● 私の宝物

   私の出会った愛するアルバム達。つまり、私の[所有音楽ソース一覧]で私が ピンクの星 をつけている作品です。私の血や肉や精神に植え込まれて いると感じています。出会った順に紹介しましょう。



@ 「PLEASE PLEASE ME」 (The Beatles) 1962 (CP25-5751)

PLEASE PLEASE ME    01. I SAW HER STANDING THERE
   02. MISERY
   03. ANNA(GO TO HIM)
   04. CHAINS
   05. BOYS
   06. ASK ME WHY
   07. PLEASE PLEASE ME
   08. LOVE ME DO
   09. P.S. I LOVE YOU
   10. BABY IT'S YOU
   11. DO YOU WANT TO KNOW A SECRET
   12. A TASTE OF HONEY
   13. THERE'S A PLACE
   14. TWIST AND SHOUT

   解説不要の傑作アルバム。出会いに関してはパワーポップとの出会い に大体のことは触れているが、言ってみればBeatlesのアルバムは全て宝物である。あえて、あえて一つ 挙げるならこの 1st Album になる。一日でレコーディングされたというこの恐るべき作品は私の幼児体験 (ポンキッキ)であり、私の青春であり、私の音楽すべての大元である。よく「無人島に一枚持っていく なら?」という問いがあるが、私はやはりこれを選んでしまうだろう。もう私にとっては Favarite とか そんな言葉を超越した作品。あまりごちゃごちゃと解説はしたくない。聴いたことない人は是非! 質は保証します。


A 「The Velvet Underground」 (The Velvet Underground) 1969 (POCPー1843)

VELVET UNDERGROUND    01. CANDY SAYS
   02. WHAT GOES ON
   03. SOME KINDA LOVE
   04. PALE BLUE EYES
   05. JESUS
   06. BEGINNINNG TO SEE THE LIGHT
   07. I'M SET FREE
   08. THAT'S THE STORY OF MY LIFE
   09. THE MURDER MYSTERY
   10. AFTERHOURS

   BeatlesだけでなくVUに関しても、はっきりいって全部が全部私には宝物なのだが、一枚 一番好きなものを挙げろと言われれば、この 3rd になると思う。「え゙〜?」と言われる向きもあろうが、 これなのだ。John Cale 在籍時代の 1st、2nd やJohn Cale 脱退後にしてもラストの 4th を挙げれば納得する 人も多いであろうし、私もそれらをとてもとてもとても好きである。がしかし、4作中最も印象が薄そうな このアルバムこそ最高だと思っている。少なくとも私にとっては。John Cale が抜けた故にアヴァンギャルド な面が影を潜めたというような誤解をされることも多いこの作品だが、実際はRecording 直前、移動中に機材 が盗まれたことが全体に静かになっている原因らしい。つまり“こう造るしかなかった”ということである。 そしてそのことがこの作品に非常に重要に作用しており、ある種の緊張感を生んでいるように思う。 (ちょうど後にPaul McCartney が「Band On The Run」制作の際に最悪なRecording 環境が緊張感を生んだが ごとく。)そしてこの静寂と緊張感がVUの他のアルバムにはないテンションを生んでいるように思う。私が 好きなのはおそらくそこであろう。
   また、非常におとなしいアレンジ故、楽曲の良さが前面に押し出されて いるように感じる。Lou Reed はその活動・存在などばかりがクローズ・アップされがちだが、こうして みると非常にいい曲を書くのだということをまざまざと見せつけてくれる。VUを聴くたびに私が思うのは、 「いい曲は少ないコードでできてるもんだ」ということである。現にLou Reedはソロになってこのアルバム から多くの曲を取り上げているのは以外と知られていないのではなかろうか。確かに人間関係や契約関係、 前出の盗難など様々なトラブルなどで Lou Reed にやる気がなくなっていってるのは Doug Yule にリード・ ヴォーカルを数曲譲っていることからもうかがえるが、その精神状態がまた非常にいい歌詞を産み出して いるようにも思える。(この人の歌詞はいつだって最高ではあるが)
   また、付け加えれば、新規加入のDoug Yule の活躍ぶりも非常にすばらしい。とくに 私はこの人の声が好きである。とかく非難されがち(メンバーと認められなかったり)なメンバーでは あるが、この人の才能はもっと評価されていいと思う。
   ・・・などとごちゃごちゃ言ってはいるが、1曲目の“CANDY SAYS”が鳴り始めるその 瞬間、私の頭の中はどぉ〜〜んとVUの世界に引き込まれる。あの何とも言えない感じは聴いてみれば わかると思うが、他ではなかなか巡りあえない。(1st の“Sunday Morning”にもまあ同様のことが言える) 表裏のジャケのなんとも冷めた情念のような感じもGreat。傑作だと思う。


B 「in THe PReseNse OF GReaTNess」 (Velvet Crush) 1991 (COCY-9969)

in THe PReseNse OF GReaTNess    01. WINDOW TO THE WORLD
   02. DRIVE ME DOWN
   03. ASH AND EARTH
   04. WHITE SOUL
   05. SUPERSTAR
   06. BLIND FAITH
   07. SPEEDWAY BABY
   08. STOP
   09. ASSHOLE
   10. DIE A LITTLE EVERY DAY
(*bonus track)
   11. ATMOSPHERE *
   12. THE GENTLE BREEZE *
   13. BUTTERFLY POSITION *

   パワーポップもの第一弾。前身バンドChoo Choo Trainの楽曲群や2nd以降も好きだが、 やっぱり彼らの最高傑作は(言い切ってしまうとちょっと悲しいけれど)これであろう。しかし若いなあ ・・・写真。今考えるとこれがCREATIONから出ているのにはちょっと驚かされる。いい時代だったなあ'90初期。 恐いものなしの彼らの1st、Matthew Sweetプロデュース。なんと8track!その当時の勢いなど何もかも詰め 込まれてこその出来であろう。音は好みが分かれるところだとは思うが、全編にわたる甘く切ないメロディ、 疾走感あふれるサウンド、よい意味でラフな演奏・録音・・・・・・何をとっても間違いなく POWER POP の名盤と 呼べるであろう。名曲“Drive Me Down”には何度涙したことか。後にどんどんSPEED UPして発表されていく これも名曲“ATMOSPHERE”などなど佳曲ぞろいである。「GIRLFRIEND」が大ヒットする前のMatthew Sweetがプロデュースなのも 興味深く、これまたいい仕事をしている。8trackを選択したのもおそらく彼であろうし、自分のレコード を作るときとはやはり違う音の取り方だ。彼らはこんな作品群で'90初期の音楽界にこの手のバンドが 入り込む先陣を果たしたのだなあ。(ほんの一瞬だったが・・・。)しかし近今の POWER POP ブームに何らか の手助けになっているのではないだろうか?、と私個人は思う。
 何と言うか彼らの音からは音楽に対する愛情、「本当にただ音楽がRockが好きなんだ。」という思いが 伝わってくる。一見甘く切ない胸キュンPOP風ではあるが、彼らは無骨なで頑固でひたすらPOPが、Rockが 好きな青年達(今はもう中年か??)である。
 アメリカン・パワーポップのツボとも言える存在、元SneakersのMitch Easter(REMのプロデュースの方が 有名かもしれない)を伴っての2nd発売直後の二度目の来日も懐かしい。すばらしいLiveだった。しかし 2ndは全く売れなかったらしく、CBS/SONY に拾われてレコードを作る中、あのPuffyの“SoloSolo”に 曲提供・演奏参加したことなどはご存知の方も多かろう。
 彼らはは一部の熱心なファンによって1st Album のヒットから落ち込んだ後の救いの手に至るまで 支えられている非常に幸せなバンドであると思う。もちろん本人達は苦しい思いもしてきたろうし、また 今のままでいることに満足しきっていることもなかろう。しかし彼らを愛する人々は本当にただ音楽が 好きな人、Rockが好きな人…つまり彼らと同じような視点・感性をもった人々がほとんどではないかと 私は感じる。何か勝手な願いだが、彼らにはずーっとこのままいてほしい、マイペースを貫いてがんばって ほしいなどと考えてしまう。


C 「GIRLFRIEND」 (Matthew Sweet) 1992 (BVCP-196)

GIRLFRIEND    01. DIVINE INTERVENTION
   02. I'VE BEEN WAITING
   03. GIRLFRIEND
   04. LOOKING AT THE SUN
   05. WINONA
   06. EVANGELINE
   07. DAY FOR NIGHT
   08. THOUGHT I KNEW YOU
   09. YOU DON'T LOVE ME
   10. I WANTED TO TELL YOU
   11. DON'T GO
   12. YOUR SWEET VOICE
   13. DOES SHE TALK?
   14. HOLY WAR
   15. NOTHING LASTS
(*bonus track)
   16. GOOD FRIEND
   17. SUPERDEFORMED
   18. TEENAGE FEMALE

   あまりにもすばらしい彼の出世作。パワー・ポップ・ファンのみならず非常に幅広い層に支持された。 彼の離婚や契約切、天災で財産を失ったことなどがこの作品を解説されるときよくキーとされるが、そんな事情 を知ろうと知るまいとこの作品のすばらしさには圧倒される。一曲目“DIVINE INTERVENTION”のイントロを聴いて 「かっこいいー!」と感じられればもうほとんどこのアルバム全編いけるであろう。この当時のギター・ ポップっぽい音といえばそうだが、彼の音楽へのあまりにも真摯な取り組みぶりが注ぎ込まれていて 聴いていると楽しむのと同時に泣けてくる。
   これより前の作品1st「inside」2nd「EARTH」もPOPセンスが光っている好盤ではあるが、何といっても この3rdが全く異なるのは打ち込みが一切ない点である。今までのプログラミング・ビートを一切否定する がごとく、生ドラムでこれでもかこれでもかと押してくる。本物のドラムに目覚めることとなった その原因は自らドラム・セット入手したことらしく、プレイするうちに「次は絶対生のドラムにする!」 となっていったとのこと。ロックのダイナミズムを生んでいるもののひとつにようやく気づいたという ところか。
   そしてすごいのが演奏するメンバー達。このアルバム中のドラムプレイは元Lou Reedバンド などにいたFred Maherと前出Velvet CrushのRic Menck。他のメンバーもすごい。リードギターには元Televisionの Richard Lloydと元Lou ReedバンドのRobert Quineの“二大看板ギタリスト”でバリバリのNY Punk炸裂+ Lloyd Coleのリズムギター、そしてMatthew自身のリズムプレイもなかなかである。ペダルスティールギター にはGREG LEISZ、ベースはMatthew自身のプレイ(ちなみに彼は楽器を手にする際、「一番安くて一番弦の 数が少ないから」というとてつもない理由でベースを選んだらしい)である。錚々たる布陣である。次作 「Altered Beast」ではさらにこの錚々たるメンバーに拍車がかかる(私にとってのパワーポップ参照) のだが、全くもって彼のこのよくわからない人脈はどうやって作られたのか?ある意味すごい人物である。
   次作がややオーバープロデュース気味なことを考えると、音の録り方も綺麗で、アレンジもいたって シンプル。へヴィな曲もそれぞれの楽器の音がよく聞こえてCool。薄すぎるかというとそんなことはなく、 お得意泣かせの静かな曲も泣きが強くなりすぎず、とても聴きやすい。そして決して他人にコーラスを やらせず、Vocalは全て一人多重で、これがとてもすばらしい。まさにツボを押さえた、というかこの 人がどんな音楽が好きなのかがよくわかるストレートなコーラスワークが全編を覆う。
   Matthew Sweetワールドとでも言おうか…とにかくアルバムどこを切っても 「Matthew Sweet」がいる。参加メンバーのほとんどが後に「あの仕事は気に入っている」と答えてもいる。よくわかる。今現在の シーンではそっぽを向かれてしまうのはわかるが、この頃のMatthew には何かがあった。その後同じ ようなアルバムしか作れず、悲しいことにそのどれもがこの3rd を越えられなかった。今どこで どうしているのやら…(先日のヒット映画「オースティン・パワーズ」の最後のバンド演奏シーンの メンバーに交じっていたらしいが、気づかなかった…)
   私にとってはパワーポップに出会うきっかけとなった人であり、出会った頃が絶頂期であったので 個人的な思い入れが突っ走ってしまうが、このアルバムは文句なくすばらしい出来である。未聴の方 は是非是非。


D 「MARQUEE MOON」 (Television) 1979 (20P2-2107)

MARQUEE MOON    01. SEE NO EVIL
   02. VENUS
   03. FRICTION
   04. MARQUEE MOON
   05. ELEVATION
   06. GUIDING LIGHT
   07. PROVE IT
   08. TORN CURTAIN

   これほどすばらしいRock Albumがこの世にどれだけあろうか?'70 後半のいわゆる New York Punk勢の代表格、圧倒的な個性と存在感。はっきりいってPunkというくくりでLondon Punkなど と一緒にしてもらいたくない。無論俗に言うPunkもNew Yorkが生んだ偉大なバカたれ集団、New York Dollsが 始祖ではある(ご存知か?Sex Pistolsは彼らなどへ憧れとものまねからはじまっている。まあ彼らの1stは とてもいいPOPアルバムで俗に言うPunk Albumの中では群を抜いた出来であるのは認めるが…あまりに信仰 されすぎていて反発したくなるわけ)が、同じNew YorkだからってPunkにするなよ、Punkに…。
   ……少々話がそれた。これほどすばらしい"Rock" Albumが他にどれだけあろうか? タイトル曲“MARQUEE MOON”のあのすごさ。鳴り始めると一生リフレインを終えてほしくない、永遠に 鳴っていてほしいと思ってしまう名曲中の名曲。Tom Verlaine の才気あふれる作曲作詞才能+ほとんど ブルース色を感じないギタープレイ、Richard Lloydのねばっこいテレキャスタープレイ(私はこの一枚で テレキャスターを入手することを決心した。)、かなりくせのあるFred Smith(前任が“あの”Richard Hell だったというのだからこれまた驚きではある)とBilly Ficcaのリズム隊。強烈なメンバーである。とてつも なくうまいなんてことはないが、ある意味Beatles同様彼らの曲を彼らのようにプレイできるのは彼らだけ であろう。全8曲、捨て曲がない。本当にすばらしい。
   BeatlesがRock 'n' Roll からRollを取り払って以降、Rockは「なんでもあり」な音楽に なった。どんな作風にしても「Rock は Rock」で片付くようになった。そんなとき、「〜風」ではなく、 ただ「Rock」とは何かと(例えば音楽を大して聞かない人に)説明するなら、私はこの一枚を取り上げる であろう。このアルバムのジャンルは?と聞かれて「Rock」と以外答えられるであろうか?私はこれぞ Rockである(つまりもととなる黒人音楽などからかなり遊離した存在である、)と思っているがどうか? まあそれ以外にもあると言われればあるが、この作品に関しては自信を持って言える。「これがRockだ」 と。
   いつ聞いても頭がショートするよう。私の心を揺さぶるすばらしいアルバム。なんというか 催眠にでもかかったようなしびれ方。「巡り合って幸せ」というよりも「大変なものに巡りあってしまった」 という感じ。カルト宗教なんてちゃんちゃらおかしい。よっぽどこのアルバムの方が心を、人生を揺さぶる。
   最後にタイトル曲から歌詞を抜粋しておこう。

I spoke a man down at the tracks.
I asked him how he don't go mad.

He said,
"Look here junior, don't you be so happy.
And for Heaven's sake,Don't you be so sad."



E 「Pet Sounds」 (The Beach Boys) 1966 (TOCP-3081)

Pet Sounds    01. WOULDN'T BE NICE
   02. YOU STILL BELIEVE IN ME
   03. THEAT'S NOT ME
   04. DON'T TALK (PUT YOUR HEAD ON MY SHOULDER)
   05. I'M WAITING FOR THE DAY
   06. LET'S GO AWAY FOR AWHILE
   07. SLOOP JOHN B
   08. GOD ONLY KNOWS
   09. I KNOW THERE'S AN ANSWER
   10. HERE TODAY
   11. I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES
   12. PET SOUNDS
   13. CAROLINE NO
(*bonus track)
   14. UNRELEASED BACKGROUNDS
   15. HANG ON TO YOUR EGO
   16. TROMBONE DIXIE

   泣ける。とにかく泣ける。……というか、その背後の狂気に身震いする。背筋が凍る。 神様はどうしてこんな作品を Brian Wilsonに作らせたのであろう?これを聞いていると極端に言うならすばらしく うれしくなるか、気が狂いそうになるかのどちらかだ。あまりにも美しく、あまりにも切なく、あまりにも すばらしい。私の昔の彼女の知り合いは言ったそうだ。「これは19までに聴いておくべきアルバムだ」 と。残念ながら私が初めて聴いたのは20すら越えていて、そのせいか初めて聴かされたときはそんなに ピンと来なかった。(彼女にテープで聴かされたように記憶している)しかししかしこの作品はじわじわと 私の心を浸食した。
   今でも間違えて気分の落ち込んでいるときにでもかけようものなら最後、その心の揺さぶり方は他の追随を 許さない。冗談抜きに涙が出そうになる。落ち着いて聴いているときもいちいち「すごい作品だなあ…」 と感じながら聴いている自分に気づく。とにかくこんな凄いテンションのアルバムはただ音楽をやっている だけでは作れまい。間違いなく神がいると思う。そう思う。
   こんなすごい作品がレコード会社や他のメンバーに酷評され、レコード会社に いたっては同時にベスト盤を出して販売の迫害までするという、「何というアホどもだ?」という状況に 追い込まれ、それまでとにかくBeatlesを超えるような作品を作ろうと、ただでさえ張り詰めていた Brian Wilson の精神は破綻していく。これも神のせいなのか?こんなすごい作品の報酬としては あまりにむごすぎる。しかしまあそんなこと故にここまで支持される作品になっているのも事実で あろうが・・・
   何気なく聴いている限り普通の POP SONG であるが、楽曲の複雑さはこの手のアルバム にしては例を見ない。何もベースがルート音からかけ離れているとかそういったつまらないことだけを言って いるのではない。もう POP/ROCK の領域にはないような非凡な楽器構成、転調、転拍子…もうRockではない と思える瞬間もしばしば。しかしメロディはいたってすばらしく、ただの奇異な音楽とは全く違う。 (これらの曲、アレンジ抜きでもいいから一曲書け、と言われたってそうは書けまい。それぐらい曲も すばらしい。)しかし、何と言うか聴いた後“音楽”を聴いた感じがあまりしない。この感じはわかる 人にしかわからないのかもしれないが、私はこの作品を「いい」という人ならとりあえず信じるに足る要素 をもっているな、と判断できると思っている。    “God Only Knows”は私の永遠のLove Songのうちのひとつである。またこのアルバムは 私にとって音楽が音楽の形をもってそれ以上の何かを極めて極端に表現しているように感じられる数少ない 作品である。しかも「すごい」と思うだけではなく、とても好きである。故にここに述べさせていただいた。 興味を持たれたら(もし幸運にも19以下でこれを読んだ人は特に)是非聴いてみてください。


F 「#1 RECORD」 (Big Star) 1972 (MSIF 6127)

#1record    01. FEEL
   02. THE BALLAD OF EL GOODO
   03. IN THE STREET
   04. THIRTEEN
   05. DON'T LIE TO ME
   06. THE INDIA SONG
   07. WHEN MY BABY'S BESIDE ME
   08. MY LIFE IS RIGHT
   09. GIVE ME ANOTHER CHANCE
   10. TRY AGAIN
   11. WATCH THE SUNRISE
   12. ST 100/6

   時代と音楽産業の影にうずもれてしまった名盤。別格Beatlesのことを考えなければ私の Favarite Artist & Album である。このあまりにガードの弱い巨大産業に吹き飛ばされそうなジャケット、 あまりにもあまりにもすばらしい楽曲群、Alex Ciltonの南部の怨霊がすべて肩に乗っているような神経を 逆なでる声、Alex の才能を支える Chris Bellの独特なPOPセンス、、、、Big Star が Big Star というバンド 足り得た奇跡の一枚。もちろん 2nd も 3rd もすばらしいのだけれど、“バンド”のパワーが力いっぱい注ぎ こまれているという点でこの 1st が最高である。一部評論家からは大絶賛を受けた(そりゃそうだろう)この 作品を、有名なR&Bレーベルであるスタックスのインディ、アーデントレーベル(最近復興された)は全く売ることができなかった。 というか親会社スタックスと販売契約をしていたCBSコロンビアが全く興味を示さず、満足にプロモーションもしてもらえなかったらしい。確かにその当時の周り のロックの喧騒ぶりからすれば、より過激に、より話題性のあるもの、(でなきゃシンガーソングライタ ーか?・・・笑)がクラシックなものより優先されたりするのであろうが、それにしても・・・・・・・・・・・・これは Big Star 〜 Alex Chiton 関連のライナー・ノーツで登場しそうなセリフではあるが、怒りを通り越して 悲しくさえなる事実である。いくらなんでもこれが全然売れなかったとは思えない。 それゆえ、私はこの当時の他の隆盛だった音楽(ハードなやつだのサイケだのプログレだのその他たくさん) を逆恨みというか何か斜めに見てしまうようになったほどだ。(いやもちろん好きなものもたくさんある が、「なんでこんなものが売れて Big Star が売れんのだ!」と思うものも多い。)
   しかし、しかしだ。実はやっぱりこれでよかったのかもしれない。今やBig Star は 「Velvet Underground ほどまでは有名ではないものの、それに次ぐぐらいのカルトバンド」「VU がそうで あるように、聴くとバンドを始めたくなるバンド」というような評価をされるに至っている。これはこの ような不幸な経過を経なければありえないことであっただろう。しかしそういった経緯だけで彼らに カルト人気があるのではない。彼らがカルト的人気を博している最大の理由はあたりまえながら 本当にすばらしい音楽を作ったことに他ならない。“少し”いい音楽、ではなく、本当にすばらしいものを 作り、かつ全く売れなかった、ということに起因するこういった人気というのでなければ私は彼らに出会うことも できなかったかもしれない。だからよかったのだろう、少なくとも私にとっては。
   BOX TOP のデビュー曲“The Letter”で いきなり全米No.1を飛ばしてその後TOP40も飛ばしまくったが、豪腕プロデューサー Dann Pennによる 「“造られた”ブルーアイドソウルバンド」に決別し、自らやりたいことをこのレコードというすばらしい 仕事ではじめたのにも関わらず、それが商業的失敗に終わり、それからはバンドは解散するし、アル中にもなるし、契約もまとも に続かないし、、、「私の手に入れたものは全て他の誰かが持っていってしまった」との Big Star崩壊直前の 彼の思いはソロ活動での頑固な姿勢に根付いている。彼はもう少なくとも作品に関して商業的に成功する ようなものは決して作らないであろう。(自らそういったチャンスを破壊しようとする人だ。)しかしそれ なのにソロ作品はどれも私の神経を逆なでる。もしBig Star が成功していて、来日は Studium とかで…(笑) までいかずとも普通の音楽雑誌にたまに登場したり、、なんて全然想像したくないし、そうであったら仮に どんなによい音楽を作っていようと、この当時の他のバンドと同じ程度の思い入れにしかならなかったで あろう。この辺は「 John Lennon が死んでいなかったら」とかいうのとちょっと近い気がする。
   傑作にして代表曲の“The Ballad Of El Goodo”“Thirteen”などが収録されていることは もちろん、その他も捨て曲といった捨て曲がない、、、というのはまあ好みもあるであろうから言いすぎで あろうが、とにかくアルバム全体の流れがいい。一曲目の“Feel” の頭の中を一気にもっていかれるような イントロもすばらしいし、(前出Matthew Sweetの「GIRLFRIEND」はこの感じを意識しているような気がする がどうだろうか?)もう何もかもすばらしい。断言しておくが、ことRock Music という枠の中でならこれは 間違いなく傑作だ。これに匹敵するものがどれだけあるか、あればどうぞ教えてほしい。
   私のヒーロー、Alex がRockの分野で(この人はBOX TOPSを含め、いろいろなことをして いる。JAZZ などの分野でご存知の方もいるかもしれない)作った最高傑作。3rdやソロのブチ切れ具合が すばらしいと思う人も多いかもしれないが、私はやはりこのレコードが最高だと思っている。賛同してくれる 方も多かろう。



G 「ON FIRE」 (GARAXIE 500) 1989 (VACK-1120)

ON FIRE    01. Blue Thunder
   02. Tell Me
   03. Snowstorm
   04. Strange
   05. When Will You Come Home
   06. Decomposing Trees
   07. Another Day
   08. Leave The Planet
   09. Plastic Bird
   10. Isn't It A Pity
(*bonus track)
   11. Victory Garden
   12. Ceremony
   13. Cold Night

   これを初めて聴いたときの心の中というか感情を思い出すだけで今にも泣きそうになる。 VU直系、といって間違いないだろう。が、暗い。とにかく暗い。どう明るくサウンドをつくっても暗い。 世の中暗い音楽は Smith だの何だのたくさんあるが、とにかく暗い。音がどうこうとかいうんじゃなくて、 何か情念がこもっている。暗い。
   曲は言ったとおりVU直系のつくりで、少ないコードで非常に印象的な曲を作っている。音は フィードバックギターなどがまたVUっぽくはあるが、まあシンプルな作りである。演奏はこれまたVUと いうか、へたうま、、、いやただのへたくそだ。なんてことないのにその声が、コーラスが、ギターの 音色ひとつが私の心を掻きむしる。掻きむしるったら掻きむしる。「なぜ彼らはこんな思いまでして音楽を つくるのだろう?どうして?」私はいつもそんなことを考える。最後まで悲しい。ラストナンバーはBeatles の George Harrison のソロ作品のカバー“Isn't It A Pity”……悲しすぎる……。
   悲しいけれどすばらしいのだ、これが。悲しい作品はこの世にいくらでもあるが、うーむ・・・ 神経系統がむき出しになっている音楽とでも言おうか、、、イメージそのままの弱々しさ・自己完結性。 こういった詩・・・というか精神世界は楽器などの音楽的なテクニック、知識をバック・ボーンに持たないゆえに 生まれ得た奇跡である。こういう音の魅力・必然性を理屈で語るのは非常にむずかしい。とにかく すばらしい。
   デビュー版「Today」に続く2nd、確かに弱々しいが、その弱さ・悲しさがものすごく ストレートにぶつけられていて、逆の意味で力強くも感じられるかもしれない。(いや暗く、悲しいのは 間違いないのだが)@、A、、、ああもう思い出すだけで心が掻きむしられるこの感じ。Cなんて私 みたいな人間は正気じゃ聴けない。とにかくあまりにもすごい。単純な興奮とは明らかに違った意味で 息をつく暇もない。前述ラストナンバー George HarrisonのIIsn't It A Pityや、Bonus Track として収録 されている、JVictory Garden(レッド・クレイオラ<※スペルわからず>)、KCeremony(New Order) などのカバーもルーツや目指すものを明確にしていて興味深いし、また当然すばらしい。
   アルバム3枚で解散し、今 Dean Wareham は Luna で、Naomi Yang と Damon Krukowsuki は Damon & Naomi で活動を続けている。
   私は一昨年(1998)に渋谷 Club Quattoro で Damon & Naomi を見る機会があった。 無論会場は混んでいることなどなく、ゆったりとした雰囲気で、ふたりも痛切な感じはほとんど 見せずにとてもいい表情で淡々と曲が進んでいった。非常にいいライヴだった。本作品の@ もやっていた が、それでこのアルバムのように感じることはなかった。むしろ心が非常に落ち着いた。あれがきっと何か をくぐり抜けてきた人達の出すグルーヴなのだろう。
   私は一生このアルバムを、Garaxie 500 を愛し続けるだろう。理由を説明するのは非常に むずかしいが、そう思う。


H 「OK COMPUTER」 (RADIOHEAD) 1997(TOCP-50201)

OK COMPUTER    01. AIRBAG
   02. PARANOIDE ANDROID
   03. SUBTERRANEAN HOMESICK ALIEN
   04. EXIT MUSIC(FOR A FILM)
   05. LET DOWN
   06. KARMA POLICE
   07. (filter, happier)
   08. ELECTIONEERING
   09. CLIMBING UP THE WALLS
   10. NO SURPRISES
   11. LUCKY
   12. THE TOURIST

私はこの Radio Head がブレイクしたころ、このバンドがあまり好きではなかった。 何というか“わかる人は聴く”みたいな感じが私に反発感情を励起させたのだ。1st は確か聴いた気がする。名曲“Creap”など収録のまあ支持されてしかるべき内容であるが、 そのことと当時の私の音楽趣味(というか趣味と呼べるような趣味が確立してすら いなかったであろうか?)の問題もあり、そんなによく感じなかったのではなかったか? ちょうどパワーポップの項で述べているジェリーフィッシュで感じた思いと少し似ている かもしれない。  その後Album を出すたびに絶賛を受け、ますます聴くことをよしとしない私の天邪鬼体質 により、きちんと聴くことをしなかったが、何のきっかけだったか、このOK COMPUTERを聴くに いたった。ただし発売してしばらくしてから。
 何というかごちゃごちゃ説明が要らなかった。すばらしい。なんで聴いてこなかったん だろう?なんて無粋なことは考えなかった。なぜならすばらしいから。すばらしいのに遅いも 早いもない。
 全体のグルーヴがすごい。捨て曲がない。T. YORK のすばらしき作曲・表現力。あきれるほど すばらしいアレンジ。あたりまえかもしれないが、初期の頃よりタイトに引き締まったサウンド。 これを名盤と言わずしてどうしようか?ずっと聴いてきた人の思い入れとかが入るとこれ以前の 作品がいい、とかいうかもしれないこともわかるしまあ支持もするが、でもこのアルバムは すごい。自分の直感的にはきっとこれまでの最高傑作だと思う。(“直感”というのは実は 1st とこれしか持っていないのだ)いかがであろうか?  なんというか結局私の好きなものというのは皆おなじような因子を持っているのであろうが、 このRadio Head が持つ因子はなんだろうか?・・・声は好きである。曲の持つグルーヴも最高。 詩もすばらしい。けれど結局ここでも私が心を強く動かされるのは悲しさ・暗さだろう。 聴いていると非常に涙腺が緩むというか、「ぅわーー…」となる。この全体を包むグルーヴ、若者の …っていう言い方するとやや語弊があるか?つまり…リスナーの代弁者だと歌詞の意味がわからずとも 思えてしまう音。「そうそう、この感じこの感じ…」というか。とにかく何も感じずに聴くということ がない。(ここに紹介している Album はほとんどそうではあるが)
   ある意味では私の持っているRock音楽ソースで最もすばらしいという表現も可能 かもしれない。それぐらい客観的にも出来がものすごくよい。私の思い入れとは関係なく、 Rockリスナーなら何も感じないということはないと思う。1990年代を代表する一枚と言えると思う。


I 「無罪モラトリアム」 (椎名林檎) 1999 (TOCT-24065)

無罪モラトリアム    01. 正しい街
   02. 歌舞伎町の女王
   03. 丸の内サディスティック
   04. 幸福論(快楽編)
   05. 茜さす 帰路照らせど・・・
   06. シドと白昼夢
   07. 積木遊び
   08. ここでキスして。
   09. 同じ夜
   10. 警告
   11. モルヒネ

   初登場の日本人である。この人のことをなんと表現しようか?私を狂わせるお方。 とにかく「すてきーーーーーーーーーーーーーーーー!」と叫びたくなる。もう見ているとどうしたら いいのかわからない。この人と結婚できるなら僧にでもピザ屋にでもなります、はい。(笑) (“丸の内サディスティック”より)
   とは言っているものの、最初からそんなに魅かれたわけではない。このアルバムが 発売される直前、知り合いよりその存在を知らされ、“歌舞伎町の女王”なるタイトルの曲にかなり 強烈な印象を受け、何も知らないままこの1stアルバムを買った。すぐ聴いたが、じっくり聴いては いなかったため、アルバム自身は最初それほど強烈な印象とはならなかった。個性的なよいアルバムで あるとは思ったものの。そんな折、その紹介してくれた方のご配慮で Space Shower TV 開局10周年記念 企画「Sweet Love Shower '99」 という日比谷野音でのLive に行くことができることとなり、お目当ての Triceratops 1st,2nd と この椎名林檎の1st を日々聴いて備えたのであった。その辺りでこうまじめに 聴いているうちにじわじわと自分の中に何かが芽生えていったのである。もうかなり好きになってきて、 見るのが本当に本当に楽しみになっていたのだ。
   いざ当日、会場につくとオープニングに知らないスカバンドみたいなのが2、3曲 演奏した後、名前のアナウンスがあっていきなり登場したのだ。何か予感、というか心の高揚感が すごかった。これほどドキドキしたのもかなり久しぶりであろう。巻き毛に綺麗なワンピース、そして 手には鞭。ああ、もう思い出すだけで素敵。そしてマイクの前に立った彼女は“あ゙ぁぁ・・・”と吐息 、拍手喝采後、“歌舞伎町の女王”をワンフレーズ歌いShout、そのまま私の大好きな(ファン投票でも 一位だった模様)“丸の内サディスティック”になだれ込む。もうその“動く”林檎ったら素敵なこと この上なし。もう頭が完全にショートした。わけもわからず夢中で叫び踊る私がそこにいたのであった。 あの声、あの動き、あの巻き舌、あの美しさ、発散するオーラ、、、、もう語り尽くすことなどまるで できない。とにかくすばらしく素敵であった。音楽でこれほどの思いをするのは本当に久しぶりである。 もうその後のことは全然覚えていない・・・
   渋谷陽一氏曰く、「桑田佳祐以来の天才」。そんな言葉を確認するまでもなく、私が 生涯で出会ったBest Artist in Japan である。これほど感激し、陶酔し、共感し、ただただ好きな方はもう 現れないかもしれない。本当にそう思えるぐらい私の中ではすばらしい出会いであった。
   シングルもすべて買った。ファン・クラブにも入った。私にこんな行動に走らせる方は 本当にいない。素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵ーーーーーーーーーー!・・・・・・(暴走)
   閑話休題、アルバムの中身だが、飽きない・捨て曲がない・アレンジがよい・声が すばらしい・歌詞が興味深い・楽曲、メロディがいいという点は外していない・斬新ということを しているわけでもないのに何とも新鮮・しかも“売れている”・・・思い入れも手伝い誉めてばかりだが、 間違いなく1990年代日本音楽産業界の一大事件であると思う。しかもこれが“売れている”というの だからすごい。こんなもの聴くのは少数なのではないか?と思っていたが、世の中捨てたもんじゃない のかもしれない、と一人思ってしまうのであった。
   考えるだけでもう思考の回路がおかしくなってしまいそう。売れたからといって どうこうなるタマでもないであろう。その点は安心して見ていられる。「アルバム3枚でやめる」とか いっているらしいが、それもまたよし、だ。この人にはどうかその考えをそのペースを破らず進んで いってほしい。きっとそうしてくれるであろう。本当に素敵な人だ。Great Great Great!!!まさに 「あなたには殺されてもいいわ〜♪」(“シドと白昼夢”より)である。ああ、もうどうにでもして。




   すばらしい作品達、ありがとう。今後もこんな作品にどんどん出会いたいものだ。 まだまだ人生は続く。「これが好きならこれはどうだ?」とか「その見解はおかしい」とか何か 感想・ご意見・お薦め盤などなどありましたらメール、もしくは下記Formでくださると ありがたいです。


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