ほとんどのグローランサ文化は、たとえ同じ神話的リアリティの中で相互干渉しているとはいえ、自分たちが他の文化が行っているのと同じ方法でヒーロークエストを行っていることには気付いていない。一神教徒であり人文主義的でもある西方人の別世界に対する知覚と経験は、おそらくルナー、オーランス、イェルム、プラックスといった(多)神論的文化のそれとは著しく異なるであろう。
西方でのヒーロークエストの1つのモデルは騎士修行の探索である。これらに対する霊感の源は、キャメロットから馬で半日の場所で、騎士が象徴的、魔術的な敵、奇妙な城や国、他の世界に属する試練に直面している自己を見出すという、アーサー王物語のロマンスである。これはまた西方の騎士が、様々な、奇妙な冒険にいかにして出発するかということ、まさにそのものでもある。"魔法の国"グローランサと英雄界との曖昧な境目は、様々な場所でもう一方の世界に迷い込むことを可能にしている[1]。
騎士修行で出会うキャラクターは、西方の一神教徒の異教の神に対するイメージを表したものであるかもしれない。アーサー王/キリスト教伝承への異教の影響に関するさらなる情報のために、The Real Camelotや他の様々な出版物(ペンドラゴンのアドベンチャーも含まれる)を参照すること。従ってオーランス人であればフマクトに出会う(そして相手がフマクトだとわかる)ような状況で、フレストル派の騎士修行者は厳しげな、黙した黒騎士に出会うことだろう。中世ではこれらの出会いは古代神話からの影響であったが、グローランサではまた、他の文化の生きた神話からの流入でもあるのかもしれない。
西方のヒーロークエスターの大半は、彼らがその探求や旅程で出会う別世界の存在の真の名を発見したり、名を与えたりする事を意図的に差し控えている。これは神智者の経験への反動である。彼らの魔法の技術には、"悪霊"(有神論者の神)の真実の名前を発見し、可能であれば常に別の名のもとにそれらを認識することが含まれたていた。しかし時を経るにつれ、このことはそれまでより大きな集合体の中で虐げられていた、異世界の人格を持たない存在の力を増す結果となった。
一神教徒であるロスカルムやセシュネラのマルキオン教徒は、彼ら自身悲しみに満ちた少女、あるいは傷ついた王であろうと努めながら、彼らが出会うキャラクターを名も無き者に留め、異教の神と認識しないよう努力することで、彼らが重要性を増したり、崇拝や注目を引きつけることを阻止しようとする[2]。
本テキストはNick Brooke氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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