…出会いは、本当に偶然だった。
もしも、あの日あの時、
あんな場所に行きさえしなければ。
私は今、
こんな思いをすることもなかったろうに…。
でも、
もう手遅れなんだ。
あたしの想いを止める事なんで、できるはずない。
自分でだってもうコントロールできない。
そんなこと、もう分かっている。
…決してこんな想いをいだいてはいけない相手。
そう、
分かってるんだ。
その人の名は…。
「きゃあ!?」
思わず発した自分の悲鳴が、暗い森の中を響き渡る。
夜か昼かも分からない、深い森の奥。
こんな所に足を踏み入れるんじゃなかった…。
そんなことを思うには、もう十分すぎるほど手遅れだ。
「……ルルルル……」
目の前で、見たことも無いようなバケモノ…つまりモンスターが、あたしを睨みつけながら唸り声を上げつづけている。
凶悪な瞳と、馬よりも二まわりは大きいそのずうたいに、あたしは硬直した体を小刻みに振るえあがらせているだけだった。
モンスターが一瞬唸りを止めたと思った瞬間。
その姿が瞬時に迫ってきて、たまらずあたしは目を閉じる。
−もう終わり…!
こんなところで、こんなことで、あたしの人生終わっちゃう。−
硬く閉じたまぶたの向こうに、無意識になつかしい世界がよぎる。
−走馬灯っていうのかな、こういうの…。−
なにやら妙に冷静に、そんな事を考えていると、
ふいに、さっきからちっとも衝撃がこないのに気がついた。
あたりもなんだか静かだし、何かヘンだ。
恐る恐る目を開けて見ると。
最初に目に飛び込んできたのは、背中だった。
一瞬なにが起きたのか分からなかったが、良く見ると目の前に人が立っている。
綺麗なオレンジがかった金の髪。
真っ青な瞳。
見たところ青年らしき人物は、目の前に倒れるモンスターから、こともなげに突き刺さっていた刀を抜いている。
ふっとその人物が、こっちに振りかえり、あたしは思わずビクッと緊張した。
−あれ?
…この人、どこかで…。
目の前の人物を呆然と見ながら、あたしは必死に記憶をたどっていた。
そうだ。
たしか、前にディアーナに襲撃してきた…。
数ヶ月前、偶然居合わせ目撃してしまった、とある事件があたしの脳裏に蘇えった。
そーよ、この人あの時の盗賊だわ、間違いない…。
…でも、なんで…。
なんで、その盗賊が、あたしを助けてくれるんだろう?
呆然にそちらを見つめるあたしに、ちらりと視線を落とした後、慌ててフードを目深にかぶり、その人はさっさとその場を去ろうとした。
「…ちょ、ちょっと待ってよ!」
思わす、あたしは彼を呼びとめた。
…どうしてかは分からない。
でも、何故かこのまま別れたくはなかった。
「なんだ?」
空気が張り詰めるような冷たい口調で、彼は言った。
その声に一瞬たじろいだが、あたしは気をとり直して彼を見据えた。
「…どうして、助けてくれたの?」
精一杯、毅然にあたしは話した。
そんな問いに、彼はフッと含み笑いをすると、
「別に理由など無い…」
そう言いながら、きびすを返そうとする。
「…あんた、盗賊でしょう? あたし、見たんだから。 この前この森で、ディアーナ…じゃない王女様を襲おうとしてたでしょう」
再び立ち去ろうとする彼に、あたしは思わず言い放った。
言葉が終わった時、しまったと思ったが、…もう遅い。
目の前で、彼は見る間に殺気をみなぎらせた。
「…お前、何故それを…」
「…ぐ、轟然…見たのよ…」
あたしは、さっき彼の素顔を見ている。
そして、彼が盗賊である事を知っているとぶちまけた。
これって、やっぱとことんヤバイ気がする…。
彼は殺気を高めながら、右手を剣にかける。
あたしは思わず生唾を飲んだ。
折角助かったてのに、こんなんじゃなんの意味もないよぉ〜。
あたしは思わず泣きたくなっていた。
その時、だった。
「……ぐっ…」
鈍いうめき声とともに、目の前の彼が突然その場に倒れこんだ。
……え!?
何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
目の前に倒れこんだ彼の肩口に、赤い染みを見付けたのは、2.3回瞬きをした後のことだった。
「…ちょっと、大丈夫なの?」
数分後、とっさにかけた憶えたての回復呪文が効いたらしく、彼はだるそうに立ち上がった。
「…まったく、自分がそんな深手を負いながら、よく人助けなんてできるね〜」
あたしがあきれながら言うと、彼は不思議そうにこちらを見つめた。
「…何故、助けた?」
「何故って、怪我してたから…」
「…俺はお前の命を奪おうとした、その相手を…何故助ける…」
彼はこちらを思いっきり睨みつけながら、荒い口調で言った。
あたしは思わずため息一つつき、
「…その前に助けられたしね、一応恩返しってとこ」
ウインクしながら言うあたしに、彼は睨みをゆるめない。
「……プラス、ちょっとだけ命乞い…カナ…?」
あたしは、再び殺気をみなぎらせる彼に、冷や汗をたらしながら言った。
「一応、礼はいっておく。 …それと、今日は見逃してやる。 …だが、もし俺のことを誰かに喋ったりしたら…その時は、分かってるな?」
冷ややかな青い瞳を向けながら、殺意満々で彼は言う。
あたしは冷や汗をかいたまま、こくこくと頷いた。
「…じゃあ、…世話になった」
一言いうと、彼はきびすを返す。
「……ねぇ…」
無意識に、
あたしは彼を呼びとめていた。
「……なんだ?」
めんどくさそうに、彼は振りかえる。
そんな仕草に、一瞬ドキッっとしたのは、多分気のせいじゃない。
「…その、…あんた、名前は…?」
一瞬口篭もり、あたしが尋ねると、彼は唖然として立ちすくんだ。
「…盗賊に名前を尋ねるバカがいるか?」
「…あ゛…」
彼のツッコミに、思わず眼を点にるあたしを見て、彼はクスリと笑った。
笑顔にまた鼓動が高鳴るのを感じる。
「……アルムレディン……」
……え……?
聞き返す間も無く、
彼は姿を消した。
「あ…」
ふと辺りを見ると、彼の物らしいピアスが転がっている。
あたしは思わずそれを拾い上げながら、
アルム…レディン……。
心のなかでその名を繰り返していた。
「……また、会える…よね?」
どこへともなく呟いた言葉は、すぐに風にかき消されてしまっていた――。
…というわけで、
前々から密かに目論んでいた(笑)ファンタのシリーズもん第二弾です。
多分前、中、後編くらいのボリュームの予定ですが、一応まだ未定なので「1」としています。(前のシリーズで懲りたらしい(爆))
はっきりいって、マイナーというより反則カップリングなんですが…(汗)
某サイトでこのカップリングを見て以来、こーいうのもアリなのね〜、と感心して、見事にハマってるカップリングです。
…なんか、これぞ王道、って感じの少女漫画が書けそうな組み合わせです〜。
しかし…アルムは難しいです〜。
以前、王子様アルムは挫折したことあるんですが(爆)…盗賊ならなんとか…と思ったものの……。
しかし、最近創作あまり書いてないんで、ネタばかりたまってます。
おそらく近いうちに、ファンタでもうひとつシリーズかます予定なんで…(爆)
…う〜ん、その前に別のトコの続きモン、なんとかしろって感じですね…。(スミマセン)
ではでは、…多分続きは次のシリーズモンを始めてからだと思います、…ま、5月中には、という感じです、多分(ヲイ)
それではそーゆーことで。
よろしければ続きもおつきあい下さると嬉しいです。
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