「 鬼婆との出会い 」


「PDF」


以下本文ですが、内容紹介のテキスト文なので、画像が正しい位置に入りません。PDFでご覧いただければ幸いです。

 大学受験に失敗した後、浪人するよりはと就職した三崎町大学では、講師室受付に配属され、講師の先生の控室でお茶汲みをする事になった。
 この部屋を取り仕切っている干葉さんが、鬼婆と恐れられているスーパーウーマンである。とにかく仕事がきっちりしている。会議で使ったグラスを洗うように言われていい加減に洗ったら、太陽に漉かして、「ここが曇ってる。やり直し。」と200個全部洗い直しだ。電話の応対言葉遣い、一々注意された。
 もともと女の仕事だと思っているお茶汲みを、「何で男の俺が」などと思っているから、良い仕事などする訳も無し。妃殿下から「他に出来ること無いんでしょ。」と言われていなかったら、飛び出していたかも知れない。
 ある日とうとう言われた。「あなたの鋳れるお茶。いったい一杯いくらなの?給料を1ケ月で鋳れる数で割ってごらん。」
  「先生方は90分の授業の間にここで休まれるの。置かれたお茶を20分も30分も経ってから飲むのよ。」
 確かに自分の鋳れたお茶は数十秒で粉が沈んでしまい、色の透き通った水になる。色付き水だとの批難もあながち嘘ではない。見ていると、千葉さんの鋳れたお茶は違う20分経っても30分経っても緑色で濁っているのだ。
 同じ茶葉同じお湯同じ道具を使い、どうしてこんなに違いが出るんだ?
 注意して見ていると、お茶は直接薬缶に入れない、必ず茶缶の蓋にとって半分戻す。こうすると粉茶になった部分を薬缶に入れないで済む。お湯はいっぺんに注がない、葉っぱを濡らした後、微妙に何秒か待ち、一気に入れる。
 茶碗に注ぐ時に最期の秘密がある。茶碗の壁面に沿うように斜めに注ぎいれるのだ。こうすると自然に渦が出来て粉茶が沈まなくなる。
 訳がわかってしまえば、簡単なことだが、職業として行なうからには、何事にもポイントがある。それを見ようとするか、しないかで、結果が決まる。
 先輩の女子事務員が、先生から「熊君が来ているなら、熊君に鋳れて貰って。」と言われたと憤慨して言いに来た。「やったー。」と思った。
 厳しく言われた意味はこういう事だ。

…… 「PDF」

  をクリックすると、印刷用画面になります。


コンコンチュウチュウの似顔絵

……> ページの先頭に戻ります

……> 目次に戻ります

・・・・> ホームに戻ります