"我が戦い、我らが勝った"

    -"I Fought, We Won"-

copyright 1998, Nick Brooke
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,2000. [2000.08.23].



  大暗黒の最中、世界は混沌の猛攻にさらされ世界が切り刻まれていた時代、マルキオンはその民をただ創造主たる神への献身のみにとどめていた。彼らの意思統一された献身は、あらゆるものを一つに引き戻してしまった全世界のための戦い"我が戦い、我らが勝った"を戦う力をマルキオンに与えた。すべてのマルキオン教徒はその預言者たちがくぐり抜けてきたものを体験することになったのである。

  "ずたずたに引き裂かれた世界の残滓が、混沌の軍勢に対して統一的な行動を起こす可能性はもはや無いように思われた。彼らは越える術のないお互いの相違によって孤立していたのである。だが彼らの間には生存への欲求という統一があり、この満たされることのない渇望は、時間、空間、秩序、混沌の分け隔て無く、世界の最終的な分解に直面したものたちにもたらされたのである。彼らがどこからやって来たか、あるいはそれがどこで起こったかは問題にはならない。彼らは、生存への欲求に突き動かされ、最後まで戦い抜くことを決め、圧倒的な劣勢に対し最後の絶望的な戦いを始めたのである。こうして彼らはみずからの内なる恐怖と戦うために、力を合わせお互いに助け合った。彼らはそれぞれ1人だった。しかし彼らは自分と同じように戦っている他人と共に存在する自分を見いだし、そして力を得たのである。"-"定命の者の最後の戦い"-Cults of Terror.

  宇宙が失われた瞬間、マルキオンは見えざる神へと吸収され、マルキオンと神は宇宙を再創造し、そこにすむものたちを鼓舞した。世界がほとんど破壊されたにもかかわらず、マルキオンはなんなく世界を救ったが、その過程で慰めへと導かれたのである。聖なる都はそこに住むもっとも信仰心篤き者たちとともに世界から失われた。これは現在さまよえる隠された城である[1]

  ある意味でこれはマルキオン教徒の妥協であり、それはまた彼らを導くために存在する預言者が存在せぬが故に、その宗教を踏み外すことであった。なぜなら、これは明らかだが、その古い教えはただ唯一の神だけへの献身がいかに必要かを強調し、マルキオン教徒だけが古き世界の唯一の生き残りであることを強調しているからである。このことはマルキオン教徒と、衰退しつつあるその他の世界との超えられぬ壁の一角を占めていた。 しかしマルキオンが創造を救った際に、彼と彼に従う者にもたらされた経験が、現在のグローランサにおいて光を享受するものすべてを混ぜ合わせてしまったのである。"彼らは自分たちに似た他者とともに存在する自分たちを見いだした"-そしてそれらを受け入れたのである!したがって道徳的ではあるが地虫のようなものたちに満ちた、まったく新たな可能性が灰色の時代に開かれたのである(そこには受け入れ可能な"異教の神"まで存在したのだ)。この時代には、それを通して敬虔な信者たちを導くための預言者がもはや存在しなかったのである。[2]


[1][1]神智者の擁護者であるPaul Reilly(彼を火刑に!!)は、"我が戦い我らが勝った"をマルキオンのウツマ犠牲であると記述している。私はこの種のグローランサ的統合はすばらしい資産であると考える。特に我々がライトアップを完成させるようなとき、暗黙の内に嘘をつくときはそうである。赤の月がウツマの儀式における赤の月のように、宇宙の再構築のための変容した形態の自己犠牲は、アーグラスがいつも語る物語とは異なっている。

[2]地獄においてお互いの立場を認めたオーランスとイェルムを比較せよ。それは両方の宗教が引き受ける苦痛に満ちた変異であり、そうしたものは通常現実社会の信者には無視されることになる。これは暗黒の時代、"グローランサの神々は自分たちの過去の相違を消し去り、統一をもって敵なる混沌に立ち向かった"時代、すなわち生存と調和の時には必要な種類の振る舞いである。“単一神話(『グローランサの神々』,カルトブック,p.14)”


  本テキストはNick Brooke氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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