回(1
位、2位)に選択する。この制度は現在のところ、大学生と社会人選手にし
か採用されていない。球団は指名を予定している場合、その選手に対してコ
ミッショナー事務局を通じて交渉を希望するか否かを調査できる。したがっ
て選手はこの調査によって交渉を希望する球団を選択できる。
第2回以降は「任意枠採用選手」(3位以下の選手)の選択となり、ウェー
バー順に指名していく。ここでいうウェーバー順とは選択の順番を奇数回は
日本シリーズに敗れた球団が所属するリーグの最下位チームから指名し始め
、リーグ交互に勝率順位の逆順に指名し、最後に日本シリーズに勝った球団
が指名する。遇数回はその逆の順番で指名していく。
ドラフト会議で得た交渉権は、放棄することも他球団に譲渡することもで
きない。これは交渉権だけ得ておいて実際に選手との交渉をしないとか、交
渉権を売買するような行為を防止するためである。交渉の期間は、球団が選
択した選手と契約できるのが翌年の3月末日までである。ただし、選択した
選手が日本野球連盟所属選手の場合は翌年1月末日までとなっている。
近年はこのドラフト制度についても大きな問題になっている。高校生選手
・下位指名選手には逆指名権が与えられないことによる不平等問題や、契約
金・年俸は一応の上限は決められているが、逆指名を取り付けるための裏契
約金の高騰などがいわれ、主な問題である。また、アマチュア側からは、プ
ロが選手をとり過ぎではないかという声も挙がっている。
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