『The Message of a Master(s)』
John McDonald&anonymous


はじめに


この本の内容は、幾つかの版文と翻訳文を読み還した上で作成いたしました。版を重ね
るごとに、予め意図されていましたように書き手の理解に応じて、内容と表現が少しず
つ変化していっているためです。もちろん、それぞれの本には、それぞれの書き手にと
って正しいものが書いてありましたので、それらを否定するつもりはありませんよ。よ
り原文に近い年代のものを選択するほど、執筆者が直接用いた表現を読み解くことがで
きます。
私には、John McDonald氏が「本当は何を言おうとしていたのか?」を知りたい、とい
う真剣な望みがありました。意訳の部分が結構あると思います。仲介して形が変わって
いるところには、自然と私の精神が混じっているかもしれません。執筆者の記した純粋
な内容を知りたい方は、原文の方を尊重してください。
翻訳しないほうが適切な意味が伝わると思われるものについては、そのままにしておき
ました。また、John McDonald氏の背後にいた、偉大な方々の助言を得ながら、より実
用性を特化させるために、最適だと思われる表現だけを抽出しておきました。全ストー
リーや直訳を知りたい方は、他の版文や翻訳文のほうを読むことをおすすめいたしま
す。はじめに、全ストーリーを知っておいたほうがよいのかもしれません。この文章
は、単に再読用として創ってみたものです。もし、どうしても気になる点がありまし
たら、1929年に書かれた原文をみて、John McDonald氏の精神に直接ふれてみてくだ
さい。
 よけいな補足かもしれませんが、『The Message of a Master』の歴代の後継者たち
は、実際に実在していた人物です。ですから、体験談に基づいた寓話がベースとなって
います。中には、謎の人物として実在していた人もいます。ここにある本質に最初に気
がついたのは、ひたすら何かを探し求めて、やっと光を見出せた人たちです。初期の頃
ほど、その傾向は強くなっているようです。ですから、数多くの試行が礎となって築か
れています。そのひとたちは、できれば自分たちと同じような経験をさせることなく、
楽に到達することを願っています。これは、その目的のために書かれたものです。その
ため、あのひとたちの個人的な経験については、実際に調べようとしても詳しいことが
明らかになることはないでしょう。そのひとたちが、それを望んでいたからです。
John McDonald氏もまた、その中のひとりです。ですから、あなたは、あのひとたち自
身の個性に影響を受けることなく、自分自身の個性にフィットする部分を引き寄せて用
いることが大切です。同じ目的地にはどのような経路を通過してもたどり着くことがで
きますので、あなたにとって最も簡単で楽に思えるコースを選ぶことをおすすめいたし
ます。あなたにとって楽でも、他の人にとってはそうではないものがあります。それ
が、あなたの天性だと思います。わりと楽に継続できるようになっていて、あなたを支
えてくれるものがあります。それをヒントにしてみては、どうでしょうか?
また、この文章の作成にあたって、支援していただきましたすべての方々に心より感謝
いたします。
anonymous



To the Reader

この本は、一連のメモをもとに、一つの物語とわかりやすい実習にまとめたものです。
その順序に関しては、注意深く、メモを書き取ったとおりにしてあります。読者に対す
る効力を最大限に引き出すためです。人生の生き方をマスターするにはどうしたらよい
かを、はっきりと、わかりやすく、しかも一歩一歩、実際に効果のある簡単な方法論と
して、『universal law』に沿って書いています。
 ページの中に、説明のできない「何か」が確実にあります。そして、あなたを支援す
るために「何か」を沁みこませたものが、すばらしい『ちから』を持ち、読むものにダ
イナミックな確信と気づきを与えてくれています。
 この本に書かれている内容の行間の意味をしっかりと理解するように読んでくださ
い。何となく読み流してしまった行間などに、深い意味が込められ
ていないか気をつけてみてください。この本の持つ、きわめて貴重な知恵を学びとって
ください。短い本ですから、一通り読み終わったら、次は、ゆっくりと深く熟考しなが
ら体得してゆくことを、是非ともおすすめします。成長の段階に応じて、読む度ごとに
新しい発見があるかもしれません。
 本書のメッセージは他の誰でもなく、「あなた」自身に向けられています。1つひと
つの提言を完全に理解し、納得するように心がけてください。すると、言葉の背後にあ
る精神をとらえることができます。次にそのメッセージを、あなた自身の性格と理解力
に応じて使うようにしてください。あなたが関係している仕事、あるいは夢について、
何かアイディアをこころに浮かべたいときは、すぐ本を横において、しばらくの間、そ
のことについて黙想してください。このようにして、多くの有益なアイディアは読者に
もたらされます。
 多くの読者の中には、この突拍子もないように思える説明に懐疑的な人もいるかもし
れません。私も実際にそうでした。一方で、この話と実習のシステムを理解して支持す
ることは、読み手にとって価値のあるものなので提案しています。その可能性につい
て、こころを開いてこの本を読んでください。そのあとで、あなたにフィットするよう
に、受け入れたり、手放したりしてください。どうするかは、あなたの自由です。



第1部

第1章

 それは金曜日の午後のことです。私は昼食からオフィスにもどったばかりでした。す
でに使用人たちは、その日の仕事をおそろしいほど簡単に成し遂げて、くつろいでいま
した。私が手がける仕事は、どうあがいても上り坂になってゆき、私はいつも安心して
しまうのでした。私は有り余るほどの手持ちの現金の少しを安全な投資にまわしていま
したが、それらもことごとく成功に終わってしまいました。やることなすことすべて
が、なぜか上手くゆき、実際のところ、私は自分の事業暦の中で最も重大な問題に直面
していたのでした。
私は自分の直面している問題をどうすればよいか考え込んで、椅子に腰かけていまし
た。その時、電話が鳴りました。それは長年の友人からで、電話を通してこの人のなつ
かしい声が聞こえてきました。そしてこの人の話し方が私を驚かせました。確か1ヶ月
ぐらい前に、この人はだれかのお薦めに従って、気の向くままどこかへ旅立っていたか
らです。何かに乗って旅をすれば、環境が変わり、気分転換になるかもしれないと言っ
ていました。奇妙なことに、その時のこの人も、今私が陥っているような状況にあり、
この人自身それがなぜなのか知りたい様子でした。この人はいつでも絶好調で、私から
見ても不思議な存在だったのです。
この人と最後に別れたときの印象は、まさに喜劇そのものでした。この人は哀れなほど
に元気でした。この人と再びこの世で会えることはないだろうと思ったほどでした。し
かし、この人は再び戻ってきたのでした。そしてこの人には何か、さらにすごい変化が
起こっている様子でした。この人の話し方は驚くほど力にあふれており、実に生き生き
としていたので、私は、
「きっと何か奇跡でも起こったにちがいない」
と気づいたので言おうとしたら、
「今、あなたが思っていることにほとんど近いことが起こったんだ」
と私を確信させたのでした。
「私があまりにも早く帰宅したのであなたも驚いたことでしょう。あなたは、もう私に
は2度と会えないだろうなんて思っていたよね。でも、私は戻ってきた。しかも、世界
一幸運だと思ってしまった。今までこんなことがあるなんて思ってもみなかったことを
学べたんだ。自分が本当に求めていたことを知ることもできた。そして、さらにマスタ
ーした。でも、私のことを気がおかしくなったなどと思わないでください。それは私の
話を聞くまで、気にしないでいてください」
 私は笑っていました。
そして、
「何か新しい種類の宗教でも見つけたんですか?」
とたずねようとしたら、
「あなたにはそう思えるかもしれないけれど、特定の宗教と関わりを持ったわけではな
いんですよ。ひとりの人間と出逢っただけなんです。そのひとは純粋なマスターで、す
ばらしい人物だったよ。そのひとは自分の能力を開発して、何でもできるようになった
人でした。そのひとが私に、とほうもない秘密を伝えてくれたんですよ。あなたも知っ
てのとおり、なぜか私はいつも運がよくて、お金も自然と集まってきていたよね。でも
今はさらに健康になってしまったし、すぐにとてつもないものをつくることも可能にな
っていると思う」
 私はもちろん、そのひとの話を聞きたいと思いました。そこで、その夜、私たちがメ
ンバーになっているクラブで会う約束をしました。
「では、今夜、クラブで会おう。その時に、誰にでも起こりうる、驚くべき一連のこと
について、あなたに話そう」
 そう言って、この人は電話を切ったのです。
しばらくすると、私は1言も発していないような感じだったことに気がつきました。私
は数分の間、まるで夢でも見ているような感じがしました。どんな話を聞かされるの
か、そのことで頭がいっぱいになり、ぼんやりと椅子にこしかけていました。自分が急
に大きくふくらんで、なんとなく部屋も広くなり、自分のいる場所が広大な感じがして
いました。この人の話の中に、きっと自分にとって、すばらしく役に立つことがあるに
ちがいない、という予感がありました。私は一刻も早くこの人の話を聞きたくて待ちき
れなくなりました。
 そして、私が待ち合わせのクラブに着いたとき、やっとひと安心したのでした。
私はクラブに入りすばやくデスクに歩み寄ると、
「あなたへ話す前に、しばらくの間電話をしていたら呼び出されました。明日には帰っ
てこれるでしょう」
とのメッセージが届いていました。私が仕方なく帰りかけた時、すでにこの人に会った
という3人の友人と出くわしました。3人が3人とも、この人がものすごく変わっても
どってきたことに、驚きをかくしきれない様子でした。
おそらく、この人は旅をしていた間に、気がおかしくなって、きっと頭の中で架空の物
語を創りあげてしまったのでしょう。この人の話すおとぎ話みたいな話を信じこんでし
まうのは、まったく馬鹿げたことだと思ったりもしました。
 しかし、そのおとぎ話が、どうしたことか、私の頭の中にこびりついて、離れようと
はしませんでした。でも明日になれば、それらの内容が正しいかどうかを簡単に確かめ
ることできると元気づけたのでした。

第2章

 次の夜、その友人はお馴染みの愛車に乗ってクラブに到着しました。豪勢なことに、
私たちはその車で近くの居心地のいいレストランに乗りつけ、そのレストランの個室に
入りました。そこで他の客に邪魔されずに、学ぶ機会を得たのでした。
 この人の身の上に、何か奇蹟的な変化が起こったことは明確でした。この人は健康そ
うで、生き生きと輝いていました。その上、この人には驚くほどの落ち着きと優雅な身
のこなしがあり、相手に安心感と称賛を呼び起こす雰囲気があったのです。この人と一
緒にいると、私は完全な安らぎを感じました。しかも、この人の中に、私には理解した
り描写できない何かの存在の『ちから』も感じていました。
 私は、自分が感じている感動をかくすことができませんでした。この人には確かに自
分が必要としている何かがあると確信していましたが、自分にはそれが手に入れられな
いのではないかという、言い表しがたい不思議な畏怖感もあったのです。
 私たちは、最初、しばらくの間、黙っていました。ややあってから、この人は自分が
出発した日と比べて、違って見えるかどうか聞いてきました。私はこの人が天啓を受け
たようでもあり、神秘的に見えさえすることを、認めざるを得ませんでした。この人は
自分の物語を語り始めました。

 私がここを発ったとき、私の人生はめちゃめちゃでした。私は、真剣にどうしようか
考えていました。おそろしいことに、やることなすことすべてがなぜか上手くゆき、い
つもその訳を知りたいと思っていたのです。しかし、あまりにも上手くゆきすぎて、解
決策のみが思い浮かび、謙虚に感謝しているだけで精一杯でした。どんなことを考えて
いても、たとえ善くないことを思ったとしても、とどめをさすかのごとく、理想的な形
で善いことのみが現れてきてしまうのです。そして、いつでも調和し、共存して、やす
らいでしまいます。いったいなぜなのでしょう?悩みたいと思っても特に悩むようなこ
ともなく、何か問題が起きそうになってもいつのまにか解決しています。肉体的にも精
神的にも健康そのもので、さらに追いうちをかけるように、いつも運がよいのです。ま
るで何かにとりつかれているかのように、多くの人の幸せを願い、だれかを傷つけない
ように配慮しながら自分にできることはないか探してしまいます。お金も自然と集まっ
てきて、必要なものは何でもすぐに手に入ってしまいます。その結果、いつも気持ちが
やすらかです。ですから、ただ動き続けることで、その場をしのいでいました。おそら
く、私はすでに救われているような、救いがたいような状況にいたのだと思います。
ある日、どこかのある場所で、私はマスターと呼ばれる人物に出会いました。今ではこ
のひとを友人と呼ばせてもらっていることに、とても感謝しています。
 その場所でのその夜ことを振り返ってみると、何かが見つかるといいなという強烈な
気持ちが、私をその人物に引き合わせたのではないかという気がします。私はその日、
劇場で安い切符を買いました。ところが、何か説明のつかない理由で、安い切符のかわ
りに、ボックスシートの切符を受け取ってしまったのです。こうした特別なことは、よ
く起こるものです。そして今では、それを直視できます。それはよくわかっているから
です。そして、当たり前のことだと思って感謝しています。また、それが単なる偶然で
はなかったということもわかっています。
 このひとは、ほかの人の不安の正体にも気がついている様子でした。私にはこのひと
が特別のひとだという気がしました。というのは、このひとはまわりにすばらしい輝き
を放っていたからです。私は本能的に、このひとに心のうちを打ち明けたいという思い
にかられました。すると、このひとは、そのことを聞いていて、尋ねてきました。
信じがたいことかもしれませんが、うなずいて返事をすると、ほとんど瞬間的にやすら
かな気持ちになれたのです。何年も前から知っていた、偉大な聖人たちのひとりが目の
前に存在しているという幸運を、自分は今、体験しているのだと、何かが私にささやき
かけていました。私はほとんど瞬間的に、とても救われたような気持ちになっていまし
た。
 私は、自分を救出してくれる人に出逢えたことを確信していました。そして、非常に
盛大な反響を呼んだ演劇がすんでから、その人物は私を近くのカフェにさそいました。
私たちがカフェに入ってゆくと、そこにいた人々がいっせいにこのひとに注目しまし
た。店のマネージャーは、特にこのひとを丁重にあつかい、尊敬の念を示しました。私
はこのひとは何か魔法の『ちから』を持っているのではないか、と思いました。私は思
いつくかぎりの質問をこのひとにしてみようと心に決めました。そしてこのひとが許し
てくれるなら、このひとの答えのすべてをメモに取ろうと決心しました。
 このひとは、次の日、おもしろそうなところへ向かって出発することになっていると
言いました。私が、
「ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
とたずねると、このひとは同意してくれました。話が終わったとき、このひとは出され
た請求書に自分のイニシャルを書いただけでした。タクシーを呼ぶために店の外に出た
とき、私はこのひとに、
「この場所にはよくいらっしゃるのですか?」
と尋きました。驚いたことにこのひとは、
「ここには初めて来ました」
と答えたのです。そして、
「驚かなくても勘定は支払われるから大丈夫ですよ。私は、あなたの勘定のためだけに
必ず戻ってきますから」
と言って、私を安心させてくれました。
「正しい心の統治が、すべての状況をコントロールしているということをあなたに見せ
ようと思って、イニシャルだけをしたためたのですよ。あなたも、いずれ解るようにな
るでしょう」
とこのひとは言いました。
 今では、このひとのことばの意味がよく判るようになりましたが、きっとあとになれ
ば、あらゆる意味で解るのだろうと思いました。
 その夜、ベッドの中でうとうとしていると、できごとが走馬灯のように浮かんできま
した。起こったことが、夢ではないかと思えるような幸運でした。そして、その夜、私
はやすらかに眠ることができました。

第3章

次の日、その日どんなことが起こるのか、わくわくしながら、私は朝早く目を覚ましま
した。そして、早速、船旅の予約をしにでかけました。すでに予約はいっぱいだと言わ
れましたが、帰ろうとしたとき、呼びとめられたのです。そして、
「たった今、1つ予約がキャンセルされたので、あなたは予約できます」
と言われました。私は、これはあの友人の「マジック」にちがいないと感じました。そ
のとき、私はそのように呼んでいましたが、私の勘はどうも正しかったようです。と言
うのは、私があの時船に乗れたのは、確かにこのひとが私のために空きを作ったのだ
と、このひとが後で認めたからです。
 そのとき、私はまだ、ものごとがどのように作用するのか、理解していませんでし
た。しかし、今はわかっています。あまりにも簡単なことなので、見過ごさないように
しています。
 ともかく、私は船に乗ることができました。私の友人は従者を連れてその船に乗りこ
みました。そして、いつものように、このひとは手伝うことを強く望んでいる人々に囲
まれていました。私はその船旅のほとんどの間、このひとと一緒でした。そして、この
ひともまた、私との同伴を楽しんでいる様子でした。
 最初の夜、私はこのひとの特等室をたずねました。それはすばらしく豪華な部屋でし
た。このひとはどこへ行っても一番上等なものを手に入れるのです。するとこのひと
は、
「私だけではなくて、誰でもすばらしい『ちから』を持っています」
と言いました。私たちは自分の中にあるその『ちから』を十分知らないときは、眠った
ままにしていると言うのです。このひとは、自分の開発した『ちから』のいくつかを実
際に使って見せてくれました。このひとが見せてくれたものは実に驚くべきことでし
た。
「私にできることが、どうしたらあなたにもできるのでしょうか?」
とこのひとは聞きました。
「そんなに不思議がらないで聴いてください。私にできることを、どうしたら他の人は
できるのでしょうか?私は特別に、あなた方が持っている以上の『ちから』を持ってい
るわけではないのです。私の言いたいことは次のことです。つまり、私ができることは
誰にでもできます。私は、『universal law』を理解しているために、自分の内にある
『ちから』を開発しました。他の人は、単にこのことを理解するだけで、自分の持つ
『ちから』を蓄えて、集中させることができるようになります。すべての人は同じ1つ
からなる『ちから』を使っているのです。この宇宙には、たった1つの『ちから』だけ
があるからです。このルール自体は単純明快で自明であり、きっとあなたにもわかると
きが来るでしょう」
このひとは話し続けました。
「ほとんどの人は、その『法則』を破壊的に使っています。全てがすべてそういうわけ
でもないのですが、少なくとも部分的にはそうしています。そして、その『法則』が働
く割合は、反対の作用をもつものに対してバランスをとっているのです。
そこかしこに、成功したり、偉大なことを成しとげた傑出した人物がいます。そして、
その人たちのある者は、幸運の持主であるとか、天才だとか特定されて言われていま
す。一方で、それらの言葉を統治しているものがあります。運とか天分といったものの
深いところにあるものが、実際の成功に関係しています。実は、その人たちは
『universal law』を使っているのです。本人がそれを承知しているかどうかすら問題で
はないのです。その人たちを支えている「favor」(支援)の割合のバランスが十分に
満ちているかどうかが大切なのです。知っている人にとっては、これは明白なことです
よ」
 そして、このひとは私にたとえ話をしてくれました。
「電気の動きを統治している『法則』を発見する前、この偉大な電気の『ちから』は、
universalのいたる所で眠っていました。少なくとも人類の知識との関係からは離れて
いました。私たちは、電気の『ちから』を役に立たせる前に、まず電気の『法則』を発
見する必要があったのです。『universal law』の場合も同じことなのです。
 幸福は、後世に伝えるべき人間の正しい財産です。それは、あらゆる希望の頂点にあ
るからです。どんな形であれ、人には、しあわせを切望する精神があります。まず、お
金さえもうければ、究極の満足が得られるという誤解を解くことは大切です。お金とい
うのは、目的のための手段なのです。また、お金を得ることは、私たちの最終的な目
的、すなわち幸福へと私たちを駆りたてる動機にもなっています。一方で、お金が流通
している世においては、ある程度のお金がなくては満足感も幸福もありがたいというこ
とも事実です。ですから、お金を得るための仕事は十分に価値があり、立派なことでも
あるのです。
また、財産を得ることに対する「あなた」の印象が、それを得たときの在り方を密かに
示しています。ここに、多くの人のためになることをして財産を増やし、財産が増える
ほど私利私欲を超えて多くの人のために使うことが可能になってきた、とよろこんでい
るひとがいたとします。あなたは、こういった姿勢を貫いて生きているひとにどういう
印象を持ちますか?あなたが配慮したらよいことは、希望するものを得るための目的
と、極めて現実的な手段と用途です。
 では、多くの人々はどうすれば、いろいろな欠乏や苦難や不幸に苦しまないでいられ
るのでしょうか?
多くの人々は、どんな人生の状況にいるにせよ、何かが足りないことが運命だと信じる
ことをやめることで、それを引き寄せる必要がなくなってきます。多くの人々は、自分
の心にふさわしいものを引き寄せて手に入れているのです。いつか、満足感というもの
が自分や家族の幸福に貢献すると、考えることが大切だということがみえてきます。ま
た、望み自体にも、いくつかの段階があることに気がつくこともできます。
 私の言うことが信じられなくても、あなたは求めるものを手に入れています。つま
り、あなたが何かを望んだときは、同時にその望みと反対の想いが水面下でも発生して
いるのです。その結果、必ずそのどちらか一方の側面が表に現れてきます。そして、そ
れは今のあなたにとって最もふさわしく、あるいは、あなた自身の心が密かに求めてし
まったものなのです。もしあなたが違うと思ったとしても、それは、あなたが期待して
いたようなものと違っていただけなのです。つまり、あなたが求めているものの現れか
たは、心の状態によって大きく左右されているのです。
 たとえば、ある人が電気の動きを統治している『法則』を発見したことによって、私
たちは今、ラジオを使うことができます。そして、何百万人という人々がラジオを楽し
むことが可能になりました。その人たちは自分の希望するものに周波数を合わせて同
調し、それを手に入れています。この事実の中に偉大なレッスンがあるのです。すな
わち、私の言うことを信じることによって、希望するものは何でも手に入れられる可能
性があります。さらに進んで、同調することを学んだときには、初めから持っていた
電気をも超えた無限の偉大な『ちから』があらわれるかもしれません。
 この船の船長は船を運航するのと同じように楽々と、この船の船主になることができ
ます。ある地位が他の地位よりも手に入れるのが難しいということはないのです。その
ひとは船長という地位にうまく同調しています。船主というものが、もう少し距離のあ
るようにみえたとしても、そのひとは、そこから遠くないところで試みています。そ
れだけなのです。2つの地位の違いは単に呼び名の違いだけです。それ以上のものでは
ありません。あなたが少し成長すれば、そのことはとても簡単なことだとわかってくる
でしょう」
 毎夜、私は自分の部屋にもどると、就寝直前までメモを読み、次の日の質問の用意を
しました。このひとは、私が熱心で、素直で、自分を信頼しているため、とても理解力
にすぐれて受け入れの能力があるので伝えることが楽しい、と言ってくれました。私は
嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいでした。私が受け取っている知恵は金銭にはかえら
れないほど高価で、どんなものを捧げたとしても得られないほど偉大なものでした。
 私はこのひとに、そのような秘密をいつ、どのようにして発見したのかとたずねまし
た。すると、このひとは、
「私は何も発見してはいませんよ。私にとって、この段階の知恵は秘密でも何でもない
からです。私の家が始まって以来、代々伝わっているものなのです。目的を達成するた
めに、これはやさしくて確実な方法だと知っているので、それを使っているだけです。
本当はあなたも、簡単で確実な方法を知ることができるのですよ」
と答えました。
 このひとは何ごとも、決して見返りを欲しているようにはみえませんでした。自分の
行いは、すべて自分に返ってきているから気にしなくていいと言っていました。とても
謙虚な人でした。

第4章

私は急速に体力が回復し、さらに健康で強健になってしまいました。そして、あらがえ
ないほどの意欲が満ちてきて、無駄な努力に貴重な歳月をついやすことなく、今度は、
新しい方法で始めることを決意しました。
 船旅はあっという間に終わりました。私は、深く心を魅かれて、多くの恩恵をさりげ
なく施してくれた慈悲深い人と、間もなくさよならをしなければなりませんでした。私
はこのひとに自分の名刺を渡し、私もあなたの名刺をもらいたいと言いました。すると
このひとは、自分は名刺を持たない、名前もなければ住所もないのだと答えました。
「自分は風のようなもの、どこからともなく現れ、どこへでもゆきます。私の名前だっ
たら、ただ単に、友人と呼んでください」
と言いました。私がむしろ、
「先生と呼ばせてください」
と言ったところ、
「いやいや、先生ではなく、友人と呼んでください。それでいいのですよ」
とこのひとは答えました。このひとは私の名刺を手にとってながめながら、
「私も確実に憶えていますよ。私は、最も予期していない場所にひょっこり現れます。
またすぐに逢いたくなるかもしれません。そのときは、あなたに手紙を書きましょう」
と言いました。
 このひとと別れてからも、私に伝えてくれたことは絶対に忘れないだろうと決意しま
した。いくぶんか、愛情深い親のもとを離れる子供へ伝えるように、このひとは語り始
めました。
「あなたは本当に幸運なひとです。何百万人もの非常に才能に恵まれた人たちのことを
思ってください。その人たちは、成功や指導力のための偉大な能力に数多く恵まれてい
ます。そして、その人たちの業績は、非常に多くの人々にとって、とても大きな意味が
あります。その人たちが達成したものは、多くの人々やその家族たちの幸福感や満足感
にまで到達しているのです。また、多くの人々は、あなたが学んだことを確信していな
いだけなのです。これからは、一生懸命に努力と緊張を重ねずに、貴重な生命力を温存
しながら、満足感と気力を手に入れ、希望を見出し、こころを広くしていることができ
るようになります。多くの人々は、聖なるひらめきと、どこかに必ず道があると知って
いる抑えがたい本能的な衝動につき動かされてかりたてられてはいます。しかし、あな
たは、その道を見つけることができるのです。そして、善い知恵と適切な解釈の結果、
短期間の希望のある試みだけで発見してしまいます。
 あなたは、もう知っています。気がつかないふりをする必要はありませんよ。解決し
てしまうことをおそれることなどないのです。解決したら次のステップを見つければよ
いだけです。あなたの場所へ戻りなさい。あなたは必要なことをすべて学び終わりまし
た。この教えを念入りに従いさえすれば、どんな高みにでも到達できるでしょう。どん
な価値のある立派な目的でさえも、たやすく、かつ、すみやかに達成できるのです。可
能性には限界がありません。『universal law』をマスターするに比例して、成功は何倍
にも、大きくなってゆくでしょう。また、成功すれば、『法則』に対する信頼がどんど
ん強まり、やがて確信という域に達するようになります。そうなると、もう無敵と言っ
てもよいのです。
 これから私が繰り返している注意を、きちんと心にとめておいてください。このこと
を、あなたの最も親しい友だちにさえ、秘密にしておきましょう。あなたが、この『法
則』をマスターして十分に強力になる前に、このことを人に公開することは、あなたの
計画の妨げになるだけだからです。あなたの『ちから』を集中させて、求めているもの
への『ちから』を強める必要があります。ですから、この秘密はあなたの心の中にしっ
かりとしまっておきなさい。あなたは、他の人の問題の手助けをすることはできます
が、根本的に解決しているとはかぎりませんよね。同じように他の人があなたの問題を
根本的に解決できるともかぎりません。すべては厳密に個人個人の問題なのです。本当
にその人を救えるのは、その人自身だけだということに気がついてください。何かを達
成するということは、いかなる職種においても、この自分の内なる『ちから』の働きを
発見して、それを働かせることに他ならないのです。これは一人ひとりが自分ですれば
よいことです。私たちにできる最善の方法は、『法則』を完全にマスターしてから本格
的に支援していることかもしれません。
 あなたは、あなたの思いどおりの方法で成功するでしょう。私はそう確信していま
す。いつか、あなたが物質的なものだけの追求に囚われなくなったとき、良心の導きに
よって道を探した後かもしれませんが、他の人々のために『ちから』を解き放つときが
来ます。こうして、さらなる物質的誘惑から解放されると、今度はあなたの同胞を引き
上げることに命を捧げられる自由が生じているようになっています。すると、欲望と悲
惨さと不幸の束縛から解放するために、あなたの支援によって導くことができるので
す。」
 私はなごりを惜しみながら、私の恩人に別れを告げました。このひとは従者とともに
タクシーに乗ると、行先のホテルへの道順を運転手に教えました。私は町の通りを歩い
て帰りましたが、通りの人ごみにも気にならないほど、奇妙な精神的に高揚している感
じがあって、歩いているというより、なんとなく浮いているような快活でふわっとした
感じがありました。
 ここに帰ってくる汽車の旅の間中、私は意識して、他の乗客との不必要な接触は避け
るようにしました。私は特別室にいました。1人になって考えたかったからです。無駄
な会話とゴシップに、自分の貴重な時間をとられたくありませんでした。今や達成しな
ければならないことが沢山あり、そのようなことは無用に思えました。
 私はどうしても達成せずにはいられない目標で、気持がいっぱいでした。それは、私
がこのひとから新しく学んだことを実際に試してみる、ということです。私は1日も無
駄にすることができませんでした。その他のことはすべて全く興味を引かれなくなり、
私にとって、もはや問題ではなくなってしまったのです。

 今の段階で私があなたに打ち明けられるのはここまでです。だれにとっても非常に価
値があるといった広がりを考慮できると、あなたを勇気づける多くの希望が得られるこ
とでしょう。
私は、何年もの間、存在することすらイメージできなかったことをさりげなく探し続け
ていました。そして、今、私はそれを手に入れています。それは、どんなに大きな財産
を持っていても、決して購入することのできないものです。あなたはゆくゆく、もっと
いろいろなことを発見することになるでしょう。

 私は、この人がこれ以上のことは話す資格がないというので、マスターが現れたら会
えるように取り計らってみると確約してくれました。
しかし、私は
「このひとのいる場所の名前を教えてください。今すぐたずねて行って、このひとを見
つけ出しますから」と言いました。
 すると、以前にはなかった安定した気楽な態度で、
「何という場所なのかは、何となくことばで表現できないような気がしました」
とだけ静かに答えたのでした。

第5章

私にできることは、できるだけ身を入れて仕事をしながら、期待して待つことだけでし
た。一方、私の友人は、すぐに以前の仕事だった市場を動かす事業に飛び込んでゆきま
した。この人はしっかりと秘密にしていたため、友人たちは、この人の仕事については
ほとんどなにも知りませんでした。私たちは、時々クラブでこの人に会ってはいたもの
の、この人に何が起こったのか、ほとんどわからなかったのです。それに、誰も、この
人の人生の変化についてこの人に質問するだけの勇気を、持ちあわせていなかったとい
うこともあります。この人は、それ以外のことは何でも話してくれました。しかし、短
期間のうちに、この人の事業が非常に大きく拡がり、私を含めて、この人の身近な2、
3人の友人さえも内包せずにはいられないほどになっていたのです。その時になってや
っと、私はこの人の試みの大きさの一部分を知り得たのでした。
 私はこの人の成功が長続きしてしまったらどうなるか心配でした。そして、いつか、
ものすごいことが起こるかもしれないから、十分に注意するようにと助言してみまし
た。すると、それを聞くなりこの人は素早く私の方を向き、まったくの自信を持って、
次のように答えたのでした。
「ドライブにでも行ってきたらどうですか?あなたは、私の社会に還元して循環させて
いる事業を心配する必要はないんですよ。私は確固とした間違いのない『法則』にした
がって行っているのだから。もし、この部屋の広さをはかりたいと思ったら、縦と横の
2つの側面を手に入れて、数学の『法則』によって定めていく過程に従えば、明確な結
果が得られるよね。あなたは最初からそのプロセスが成功することを確信している。仕
事に関してもまったく同じことなんだよ。私は始める前から結果を知っているのだか
ら」
 私がこの人の仕事に質問できたのは、それが最後でした。この人も2度と再び、その
ことについては、ふれませんでした。
 この人の成功をひきとめるものは何もないようでした。この人は次から次へと成功し
ていきました。この人の永続的なエネルギーと活力は決しておとろえを見せず、むしろ
勢いが増してゆくばかりでした。そのダイナミックな『ちから』は、どんな状況であっ
ても際立っていて、また、この人の進歩のためのあらゆる抵抗さえも圧倒しているよう
に見えました。この人の『ちから』は、ほとんど超人的とも言えました。たまにパーテ
ィにこの人が出席すると、この人の人柄は人々を魅了し、この人の評判にまつわる謎は
この人を人々の注目の的としました。
 一方、この人はこうした注目を回避したかったようで、しばらくの間、ほとんど姿を
見せなくなったのです。そのため、私はこの人からマスターに関するニュースを聞かせ
てもらえませんでした。そして、私はそれも自分の運命なのかとあきらめかけていた頃
のことでした。
その日、この人の秘書から電話が入り、
「オフィスに一通の手紙が来ていますが、もしかすると、あなたには興味があるのかも
しれません」
と告げられました。それは、その友人あての簡単なメモで、遠く離れた最高級のホテル
の便箋に書きしるされたものでした。
「とても重要な用件のため、今回はあなたのところへうかがうことができなくてまこと
に残念です。あなたの友より」
 とうとう私にもチャンスが訪れたのです。ホテルの名が唯一の手がかりですが、それ
だけで十分でした。私の他、興味を持つ三人の友人と一緒に、私たちはすぐに町を出発
して、マスターとその「秘密」を探しに東の方角へと車を走らせました。
 ドライブは長々と続きましたが、私たちは交替で車を運転して、まっすぐに走り続け
ました。ホテルに着くと、私はすぐにマネージャーに会い、私たちが訪ねてきた目的を
告げました。すると、その人は、マスターのところに大勢の人々がつめかけたので、マ
スターは行先も告げず、どこかへ立ち去ったと私たちに告げました。その人はそれ以上
のことは何も知らなかったのです。
 私はいつマスターの「秘密」を学ぶことができるのだろう?それはとうてい不可能な
ことのように思えました。しかし、このひとのよい説明を得るために、私たちはあきら
めないことにしました。私たちは1人ひとり別になって、より効率的に、その後、5日
5晩にわたって探し続けました。
 5日目の夜、友人たちは1時間にわたって、もう家に帰ろうと私を説得しました。し
かし、私はあきらめきれなかったのです。もし、必要であれば、いつまででも探し続け
るつもりでした。私の友人たちはそれぞれの部屋にもどってしまいました。私はロビー
の片すみにあった椅子でくつろぐことにしました。
ふと気がつくと、何となく次に起こるかもしれないことのほうから、私の方へと近づい
てくるような感じがしてくることに気がつきました。
 意気消沈していた私の気持ちは、突然、完全な喜びに変わりました。なぜか、私は自
分の探索が終わったのだとわかりました。そして、このことについてじっくりと思いを
廻らせている間、私の背後で何かの存在の感覚を所有しているような感じになったので
す。そして突然、だれかの手が私の肩にふれました。立ち上がって、ふりむくと、目の
前にいました。私には、もっとも崇高な顔が見えました。今まで出逢ったことがないと
感じるほどでした。そのひとの目は宝石のようにキラキラと輝いていました。
「私を探しているのですか?」
という声が聞こえてきました。
「そうです」
と簡単に答えました。このひとがそうであると分かったからです。










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