儀式呪文関連ルール

     ーRitual Spellー

copyright 1998, Sandy Petersen
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/‘たびのまどうし’しーちゃん ,1999


儀式魔術

  儀式呪文は他の呪文と同様の手順で習得することができる。ただし呪文投射の判定には魔術技能の成功率を用いる。
特に記述のない限り、儀式には呪文1ポイントにつき1時間の時間が必要であり、それに〈浄化〉に費やされる時間が加えられる。儀式の間は飲食、睡眠を取ってはならず、また集中を失ってはならない。儀式の最後に適切な技能でロールを行う。

精霊魔術

  すべての儀式呪文は可変呪文である。

神性魔術

  すべての儀式呪文は複合可、再使用可の呪文である。神性呪文の効果ポイントは呪文が投射された時点でロールを行う。神性呪文1ポイントは6効果ポイントに相当する。

魔道魔術

  特に記述のない限り、〈軽減〉、〈待機〉、〈合成〉、〈速度〉のアートは儀式呪文では使用することができない。儀式呪文の効果ポイントは呪文を投射した際の〈強度〉に等しい。

呪付の特殊ルール

  呪付によって封じることのできるPOWの総量は、呪付を行う素材の質に左右される。基本的に素材が魔術的であればあるほど、より多くのPOWを封じることができる。これはあきらかにGMの裁量の範囲である。たとえば単なる木切れはPOW1ポイント分の呪付しか封印することができず、注意深く作り込まれた小杖はPOW4ポイント分封印することができる。覚醒した樹から切り出された杖はPOW16ポイント分もの呪付を封印することができるだろう。

呪付の刺青、儀式的傷痕

  大半の呪付は生命を持たない物体に施される。しかし刺青や傷痕、もしくは他の形で生命体に呪付を施すこともできる。生命体に呪付を施す場合、呪付することのできるPOWに上限はない。適切な技能(〈刺青製作〉など)のロールに成功する必要がある。

儀式呪文

《師弟の契り》  Apprentice Bonding
(祈祷師、魔道士のみ)
浄化
  この呪文は師匠と弟子の間に特殊なつながりを確立する。儀式が完成すれば、師匠は常に徒弟のいる場所のおよその距離と方角を知ることができ、徒弟に対していつでも彼のもとに呼び戻すための招集をかけることができる(危機に際しては徒弟はこれに従う必要はない)。師匠は徒弟の心を読んだり、その行動をコントロールしたりすることはできない。この効果は師匠が死ぬまで続く。
  呪文を投射した際に、徒弟はみずからの意志で1ポイントのPOWを失わねばならない。

《魂追い》  Banishment
浄化
  多くの文化における一般的な葬送の儀式である。死体に対して儀式を執り行えば、死者の魂が適切な死後の世界か同種の世界へと到達し、ゴーストや邪悪な精霊として生きている者を悩ますこともない、という確信が得られる。より高い効果ポイントで投射された《魂追い》の儀式はさまざまな恩恵をもたらすが、それらは文化によって異なる。

《呪縛》  Binding
呪付
  精霊を封印するためのこの呪付を作成するためには、術者がPOWを消費する必要がある。呪縛することができるのは不完全生物だけである。また恒常的なSIZを持たない生物(ナイアドなど)、身体が単純な物質から構成されている生物(エレメンタルなど)なども呪縛することができる。いったん呪付が完成すれば呪縛呪付は特定の種の生物しか呪縛することができなくなる。そのため、ウンディーネ呪縛呪付もノームも呪縛呪付も同じ3ポイントの呪縛呪付だが、《ウンディーネ呪縛》ではノームを呪縛することはできない。
  呪縛呪付には呪物が封じる予定の生物の能力値1つにつき1ポイントのPOWが必要となる(APPは計算に含まれない)。《ナイアド呪縛》には6ポイントのPOWが必要である。一方《気の精霊呪縛》は1ポイントのPOWしか必要としない。《呪縛》の効果ポイント数が使用することのできるPOWの上限値を決定する。以下は必要なPOWの例である。

標準的なコスト 必要なPOW
チョンチョン          5    [STR, CON, SIZ, INT, DEX]
エレメンタル         3    [STR, SIZ, POW]
ゴースト              2    [INT, POW]
ヘリオン             1     [INT]
知力精霊            2    [INT, POW]
魔術精霊            2    [INT, POW]
ニンフ                6    [STR, CON, SIZ, INT, POW, DEX]
気の精霊            1    [POW]
レイス                2    [CON, INT]

  《呪縛呪付》の呪物からエレメンタルを呼び出すためには十分な元素が必要である。一般的にはエレメンタルの体積1立方mあたり1リットルの元素が必要になる。

《祝福》  Bless
浄化
  婚礼、トーナメント、戴冠式や祝祭、その他の重要なイベントに際して使用される一般的な儀式である。儀式は催しの内容によってわずか数分で終わることも、数日を要することもあり、またどこでも行うことができる。儀式が完成した時点で、参加者は《祝福》の効果ポイント以下のMPを消費する。すなわち《祝福2》が投射された場合、参加者全員が2ポイントまでのMPを消費することができる。もし必要ならGMが《祝福》の効果を決定する。一般的には長く、参加者の多い、より多くのMPが費やされた儀式のほうが、より確実な効果を有している。

《使い魔創造》  Create Familiar (魔道士のみ)
呪付
  使い魔の持たない能力値に術者本人の能力値を1ポイント与えねばならない。使い魔が死ぬとちょうどその1年後にその能力値は戻ってくる。

INT     使い魔のINTに2D6を加える。
POW    術者のPOWと同じ値になる。このPOWは経験ロールで01-05を出したときにのみ上昇する。
SIZ     使い魔がすでにSIZを有している場合、そのSIZが恒常的なものになる。そうでない場合はSIZ1となる。
STR    SIZと同様。
CON   SIZと同様。
DEX    DEXが2D6になる。

  使い魔は主人と精神的な繋がりを有し、両者は互いの呪文を使用することができる。加えて使い魔は主人の魔道技能(訳注:呪文技能の誤りか)とアートを自動的に知っていることになる。使い魔は自身のプレゼンスを持たず、主人のプレゼンスを共有する。
  主人は精神的な支配と協力から使い魔を解放することを選択することができる。その場合使い魔は能力値を保持したままである。使い魔が死んだ場合、失った能力値は1年後に戻ってくる。解放された使い魔は魔道呪文とアートを術者と同じ値で保有し、「器の誓願」と「知識の通暁」の誓願を持っているものとして自身のプレゼンスを獲得する。

《呪い》  Curse
召喚
  敵に呪いを送り付けるために用いる儀式である。《呪い》を執り行う方法は《祝福》儀式に似ており、結果も同様に漠然としている。

《呪鍛(金属)》  Enchant [metal]
呪付
  グローランサの魔術鉱を鍛練する。効果ポイント1ポイントにつき1ENCの魔術鉱を鍛錬することができる。魔術鉱を扱うためには、同時に〈製作〉技能に成功する必要がある。
  この呪文を投射するためには、1ポイントのPOWが必要である。

《身体増強呪付》  Enchant Person
呪付
  術者は対象のSIZ、INT、POWを除く能力値を上昇させることができる。能力値上昇の合計は、以前の呪付の分も含めて呪文の効果ポイントを超えることはない。この呪文の投射には、上昇させる能力値1ポイントにつきPOW1ポイントが必要である。

  例:ルーリックは《CON呪付3》をみずからに施している。彼は《CON呪付4》以上の呪文をかけてくれる者を見つけることができるまで、自分にこれ以上この呪付を施すことができない。たとえ更なる呪付に必要なPOWがわずか1ポイントであったとしても、である。

《転送円》  Homing Circle
(魔道士のみ)
呪付
  《テレポート》呪文の行き先になるエリアを作り出す。サークルが《テレポート》呪文を使用する術者の視界外にあってもかまわない。サークルは効果ポイントに等しいSIZまでのものの転送を受けることができる。《転送円》の呪文は受け入れることのできるSIZを増加させる目的で、同じエリアに何度も呪付を繰り返すことができる。
  この呪文の投射には1ポイントのPOWが必要である。

《不死》  Immortality
呪付
  術者の老化を防ぐ。この呪文は少なくとも1年に一度投射する必要がある。この呪文は術者のCON以上の呪文ポイントが必要であり、さらにこの呪文を投射する度に必要なポイントに1が加えられる。1年ごとの呪付儀式を怠ると、この呪文の効果によって老化しなかった年月分、一気に老化が進む。この呪文にはさらに一つの素材が必要で、これはGMの決定に委ねられている(若さの泉の水や、処女の血など)。この呪文が術者以外の者に投射されることは希であるが、その理由は明らかである。

《魔力封印》  Magic Point Matrix
呪付
  MPを貯蔵できる呪物を作り出す。この呪物は効果ポイント1ポイントにつき1ポイントのMPを蓄えることができる。
  この呪文を投射するためには、1ポイントのPOWが必要である。

《呪付中和》  Neutralize Enchantment
呪付
  術者は呪付を「破る」ことができる。これを行う際術者は1ポイントのPOWを消費し、《呪付中和》の効果ポイントと呪付に込められたPOWで抵抗ロールを行う。呪付がMPを有している場合には、術者は自身のMPでその抵抗を破らねばならない。両方のロールに成功すると呪付は破壊される。
  この呪文を投射するためには、1ポイントのPOWが必要である。

《開洋》  Open Seas
浄化
  RQ3の記述に同じ。

《気力封印》  Power Matrix
呪付
  1日に1D(効果ポイント)分のMPを生み出す魔力回復源を作り出す。この呪付は《魔力封印》呪付やそれに類するものとリンクさせねばならない。これを行わない場合、生み出されたMPは単に精霊界へと流出してしまうだけである。
  この呪文を投射するためにはPOW1ポイントが必要になる。

《呪文封印》  Spell Matrix
呪付
  この呪付によって術者は呪文を魔力ある物品の中へと移すことができ、呪文を記憶しておく必要がなくなる。《呪文封印》の効果ポイントに等しいポイント数だけ、呪物の中に呪文を記憶しておくことができる。この呪文を投射するためには、呪物に移すポイント1ポイントにつき1ポイントのPOWが必要になる。呪付を行う魔術の種類によって、細かな効果が異なる。

精霊魔術:呪物を使用する意思のある者は、呪付されている呪文を自身のPOW×5の成功率で投射することができる。呪付に“追加的に”消費されているポイント1ポイントにつき、呪文投射の成功率には10%が加えられる。例:3ポイントのPOWで《破裂》呪文が封印された《呪文封印》呪付の呪物を使用した場合、使用者の《破裂》の投射成功率には+20%の修正が加えられる。これにより、POWが0の生物でも精霊呪文が使用できるようになる。
神性魔術:呪物に神性呪文を封印することは、術者はその神性呪文を恒久的に失うことを意味する。神性呪文は呪物から一度使用することができ、その呪文を再充填するには、その前に1日の聖祝日の間寺院に安置しておかねばならない。呪物に封印された“一回限り”の呪文は再充填するすることができず、呪文を投射した際の使い切り(呪物は破壊される)である。
魔道:呪物に封印されるPOW1ポイントごとにその呪文を唱える際の成功率が10%上昇する。魔道技能を持たない者が呪物の使用を試みる場合、自身の魔術分野修正値を基本成功率とし、呪付に封印されているボーナスがそれに加えられる。
  魔道呪文の《呪文封印》にはもう一つの方法がある。これを行う場合、通常どおり操作して呪文に使用されたアート1レベルにつき1ポイントのPOWが必要となる。呪文操作の上限は術者の〈呪付〉技能にもとづく。この呪物が使用された場合、呪文は自動的に投射される。封印されているアートにもとづいて操作が行われるが、呪物の使用者がそれ以上の操作を行うことはできない(通常どおりのMPが必要となる)。その呪文が攻撃呪文である場合、抵抗ロールに用いられるMPは《呪文封印》呪付に収められていると見なされる(通常は0である)。そのため抵抗ロールを打ち破る確率を高めるためには《気力封印》呪付、もしくは精霊をリンクさせる必要がある。呪物から投射された呪文は、同じ呪物からもう一度呪文が投射されるまで維持される。呪物が“集中を失う”ことはない。〈永続〉の操作のなされた呪文を投射する場合、使用者はPOWを消費する必要があり、また〈永続〉の呪文を“更新”するためにはMPを消費する必要がある。呪物にその呪文を投射する条件さえ与えられていれば、呪文を〈待機〉させておくことも可能である。

《強化》  Strengthening
呪付
  この呪文はAP(武器などの場合)、HP、FP(生命体のみ)などの属性値を増加させる。増加させる属性の合計は、以前から存在する呪付を含めて、効果ポイントを超えることはない。通常一つの武器やトータルHPにのみ効果を発揮する。しかしながら生命体に投射する《HP強化》の呪文は、トータルHPを上昇させるために使用することにも、特定の命中部位のHPを上昇させることにも使用することができる。
  この呪文の投射には1ポイントのPOWが必要である。

《召喚(種族)》  Summon [species]
召喚
  この呪文により術者は異世界の存在を召喚することができる。召喚する生物のMP1D6ポイントにつき、《召喚》呪文の呪文ポイントが1ポイント必要となる。生物のMPを決める際の修正値(1D6+6の際の+6等)がある場合、修正値6ポイントにつき1ポイントの呪文ポイントが必要である。それ故2D6+12のPOWを持つクラシートの仔を召喚するためには《召喚4》が必要(2D6で2、+12で2)である。
  術者が召喚する種類の精霊にすでに遭遇したことがある場合、その特定の個体を選んで召喚することができる。この個体が未だ存在しており、また召喚に答えられるような自由な状態にある場合、その個体がやってくることとなる。また祈祷師はその種族の中から無作為に召喚することもできる。魔道士は一般にその生物が現れるのに備えて、《制圧》呪文を〈待機〉させておく。召喚した生物の支配を目的とした呪文(《制圧》など)を投射する際、《召喚》呪文の効果ポイント1ポイントにつき1MPが術者のMPに一時的に加えられる。この効果は生物が召喚されて1時間経過すると失われる。〈召喚〉ロールに失敗した場合、魔道士はこの効果を受けることはできない。
  召喚ロールがファンブルしたとしても、異世界とのつながりは発生し、何かが現れる。しかしそれは望んだ種類の存在ではない。誤った召喚においては、敵意を持った危険な存在のみが召喚される。
  エレメンタルを召喚した場合、その生物がとる姿に十分な元素を必要とする。

《(精霊)召喚》  Summon
(祈祷師のみ)
召喚
  この呪文によって祈祷師は、精霊カルトの形式にのっとって精霊を召喚、礼拝し、精霊から神性呪文を学ぶことができる。この呪文を学んだとき、祈祷師は精霊の要求に従い、精霊との霊的なリンクを確立するために1ポイントのPOWを捧げねばならない。これによってその後の《召喚》呪文が機能するようになる。

《紋章》  Symbol
呪付
  《紋章》が平面に刻まれる際に、術者は特定の呪文、呪文の“投射条件”となる存在、標的となる存在(投射条件と同じでもかまわない)を指定する。指定した呪文は呪付の後に通常のルールにしたがって《紋章》に投射することができるようになる。投射条件である存在が呪文の射程範囲内を通過した場合、それが適正な標的であれば、そしてその場合に限り呪文が投射される。射程が接触の呪文は呪文が効果を発揮するためには標的が接触せねばならない。呪文が一度投射されると、《紋章》は空になり、指定された呪文を《紋章》に投射して再充填する必要がある。《紋章》は効果ポイントに等しい数だけ呪文を充填することができる。その回数を使い切ると《紋章》は判別不可能になり、使用できなくなる。
この呪文の投射には1ポイントのPOWが必要である。《紋章》に封じるために投射された神性呪文は永久に失われる。

例:祈祷師バッドサンブは《紋章8》を知っており、自分の身を守るために入り口の扉に《紋章》を刻むことを決めた。彼はPOWを1ポイント消費して扉に《除霊》を投射するための《紋章》を呪付した。彼は標的として自分自身を、投射条件として“邪悪な精霊”を指定した。これによって敵対的なゴースト、レイス、チョンチョンなどが扉の50m以内に侵入した際には、彼は自動的に《除霊》呪文を身に帯びることとなる。最初の充填の後、《紋章》の呪付を使い切るまでにバッドサンブはさらに7回まで再充填することができる。

《呪付変成》  Warp Enchantment
呪付
  この呪文により、術者はある呪付を別の呪付に変えることができる。術者は呪付に関わるすべての呪文、すなわちすでに呪付物に封じられている呪文と、変化させようとする呪文の両方を知っている必要がある。また刻まれている文様を変えるために、術者、もしくはその助手が変成させようとする物品の〈製作〉ロールに成功しなくてはならない。術者は《呪付変成》の呪文ポイントと呪付物に封じられているPOWの総量で抵抗ロールを行う。呪付物がMPを有しているならば、術者は自身のMPでそのMPを打ち破る必要がある。

《(神)礼拝》  Worship (Deity)
(司祭のみ)
浄化
  術者は正式な礼拝儀式を執り行うことができる。儀式に参加したすべての参加者は、その神に捧げたMPが受け入れられたという霊的な確信を得る。


  本テキストはSandy Petersen氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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