「 腹いっぱいの餃子 」


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以下本文ですが、内容紹介のテキスト文なので、画像が正しい位置に入りません。PDFでご覧いただければ幸いです。

 三崎大学には5年間務めた。と言うのは2年目から理科大学に進学し、アルバイト学生として4年間頑張ったが、両立せず進級できない年が続いたからだ。
 このまま永久就職するか、三崎大学を辞めてアルバイトで進学の道を選ぶか迫られた。
 大学の物理先生から家庭教師の口を世話するから、教師になるために理科大学を選べと言われた。計算すると金銭的には何とかなる範囲。思い切って三崎大学を辞めた。
 今日でお別れという日に鬼婆の千葉さんに呼び止められた。
  「あんた、仕事はみんな決まったの?まだ余裕があったら、うちの娘の家庭教師してくれない。」と言うのだ。「週に1回で月2万円しか出せないけど、晩御飯だけは腹一杯食べさせてあげるから、我慢してやりなさい。」と言う。
 最もお世話になった人の、頼みとは言え半分命令。 しかも月2万円は安いどころの金額ではない。もちろん喜んで引きうけた。
 毎週鷺宮まで行くのが楽しみであった。千葉さんとお姉さん娘さんの女3人所帯にまるで晩御飯を食べに行くようであった。
 1時間ほどの予習復習の相手をした後に会食になる。とにかくもりもり食べるから小気味良いと誉められて、誉められれば尚更話に花が咲き夢中に食べる。
 月に1度は自慢の餃子大きな丸いお皿に一杯中華鍋で焼いて、次から次と出て来る。これが本当に美味しかったし、腹一杯食べた。何よりの楽しみであった。
 一方、授業の方はあまり進まない。まさか家庭教師で宿題を出すわけにも行かず、女の子なんだから、数学もこれくらいで仕方ないかと思い、教えているが、9月になっても十月になっても志望校を言い出さない。干葉さんに聞くと、とにかく頑張らせて、最期に行ける所に行けばいいんだから気にしなくていいと言う。そんな考えもあるか。 ところが・・・・・・・・
 流石に3月になってもどこにも受験する様子が無いので、本人に聞いてみた。
 笑いながらの答えは「だってあたし9月に就職決まっていたから。」と言うのだ。
 1年間、貧乏学生に2万円の小遣いと、腹一杯の飯を恵んでくれるために、3人で結託してお芝居をしてくれていた。その事に気がつかず、迂闊にも十一ケ月通い続けてしまった。
 何とも恐ろしい。これが鬼婆と言われる人の手口だ。見せ掛けだけの優しさではない、奥の深い優しさを、人は鬼と呼ぶのだ。
 誰にも出来ない事を平気な顔でする。これを人は鬼と呼ぶのだ。
 涙が溢れてならなかった。恥ずかしいのではなく侮しいのとは違う、何だか不思議な涙だ。

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コンコンチュウチュウの似顔絵

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