仙道


仙道の行は様々な事に応用できます

 たとえば、仙道の修行では最初に気を感覚化しますが、それができるようになった初
期の時点で「健康増進」や「病気治療」などに利用します。
「武道」的にも利用されます。中国の拳法家はこの気を筋肉にたくわえ一気に放出する
術を磨いています。すると相手の体にふれずに何メートルもはね飛ばしたり、内臓に破
壊的な力を与えて倒したりできるようになります。硬気功家と称する人たちは、トラッ
クを腹の上に通過させ、大石を砕き、鉄棒を折り曲げる。まさに超人と言えます。
超能力なども開発されるので、これを使ってさまざまな術にそのパワーを利用する人た
ちもいます。たとえば、符咒と呼ばれるもので、これはお札や呪文を唱えてさまざまな
超能力を行います。また、円光法と呼ばれる術は光を空間に発生させ、その中に未来の
できごとなどを出現させて見る…などということをします。


 仙道がいつごろ発生したかについては定説がありません。伝説では元始天尊という神
さまから伏羲→神農→広成子といった順序で伝えられたといいます。もっともこの4人
は、天地の精の化身といわれていますから、いずれにしろ生身の人間ではないようで
す。
人間としてはじめて仙道を伝えられたのは、中国最古の皇帝と称せられる黄帝です。
『神仙伝』によると、黄帝は当時1200歳だった広成子のところへ出向き秘伝を伝授
されたといいます。この黄帝が主人公の『黄帝内経』という鍼灸医学の古典があります
が内容はまさに仙道そのものの延長です。
黄帝は有名な老子に仙道を伝え、老子から関尹子、荘子、列子などと仙道が受け継が
れ、広く世間に知られていきました。ほぼ春秋戦国時代のころです。
もっともこれは伝説的なものですから、頭から鵜呑みにするわけにはいきません。
いずれにしろ、いろいろ人によってバラバラに編み出されたものが長い時代を経て少し
ずつまとめられていったようです。


吐納導引…現代の気功法の源流

 たとえば春秋戦国時代のものとされる『荘子』の中に「刻意編」という章がありま
す。そこには、熊が木にぶら下がるような格好をしたり、鳥がせわしく呼吸するような
動作を真似る人々のことが書かれています。いわゆる<吐納(呼吸法)導引(仙人体
操)>と呼ばれるものですが、これによって気を整え仙人になることをめざしたので
す。
また、2000年前のまったく腐敗してない老婦人の死体が発見された馬王堆の古墳か
らも、こうした吐納導引法を順序立てて描いた図が出てきました。この遺跡は漢時代の
ものですから、もうこの時代には仙道の行が体系化されていて、民間にまで一部流行し
ていたことを物語っています。
のちに三国時代になると神医・華陀が鳥、猿、熊、鹿、虎など、5種類の動物の動作か
らヒントを得て、<五禽図>と呼ばれるものを編み出しています。これは気の武術とい
われる中国拳法の直接の源流と考えられるもので、今なお実践する人が多いもので
す。
こうしたものは肉体の気を練ることによって仙人をめざす方法で、<内丹法>と言いま
す。


仙道の行の紹介

 仙道の実態を修行という面から見ますと、その段階は大きく4つに分けられます。小
周天から始まり、ついには肉体をもったまま虚空に消える還虚まで、その具体的な内容
を紹介していきます。
仙道の標準をなす内丹法の体系は大きく分けると次のようになります。


(1)煉精化気……精を練って気に変え体中にめぐらす段階


(2)煉気化神……気を練って陽神をつくる段階


(3)煉神還虚……陽神を鍛えて空間、時間を超えられるようにし、最後には肉体も陽神
と同じ状態にまで引き上げていく段階


(4)還虚合同……陽神も肉体も含めた自分という存在を消滅させていき、タオという根
源的なものに戻す段階 

この4つは仙道の根本的な段階なので、どの派でもほぼ同じですが、細かな点では異な
っている部分もあります。
ここでは統一をはかるために、いちばん普及している伍柳派と呼ばれる仙道の修行法を
もとに説明していきます。


小周天…陽気を発生させ身体を一周させる段階

 最初の煉精化気と呼ばれる段階が<小周天>です。仙道独特の呼吸法(半文息、武
息、文息)と意識の集中により、気を丹田(下腹部にあるつぼ)に集めていきます。

 半文息…意識しながら行う呼吸で、吸う吐くがわりとゆるかで下腹の動きをともない
ます。

 武息…吸う、吐くのほか呼吸を止める動作が入ります。意識して行う強い呼吸で下腹
の動き、肛門の締めなどをともなわせます。

 文息…まったく意識しないで行う腹式呼吸で武息に陽気が練れたあと自然に行われま
す。一般に小周天ができたのち温養という状態で行います。

 これをやってある程度気が集まってくると、丹田に何か熱いものが感じられるように
なります。この熱い気の塊を仙道では<陽気>と呼びます。精気の満ちている人ほど早
く、しかも強烈にこれを感じるので、昔の人は精が気に変わったと考え煉精化気と名づ
けました。
陽気が発生したあと、さらに呼吸法と意識の集中を続けていると下腹が震動を起こし、
陽気は腹のあちこちを動きまわるようになります。
陽気は下方に向けて流れ出そうとするので、そうしたら陽気を意識で丹田から尾底骨ま
で導いていきます。
ここで陽気の流れは一時的に止まりますが、さらに呼吸法と意識の集中を続けている
と、やがて陽気は背筋にそって少しずつ上がり頭頂まで達します。
頭頂で〈温養〉と呼ばれる軽い意識の集中法に切りかえて陽気を練っていると、今まで
熱かった気はスースーした涼しい感じの陽気に変わります。
こうなったら陽気を額のところからおろし、体の前面の正中線にそって、鼻、口、あ
ご、胸、上腹部と下げていき、出発点の丹田に戻します。これで気が体を一周したこと
になります。この一周を仙道では小周天と呼びます。

 小周天の行では、気を背筋にそって上昇させるのを〈進陽火〉、体の前面からおろす
のを〈退陰符〉といい分けます。
一般に進陽火は感覚が強烈で、熱い線状のものがスーッと上がっていくのがわかり。こ
れに対し退陰符はやや切れ切れの感覚で、虫か何かが皮膚の下をモゾモゾとはっている
ように感じることが多いようです。
一度、小周天が行えたらあとは簡単です。陽気を一周させながら各ポイント、つまり命
門(腰の部分)、夾脊(背中の部分)、泥丸(頭頂部)、 中(胸部)、丹田という4
か所で、先に述べた温養を行います。これを続けていると、やがて陽気はどんどん強化
され、修行は次の段階に移ります。


大周天…潜在的なパワーが発現する段階

 煉精化気、つまり小周天の段階は、修行という意味ではわりにあっさりしていますが
煉気化神の段階になるといろいろな状態が入り乱れ、にわかに分りにくくなります。伍
柳派では〈小薬〉、〈大薬〉、〈練丹〉、〈真気発動(頭頂開)〉、〈養胎〉という各
段階に細分しています。
煉気化神の段階を一言でいうと、小周天によって練った気をかためていって陽神という
不思議な実態をつくる行といえます。そのさい、できた陽神が体の外へ抜け出せるよう
に頭頂を開いてやります。
つまり、陽神をつくることと、陽神の出るルートをつくることの2つが、煉気化神段階
の最も重要なポイントなのです。
細かくいうと、真気発動→頭頂開のみが一般に〈大周天〉と呼ばれる状態なのですが、
陽神をつくる作業も密接にからみあっているので、すべてをひっくるめて大周天と総称
したほうが都合が良い。つまり、煉気化神段階=大周天というわけです。

 ※《大周天》という言葉ですが、中国の内丹では《小周天》と同様に純粋に技法を示
す言葉です。具体的に言うと、《小周天》を完成した後に督脈・任脈を使わず、ただ気
を黄庭と丹田の間に充満させることによって聖胎を養っていく方法のことです。


小薬の発生…内的光の発生

 この大周天のはじめは小周天の続きです。陽気を竅というところに止めて意識をかけ
長期間練っていくと、それはサラサラした感じからねばっこく濃厚な感じへと変わって
いきます。
これを「温養」といいます。
このとき瞑想している目の前の空間が明るくなり光が見えはじめます。だいたい白い光
です。光に意識を集中していくと、これはへそを中心にして回転していき、最後に丸い
陽気の塊ができます。これが小薬の段階です。


大薬と小薬…2種類の丹

 大薬はこの小薬を300周(回)回すと発生すると許進忠の『築基参証』などには出
ていますが実際のところ陽気が十分な場合、はじめから大薬ができます。
これについては趙避塵の『性命法訣明旨』などでは「陽気が不足していたり意識の集中
が不十分だと小薬ができる」とあります。ようするにこのふたつは同じ段階のものと考
えていいようです。
大薬はそのまま陽神のもとになりますが小薬は病気直しにしか使えません。煉気化神段
階では大薬をつくらないと次の段階には進めません。


煉丹…丹を煉る行

 大薬のあとが練丹段階だというが、これはどうも中国での用語の混乱のようです。つ
まり、大薬をつくること、あるいは小薬を300周させて大薬を得ることは練丹にほか
ならないからです。
仙道では〈採薬→練丹〉という表現を使う仙人もいますが、この採薬を小薬と大薬に分
けて考えると、小薬→大薬→練丹となる。しかし、採薬を小薬、練丹を大薬と考える
と、大薬を得られた時点で練丹の行は終わることになります。たぶん、仙人の個人的な
体験の違いを、のちの仙道研究家がゴチャゴチャにしてしまった結果でしょう。小薬→
大薬→真気発動あるいは採薬→真気発動へと進むほうがスッキリしていると思います。





真気発動…頭頂を開く行

 大薬段階の前後で真気発動というものが起こり、体の中を突き抜けて頭頂が開かれ
る。真気とは、体の中に潜在的にひそむエネルギーで、小周天や大周天で回している陽
気とはまったく違うものです。たとえていうなら陽気は、毎日の生体の活動によって発
生する二次的なエネルギーです。仙道や中国医学では、陽気のような気を〈後天の
気〉、真気発動の気を〈先天の気〉と呼んでいます。
先天の気が人間の潜在的なエネルギーである証拠に、これが発動してくると〈六具神
通〉という超能力が発揮されます。
六具神通とは、天眼通(透視)、天耳通(透聴)、他心通(読心術)、宿命通(予知
力)、神境通(時空の超越)、漏尽通(精がまったく漏れない)の6つです。
こうした六具神通のほか、大周天が始まると瞑想中に不思議な感覚が出てきます。いろ
いろな光が見えたり、シューシューという音が聞こえたり、強い圧力感を感じたりしま
す。さらに、呼吸がとまったようになったり(真息、胎息といい少しも苦しくない)、
眠つていても自分の意識が消えなくなったり(不識神の発生)などがあります。
こうした現象は陽神ができあがるまで断続的に続きます。大薬ができたあとこれに天地
の気(宇宙エネルギー)を取り入れていくと、やがて〈内丹〉ができてきます。
これを丹田から中丹田(上腹部、黄庭という)に移すと、やがて少しずつ陽神に育って
いく。これを「養神」「養胎」の段階といいます。



煉気化神段階でのさまざまな光のイメージの出現

 ここまでくると天地の気が自然に陽神にそそぎこまれるようになり、すべてのエネル
ギーが光のイメージとして見えるようにもなります。
〈三花聚頂〉という段階では、人を形づくる精、気、神(精神エネルギー)の3つが、
それぞれ赤、銀、金の光を放って虚空に浮かんでいるように見えます。
〈赤蛇帰神〉という段階では、はじめ丹光が虚空にとぐろを巻いているように見え、そ
れが突如、体の中に蛇のようにもぐりこんできます。
これらはみな、潜在意識がつくりだした幻覚にすぎません。実際はエネルギーが虚空に
輝いているだけなのです。
こうしたものに注意をそらされずにやり過ごしていくと、最後に体の底から非常に鮮や
かな光がわき上がり、頭頂に出て、まるで無数の雪片か花びらのように舞い、ふりそそ
ぎます。これを〈天花乱墜〉といい、これが始まったら陽神を中丹田から上丹田(泥
丸、頭頂下にある)に上げていく。いよいよ出神が始まりますが、ここまでが煉気化神
の段階です。


出神…気の分身を肉体から出しこの世界を動き回る段階

 上丹田に陽神を上げたらしばらくそこにとどめておきます。それから頭頂開によって
開いた部分にそって外に出してやります。
はじめに光を頭頂から出し、ついで陽神をそれに乗せて出してやります。これが「出
神」です。
出神の初期の段階の陽神は3寸(約10センチ)くらいの小さなものです。はじめはほ
んの短いあいだ、しかも頭頂の真上、数センチぐらいのところに置くにとどめ、すぐに
戻すようにする。方法は出すときと同じで、光に乗せて入れてやります。毎日これを行
い陽神が少しずつ安定してきたら、頭上にしばらく置くようにします。
陽神が大きくなってしっかりしてきたら、次には自分の周囲を歩かせます。このとき注
意するのは、出神は必ず天気のよい日に行い、曇り、雨、雷、風の日などは避けること
です。これは陽神が幽霊のような非物質ではなく、自然現象の影響を直接受ける物質体
であるからです。といっても、いつまでもそんな状態ではしかたがないので、そうした
自然現象の影響を受けないように少しずつ強化していきます。
これについてはいろいろな仙道書にさまざまな方法が載っていて、そのひとつを紹介す
ると次のようなものです。
「まず半年くらいまでは、陽神を自分の周囲を徘徊させるだけにする。回数は一日一回
ぐらいにして夜は避ける。半年後は出神回数を一日三回ぐらいまでふやす。一年を過ぎ
たら一日七回程度にする。二年を過ぎたら回数はそのままだが、夜も出神を行ってみる
…」
「また自分の周囲だけでなく、家の周りとか近くのよく知っている場所まで出かけさせ
てみる。三年目になると陽神がかなり強化されるので、一里、十里、百里、千里、万里
…と、一、二か月ごとにのばしていく。また、様子を見ながら天気の悪い日も出神を行
ってみる…」
「ここまでくると、陽神は消えたり現れたりが自由になり、数千里を一瞬に移動した
り、どんな小さなものにも入りこめるようになります。われわれが住む世界とはまった
く違った、さまざまな世界へも思いのまま行くこともできるようになります。」



還虚…肉体を気化させ虚空に消え去る段階

 こうして陽神が強固になり、名実ともに自分の分身となったら、今度はこわれやすい
肉体を陽神と同じ状態にまで引き上げていきます。伍柳派では、陽神を肉体に入れ、少
しずつ肉体を気の状態に戻していくといっています。
この段階では長期間にわたって静座を続けることが必要なので、9年間座り続けた達磨
大師の゛面壁九年゛になぞらえて、同じく〈面壁九年〉と呼んでいます。これは肉体が
気の状態になっていくところから〈気化〉ともいいます。
気化が成功すると、その人はもう肉体そのものが陽神という状態になります。消えるの
も現れるのも自由自在になり、現世にとどまりたければ時代を超えて生き続けられる
し、虚空に消えようと思えばそれも可能です。
また、この宇宙に充満する気の使い方が完全にわかるので、自然現象をコントロールし
たり、いろいろなものを気からつくり出し、まさに奇跡を起こさせるような仙人になり
ます。
ここまで到達した人は、もう虚空の真の性質…感覚で追えるものをはるかに超えた世界
…がはっきりわかっているので、われわれ俗人とは別の人格になっています。
「人に患いがあるのは肉体があるからだ。体が消えてしまえば、何の患いがあろうか」
と老子はいっていますが、ここまで行が進んだ人は、まさにそうなっています。この世
のどんな事件にもわずらわされることはなくなります。
不慮の災害も事故も、肉体が消えた人を傷つけることはできません。にもかかわらず、
その人は表面的にはちゃんと゛個゛を保っているのです。もちろんその個は、個であり
ながら宇宙そのものと言う存在です。それは神かというと、そうではない。実際はそれ
さえも超えた仙人…虚空そのものです。それが還虚の段階です。
仙道では出神からこの還虚にかけて、煉神還虚と還虚合道という段階がありますが、煉
神還虚は出神から肉体の陽神化までをさし、還虚合道は肉体の陽神化(気化)が完成し
た状態以後をいいます。
 

仙道2


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