完全派

    -Perfecti -

copyright 1998, Nick Brooke & David Hall
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999 [1999.11.05].

歴史

  完全主義派は、フレストルの第二の啓示の真の秘密を伝える神秘的な教派である。

  あらゆる者に知られている通り、王子フレストルは人々の持つあらゆる技を修得することによって社会の制約を超越した最初の人間であった。彼がこの超越を行うことを可能にした知識は、彼が沈黙の勤行の中で彼の国を襲った敵について瞑想を行っていた時、彼にもたらされた。彼の祖先にして最初の預言者マルキオンは、彼が古く、死んだ法の生気なき言葉ではなく、みずからの心の命ずるままに従って振舞うことを認めたのである。誇りに満ちたフレストルは、暗黒の森や大地の奥底を探索し、彼の民の敵を見つけ出しては殺し、輝ける騎士としてこれらの困難を乗り越えた。

  これは彼の最初の啓示であり、我々完全派は肉体の開放と呼んでいる。しかし、それは十分ではなかった。社会の枠組みの中で成し遂げられるすべてを達成し、みずからの勝利に光輝いていた後、王子はみずからの肉親によって追い立てられ、荒れ野へと追放された。(我々はこの物語の中に、世俗的な華やかさと成功の持つ空しさが示されているのを目にするのである)。

  そしてこの時こそ、寄る辺無き放浪者としてフレストルが第二の沈黙の勤行に就き、若い頃の彼の世俗的な関心事−戦い、戦争、王朝の権力争い−に思いを巡らすのではなく、みずからの魂の状態を深く考えるために、みずからの精神を内に向けた瞬間であった。

  その後第二の啓示、魂の解放がが明らかにされた。これは、彼が農夫、兵士、魔術師、領主の各階級で培った技能や技が、彼の世俗的、外面的自己に変化をもたらしたものの、彼の内的自己を変化させることに失敗したという実感であった。社会におけるこれら序列のそれぞれと一致する心理状態が生まれた。それまで王子は依然王子のままであったが、彼はここに至って自身の内的形成を修得し、真に完全なる人間となったのである。

  これは大きな試練だった。それらは命がけで戦い、打ち勝つべき単なる敵はおらず、むしろ習慣と欲望という個人の邪悪な感情こそが敵であった。学ばれるべき現世の技、技能はなく、あらゆる者の調和による完成だけが必要であった。彼の完全なる状態に達するためには、フレストルが一人一人、我々すべての者になる必要があった。彼の名誉ある殉教が我々すべてのために慰めへの道を再び開くことができた理由はただ一つ、彼がこれをすでに成し遂げていたからである。


神学

  フレストル"理想派"の誤った主張とは異なり、我々完全派は、ロスカルムの国の制度自体が聖性に対して有害なものであることを知っている。ロスカルムの領主、および魔術師階級は、多くの者たちに救済を与えるには世俗的な権力の修飾物に執着しすぎており、確立された教会の構造では、それらの階級を通じた発展など達成する事はできない。

  彼らの通過儀礼や、馬上試合、試験、それらはみな単なる外面的な見せ物にすぎず、真なる本質を欠いた中身のない示威行為である。すべてが終わりを迎えたときには我らの浄化こそ現実となるので、彼らの安っぽい見せ物は単なる彼らの主張に過ぎない。

  完全派の構成員は沈黙の秘密の助けを借り、儀式と瞑想を通じて、開発と清めの霊的プロセスを押し進める。そこでは完成を心から望む者が徐々にみずからの魂を精製し、4つの相を超越するのである。これを成し遂げたごくわずかな者だけが"完全なる者"として知られることになる。理想主義派教会が宣言する"君主"とは異なり、彼らは4つの社会階級すべてを同時に体現しているのである。


位階

  位階などあろうはずがない!!神はあらゆる者を平等に作った。あらゆる人間はみずからの努力を通じて完成に達することができるのである!人間としての限界を超越し、すべてと一体になった"完全なる者"たちは、その生涯の完全なる聖性によって栄光の慰めへと大衆を導き、救済をもたらす。 完全と"完全なる者"たちの高徳の状態を知る者は、自身の救済をも確実なものにする。フレストルのように、完全なる者は死を恐れる必要がない。なぜなら、慰めにおける超越への報いが確実に彼にもたらされるからである。




  本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
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