「これなんて似合うんじゃない?」
 と、同じく隣で品物を見ている少女に声をかける。
「えー、こっちの方が良いと思うけど?」
 と、声を掛けられた少女が品物を見せながら言う。
 最初に声を掛けた少女は名をミリア・エルダートといい、それに答えた少女の名はクリーオウ・エバーラスティンといった。
 そんなやり取りをしている少女たちの近くに立っている男をオーフェンと言った。
 全身黒ずくめで目つきの悪い青年、胸元に大陸最高峰の黒魔術士養成施設《牙の塔》の紋章を下げ、ボーっと空を見上げ溜め息を吐きながらつぶやいた。
「・・・なんで、こんな事になったんだろうな・・・」



 事の始まりは何時もの事だった。
「クリーオウ! お前って奴は何度言った解るんだ!?」
「なによ! ちょっと欲しい物が有ったからちょっと借りただけじゃない!!」
「ほう・・・なら返すんだろな?」
「何で返さなきゃならないのよ!」
「だぁぁぁ! そうじゃね-だろ!?」
「・・・お師様、今はそんな事言ってる場合じゃないと思いますが・・・」
 クリーオウとオーフェンのやり取りを観戦していたマジクが口を挟んだ。
「ン? ああ、そうだな・・・問題はだ金が無いと言うことだ」
「お金が無いなんて何時もの事じゃない」
 クリーオウが至極アッサリと言う。
 それを聞いたオーフェンは泣きそうな目でマジクの方に向いて言った。
「なあ、マジク・・・俺は今、むショーに理不尽な気持ちになったのだが?」
「何を言っても無駄だと思いますよ?」
「だな・・・・・・」
 などと言っているとクリーオウが不機嫌な顔をして言ってきた。
「で、どうするの宿代?」
「どうするもこうするも、稼ぐしかねーだろが」
「ええ、とりあえず僕は宿の手伝いをすると言う事になってますんで」
「ふーん、頑張ってね2人とも。」
「ああ・・・・・・って、お前も働くんだよ!!」
「えー!! なんでよ!?」
「何でってお前が原因だろーが!!」
「―――――――――!」
「―――――――――!」
 永遠と2人の言い争いがつづいている。
「お師様もクリーオウも早く寝ないと体が持ちませんよ?」
 もうしょうがないと言う顔をしながらマジクが言っている。
「このまま、ここに永住なんて事に何なきゃ良いけど・・・」
 オーフェンとクリーオウの言い争いは夜遅くまで続いていた。



 次の日・・・
「ねえな・・・・・・たくっ、ンナ簡単に仕事が見つかるかってんだ」
 大通りを不機嫌でいて何故か哀愁の漂う雰囲気でオーフェンが歩いている。
「そもそも、何で俺が働かにゃならんのだ?」
 などと、今更言っても仕方ない事を言っている時、大通りが騒がしくなった。
「ん、なんだ? ・・・おい、何があったんだ?」
 近くを通りかかった男に聞いてみると。
「ああ、金髪の可愛い少女が5人くらいの大男に囲まれているそうだ」
 それを聞きオーフェンは思い切り溜息を吐き出した
「やっぱりこうなるのか・・・」


 大通りの中央辺りで一部分だけ人の流れが淀んでいる部分で男達が声を張り上げている。
「ぶつかって挨拶も無しか?」
「おねーチャン・・・それじゃあこの世の中生きていけないぜぇ?」
「どうすんだよ? こいつ骨折れてるぜ?」
「ああ、いてーな、ホントいテーよ!」
「治療費が無ければ体でも良いぜ?」
 と言って笑っている男達を見ながらオーフェンは近寄っていった。
 そして、笑いながら”いてーいてー”言っている男の腕を捻り上げ言った。
「ほー、折れてるにしてはやけに力が入ってるな?」
「ぐあっ、いててててててててぇ!!」
 その声に気づいた男達のリーダー格の男がオーフェンに殴りかかる。
「てめぇ! 何してやがる!!」
 その声で残りの4人がオーフェンに殴りかかる。
 オーフェンはまず、後から来る男に魔術を発動させる。
「我は築く太陽の尖塔!!」
 男が炎に包まれたのを見ながら腕を捻り上げたままの男を前に突き飛ばす。
「ぐわっ!?」
 勢い良く突っ込んで来ていた男にぶつかった一瞬前に構成を展開、そして発動。
「我は呼ぶ破裂の姉妹!」
 どばん!
 その場でしゃがみ右から来た男を左に投げ飛ばす。
 それに気づいた男が飛んで来る男を避ける、その瞬間には既にオーフェンは男の前に居た。
「なっ!?」
 男が何か言う前に、オーフェンの拳は男の鳩尾に見えなくなるほどめり込んでいた。
 オーフェンは辺りを見回した後、一人だけ無事?な男に寄って行った。
「さて、何か言うことは?」
「おっ・・・おぼえてっぐは!?」
「何処のチンピラも変らないな・・・」
 男を踏みつけながら、溜息を吐きつつ向き直る。
「お前もいい加減厄介ごとを起こすのは・・・・・・」
 オーフェンが何時もの口を叩こうとし、向直って見ると。
「助けて頂いて有難う御座います」
「・・・・・・えっと・・・クリーオウ・・・だよな?」
 それを聞いた少女は不思議な顔をしながら否定した。
「いいえ、私はミリア・エルダートと言います」
 少女、ミリアの自己紹介を聞いてもオーフェンは動くことが出来なかった。
「あの、どうかしたんですか?」
 ミリアに声を掛けられ、やっと動くことが出来るようになったオーフェンはかなり動揺しながら返事を返した。
「ああ・・・えっと・・・いや、ちょっとな・・・あんたが知り合いに似てたんだ」
「そうなんですか?」
「ああ・・・・・・ああ、丁度あっちから走ってくるような感じの・・・」
 ミリアがオーフェンの見ている方向を見ると、確かに自分に似た少女が走ってくるのが見えた。
「あの、良く解りませんが・・・怒っている様に見えますが?」
 オーフェンもそれは解っていた。一瞬泣きそうな顔をしてからミリアの方を向き全てを諦めた眼差しでミリアに言った。
「・・・短い付き合いだったが・・・今度からああゆう男達には注意しろよ」
「あの、何でイキナリ御別れなんでしょう? 御礼もしたいんですが・・・」
 御礼と聞きオーフェンは涙を流しながら言う。
「生きてられたら、改めて御礼をしてくれ」
 と、そこまで言った瞬間オーフェンはミリアから離れ魔術を発動させた。
「我は紡ぐ光輪のよろいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 魔術は発動したが、呆気無く宙を舞っていた。
「オーフェン! 見損なったわよ! いくら御金が無いからって女の子から御金をせびるなんて・・・って、オーフェン?」
「ああ!? 大丈夫ですか!!」
 と言う二人の声を聞きながらオーフェンは夢すらも見ない眠りに入っていった。



 ふと、オーフェンは目を覚ました。
「何処だ、ここは? ・・・?」
 体を起こして周りを見る。やたらと高そうなタンス、椅子、部屋、自分が寝ているベット。
「・・・夢? ・・・俺がこんなに金持ちなんて・・・夢に決まっている・・・いや、でも、夢じゃないかも・・・そう信じたい・・・無駄だと解っていても・・・・・・そうか!? ・・・ご褒美だな! ・・・素直な俺への・・・いや、どうせ夢なんだ変な望みは捨てて早く起きよう・・・・・・いやしかし・・・」
「何言ってるのよ・・・」
 オーフェンが声のした方を向くとクリーオウが居た。
「・・・お前、クリーオウ・・・だよな?」
「それ以外何に見えるの?」
「たしか・・・ミリア・・・つったか?」
「ああ、そう言えば起きていたら呼んで来てって言われたのよ」
「呼ぶ? ・・・と言うかココは何処だ?」
「ん~、ミリアに聞いた方が早いわよ」
 いまいち納得していないがオーフェンはクリーオウについていった。
 応接室の入り口、クリーオウが扉をノックする。
「ミリアー、入るわよ?」
 クリーオウの呼掛けに扉の中から答えが返ってくる。
「クリーオウ? 良いわよ、入ってください」
「はーい、おじゃましますー」
 それに続き、オーフェンも部屋に入っていった。
 話の内容は、ココが何処か、何故ここに居るのか、そして本題の依頼だった。
 依頼内容はオーフェンとクリーオウの2人でミリアの護衛。
「なんで、護衛が必要なんだ?」
「はい、実は・・・・・・」
 ミリアの言う所、この町には豪商が2人居てライバル関係のクランダック商会の馬鹿息子が無理やりミリアを物にしようとしているので守って欲しいそうだ。
「今だけ守っても解決ならんと思うのだが?」
「ああ、それは大丈夫です。今、父がクランダック商会を潰しているので」
「は!?」
「で、5日後に潰れる訳でその間の護衛をお願いしたいんです」
「なんで、俺達に頼もうと?」
「ああ、それは・・・魔術が使えますし、それに同じ見た目の人が二人居ると襲われ難そうですから」
「・・・・・・解った受けさしてもらう。」
「有難う御座います。では、今からクリーオウと買い物に行くので付いて来て下さい」
「オーフェン♪ ちゃんと守ってね♪」
「ああ、ミリアをちゃんと守ってやるよ」
「えーなんでよ~!」
「お前も護衛だろうが・・・」
「それではクリーオウ、オーフェンさん行きましょう。」



 一日目・・・・・・
 未だに露天の店頭で楽しんでいる二人を見てオーフェンは溜息をついた。
「たくっ、狙われてるって自覚があるのかね?」
 ちなみに今、ミリアとクリーオウは服装、髪型、その殆どを同じにしていた。
 その着飾ったクリーオウを見てオーフェンは何となく可愛いなと、思っていた。
「何を考えているんだか・・・俺は・・・」
 ミリアと一緒に買ったアクセサリーを付けてオーフェンに笑いかけるクリーオウ。
「オーフェン! ・・・似合う?」
「ン? ・・・お? ああ・・・似合ってるんじゃないか?」
「ホント!? ミリア! 似合ってるって」
「良かったわね、クリーオウ」
 その時オーフェンは自分の心と戦っていた。
(ぐわっ、何をドキドキしてるんだ!? クリーオウじゃねーか、って言うかクリーオウだぞ? 落ち着け・・・落ち着くんだ俺・・・・・・そうだ気のせいだ・・・クリーオウが可愛いのは今始まったわけじゃ・・・って、違う違うぞ・・・違うんだ・・・・・・以後、同思考が続くため省略)
「? ミリア、オーフェンどうしたの?」
「さあ・・・違うとか、落ち着けとか言っていましたけど?」



 2日目・・・・・・・・・
『キャー!』
 二人の悲鳴を聞いてオーフェンは直ぐその場に向かった。
「どうした!? 大丈夫かクリーぃ・・・・・・」
 時が止まっている。
 ミリアはタオルで前を隠したまま、オーフェンの方を見て固まっている。
 クリーオウは風呂場に有った木の棒?でゴキブリを攻撃した態勢のまま止まっている。もちろんタオルはおろか・・・何も着ていない。
 この沈黙を破ったのはオーフェンだった。
「あ~、えっと、すまん・・・ココが風呂場とは・・・って待て! クリーオウ! 話せば解る・・・だからそれは・・・」
「問答・・・無用よ!! レキ!! 特大のやっちゃえぇぇぇぇぇぇ!」
「だあああ! 我は紡ぐ光輪のよろいぃぃぃ!!」
 屋敷・・・半壊・・・・・・



 3日目・・・・・・・・・
 オーフェンが屋敷を修理している、そこにミリアとクリーオウがよっていき、
「変態オーフェン、早く直さないとご飯抜きよ♪」
「うう、誰の所為でこうなったと・・・」
「ミリアから依頼料が出なくなるよ?」
「オーフェンさん、ちゃんと直して下さいね? じゃないと依頼料から修理費引きますよ?」
「・・・只今、全力を持って修理してますので御待ち下さい・・・」
 涙を流しながら修理しつづけるオーフェンを見ながらクリーオウが言う。
「じゃあミリア、御昼にしようか?」
「そうですね・・・そうしましょう」
「じゃあ、オーフェン頑張ってね♪」
 去って行く二人を見ながらオーフェンが泣きながら言う。
「・・・あいつ等・・・一体、俺をなんだと」
 クリーオウには聞こえていたらしくその言葉に答える。
「変態覗魔♪」
「違うぅぅぅぅぅぅ!!」
 オーフェン、現在絶食1日目(魔術連続使用中)



 4日目・・・・・・・・・
 やっと修理が終わったオーフェンが晩飯を食っている。
「ふっ、晩飯がこんなに美味い物だったとは・・・今日の俺はとっても幸福な気分だ」
 遠い目をして貪り食っているオーフェンを見ていた二人が口を挟む。
「何が幸福よ・・・大げさね~」
「お前な飯は食えないは魔術は連続使用だわ・・・お前は鬼か?」
「何よ! オーフェンが悪いんじゃないの!」
「アレはお前らが・・・・・・」
 言い争う2人を見ながらミリアが言った。
「では、オーフェンさん」
「なんだ?」
「クリーオウは綺麗でしたか?」
 それを聞いたオーフェンは飲んでいたコーヒーを噴出し、クリーオウは慌てていた。
「みっミリア!? 一体何を・・・」
「げほっガホッゲフッ・・・・・・」
「何をって、聞いてみたいんですけど? で、どうなんですオーフェンさん?」
 ようやく咽ていたのが直ったオーフェンは顔を赤くしながら言い張った。
「ゲホッ・・・・・・そんな事はどうでも良いだろう?」
 その答えを聞いたミリアがオーフェンにズイッと迫った。
「・・・どうでも良いんですか?」
「ああ、それより今日のあんたらの予定を・・・」
「そうですか・・・クリーオウの体は見るに耐えないと・・・」
「ちょっと待て、何故そうなる?」
「だって、どうでも良いいのでしょう?」
「いや、そーじゃなくてだな・・・」
「ではやっぱり・・・・・・可哀想なクリーオウ・・・」
 ミリアがイキナリ泣き出したのでオーフェンは慌てふためいた。
「いや、えっとだな、いや確かに綺麗だったけどな? それはだな」
 綺麗と言う言葉を聞いた瞬間ミリアは嘘泣きを止めやっぱりと言う顔をし、クリーオウは既に茹で上がるのではと言うくらい真っ赤になっていた。
「あっあたし! 先に部屋に行ってるね!!」
「ふふ、クリーオウたら・・・照れちゃって」
 オーフェンは頭を抱えていた。
(何でだ? なんでこうなった? 俺か・・・俺の所為なのか!? そんなわけ全然無い筈だぞ・・・そうだ・・・俺は全然悪くないぞ・・・いや、確かに見惚れてはいたが・・・)
 オーフェンが思考の海に突入し掛けた時ミリアから声がかかった。
「オーフェンさん? どうかしたんですか?」
「・・・ミリア、一体何のつもりだ?」
「お二人共好き合っているのに・・・全然進展してなさそうなんでつい・・・」
「俺がクリーオウを? 冗談は・・・」
「嫌いなんですか? 少なくともクリーオウは好きだと思いますよオーフェンさんの事」
「・・・あんたには関係無いだろう?」
「関係有るわよ。友達ですもの♪」
 それを聞いたオーフェンは溜息をつき苦笑した。
「こう言うことは人に言う物じゃないだろう?」
「あら、なら誰に言うの?」
「俺が好きな奴にだよ」
「ま、良いでしょ」
 ガシャン!
 2人で和み掛けた時二階からガラスの割れる音がした。
 二人は顔を見合わせ叫んでいた。
『クリーオウ!?』
 その時、1階の窓の外に人影が見えた。
 それを見たオーフェンはイキナリガラスを割って飛び出した。
「ミリア! お前はこの屋敷の何処かに隠れてろ!」
「私も!!」
「邪魔だ!!」
 そう言った時には既にオーフェンは見えなくなっていた。
「・・・よし!」
 ミリアは何やら気合を入れて走っていった。



 誘拐犯を追っていたオーフェンだったが、その前に何日前かにオーフェンがど突き倒した男達がいた。
「よう、にーちゃんお礼に来たぜ」
 それを聞きオーフェンは顔を顰めていた。
「御礼は金以外いらん」
「てってめえ、馬鹿にすんのも対外に・・・・・・がっ!」
 先頭にいる男が何かを言っている間に鳩尾に付きをかます。
 そして殺気をみなぎらせオーフェンは男達を睨む。
「さて、俺は今・・・非常ーに急いでいる・・・道を開けるなら許す、それ以外はどうなっても知らん」
「けっ、全員で掛かれ!!」
 その号令を聞いた時にはオーフェンは既に構成を展開していた。
「我は放つ光の白刃!!」
 光の本流が飛び掛ってきた男達を薙ぎ倒す、その中でも何とか元気のありそうな男を尋問し始める。
「さて質問だ、さらった女は何処だ?」
「さてな、知るわけ無いだろぉぉぉぉぎょぉぉぉぉ!?」
 オーフェンは腕に力をこめつつ再び聞く。
「ちなみに、俺が一つ質問する毎に力を入れてくぞ? もう一度聞く何処だ?」
「うぎょぉぉぉぉぉぉ、言う・・・言うから放してくれぇぇぇぇぇ」
 オーフェンはそれを聞き、壮絶な笑顔を浮かべ、
「言わなかったか? 力を入れんのは一つ質問する毎だ・・・力を抜くとは言ってないぞ? さて、何処だ?」
「のぉぉぉぉぉ、しっ知らないんだホントなんだぁあぁぁぁぁぁ」
「・・・? 気絶したか・・・じゃ、次はお前だ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ、しっ知らないって言ってぎぇぇぇぇぇぇぇ」
 以下、男達全員(10人)悶絶。・・・合掌。



 月が空に色取りを添えている時間帯。オーフェンはとある屋敷の前に立っていた。
「さて、ここがクランダック家か・・・・・・」
 黒ずくめを不信に思った門の守衛がオーフェンに声を掛けた。
「何かご用でしょうか?」
 オーフェンは笑いながら守衛に聞いてみた。
「クランダックの馬鹿息子の部屋はあそこか?」
「いや、そこから右に三つ目だが・・・・・・一体何を!?」
 思わず答えた守衛を尻目にオーフェンは庭に入り馬鹿息子の部屋に一直線に向って行った。
「ちょっとアンタ!?」
 走り行くオーフェンを見て守衛は笛を鳴らした、緊急事態を知らせるために。
 それを聞いた庭を巡回中の警備兵が武器を構えオーフェンの前に立った。
「っち、今の俺はすこぶる機嫌が悪い・・・手加減しね-ぞ!!」
 走りながらオーフェンは構成を展開する。
「我は描く! 光刃の軌跡!!」
 オーフェンが生み出した擬似球電がその名の通り光の軌跡を描いて敵に突き刺さる。
 あっちこっちから警備員が向かってくるのを確認しながらオーフェンは4階の馬鹿息子の部屋を見上げる。
「我は跳ぶ天の銀嶺!」



 それよりちょっと前の馬鹿息子の部屋。
 ひょろっとした男がクリーオウを見て笑っていた。
「ふふふふ、今日こそ一つになれるよミリア・・・」
「ふぐーふぐふぐー」
 クリーオウは猿轡を噛まされ喋れ無くなっている、聞かれていないのは幸いと言えた。
 聞かれていたら相手が逆上すること間違い無しの単語を連発していたのだから。
 それに気づかず馬鹿息子は独白を続ける。
「そうかい・・・ミリアも嬉しいんだね・・・僕も勿論嬉しいよ」
 馬鹿息子がそう言いながらクリーオウに近づく、そして服を脱がそうとする。
「ふぐぅ!!」
「ぐふっ!!」
 不用意に近づいたところをクリーオウに蹴られた、そして馬鹿息子は逆上しクリーオウを叩いた。
「このっ!」
「ふっふふふ・・・みっミリアが悪いんだからね・・・・・・僕に逆らうから・・・」
 叩かれた所為でクリーオウの猿轡は外れ、クリーオウは馬鹿息子を睨んだ。
「何するのよ! この変態、覗魔、暇人、痴漢、馬鹿!!」
「うるさいな・・・ミリア少し黙ってよ・・・」
「カス! ザ・人間の屑! ボルカン! 甲斐性無し!!」
 遂に切れたのか薬を浸したハンカチを持ってクリーオウに近づく。
「む――むー・・・む・・・・・・」
「ふう、ミリアあんまりてこずらせないでよ・・・」
 馬鹿息子はクリーオウが眠ったのを確認して服を脱がせ始めた。
「ふふふっふふふ・・・・・・!?」
 クリーオウの服を脱がしていた時、何物かが窓から飛び込んで来た。
「なッ!? だれだ・・・?」
 オーフェンは服を少し脱がされたクリーオウを見て、自分にコレほどの物が有るのか?と思うくらいの激しい怒りを覚えた。
「てめぇ・・・!!」
「ひっ、ひいぃぃぃぃぃぃ」
 その怒りを向けられた馬鹿息子は部屋から逃げ出した。
 オーフェンはそれを見届け、少し乱れている服を直しクリーオウを抱えた。
「・・・・・・まずは、クリーオウをつれて帰るのが先か・・・」
 オーフェンは自分が入って来た窓の反対方向に手を上げ叫んだ。
「我は放つ光の白刃!!!」
 光が壁に突き刺さり爆発が起きる、そして窓から身を乗り出し再び叫ぶ。
「我は呼ぶ破裂の姉妹!!」
 窓の下の警備兵が衝撃波によって全滅したのを確認しオーフェンは窓から飛び降りる。
「我は跳ぶ天の銀嶺」
 重力を中和し、地面に着地。
 そしてクランダック家庭園の出口に向かって走っていく。幸いな事に追ってこなかったようで、それを確認したオーフェンは走るのを止め歩き出した。
「ふう・・・この騒ぎでも寝ているとは・・・まあ、薬でも嗅がされたんだろーけどな・・・」
「ん・・・・・・オーフェン?」
「起きたのか・・・?」
 未だ薬が効いているのか半分寝ている感じのするクリーオウを見てオーフェンは苦笑した。
「良いから寝てろ・・・」
「・・・うん・・・・・・オーフェン?」
「・・・どうした?」
「・・・ありがと・・・助けてくれて・・・」
「依頼だからな・・・」
「・・・オーフェン・・・・・・あのね・・・」
「未だ薬が残ってるんだ、無理すんな」
「・・・守ってくれる?・・・」
「なんだ?」
「・・・また・・・危なくなった時・・・守ってくれる?・・・」
「・・・ああ、お前が危なくなったら絶対に守ってやるよ」
「・・・ん・・・ありがとう・・・ごめんね・・・」
「・・・眠ったか・・・・・・」
 オーフェンは立ち止まり空の月を見上げながら考える。
「守るか・・・・・・」
 しばらく考え、不意に苦笑して優しい目でクリーオウを見つめた。
「守ってやるさ・・・・・・ずっとな・・・」
 月光の中でお互いの顔が近づき、重なっていった。



 若干、オーフェンは赤い顔をしながら誤魔化す様呟き、歩き出した。
「さて、戻るか」
 歩きながらオーフェンはふとクリーオウの顔を見てみると、その寝顔は安らかで、綺麗な笑顔が浮かんでいた。



 なお、この後クランダックの屋敷は謎の崩壊を遂げている。
 馬鹿息子は何故生きている?と、医者を悩ませるくらいにボコボコの状態で派遣警察に突き出されていた、うわ言で「黒がー黒がー」と言いつづけているらしい。
 そしてミリアが持って来た資料により誘拐事件画発覚。
 これが決め手となり、クランダック商会はエルダート商会に吸収された。
 クランダックの屋敷崩壊時の事は付近住民の話では、
「ええ、そりゃもう凄かったんです、”光の~”って聞こえると屋敷からホントに光が出てるんですよ」
「そう言えば、最初の爆発音の時、門の前に黒い人影が有った気がするんですけど・・・暗くて確証が無いんですよ」
 等と、興味深い話が聞けるそうだ。
 あと、この話とは関係無いが謎の爆発を遂げた宿は、騒ぎを起こした人物達が弁償金を持って来たので問題無くなったそうだ。

あとがき : 神楽坂 晋さま
晋 「どうも、初めまして神楽坂 晋といいます。」
緋雪「初めましてです。師匠の弟子&アシスタントの緋雪といいますです。」
晋 「やっと書けたよ(涙)・・・・って、言う割には・・・あんまり良い出来じゃないかも」
緋雪「最初の方が意味不明です。」
晋 「いや(汗)・・・あれはね・・・まあ、それはさて置き・・・」
緋雪「置いといちゃ駄目だと思うです。」
晋 「・・・・・・・・(何やら黒い人形を取り出す)」
晋 「緋雪♪ コレをあげよう、可愛いぞ♪」
緋雪「あっレキ人形です! 嬉しいです♪」
晋 「因みに背中のボタンは押すなよ」
緋雪「きゅぅぅぅぅぅぅぅぅですぅぅぅぅ・・・(ピカッ! どどぉぉぉぉぉぉん)」
晋 「さて、静かになった・・・・」
晋 「ゆかなかさん、如何でしょう? 私の始めてのオーフェン小説!!」
晋 「因みに私は最後の方が製作者として気に入ってます♪」
晋 「彼方此方の小説を読んでいる方には、”まだまだだな”と思われる方もいるかと思います
  そう言う時は何処をどうしたら良くなるか教えてくれると嬉しいです。」
晋 「では、最後まで読んで下さった方有難う御座います。
  これからもちょくちょく書いて行くんで、又読んでやろうと言う気が有れば
  読んでやってください。たぶん、書けばその内レベルアップすると思うんで・・・・(汗)」
緋雪「師匠・・・何でそんなに確証が無いんですかです。」
晋 「・・・・今は自信が無いから。(遠い目)」
緋雪「じゃあ、その内ですかです?(疑いの目)」
晋 「・・・・・さあて、次の作品に・・・・ってにゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
緋雪「嘘吐きは成敗です!!(刀を収めながら)」

では、次の作品で~♪
神楽坂 晋さま、ありがとうございました!